昏き天使と仮面ライダー   作:雑草弁士

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003話・悪の組織、発足

 ある日全世界が、一斉に電波ジャックを受けた。衛星軌道上からの映像が、全世界のテレビ画面やモニターに映し出される。そしてその時、衛星軌道上には小惑星の様な宇宙要塞の様な塊が存在していた。

 そして塊の中央部、まるで醜い顔の様な造形になっている部分の上に、1体の影が出現する。更に電波に乗って、声が響いた。

 

『ヒトよ……。見えて……。いる……か』

 

『ヒトよ……。聞こえている……か』

 

『神は……。嘆き……。悲しんでいる……』

 

『愛さなければよかった……とな』

 

『そうして流した、黒い涙の中から、俺たちは来た……』

 

『俺たちは『BADAN』。神に愛されし者』

 

『ヒトよ……。スデに手遅れだ。キサマらに()()はない』

 

 そしてテレビ画面は、砂嵐の様なノイズで満たされる。しばらくして、通常のテレビ放送が再開されるが、それらは即座に今しがたの電波ジャックについての臨時ニュースに切り替わった。

 

 溜息を吐いて、一人の男がテレビ画面を消す。彼は肩を落として、残念そうに言った。

 

「クソ、とうとうBADANが動き出したか……」

 

「これまでの組織の情報からすると、BADANの目論見も世界征服なんでしょうかね。それにしては、ちょっとばかり不穏な台詞がありましたけども。未来は無い、とかどうとか」

 

 一緒にテレビを観ていたもう一人も、首を左右に振って言った。最初の一人が、舌打ちして言葉を吐き出す。

 

「ち、せめてあと1年とは言わん。半年あれば……」

 

()()のスカウトと、ソレに対する()()も、ある程度間に合ったかも知れませんが……。繰り言を言っても仕方ないでしょう。やれる事をやるしか、ありません」

 

 そこへ背後の闇の中から、声が響く。2人の男ははっとした顔になった。

 

『その通りだ。初手は奴ら(BADAN)に取られた。だが何時までもやられっぱなしでは居られん』

 

「「だ、大導師!」」

 

『戦力の整備を急ぐぞ。遅れれば、遅れただけ被害が広がる。……優しい子供たちの、笑顔が奪われるんだ』

 

「「はっ! 了解です!」」

 

 闇の中に、カメラアイの輝きが灯る。黒い装甲、黒い翼、そして仮面。そこに立っていたのは、昏き天使(サンダルフォン)だった。彼は語る。

 

(オレ)たちは正義じゃない。だからこそ、出来る事がある。外道の知識、外道の技を用いて、毒を以て毒を制するぞ。悪を以て、悪を叩くぞ』

 

「「我らネオ・ブラックロッジ! 大導師サンダルフォンと共に!!」」

 

 そして闇の中に、雄叫びが上がる。それはこれから始まるBADANの攻勢に対する、抵抗の叫びだった。

 

 

 

 

 

 

 その後BADANは、米国はワシントン、ノーラッド北米防空司令部を皮切りに、世界各国の空軍基地を襲撃する。レーダーに映らないUFOを母艦として、サイボーグ部隊コマンドロイドの集団による奇襲攻撃を受けては、さしもの軍隊と言えど壊滅は(まぬが)れなかった。

 米国内の空軍基地を襲撃していたBADANの部隊は、それが完了するとそのまま東南アジアのガモン共和国へと向かう。ガモンの様な小国に対し、BADANはいったい何の目的があって攻撃するのかは、不明である。

 

 そしてガモン共和国のジャングルで、2体の異形が向かい合っていた。片方は米国空軍基地を襲撃したBADAN部隊の指揮官格であった、大砲の付いたトラ型改造人間……タイガーロイドだ。もう一方は、かつて悪の秘密結社ショッカーが創り上げたが脳改造直前で脱出し、正義のために戦い続けている改造人間、仮面ライダー2号一文字隼人である。

 仮面ライダー2号は、その背後に避難民の子供たちと2人の日本人女医を庇っている。それに向かい、タイガーロイドは自身の身体に埋め込まれた砲門より、多数の……無数の砲火を送り込んだ。

 だが仮面ライダー2号はその砲火を、全て自らの身体で受け止める。一発たりとて背後の子供たちの方へ、通したりしない。彼は呟く様に言う。

 

「……やっぱ、屁でもねえ」

 

「やせがまん……か。真実を見ない理想主義者、クソみたいな美学だな。ナルシストめ、ヘドが出るぜ」

 

 そしてタイガーロイドは、仮面ライダー2号を嘲笑する。その背中に背負われた、巨大な主砲の砲口に光が灯った。

 

「超高温のエネルギー弾だ。こいつは俺もまだためした事がねえ。楽しみだぜ……。

 無論、俺は撃った瞬間に離脱させてもらうが、キサマは……どうする?」

 

 仮面ライダー2号は、逃げられない。彼の能力(チカラ)をもってすれば、躱せば躱せる。だが躱したら、背後の子供たちと女医2人は消し飛ばされる。骨も残らないだろう。

 

 けれど、子供たちが口を開く。今の今まで、ただ恐怖に怯えて泣いていただけの子供たちが、涙ぐみながらも決死の面持ちで言葉を吐き出す。

 

「まみセンセエ……。走るんだ。泣いてるだけじゃ、死んじゃうよ」

 

 その言葉は、彼らを庇う仮面ライダー2号の背中にも届いた。彼は(おもむろ)に語る。その声音には、微かに、だが確かに、歓喜の響きがあった。

 

「……そうだな。お前たちは、もう足手まといなんかじゃないよな。先生を頼むぜ」

 

ドルウウゥゥン!!

 

 新型サイクロン2台が唸りを上げる。片方は仮面ライダー2号のバイクだ。もう片方は、近場で戦っている仮面ライダー1号のバイクだった。2台のサイクロンは、2人の日本人女医と避難民の子供たちを乗せて疾走する。

 だがタイガーロイドの射程距離からは、逃れられない。タイガーロイドは嘲笑った。

 

「いい話だ、泣かせてもらったぜ!! どいつもこいつも美談とともに、消し飛び……」

 

『そうだな。(オレ)も泣かせてもらった。いい話だ』

 

「!?」

 

 唐突に響いた言葉に、タイガーロイドは主砲の向きを変え、そちらへ発射しようとする。だが間に合わない。

 

「グアァ!?」

 

 強烈な拳の一撃が、タイガーロイドを襲う。かろうじて左腕で受けたタイガーロイドだったが、代償に左腕を半ばから千切り取られる。タイガーロイドの主砲が、光弾を明後日の方向にぶっ放した。そちらの森が、大爆発を起こして消滅する。

 そして仮面ライダー2号が飛び込んできた。彼は叫ぶ。

 

「ライダアアアァァァ……パアァンチ!!」

 

「チィッ!!」

 

 タイガーロイドは、今度は右腕を犠牲にしてライダーパンチをやり過ごす。タイガーロイドは胴体に搭載された砲を連射しつつ、必死で離脱して行った。

 

 そして仮面ライダー2号は、助けに入ったもう1体の異形に向き合う。

 

「お前は……。本郷が言っていた……」

 

『どう言われていたのかは、少し気になるな』

 

「たしか、サンダルフォン……だったか?」

 

 そして漆黒の天使、サンダルフォンは仮面ライダー2号に頷きを返した。仮面ライダー2号は、更に問いを重ねようとした。

 

「何故お前は……」

 

『いい子たちだな。あんないい子たちが、子供たちが笑顔でいられないなんて、間違っている。そうは思わないか』

 

「え、あ、お、おう。そりゃ当然だろ」

 

 サンダルフォンの仮面の、カメラアイが光を放つ。それは涙の様にも見えたし、同時に激しい怒りの迸りにも見えた。

 

(オレ)は正義の味方では無い。(オレ)は『悪』だ。子供たちの笑顔のためならば、手段は選ばん。『悪』の力もて、『悪』を叩く。俺はそのために……ここに来た』

 

「ちょ……。あ、あんまりやり過ぎるなよ? その結果、子供らが泣く様になっちゃ、本末転倒だぜ?」

 

『無論だ。……む?』

 

「……!」

 

 その瞬間、この場から僅かばかり離れた場所から、竜巻が吹き上がる。その頂点には赤と銀のカラーリングをした、BADANの戦闘員(コマンドロイド)に酷似した頭部を持った、1体の改造人間が存在した。仮面ライダー1号のライダーきりもみシュートにより、天高く放り上げられたのだ。

 

 

 

 

 

 

 仮面ライダー1号と2号は追い詰められていた。敵の指揮官である改造人間ZX(ゼクロス)を、きりもみシュートで飛ばしてそれを狙い、仮面ライダー1号と2号の合わせ技であるライダーダブルキックを見舞ったまでは良かった。

 だが窮地に陥ったZX(ゼクロス)を庇い、両腕を失ったタイガーロイドが身代わりとなってライダーダブルキックを受けたのだ。そしてタイガーロイドの献身を見たZX(ゼクロス)は、激高する。彼は砕けた脚でZX(ゼクロス)キックを放った。

 そして砕けた脚も、千切れた左腕も、瞬時に再生する。再生した脚で放たれたキックは、仮面ライダー1号と2号を打ち据えた。

 

 凄まじいダメージにより、動きの鈍った仮面ライダー1号と2号の前に、更に1人の男が現れる。その顔は、かつてショッカーの最高幹部であった地獄大使に瓜二つ。その男はガモン、暗闇大使と名乗る。

 そして暗闇大使は、突如として身体(ボディ)との拒絶反応により絶叫して気を失ったZX(ゼクロス)を連れて、立ち去ろうとした。しかし空中に浮遊する暗闇大使は、仮面ライダー1号と2号に視線を向けると、にやりと笑顔を浮かべて言う。

 

「死ぬがいい! 二匹の虫けら(ワーム)ども!」

 

「ヌ……ウ!」

 

「う……。動けん……」

 

 暗闇大使の身体から、すさまじい力が放たれ、仮面ライダー1号と2号の存在を打ち消そうと迫り来る。だが次の瞬間、その力が打ち消され、かき消えた。

 

「!!」

 

「「トォ!! ライダー……ジャンプ!!」」

 

 その一瞬を逃さず、仮面ライダー1号と2号は跳躍してその場を逃れる。そして中空で暗闇大使は、漆黒の天使……サンダルフォンと向かい合っていた。暗闇大使は(あざけ)る様な表情で語る。

 

「ほう……? 虫けら(ワーム)がもう1匹、か。仮面ライダーよ、キサマ……」

 

『違う』

 

「何?」

 

 サンダルフォンは、(あざけ)りの言葉を返す。

 

『無知蒙昧の輩は、度し難い物だな。(オレ)は仮面ライダーではない。仮面ライダーになるべき人間でもない。

 (オレ)の名は昏き天使(サンダルフォン)。サンダルフォンだ』

 

「……貴様、何者だ」

 

BADAN(きさまら)の敵だ』

 

「ち! コマンドロイドども!」

 

 自らの念力じみた力が、目の前の存在(サンダルフォン)に封じられている事を、暗闇大使は理解する。故に彼は雑兵(コマンドロイド)たちに命を下し、サンダルフォンを攻撃させた。

 

(フン)! ……()ッ!! 怒雲(ヌウン)!!』

 

 しかしコマンドロイドでは、サンダルフォンに触れる事さえも叶わない。次々にコマンドロイドは粉々に砕け散って爆散して行く。

 しかし数瞬の時間は稼げた。サンダルフォンがコマンドロイドたちを片付け終わる頃合いには、既に暗闇大使の姿は無かったのだ。更に言うならば、気絶したZX(ゼクロス)と大破したタイガーロイドもまた、撤退する残りのコマンドロイドに連れられて空の彼方に去っていくところであった。

 

『フン……。まあいい。こちらも目的は、大方達した』

 

「お前が本郷さんが言っていた、サンダルフォンか。目的とは何だ?」

 

 地上より声が掛かる。そこには赤と白と緑で彩られた、1人の改造人間が居た。サンダルフォンはゆっくりと地上へ降りる。

 

『……お前も仮面ライダー、か。その特徴と報告書の記述から判断するに、3号ライダー……。仮面ライダーV3か。

 いいだろう、教えてやる。付いてこい』

 

「……」

 

 仮面ライダーV3は、歩き出したサンダルフォンの後を無言で追った。

 

 

 

 

 

 

 ジャングルの奥深く、その地下深くにBADANの秘密基地は存在した。そこでは多数の機械兵士(ドロイド)が、忙しく動き回って働いている。床にはコマンドロイドの残骸が転がっていた。

 仮面ライダーV3……今は変身を解いた風見志郎が、眉を(しか)める。合流してきた本郷猛と一文字隼人もまた、その表情を引き締めた。本郷が、先頭に立って歩いているサンダルフォンに尋ねる。

 

「リュー……、いやサンダルフォン。ここは何なんだ?」

 

『そちらの一文字隼人……仮面ライダー2号が倒したクモロイド、グイン将軍の建設した、コマンドロイド製造プラントだ。奴らがこの国を襲撃したのは、そこで再生処置を受けていたあの男、暗闇大使ガモンを回収すると共に、この基地を証拠隠滅のために消去するのが目的だった様だな』

 

「なあ、この兵隊どもは何なんだよ?」

 

 一文字もまた、問いを投げかける。サンダルフォンは答えた。

 

『こいつらは、BADANに対抗するために創った俺の組織……ネオ・ブラックロッジの戦闘員だ。基本的にロボット……人工知能(AI)で動く完全な機械兵士が主力になっている』

 

「……基本的に、って事はよ。『ソレ(AI)以外』も居るのか?」

 

『指揮官格は、流石に人工知能(AI)では頼りないのでな。改造人間を充当してある』

 

 周囲の空気が凍った。本郷、一文字、風見が冷たい視線でサンダルフォンの後姿を見遣る。一文字が続けて問うた。

 

「まさか、脳改造とか」

 

『しているぞ? 当然だろう』

 

「……!!」

 

 一文字の拳が唸った。だがその拳は、サンダルフォンに命中する前に、やんわりと男の掌に受け止められる。本郷、一文字、風見の3人とサンダルフォンの間に、いつの間にか2人の男が出現していた。1人は伊達眼鏡をかけた、細身の白人男性。1人は筋骨隆々とした東洋人の男。一文字の拳を止めたのは、細身の眼鏡の方だった。

 

「はい、そこまで」

 

「大導師、誤解を受けそうな台詞をわざわざ選んで言わなくてもいいでしょうに」

 

「なんだ、てめえらは! オイ、サンダルフォンだったな! さっき言ったろうが!! そこまでやっちまったら、本末転倒だ!! 子供が笑えない世の中は間違ってるって、ありゃ嘘だったのか!!」

 

 咆える一文字に、眼鏡の男は微笑んで言う。

 

「まあまあ、落ち着いてください。脳改造って言ったら切れたみたいですけど、脳改造の何が悪いんです?」

 

「て、てめえら!? そんなの決まって……」

 

「俺たちは、脳改造はされたが『洗脳』はされてないぞ。俺たちは、俺たちの『自由意志』で、大導師に従っているんだ」

 

 東洋人の台詞に、一文字と風見は目を丸くする。一方の本郷は、大きく溜息を吐いて言った。

 

「サンダルフォン、趣味が悪いな」

 

『……』

 

「まあまあ。こういう人なんですよ。自虐的で、偽悪的で、わたしたちも困っているんですがね。

 わたしたちに施された脳改造は、あくまで機械仕掛けの肉体を十全に制御(コントロール)するための物です。そうしないと、握手した時に相手の手首を握り潰したり、水道の蛇口をねじ切ったり……。あなた方にも、経験はあるんじゃないですか?」

 

 眼鏡の男は肩を竦めて言った。そして彼は、更に続ける。

 

「わたしはBADANが英国で人知れず行った作戦で、両脚と右腕を失いました。おかげで傷病除隊でしてね。残念な事に、当時英国には仮面ライダーは居りませんで。ああ、いえ、それを責めるつもりは無いです。とても手が足りないでしょうし。

 まあ、ですが……。大導師サンダルフォンは、そんなわたしにお誘いをかけてくれました。わたしの軍人としての能力が欲しい、と。正直、生身を捨てるのは悩まなかったと言ったら嘘になります。でも、新たな手足を得られると言う希望、BADANと戦えるという希望、それを前にしては些細な事でしたよ」

 

「俺は俺で、地元では警官だった。けれどBADAN連中の前では、鍛え上げた力も何の意味も無かった。命だけは助かったが……。脊髄(せきずい)やられて半身マヒだ。後はコイツと同じ様な経緯だな。大導師サンダルフォンには感謝しかねえよ。また、誰かのために働けるんだ。失った夢が、俺の手に戻って来たんだ」

 

 東洋人の男も、微笑んで語る。3人の仮面ライダーたちは、大きく息を吐いた。一文字が皮肉気に言葉を吐く。

 

「……お前ら、悪だ悪だって言う割にゃ、そこまで悪じゃねえんだな?」

 

「いえ、わたしたちは悪ですよ? と言いますか、悪『も』犯します。BADANと戦うためならば、ね」

 

「そうだな。機械兵士(ドロイド)量産するために、他人名義の土地や国有地の地下資源を勝手に根こそぎ採掘とかしてるしな」

 

「……それは、悪事だな」

 

 ここで先ほどから沈黙を守っていたサンダルフォンが、失笑して言葉を紡いだ。

 

『フッ、そうだな……。なんならBADANを倒した暁には、ひとつでかい悪事でもやってみるか。薬局の店先のカエルを、夜中にこっそり持って帰るとか、どうだ?』

 

「おま! それは許されざる悪だぞ!?」

 

 一文字が血相を変えて叫んだ。本郷と風見も、眼を見開く。

 

 ……そして一瞬後、空気が変わった。サンダルフォンが、憎悪をその言葉に乗せて吐き出す。

 

『おのれ……。BADANめ……。本郷さん、一文字、風見、そのデータディスクを持って、逃げろ』

 

「何!? どういう……。これは!?」

 

 駆け寄って来た機械兵士(ドロイド)の1体が、本郷に3枚のデータディスクを手渡す。本郷はそれを胸元のポケットに入れつつ訊ねた。

 

「サンダルフォン、これは!?」

 

『この秘密基地のメインコンピューターのデータバンクから、抜粋したデータのコピーだ。奴ら(BADAN)の目的は、世界征服なんかじゃない。その本当の目的が、そのデータの中にある。(オレ)たちも同じものを持っているから遠慮はするな。

 だが奴らめ、正、副、予備の3系統の基地自爆装置は解除してあったんだが、それとは別系統の時限式自爆装置が仕掛けてあった。機械兵士(ドロイド)から通信があったんだ。今からでは解除は間に合わん。総員、全力で脱出しろ!』

 

 その言葉を聞くや、本郷、一文字、風見は今来た道を逆走して走り出す。背後でサンダルフォンとその部下たちの声が聞こえた。

 

「!! 全兵員、および全機械兵士(ドロイド)は、作業を中断し脱出せよ! 繰り返す! 全兵員、および全機械兵士(ドロイド)は……」

 

「大導師! 我々も!」

 

『わかっている。最悪は機械兵士(ドロイド)の大半は見捨てても、改造人間や生身の人員は確実に脱出させろ』

 

「「了解!」」

 

 本郷、一文字、風見は必死に、一心不乱に駆けた。

 

 

 

 

 

 

 ジャングルを引き裂く様にして、直径1kmはあろうかと言う巨大なクレーターが口を開けていた。その傍らにジープを停めて、本郷、一文字、風見はBADANの基地が自爆したその跡地を、眉を(しか)めて見つめている。本郷が(おもむろ)に口を開いた。

 

「……BADANの目的は、地球全人類の抹殺……か。それは人類の命、魂そのものを何らかのエネルギー源に使うため……。それ以上の情報は、未だ解析中だが……」

 

「ちっ! 征服して支配するつもりなんざ、さらさら無かったってわけかよ!」

 

「……今思うに、これまでの組織の奴らの行いは、世界を征服するには微妙な点も多かった。だが、それも理解できると言う物か……」

 

 一文字と風見も、苛立たし気に言う。そしてしばし沈黙の後に、一文字が溜息混じりに呟いた。

 

「……奴ら、サンダルフォンと……あと名前も聞けなかったあいつら。生きてるかね」

 

「何、浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ、だ。彼らは『悪』だと言っていたからな。死にはしないさ」

 

 本郷の言葉に、一文字は小さく頷いた。




 グイン将軍の秘密基地、やはり最終的には爆破されてしまいました。しかしそれまでに、けっこうな調査をされております。色々と情報が手に入りました。

 そして大導師サンダルフォンの下、BADANと戦う魔術結社ネオ・ブラックロッジが結成されました。彼らの目的は、平和になった世の中で、薬局のカエルを夜中に持ち帰ったりする事です。え、何か違う?
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