TALES OF NEXUS~テイルズオブネクサス~   作:瑠璃。

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ep2「幼馴染」

ようやく外の息を吸うことが出来た。

 

「ごめんなさいね、苦しかったでしょう?」

 

女性が声を掛けた。その容姿はノエル・ステラ・メビウスがもっと大人になった

姿。彼女は頬を緩めた。

 

「流石、私。もう正体に気付いちゃった?」

「…やっぱり未来の私なんだ」

「20年後の、ね。未来は一つの過去から星の数ほど存在する。私はそのうちの

一つに過ぎない。二人目の奏者が現れ、私は命辛々その場から逃走することに成功

した私。そしてここは私の未来を再現した場所」

 

未来のノエルはこの世界について説明する。近代的な景色が多い今のレムリア国とは

違い、異界のようだった。

 

「そう言う風に創ったのよ。直した、そう言っていた。あのピアノ、正体は

何だと思う?」

 

未来ノエルの質問に今の自分が分かるはずも無かった。あの純白のピアノは

奏者の魂も肉体も消し去りマナにする力を持つ禁忌グリムリーパーという。

それにより多くの人々の命が水面下で静かに奪われていた。長い時の中で

計画は常に進行し続けていたらしい。そこでもっと効率的に多くのマナを

回収するために体内にもっと多くのマナを保持する者を選んでいた。

 

「見て」

「ッ!?」

 

天空から一転、大地には人間がいた。しかし彼らの表情に笑顔はない。あるのは

苦しみだけ。天空にも人間はいると言うのに、どういうことなのか。

 

「天に相応しい者を選別した。選ばれた者は天で幸せに、楽に暮らせる。だけど

相応しくない者は一生恵まれないの。天の為に働き続ける…残酷な話」

「人を選んでるんだ…」

「えぇ…人の価値は他人では決められないわ。弱い立場の者を守る実力主義が

悪い方向へ進化した、そのなれの果て―」

 

パキッという音と共に空間に亀裂が走った。その亀裂が広まり、空間に穴が

出来た。

 

「行って!私は未来、過去があれば私は何度でも蘇ることが出来る。けど…

この未来を変えたいの。任せたわよ―(ノエル)

 

何処に続くか分からないワープホールに体を吸い込まれる中、凛々しい未来は

過去を守るために戦っていた。手を伸ばしてもその未来を掴むことは出来なかった。

未来ノエルは男と対峙していた。

 

「ガムシャラに別の場所に転移させたか…だが、分かっているはずだろ?ノエル。

未来のお前だろうが、現代のお前だろうが俺には勝てない」

「えぇ。だけど未来を消しても無駄よ」

「心配いらない。過去のお前も消し去ってやるからな」

 

男は彼女を剣で貫いた。

 

 

 

脳に膨大な知識を生める。扉を開き、新たな知識の部屋を開く。それは未来の

ノエルが経験した過去で、手にした知識。それを未来は過去に授けた。

自分にはならないように、最悪の未来を変えて欲しいという願いを託して。

目を覚ました。室内のベッドに寝ていたらしいが場所は把握できない。

 

「ここは…」

「お前の家、地下室だ」

「私の家!?」

「正確にはお前の母親がいた家の地下だ。俺は特別にここに入る許可を

貰ってる。覚えているかな?俺の名前…幼馴染なんだが」

 

ノエルは目を丸くした。彼の容姿を見て、だ。栗色の髪を持つ美青年と言う言葉が

似合う容姿に成長していた。

 

「オスカー…!!オスカー・リューザス!!」

「良かった。お前に限って幼馴染の名前を忘れるとは思ってないけどな」

 

はにかんだような笑顔をオスカーはノエルに見せた。変わらないノエルの様子。

しかし子ども時代より彼女は細かな事に気付く鋭い感覚を育んでいたようだ。

 

「私をあそこから攫ったのは…攫った人をオスカーは知ってるんだよね」

「…あぁ。未来のノエル、彼女は恐らく何度か過去を見てきているんだろうな。

あの人自身の過去には俺の姿が無かったらしい。が、ここでは彼女…最悪の未来に

無かった一つのピースとして俺がいる。聞いた時は驚いたが納得するだけの

根拠はあったから、引き受けたんだ」

 

恰好は軍服に似た白地に青の差し色が使われた服。ノエルは純白のドレスに

黒いフード付きのケープを纏っている。それは式典用の正装だ。

 

「目立つし、着替えろよ。だけど、俺はお前の意志を尊重する。長くは待って

やれねえけど、一週間は待ってやるから」

「オスカーは!オスカーは、どうする気?」

 

彼の腕を掴んでノエルは聞く。ベッドから上体を起こし、彼を見上げる。

 

「やるだけやるさ。未来のお前はやったんだろうけど、今のお前がやる必要は

無いだろ。その方が安全かもしれないぜ?」

 

何かあれば言ってくれと告げてからオスカーはこの部屋を出た。窓がない地下の

一室。無機質な部屋は椅子とテーブル、テレビ、ベッド…ピアノが置かれている。

ピアノ、この部屋に似合わない楽器だ。ふとオスカーの動作が思い浮かんだ。

彼自身、隠しているつもりだろうが一瞬疲れた顔をするタイミングがあった。

軽く肩を回していた。それと妙な立ち方。片足を引き、右手を見せないようにする

そんな立ち方。

 

「嘘…このピアノ、運んでたの!?」

 

部屋を出てオスカーは別室で氷を手に当てていた。

 

「痛ェ…」

 

赤く熱を持っている手。瘦せ我慢して痛みを堪えていたが、もう限界だった。だが

彼女が好きな事をやらせたかった。それが一番効率よくストレスを消すことが

出来ると知っているから。

 

 

 

 

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