ベスタ3に降り立ったレイエス達だったが、地面から炎が吹き出るわ、太陽の熱でこんがり焼けそうになるわ、セキュリティボットが暴走しているわ…それはもう文字通り散々な目にあった。だが結果的にカーク艦長から貰ったコムバッジは大勢の命を救う事になった。
施設間を移動する際にとても役に立った上、施設の奥で発見した生存者を避難させるのに転送装置は最適なデバイスだった。着陸場がすぐ横にあったがセキュリティボットと可燃物で埋め尽くされていた。もしあそこにレイブンを着陸させて避難をしていたら何人かは犠牲になっていただろう。この戦いが終わったらカーク艦長には一杯奢らないとな。
「艦長、おかえりなさい」
「イーサン、何か報告はあるか?」
「カーク艦長の読みは当たりました。タイガースとディスカバリーがオリンパス・モンスの襲撃を受けました」
報告によると、2隻はオリンパス・モンスの底部をうまくすり抜けてジャンプしようとしたが、オリンパスがF-SPARを稼働させた為タイガースは緊急ジャンプを実行、ディスカバリーが盾となった。緊急ジャンプの影響でタイガースの機関が損傷し航行不能に陥る。そこにディスカバリーが飛んできて月までタイガースを曳航した、と。
色々とツッコミどころ満載なんだが…まず何でディスカバリーはF-SPARの直撃に耐えれたんだ?しかも損傷したタイガースを月まで曳航ってどうやって…なになに、トラクタービームでタイガースを引っ張りながらワープした?ちょっと何言ってるかわかんない。
そして今度はライアの報告書だがまさかトランスポンダーが埋め込まれていたとは…艦隊を侵攻させる為にAATISを破壊してライア自身も死ぬ、片道切符の特攻作戦。ならそれを逆手に取るのはどうだろう?
ソルター達は俺が考えた作戦はうまく行くと思っていた。イーサンがSTRATCOMに立案した作戦計画を送信したが、すぐにレインズ艦隊長から通信が入った。
『レイエス艦長、君のジュネーブにおける戦略だが…正直に言おう、私は承認したかった』
「と言いますと何か問題でも?」
『うむ。ここからはカーク艦長に説明してもらう』
『レイエス艦長、無事にベスタ3から生存者を救出できたと聞いてホッとしたよ。それはともかく、まずはこれを見て欲しい』
送られてきた映像を見た俺達は固まった。どうみてもオリンパス・モンスにしか見えない船が2隻もいる。あいつらいつのまに同型艦を…
『以前実施したランダムアタッカーオプスで火星宙域に探査機を展開していた。そいつからの映像なんだが、これはオリンパス・モンスによる襲撃から逃げた後のデータだ』
「つまり、オリンパス・モンスは合計3隻いる?」
『おそらくその通りだ。SDFのメインフレームを覗いた時にはこいつらの存在は確認されなかった。極秘に建造されたのだろう。しかもF-SPARがオリンパス・モンスのものより大きくなっている。ただでさえ破滅的な威力のF-SPARを改良したとなると…』
「その威力は計り知れないものとなる…」
『そこが問題なのだ、レイエス艦長。こちらの計算ではあの3隻が同時にジュネーブに押し寄せた場合、AATISを全力稼働させたとしても敵を無力化する前にF-SPARの攻撃を受けるだろう、とのことだ』
オリンパスが1隻ならうまくいく。2隻ならまだなんとかなる。3隻はきつい。
「作戦を練り直すしかないな…」
『…いや、今思いついた別の作戦がある』
「と言うと?」
カーク艦長の作戦はこうだ。基本的には俺の作戦で動く。ただしライアの移送には転送装置を使用する。移送時にSDFからの妨害を受ける訳にはいかない。そして作戦開始直前にディスカバリーは火星に飛んで3隻のオリンパスのどれかを引き付ける。それと同時にライアからトランスポンダーを摘出。信号途絶を確認したコッチがオリンパス2隻で地球にやってきたところをAATISとリトリビューションで破壊する。
『今やディスカバリーは火星人民最大の敵になっている。俺が行ったら必ず1隻は引き付けられるはずだ。肉汁滴るスペアリブを前によだれがとまらない犬みたいになるだろう』
「しかし改良型F-SPARの攻撃にディスカバリーは耐えることは出来るのですか?」
『多分な。ノーマルのF-SPARの攻撃ではシールドが1枚吹っ飛びかけた。改良型がどれだけの威力なのかは攻撃されるまではわからない』
SDFの駆逐艦や艦載機からの攻撃を全く通さないシールドにそこまでのダメージを与えるとは…やはりF-SPARは恐ろしい兵器だ。
『あと確認なのですが、UNSAとしてはコッチを生け捕りにしたいですか?それとも
『…出来れば生け捕りにして裁判にかけてやりたい。ジュネーブのツケを払ってもらわねばならないからな。しかし無理にとは言わない。出来なければ問答無用で排除で構わない』
一体どれだけの民間人、軍人が命を失っただろうか。未だにジュネーブでは街のあちこちで撃墜された艦艇が燃えている。犠牲者の集計すらままならない状態だ。コッチとSDFは許されない事をした。その代償はきちんは払ってもらう。
『わかりました。レインズ艦隊長、この作戦を行うにあたり2つ程お願いしたい事があります』
『何かね?』
『まず全てのAATISの安全点検を。ひょっとしたらSDFのスパイ達が既にAATISに爆発物を仕掛けている可能性があります』
『それはまずいな。実は火星から回収したデータを元にSDFのスパイ摘発及びセーフハウス襲撃を行った。一番大きなセーフハウスには1ヶ月の間歩兵1個中隊が全力で戦えるだけの武器弾薬、それにどうやったから分からないがSDFのAPCまで隠してあった。UNSA本部にもスパイが1ダース以上潜入していたのは痛恨の極みだよ。最終的に作戦は成功したが、セーフハウスから大量の爆発物が行方不明になっていた。どこかに輸送されたか、あるいは既に設置済みなのだろう』
「艦隊長、作戦を遅らせてでも点検を行うべきでは?」
『そうだな。AATISがなければこの作戦は成立しない。カーク艦長、もう1つは?』
『タイガースの修理を私にやらせて下さい。損傷報告を見る限りすぐに戦線復帰させる事が出来ます』
『分かった。タイガースにはこちらから知らせておこう』
『感謝します』
こうして作戦が正式に決まり動き始めた。これで全ての戦いに終止符を打つ。
まさかオリンパス・モンスに同型艦が2隻もいたとは思わなかったよ。ちょっとSDFズルくない?そういうの良くないと思います。あ、俺もズルい?それは否定できん。
それはともかくタイガースの修理だ。ここでもポイントを使って購入したアイテムを使う。オマー軍曹とタイガースが無事だったので更にポイントが貰えた。主要人物を助けるとドカンと貰えるらしく、今のポイント残高は150万ポイントだ。これで何を買ったかというと。
「テレレレッテレー…これなんて名前だ?」
いやわからん。スタートレック・ピカードのシーズン1第9話と第10話で登場した機械なんだけど『想像力を使って物を直す機械』としか言ってなかったし。確か神経原子のフィールド・レプリケーターだっけ?まあいいや。これがあればどんな機械もすぐに直るってわけよ。
「これで直せるんですか?」
俺が渡した謎機械をくるくる回しながらそう聞くのはタイガースの機関長。まあ疑うのも無理はない。こんなちっぽけな機械で直るんかいと。
「修理が完了して完璧な状態をイメージすれば直るはずだ。とにかくやってみてくれ」
「わかりました…」
フェラン艦長や他の乗組員が見守る中、機関長は目をつぶったまま謎機械を壊れた機関に近付ける。すると機械が動き出して青い光が機械と接触、壊れた部分がどんどん直り始める。
「嘘だろ…」
「なんだあれ、どうなってんだ?」
「信じられん…」
報告ではドックに入れて1ヶ月はかかると言われていた損傷がたったの10分で直ってしまった。
「これはすごいな…これで直せないものとかあるんですか?」
「生体組織の修復は出来ないな。基本的にはそれ以外全部直せるはずだ」
普通のレプリケーターは色々と制限があるけどこれはないから都合がいいね。これがたったの10万ポイントってのはお買い得だったよ。
さて、最後の作戦だけどコッチはどう動くのかな?ゲームで起きたライアの脱走&AATISの破壊は転送装置の使用と安全確認で阻止できるはずだ。問題はコッチがどちらを優先するか。トランスポンダーを取り出した後、ゲーム同様コッチが地球に来るのか?それとも火星に現れた俺と戦うのか?出来れば生け捕りにして裁判で死刑にさせたいから俺が引き止めた方が良いんだよな。引き止め方法だが盛大に煽り散らかしてコッチをブチ切れさせれば何とかなるかな?
「まーやってみないと何とも言えんな。明日が楽しみだ」