ポジティブ焦凍くん   作:フレイザードさん

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高校入学焦凍くん

 

 

雄英高校に入学し、ヒーロー科1年A組になった焦凍くん。

 

裏では焦凍くんを巡り、担任による熾烈な争いがありましたが校長の鶴の一声でA組になりました。この争いが争奪戦ではないのは言うまでもありません。

 

そんな教師たちに話題の焦凍くんは、学校に到着しても中には入らず敷地外にいました。雄英高校自慢のセキュリティというものがどれくらい強力なのか試してみたかったのです。

 

以前エンデヴァーの事務所でも同じ事をしようとしましたが、そのときはエンデヴァーが飛んできたので事なきを得たのです……事務所のほうが。エンデヴァーは焦凍くんがやらかさないか見張っていたので未遂に終わったのですが、焦凍くんはそれを知らないので「攻撃を察知して飛んできて未然に防ぐなんて、さすがヒーロー」と感心していました。

 

すでに校舎内の間取りも頭に入っている焦凍くんは、敷地外から職員室に向けて力を溜め始めました。胸の前で手を組み合わせ、自分の出せる限りの力を込めて弓のように構えます。きっと渾身の力を込めないとバリアを破ることはできないだろうという考えからでした。

 

「轟少年っ!ストップだ!!」

 

「オールマイト、おはようございます」

 

しかしそこは流石No.1ヒーローです。慌てた様子でその場に現れたのはオールマイトでした。彼はエンデヴァーから焦凍くんのやらかし未遂を聞かされており、それを周知していたので念の為に教師陣が巡回していたのでした。そして巡回していたオールマイトが見つけたのが、対自分用の必殺技だと教えてもらった消滅ビームの構えだったため慌てて声をかけたのです。

 

「一応聞くけど、君は一体何をしようとしていたんだい?」

 

「ちょっとしたセキュリティチェックってやつですね」

 

焦凍くん本人はもしヒーローが狙われた場合の強度確認のつもりだったのですが、もし放たれていたらバリアなんて障子紙のように消え去り職員室もなくなっていたでしょう。それどころか、巡回していた教師以外は全滅していたかもしれません。ヒーローすらも救うなんて、流石オールマイトといったところでしょうか。

 

 

オールマイトから「セキュリティは万全だから安心して教室に行きなさい」と言われたため教室に入りクラスの様子を眺めていたら、担任の相澤先生が突然体力測定をするからグラウンドに出ろと言い出しました。戸惑った雰囲気のクラスメイトたちでしたが素直に従い説明を受けていくと、個性を使用して良いとの事でみんな喜んでいます。

 

「最下位は除籍な」

 

ですが相澤先生のこの言葉でクラスメイトたちは驚愕し、苦労して入試を突破したのにも関わらずすぐに退学を突きつけられ不満のようでした。しかし相澤先生は生徒たちに向かって「理不尽を覆していくのがヒーロー」という焦凍くんにとっては今更で耳タコな事を言っています。焦凍くんは相澤先生の言葉に不満を感じました。よって焦凍くんはそれを伝えることにします。

 

「はい、先生」

 

「……轟か、なんだ?」

 

「最下位なんて言わず、半分くらい除籍にしましょう」

 

焦凍くんの発言を受けて、クラスメイトたちは驚きと理解できないという表情を浮かべています。もちろん担任である相澤先生も同じでした。ちなみに建物の影からこそっと様子を見ていたオールマイトも同じく驚愕しています。

 

オールマイトからすれば、自身の後継者と言える少年が心配だったというのが少し、焦凍くんがやらかさないかという不安が大半だったため様子を伺っていたのですが、まさかそんな提案が出るとは思いもしませんでした。

 

しかしオールマイトの不安など知った事ではない焦凍くんはしっかりと理由も説明していきます。昨今のヒーローはヒーローとは名ばかりの役立たずしかいないとエンデヴァーが愚痴っていた事や、特定条件下でしか活躍できないヒーローなどヒーローである必要はないという事でした。ちなみにそれらは建前で本心は「相澤先生の理不尽は甘すぎるからバレないようにフォローして手伝ってあげよう」という善意からなのですが、そんな事は相澤先生やオールマイトにとって余計なお世話なのは言うまでもありません。

 

最終的には「入学だけさせて初日に半分に減らすのは合理的ではない」という相澤先生によって焦凍くんの提案はボツになりました。

 

体力測定が終わり結局誰も除籍にならずに済んだのですが、クラスメイトたちは半分を除籍にするという提案をした焦凍くんに非難轟々です。一部気にしていない生徒もいましたが、難関である雄英高校の入試試験を突破してやってきた生徒からすればたまったものではなかったのでしょう。

 

とはいえ不満だったのは焦凍くんも同じなのです。実は焦凍くんは入学式があった場合、後方から生徒を巻き込んでメドローアを放つ予定でした。それをプロヒーローたちがどうやって防ぎ生徒を守るのか見てみたかったため期待していたのです。もしやっていたら稀代のヴィラン発生の瞬間だったことでしょう。人知れず雄英高校を守っていた相澤先生はまさにヒーローの鏡なのかもしれません。

 

その後オールマイトの授業などもありましたが、焦凍くんにとって実のある内容とは言えませんでした。対オールマイト用の必殺技であるメドローアをヒーローの卵である生徒たちに使うわけにはいかないのですが、既に炎も氷も鍛え上げている焦凍くんには生徒など物の数ではありません。核を持っているという設定だったので、核をとりあえず消し飛ばそうとか考えていましたが、嫌な予感のしたオールマイトから使用禁止を言い渡されてしまったので普通にやりました。

 

仕方ないので授業が終わりかけのタイミングでオールマイトに「必殺技のバリエーションが増えたから相手をしてほしい」と伝えたのですが、オールマイトは怪我をして治療に行った緑谷という生徒の様子を見るからと帰って行ってしまいます。焦凍くんの中で勝手に怪我をしてオールマイトとの対戦の邪魔となった原因の緑谷という生徒に対する好感度が下がりました。

 

 

そんな授業も終わり、クラス委員長を決めるなどといったイベントもありましたが、焦凍くんが求めるのは『オールマイトを倒した』という称号だけなので参加していません。協調性皆無の焦凍くんにとってはどうでもいい事なのでした。本当はエンデヴァーからは『オールマイトを超えてNo.1ヒーローになれ』という意味で言われていたはずなのですが、エンデヴァーの言葉が悪かったので仕方ありません。曲解せずに素直に受け取るところが焦凍くんの美点なのでした。

 

お昼時にセキュリティが破られ報道陣が侵入してくるというプチイベントもありましたが、焦凍くんは「やっぱりか…」という気持ちでいっぱいでした。やはりオールマイトに止められても気にせずにセキュリティチェックをしておけば良かったというのが焦凍くんの感想でした。

 

……

………

 

本日の授業はウソのなんとかルームというところに行って行うということで、焦凍くんもみんなと同じくバスに乗って移動していきます。着いた先では何やら宇宙服を着た人が説明していましたが、焦凍くんが気になるのはその後ろのほうで発生している黒いモヤモヤでした。ワーキャーしている内に別の場所へと移動していた焦凍くん。目の前にいたヴィランをさっさと氷漬けにして親玉のところへ戻ります。一緒にクラスメイトも凍らせた気がしないでもありませんが、見たところ何もいないのだからきっと問題ないのでしょう。

 

元の場所へと戻ると、相澤先生が脳みそ剥き出しのヴィランと戦ってボロボロにされていました。ヒーロー=オールマイトやエンデヴァーという焦凍くんは、同じくヒーローである相澤先生がボロボロにやられているのを見て、つまりオールマイトたちでも危険な相手と認識し本気でやることを決めて相澤先生を庇う位置へと移動しました。

 

「っ…轟!逃げろっ!」

 

突然現れた生徒に対し、自身は血まみれになりながら警告する相澤先生。彼は入試の巨大ロボを倒した姿を見ていますが、あれは溜めを必要とする上に相手を殺しかねないため、このままでは自身の二の舞になってしまうと危惧していました。

 

「へぇ…脳無、まずはプロヒーローの目の前でそのガキを殺れ」

 

親玉っぽい事を言っている手がたくさんあるヴィランの命令で、脳みそヴィランが襲いかかってきました。しかしヴィランたちも、相澤先生も知らなかったのです。焦凍くんが対オールマイトのために磨き上げてきた必殺技にバリエーションが増えている事を……焦凍くんが脳みそヴィランに向かって手を向けたと思ったら、ピカッと光って脳みそヴィランは消えていました。

 

これこそが対オールマイト用の必殺技メドローアのバリエーションであるメドローア(掌)です。至近距離にしか効果はありませんが、ビームとして飛ばすのではなく照射することで一瞬にしてその範囲を消滅させるという技なのでした。接近戦を強いられたり、溜めの必要なメドローアではオールマイトやエンデヴァーに勝てない焦凍くんが編み出した近接技だったのです。

 

「「「…………」」」

 

ヴィラン(手)もヴィラン(モヤ)も相澤先生もその様子に目を見開き、その結末に声を出すこともできませんでした。ヴィラン(手)は突然消えた脳みそヴィランを何度も呼び、与えられた個性やら叫んでいますが、ショック吸収だろうと超再生だろうと人造人間だろうと焦凍くんの必殺技の前では関係がありません。

 

そのまま騒がしいヴィラン(手)を大人しくさせようと焦凍くんが掌をかざしたところ、ヴィランたちは慌てて逃げていきました。ヴィランたちが去っていったので相澤先生を手当をしていると、相澤先生がヴィランであろうと殺すのはダメだとお説教が始まりました。焦凍くんはアレ(脳みそ)はヴィラン(手)の個性だから大丈夫と言い訳しましたがもちろん通じません。しかし博学な焦凍くんは次の建前(言い訳)を用意していました。

 

「先生、アレはヴィランの言う事が本当なら人造人間ということになります。そして人造人間に人権はありません。刑罰があってもせいぜいペットと同じで器物損壊程度でしょう。ついでに証拠もありません。だから問題ありませんよ?」

 

「それを決めるのはお前じゃねぇ……まさか本当に倫理の授業が必要になるとは思わなかった」

 

もし焦凍くんがあの脳みそヴィランを倒していなかったらどれだけ被害を被っていたか…という事もあるにはあるのですが、まさか一瞬にして自身が敵わなかった相手を消滅させる技を持っているとは…とか、相澤先生もあまりの出来事に頭が痛くなってきました。

 

「先生、プルス・ウルトラの精神ですよ。乗り越えていきましょう」

 

「お前が言うな」

 

ヴィランに負けた事を悔いていると思ったので励ました焦凍くんですが、相澤先生には伝わっていませんでした。ちなみに焦凍くんはお前が言うなと言われ「まだまだお前だって乗り越えていないだろ?」という意味として受け取っています。そのため、更に必殺技に磨きをかけようと明後日の方向に決意していました。

 

その頃には生徒たちも集まり、オールマイトもやってきて全員無事という事がわかりました。重症だったのは先生2名だけだったので、これには焦凍くんも安心したような不満なようなといった感じです。クラスメイトたちには脳みそヴィランを消滅させたところを見られていたようで、興味津々に聞かれたり、怖がられたり、睨まれたりと面倒だった焦凍くん。こんなのでヒーローになれるのかこいつら……と教師陣が聞けば「お前が言うな」の大合唱のような事を考えていました。

 

その後学校に戻った焦凍くんは、他の生徒たちが普通に授業を受けているのに対し、なぜか1人別室で道徳の授業を受けることになってしまいました。しかし焦凍くんは成績が良い上に、一般人に対して個性を使用してはいけない等はきちんと理解しているため意味はありません。

 

幼少の頃からヒーローになるために受けてきた理不尽は、しっかりと焦凍くんの中に根付いています。そのため先生たちから「ヒーローが味方に対して攻撃してはいけない」などと諭されようと、それなら攻撃が来たら避けろよという認識です。逆に先生に向かって「ヴィランが目の前で堂々と個性を説明してから攻撃してきてくれるのか?ヒーローなんだったら何時如何なるときでも警戒を怠るべきじゃないだろ。ヒーローが甘えんな」と説教しだす始末でした。

 

ちなみにヴィランと会敵した場合どうするのか先生が聞いてみると、焦凍くんの答えは「問答無用で氷漬け」との事です。人質がいた場合は?と聞かれても「纏めて氷漬けにしてから人質だけ溶かす」でした。ここまで聞いて頭が痛くなってきた先生たちの気持ちは一致しました。すなわちエンデヴァーに対する罵詈雑言です。これについてはエンデヴァーは冤罪なのですが、先生たちには知るすべはありません。

 

 

雄英高校の学生としていろいろと説明を受けた焦凍くんでしたが、入学式の初日から『自由』という校風のもとで好きにやっている相澤先生を見ているので聞き流していました。

 

本来ならば何かしらの処分になってもおかしくないほどの問題児思考なのですが、こいつをこのまま外に出すほうが危険という判断の結果、焦凍くんを真っ当な人間にするという教師冥利に尽きる仕事が1年担当の各教師に与えられる事となります。とは言っても今のところ焦凍くんが起こした問題児行動は『オールマイト(No.1ヒーロー)に攻撃』したり、『脳みそヴィランを消滅』させたりした程度なので大したことではありません。

 

焦凍くんと話した先生たちは、相澤先生が担任だし任せようという意見で一致し道徳の個人授業は終了となりました。

 

 

それからは特に何かあるということもなく、ただの学校生活だった焦凍くん。教室に相澤先生がやってきて言うには、もうすぐ体育祭があるということでした。クラスメイトたちは「学校っぽいのキターー」と喜んでいます。

 

 

 

 

なお、この体育祭に焦凍くんを参加させるのかで職員会議があった事を生徒たちは知る由もないのでした。

 

 

 

 

 

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