TALES OF NEXUS~テイルズオブネクサス~   作:瑠璃。

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ep1「混乱に次ぐ混乱」

全ては神より授けられ、人はその恩寵を育てたに過ぎない。

平和も彼らによって与えられ、人はそれを守るのが責務なのだ。

だが与えてくれた神々に感謝をしなければならない。我ら人は罪を持つ。

だから我らの声で歌うのではなく、神が授けた恩寵で返す。

それがレムリア国最大の式典、天星式である。四年に一度、一人の

奏者が選ばれて奏者は音を奏でる。

 

「ほ、本当ですか!?」

 

自宅にいたノエル・ステラ・メビウス。彼女のもとにやって来たのはレムリア国軍の

軍人たちだ。式典奏者は重要な人間と言うこともあり、軍部で式典終了まで

留められる。

 

「えぇ。今すぐに身支度をしてください」

 

急な話だが、ノエルはせっせと支度をする。式典まで後一週間。荷物を

抱えて軍部拠点が併設されている城に向かった。軍の馬車に乗り込む。

馬車は真っ直ぐ城へ。窓の景色が次々と流れていく。式典奏者はどんな

奏者も憧れるが、中には黒い噂も聞く。式典後に奏者を見た者はいない。

帰って来て、すぐに事故で死ぬ。不穏な噂もあり、ごく一部では式典奏者は

呪われるとも言われる。奏者が弾くピアノに何かしら呪いが掛けられているのでは?

そう噂されていることもある。これらの噂の真偽は不明だ。

城に到着して鍛えられた兵士たちが荷物をせっせと部屋に運んでくれた。

 

「貴方の部屋の隣は軍隊長の自室でもありますので、決して騒がぬように」

「分かりました。気を付けます」

 

軍隊長はもっと逞しいのか?巨漢?分からないが静かにしていれば何も起こらない

だろう。部屋に荷物が置かれていた。

 

「あ、あの…電話を使っても良いですか?」

「良いですよ」

 

許可を貰ってから電話を利用する。

 

『ノエル、聞いたわ。奏者になったんですってね』

 

優しい声色、ノエル・ステラ・メビウスの母だ。イリーナ・ルナ・メビウス。

 

「うん。でも、恥ずかしいや…もっと凄い人はいるのに」

『それでも選ばれた。きっと実力以上に理由があるのよ。頑張れ、ノエル』

「…ありがとう、お母さん」

 

電話利用時間は短いが、それでも心が落ち着いた。母親の言葉は娘の心に

案外響くのだ。その後に耳に入ったのは隣室の会話だった。扉に耳を近づけ、

集中する。単語は幾つか聞こえるが、内容は分からない。話し声が消え、足音が

聞こえ慌ててノエルは自室に戻った。

夜になり、兵士たちが眠りにつく頃。ノエルは部屋を出た。窓が開いていたからか

下の階から音が聞こえた。耳は良い方だ。これはピアノを奏でる音。下の階、

大広間に用意された真っ白なグランドピアノを弾く手を止めた男はノエルに

気付いた。

 

「やはり、貴方が奏者なのね…」

 

自分に似た女性がいた。彼女の言葉が気に掛かった。“やはり”…?

 

「やはり…とはどういうことですか?」

「貴方も聞いた事があるでしょう。奏者の失踪、そして事故死…今や一族は貴方しか

残っていないのです」

「一族って…でも母は生きている!メビウス家は父親以外、娘と母が健在だよ!」

 

勝手に家族を死人扱いされるのは気分が悪い。だが目の前の彼女は真剣だった。

嘘偽りない、そう言う顔をしている。

 

「明日…貴方の母は火災で死ぬ。迷う時間は無い。明日のこの時間、貴方も

危険に晒される。その時、ここに来て」

「―何をしているのですか、ノエル嬢」

 

ノエルはハッとする。振り向くと一人の男がいた。鋭く、こちらの腹の底を

探るかのような目をしている。彼には女性が見えていないのか?気付くと彼女の

姿はそこには無かった。

 

「本番に弾くピアノを、まだ見ていなかったと思いまして…綺麗ですね」

「当たり前です。このピアノは本番の為に作られた重要、神聖な楽器ですので。

貴方も重要な方です。よく眠り、御体を大切にしてくださらないと」

「…そうですよね。では、私はもう眠ります。おやすみなさい」

 

ノエルは足早に自室のベッドに倒れ込んだ。不思議な女性だった。母親にも自分にも

似た容姿の女性。否、自分が後数年もすれば彼女の様になっているのではないかと

思ってしまうほど…。待てよ、有り得ないとは思うが未来の自分に?

もし彼女が未来の自分であるならば、明日に起こる事を知っているかも。

眠りにつき、目を覚ました時には日が昇っていた。

 

「の、ノエル様!悲報ですが…つい先ほど、貴方のお母様が火災に巻き込まれたとの

事です…!」

 

兵士の一人が報告した母の死。先の女性が言った言葉は事実だった。ならば、次に

危ないのは自分だ。突然の悲報の次は式典に関わる事件だった。

 

「ピアノが…!?」

 

無残に砕かれたピアノと、そこに転がる人間。男。彼がピアノを破壊し、そして

自殺したというのだ。何が目的でこのようなことをしたのか分からないがこれでは

式典を開催することは出来ない。

 

「ちょっと、なんで奏者が二人もいるのよ!?」

「なっ、二人だと!?」

 

待て、何故揃いも揃って全員がこれを信じているのだろうか。ノエルは超人的な

聴覚を持っている。これは、嘘の音だ。魔術も駆使しているのか幻術らしい何かが

使われている。混乱している場を収めるのは難しいだろう。

 

 

 

 

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