ディスカバリーで殴り込む   作:ホワイト・フェザー

8 / 23
7:運命を変える

 リトリビューションはバーンウォーターオプスを見事成功させたそうだ。ゲームと同じでレイエスとイーサンが宇宙空間に取り残されたがタイガースが無事に救出した。ここまでは問題ない。

 

 しかし、レインズ艦隊長の命令でリトリビューションはダーククオリーオプスを実行する。ゲームではこの作戦でオマー軍曹が戦死し、更にほぼ同じタイミングでタイガースがオリンパス・モンスに撃沈されてしまう。これを防ぐのが俺の仕事だ。問題はどうやってやるか。とりあえず通信を開いて、と。

 

「レイエス艦長、こちらカーク。緊急の連絡ですまないが、これから水星に行くんだよな?」

 

『ええ、その通りです。何か?』

 

「水星付近に展開中の探査機にオリンパス・モンスの姿が映っていた。今から数時間前だ」

 

『何ですって!?』

 

「もう知っていると思うがベスタ3は軌道を外れて太陽に向かって一直線だ。恐らくベスタ3をスイスチーズみたいに穴だらけにしやがったのはオリンパス・モンスだ」

 

小惑星の軌道が変わるレベルの攻撃って相当だよな。ベスタ3って結構大きめだったし。

 

『最悪だ…生存者はいるんだろうか…』

 

「俺が思うにこれはリトリビューションをおびき寄せる罠だ。オリンパス・モンスの火力ならばベスタ3を完全に破壊する事は容易のはず。そうしなかった理由は1つしかない」

 

『リトリビューションを救出に向かわせている間に何かをする為。となると考えられるのは…まさか!?』

 

「同じ考えに至ったようだな。オリンパス・モンス、いやコッチの狙いはタイガースだ。万が一救難信号を発信されてもリトリビューションが間に合わないくらい距離を置いた上で、誰にも邪魔されずにタイガースを攻撃するつもりだろう。フェラン艦長には申し訳ないがタイガースの火力ではオリンパス・モンスには歯が立たないだろう」

 

 一瞬で16隻のUNSA艦艇を撃沈した超大型空母と駆逐艦では話にならんよな。決してタイガースが弱い訳では無い。オリンパス・モンスが強すぎるだけだ。ゲーム内においても太陽系で一番大きくて最強の艦艇って紹介されていたし。

 

『だからといって見捨てるわけにはいきません!採掘コロニーにはまだ生存者が救助を待っているかもしれない』

 

「もちろんだ。だからディスカバリーはしばらくタイガースと行動を共にする。オリンパス・モンスが来なければ良し、来たらタイガースと共同で撃退する。あと今からそっちにちょっとの間お邪魔するよ。今回の任務で使うかもしれないデバイスを提供する」

 

『デバイス?わかりました』

 

 という訳で、早速リトリビューションの真横にジャンプ。用意した荷物を抱えてリトリビューションの艦橋にピュッと。

 

「どうも、レイエス艦長」

 

「…さっきぶりですね、カーク艦長。最初はびっくりしましたけど、なんか慣れましたよ」

 

「それは何よりだ。でもこれを使うとまたびっくりするかもな」

 

そう言って俺は両手に抱えた大きな箱を揺らした。

 

 

 

 

 

レイエスはカークを格納庫まで案内した。レイブンの横でオマー率いる海兵隊が揃っていた。

 

「軍曹、こちらはカーク大佐。ディスカバリーの艦長だ。カーク艦長、こちらはオマー軍曹。海兵隊部隊の指揮官です」

 

「初めまして軍曹。君達勇敢な海兵隊の活躍はレイエス艦長から聞いているよ」

 

「ありがとうございます、艦長。こっちでもあなたが火星で派手に暴れたニュースで持ちきりですよ。またやるんでしょう?」

 

「もちろんさ、明日か明後日には火星旅行に行こうと思っていてね。じゃあちょっとこれの説明をするから注意して聞いて欲しい」

 

 カーク艦長が取り出したのは楕円形のバッジみたいなものだった。カーク艦長が左胸に付けているものと同じに見える。

 

「我々はこれをコムバッジと呼んでいる。このように胸のどこかに付けていればいい。通信・翻訳・GPS機能は標準装備、そしてこいつには転送装置が付いている」

 

「転送?それはどういう…」

 

ブルックス伍長が聞くとカーク艦長はニッコリしながら、

 

「こういう事だよ」

 

と言い、伍長の真横にジャンプした。いきなりの出来事に海兵隊員達はびっくりしていた。カシマ一等兵は口が開きっぱなしだ。

 

「えっ…ええっ!?」

 

「いわゆるテレポート、またはワープと呼ばれる技術だな。好きな所に飛べるし、指定した座標にも飛ぶ事も出来る。更に負傷者等を抱きかかえながらでもジャンプ出来る。というかこのコムバッジを装着している人間に触れてさえいれば、一緒にジャンプする事が可能だ。最大で10キロメートル先まで転送可能だ」

 

「すごい技術だ…ですがこれ程の物を我々に提供してもいいんですか?」

 

「大丈夫だ。理由は幾つかある。まず現在のUNSAやSDFの技術力ではこいつの複製はもちろん構造解析すら不可能だからだ。それにフェイルセーフも付けてある。転送装置は30回までしか使えない設定にした。使い切ったらコムバッジは自動的に破壊される」

 

「もう1つ聞きたいことが。何故今回の任務でこれを渡すのですか?」

 

「諸君の安全の為だ。知っての通りベスタ3はコッチのクソ野…失礼、オリンパス・モンスの攻撃の影響で太陽目掛けてダイビング中。しかも観測データを見る限り地表が数百度、局所的には千度以上の灼熱地獄になっている。日焼け止めを塗っても効果はないだろう」

 

敵艦隊のリーダーをクソ野郎って…まああいつがクソ野郎なのは当然だが。

 

「そんな場所で時には遮蔽物がない場所を横切らないといけないだろう。そこで転送装置を使えば対岸の施設に素早くジャンプする事ができる。あと生存者がいた場合、迅速に避難させる為にレイブンの格納庫に直接ジャンプ出来れば便利だろう?施設内には可燃物が腐る程あるみたいだし、俺ならそんな場所に長居はしたくないね」

 

その後転送の練習をしたがこいつは凄い。最初は若干酔ってしまうが慣れれば便利なものだ。

 

「32世紀はとてつもなく科学力が進んだ世界なんですね」

 

「そうしないと生き残れなかったんだ。惑星連邦は今まで異星人や機械生命体等のとんでもない連中と戦ってきたからな」

 

そう言いながらカーク艦長は遠くを眺めた。相当大変な歴史を歩んできたのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえず転送装置があればオマーは助かるはず。100%ではないけど生存率は大幅に上がるだろう。あとは本人の運次第か。

 

 で、次はタイガースだけどその前にポイント使って何か買おうかな。現在のポイントは325000ポイント。火星攻撃でだいぶ稼げたみたいだ。カタログをパラパラめくっているけどこれといっていい感じのものはないかなー…念の為に防御力を上げておくか。オリンパス・モンスのF-SPARだともしかしたらシールドを抜くかもしれん。

 

 今のディスカバリーのシールドは2重構造になっていて、防御力はあのシミターを超えている。それを更に倍プッシュの4重シールドにポイントで改造した。これならオリンパス・モンスに体当たりされてもあっちが壊れるだろう。

 

「しかし本当に来るんでしょうか?」

 

「絶対来る。ヘルナンデス大尉、君が指揮官なら艦載機を搭載した空母と殴り合うのと、駆逐艦を一方的に殴るのだったらどちらがいい?」

 

「それはもちろん後者ですね」

 

するとデータが警告を発した。

 

「艦長、火星宙域よりオリンパス・モンスがジャンプしました」

 

「了解した、データ。シールド最大、武器システム稼働。コール少佐、タイガースに警告を出せ」

 

「分かりました!」

 

 程なくして目の前にオリンパス・モンスが出現した。やっぱでかいよな。確か全長927メートルだっけ。スケルターが一斉に飛び立つ姿はかっこいいな。

 

「艦長、タイガースのフェラン艦長より通信です」

 

「繋げ」

 

『カーク艦長、これは逃げに徹した方が良いと思うんだが』

 

「全くもって同意見だ、フェラン艦長。オリンパス・モンスの底部をすり抜けてからジャンプしてくれ。ディスカバリーが殿を務める」

 

『感謝する、幸運を』

 

 タイガースが全火力をばら撒きながらオリンパスの底部に向かうのでディスカバリーもそれに続く。底部に武器がなくて良かったよ本当に。あとなんかコッチが通信に割り込もうとしているけどシカトで。

 

「敵艦載機接近!ハードポイントに大型爆弾らしき物を確認!」

 

「コール少佐、あれを見たことはあるか?」

 

「恐らく対地攻撃用爆弾かと!タイガースに命中すれば甚大な被害が出ます!」

 

「データ、タイガースに向かう敵艦載機及びミサイルを集中的に迎撃しろ。本艦はシールドがあるから問題ない」

 

「了解です」

 

 青い光線が宇宙空間を走り、スケルターとミサイルを次々と破壊する。タイガースには近接防御火器がないから仕方ないね。そうこうしているうちにオリンパス・モンスの底部を通り抜けた。あとは逃げるだけ。

 

「艦長、オリンパス・モンスが旋回。F-SPARが稼働しています。目標はタイガース!」

 

「今すぐF-SPARの射線に割り込め!フェラン艦長、直ちに緊急ジャンプを!」

 

『だがそれではディスカバリーが!』

 

「この船なら耐えられる。行ってくれ!」

 

『…すまない!操舵手、緊急ジャンプだ!』

 

F-SPARが発射される数秒前にタイガースは戦線を離脱した。これでヨシッ!

 

「F-SPAR、間もなくチャージ完了します!」

 

「総員衝撃に備えろ!」

 

 そしてディスカバリーはF-SPARの攻撃で宇宙の藻屑に…なるわけないだろ!死んでたまるか!でもやばい衝撃だったな。

 

「全員怪我はないな?データ、被害報告!」

 

「第1シールド、出力5%にまで低下!」

 

「一撃でそこまで食われるとは…やっぱF-SPARは強いな」

 

「F-SPAR、再度チャージ中です!」

 

「相手にしてられんな。データ、オリンパスの後方にジャンプ。エンジンを攻撃して動けなくしてからこの宙域より離脱する」

 

「了解です、艦長」

 

 

 

 

 

「被害報告を!」

 

「艦底部の複数エリアで火災発生!ダメコン班が対応中!」

 

「撃墜されたスケルター隊の搭乗員をウォーデンが救出中です!」

 

「左舷エンジン大破!リアクター出力低下!復旧まで10分!」

 

「ドロップリアクターは正常稼働中です!」

 

 コッチは不機嫌だった。リトリビューションを水星におびき出し、その間にタイガースを撃沈する作戦。うまくいくはずだった。ジャンプしたらあの憎きディスカバリーもいた。これは好都合、まとめて沈めてやる。と思ったのだが結果的にタイガースは逃亡、ディスカバリーにF-SPARを叩き込んだが効果はなく、逆に12機のスケルターを撃墜された上、エンジンに一撃を受けた。

 

(おのれディスカバリー!どこまでも我々の邪魔をしやがって!しかも私の通信を無視するとは…許せん!)

 

 だがコッチには秘策がある。火星に連絡してオリンパス・モンス級2番艦及び3番艦の艦隊配備を早めるように指示を出した。3隻のオリンパス・モンス級が一斉にF-SPARをディスカバリーに放てば確実に破壊できるだろう。

 

(最終的に勝てば問題ない。そして火星が全てを制するのだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「艦長、火星からの最新データです」

 

「ありがとう、データ………ん?」

 

「どうしました、艦長?」

 

「あー大丈夫だよ、データ………これは…コール少佐?」

 

「はい、何でしょう?」

 

「ちょっと聞きたいんだけどさ…オリンパス・モンスに同型艦が複数いるって話、聞いたことある?」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。