ポジティブ焦凍くん   作:フレイザードさん

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林間合宿焦凍くん

 

 

ついに林間合宿が始まり、どこぞのプロヒーローが所有するという山に放り込まれたクラスメイト一同。そして特訓しながらも空いた時間を使い作文を書き続ける焦凍くん。

 

しかし焦凍くんとしては1000枚も使って反省するような事が思い浮かばないためまったく進みません。途中からオールマイトへの期待の言葉や義手へ搭載する機能案など、義手を付けるかも決まっていないのにたくさんのアイデアをつらつらと書き連ねていました。

 

ちなみに緑谷くんの方はというと今もまだ憔悴しきっており、相変わらずこのままどこかに飛び込んで自殺しかねないような雰囲気を漂わせています。ここまでの間にオールマイト含め教師たちがメンタルケアで色々と頑張っていたのですが、それで気持ちを切り替えられる事もなくクラスメイトに心配されても空元気で返す事もできないという状態でした。

 

当のオールマイトは庇った事を後悔しているわけでもないのですが、緑谷くんにとってはそんな事は慰めにもならないのです。もちろんそんな状況ですので特訓にも身が入らず、怒られても立て直す事もできず、悪循環に陥ってしまっている緑谷くん。こればかりは時間が解決してくれる事を祈るばかりでしょう。

 

緑谷くんには現在進行系でオールマイトの強化案を考えている焦凍くんを見習ってほしいものです。

 

「緑谷、お前は外れてろ」

 

ついに見かねた相澤先生から緑谷くんの訓練中止が言い渡されました。小さな身体が更に小さく見えるほど落ち込んでいる様子にクラスメイトたちも心配していますが、周りを見る余裕のない緑谷くんがそれに気づく事はありません。

 

「轟、お前も考え事ばかりしてないで目の前に集中しろ」

 

焦凍くんも考え事をしていたのを見破られてしまい注意されてしまいますが、原因は反省文1000枚なのですから多少大目に見てほしいなどと思っていました。もちろんそんな事を言葉には出しません。言ってしまったらまた反省文を増やされかねないと優秀な焦凍くんは頭の中で考えたからです。

 

「轟と爆豪、そして緑谷は特別補習の時間だ」

 

林間合宿も予定通り進んでいきレクリエーションイベントとして肝試しをするそうなのですが、焦凍くんと爆豪くんと緑谷くんは特別補習に呼ばれてしまいました。もともとの予定では緑谷くんと爆豪くんには『ヒーローとしての協調性』や『力を合わせる事の大切さ』などを教えるつもりだったのですが、緑谷くんがそれどころではありません。

 

最低限の人員で合宿をする場所も秘密にしていたため、本当ならば3人纏めて相澤先生が教えるつもりだったのですが、合宿直前というタイミングでものすごいトラブルが発生してしまったため急遽1人1人順番に対応する事になりました。

 

3人を別々の部屋へと入れ、相澤先生はまず緑谷くんのいる部屋へと入っていきます。相澤先生としてもメンタル的にやられている緑谷くんは最初にどうにかしておきたいのでしょう。その間爆豪くんは『戦隊モノ』などの特撮や『ガキ大将が更生していくアニメ』などを見せられています。これでも見て自分のやっていることを省みろという事なのでしょう。ちなみにそれらは雄英高校の教師陣が選びだした珠玉の作品たちです。

 

そして焦凍くんはひたすら原稿用紙と戦っています。職場体験の時に先生たちに渡された本を持参していたので、感想文と反省文とオールマイト強化案をミックスさせた『オールマイト強化反省感想文』を書き続けています。とても合理的で効率の良い判断だと焦凍くん自身は思っています。

 

 

しばらくすると相澤先生が部屋に入ってきて、焦った様子で「ここから絶対に出るな」と言い残してすぐに出ていってしまい、その後しばらくしてから隣の部屋からボンボンと爆発音が聞こえてきました。きっと戦隊モノの映像を見ていた爆豪くんが、自分もその作品の中のヒーローにでもなったつもりでテレビの中の怪人に向かって個性でも使ったのでしょう。

 

少々うるさかったのですが焦凍くんが気にせず原稿用紙を埋める作業をしていたところ、突然部屋の中に黒いモヤモヤが現れました。そして出てきたのはいつぞや見かけたヴィラン(モヤ)だったのです。

 

「突然の来訪失礼致します。あなたにヴィラン連合に参加していただきたくお願いに参りました」

 

随分と礼儀正しいヴィラン(モヤ)が言うには焦凍くんにヴィラン連合に入ってほしいとの事です。自身に備わっている個性を制限され、一部がヒーローという名のもと大手を振って個性を使用している歪んだ社会を正したい…ヴィラン(モヤ)はそう焦凍くんに訴えかけました。

 

そしてできれば話だけでも聞いてもらいたい。既にお友達の爆豪くんは興味を持ちこちらに来てくれている、との事です。ヒーローを目指している爆豪くんがそんな話の乗るわけもないのですが、既に爆豪くんの拉致を達成しているヴィラン(モヤ)は焦凍くんを揺さぶるために自主的に話を聞きたいと連合側に来たと伝えます。

 

ヴィラン連合側も必死です。ステインを取り込んで利用するはずがうまくいかず、逆に次代のヒーローは盤石だと言わんばかりの結果となっているのですから焦りは増すばかり……そこで目を付けたのがステインを倒した次代のヒーロー候補の焦凍くんと、見るからに気性の荒い爆豪くんだったのです。雄英高校の体育祭でも1位と2位ですし順当な評価でしょう。まだ高校1年生なので意識を変えることができれば強力な戦力足りうると考えるのも当然です。

 

しかしそこは正義の炎を胸に宿す焦凍くん。オールマイトを倒すのは目標ではありますが、その後にNo.1ヒーローにならなくてはいけないのです。決してオールマイトを倒してNo.1ヴィランになりたいわけではないのでその話を受ける気はまったくありません。

 

ちなみにもし爆豪くんがヴィランとして現れたら……その時は容赦なく、メドローアを使用することも厭わない覚悟が焦凍くんにはあります。ヴィランとして社会に混乱を招くのであれば、ヒーローとしてそれに応えようという思いです。焦凍くんの中にはまだ緑谷くんに当てられた青春の熱でも残っているのでしょうか。

 

「それは残念です。本当は強引にでも来て頂きたいところなのですが、下手な事をして脳無の二の舞いになるわけにもいきませんし……ここらで我々は引き上げさせて頂きますね」

 

「お前たちに言っておくが、後で爆豪にも伝えておけ。お前たちのその道の先には……必ずオレがいるぞ」

 

「…………肝に銘じておきましょう」

 

焦凍くんの言葉を聞き、ヴィラン(モヤ)は去っていきました。オールマイトがよく「私がきた!」と決め台詞を言っているのを焦凍くんは羨ましく思っていたのです。しかし同じでは芸がないため、焦凍くんはヴィランの行き着く先には自分がいるといった宣言をすることで、どんな凶悪事件でも最後には必ず自分が解決してやるという意思を宣言したのです。

 

ちなみにヴィラン(モヤ)は焦凍くんの言葉を聞いて「お前たちがオレに出会った時が死ぬ時だ」という意味だと受け取りました。脳無を消滅させステインの両手を奪っている焦凍くんだけに説得力のある言葉です。焦凍くんの情報はもちろん入手してあるのですが、半冷半燃という個性でなぜ脳無が一瞬にして消え去ったのか未だにわからないため恐怖しかありません。

 

そしてヴィラン(モヤ)の言葉をそのまま受け取っている焦凍くんは「こんな歪んだ社会は正してやるァ!」などと言いながら爆豪くんが敵として再会しない事を祈りました。

 

珍しい個性なんだな……などと思いながらヴィラン(モヤ)が消えたところを確認していた焦凍くんでしたが、珍しいのは個性だけではありません。今までエンデヴァーの事務所での職場体験でもそうでしたが、ヴィランは基本的に突発的な犯行が多く組織として動いているなんて聞いたこともありませんでした。

 

しかし考えてみればヒーローは徒党を組んでいるのにヴィランは組まないなんて有り得ません。

 

連合を称しているわけですから少なくても数百人、多ければ数万人くらいいてもおかしくないと焦凍くんは考えました。焦凍くんの中でヴィラン連合の規模が爆発的な数字になっていると知れば、ヴィラン(手)やヴィラン(モヤ)はその期待に応えるべくスカウトに奔走するのでしょうか。

 

もし全面対決になった時のため、自分対数万のヴィラン連合と戦う時のために新たな戦術を考えねば…と、その時はなぜか単身で戦うつもりの焦凍くん。きっとオールマイトがそんなヴィラン連合と戦う事になっても単身で戦って勝つだろうという考えから、自分もそれくらいできなければという思いなのです。

 

きっとオールマイトもこれを聞けば引きつりながらも親指を立てて「当然さ!」と言ってくれる事でしょう。英雄に課せられる期待という名のハードルは高いのです。

 

 

……

………

 

 

焦凍くんが後から聞いた話では、ヴィラン連合は肝試し中の生徒たちにも襲いかかっていたようでした。その結果プロヒーローや生徒たちは意識不明などを含め負傷者多数だった上に、部屋にいたはずの爆豪くんが行方不明という事です。隣室にいたため相澤先生から「何か知らないか?」と聞かれヴィラン(モヤ)が勧誘に来た事を答えた焦凍くん。この結果爆豪くんはヴィランに拉致されたという事が確定しました。

 

焦凍くんとしては爆豪くんが『歪んだ社会を正す』という思想に興味を持って自分から向かった事を言っても良かったのですが、もし考えが合わなくて戻ってきたときに村八分にならないようにそこは黙っていてあげる事にしたのです。「やっぱりヒーローを目指すからまたよろしくな!」となった時にヴィランの思想に揺れるような子というレッテルが貼られないようにとの、焦凍くんのちょっとした気遣いなのでした。

 

 

 

後味の悪いような終わり方で林間合宿から戻ってきたクラスメイトたち。焦凍くんに至っては訓練して作文していたら終わっていました。クラスでは爆豪くんを心配する声や、マスコミが何やら表で今回の件について聞き回っているなど話しているのが聞こえてきます。

 

ちなみに緑谷くんはまだ落ち込んでいるようでした。焦凍くんが少し話してかけてみたところ、隣の部屋にいたのに…僕が気づいていれば…オールマイトの腕も…などと自分で自分を追い込んでいたようでしたので、きっとこの自責の念という重圧をプルス・ウルトラの精神で乗り越えた時にはちょっとやそっとでは動じることのない新たな緑谷くんが誕生していることでしょう。

 

 

マスコミの報道は加熱の一途を辿っており、雄英高校の警備体制の甘さなどを問うニュースが何度も放送されています。しかしその裏では秘密裏にヒーローだけでなく警察なども含め必死に爆豪くんの捜索が行われておりました。

 

クラスメイトたちは入院した生徒のお見舞いに行ったりしており、その中で八百万さんが会敵したヴィランに発信機を取り付ける事に成功したという話が出てきます。これによってヴィランたちの居場所がわかり爆豪くんを助け出す事ができるという事なのですが、ここで助けに行くべきだと言う者と危険だから情報を伝えプロに任せるべきと言う者で分かれました。

 

そんな事は知らない焦凍くん。お見舞いに行っていないのは先生から学校のほうに来るように言われたからなのですが、どうも林間合宿あたりからクラスメイトと温度差を感じるのです。共に戦った者たちと部屋で作文を書いていただけの焦凍くんなので違って当然なのと、純粋に拐われた爆豪くんを助けようとするクラスメイトと自分から話を聞きに行ったと思っている焦凍くんなので爆豪くんに対する前提が違っているのです。

 

そんな中、職員室へと呼び出された焦凍くん。相澤先生から作文の催促かと思っていたところ、そこにいたのはオールマイトでした。

 

そしてオールマイトは焦凍くんが来たのを見ると、自分の向かい側の椅子に座るように勧めます。その表情からは葛藤が見え、何かを悩んで悩み抜いた結果を伝えたいのでしょう。

 

現在雄英高校では入手した情報をもとにある計画を立てていました。オールマイトは当然の事として、多数のヒーローたちにも参加してもらう計画です。万全の体制で望みたい…しかし生徒を参加させるのは…と未だに悩んでいるのですが、それでも彼なら…と、決めた事を焦凍くんに伝えます。

 

 

 

 

「轟少年、すまないが君の力を貸してほしい」

 

 

 

 

 

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