TALES OF NEXUS~テイルズオブネクサス~   作:瑠璃。

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ep3「奏者と元軍人」

テレビでは式典ピアノが何者かに破壊されたという事件で持ちきりだ。不思議な

事に奏者の方はどの番組でも取り上げられていない。ピアノの修復をし次第、

式典は開くことになっているが修復にはかなり時間がかかるというのだ。

オスカーもノエルも、ほぼ同時にテレビの電源を切った。ノエルは自室に不自然に

置かれたピアノに触れる。ピカピカに磨かれたピアノ、鍵盤に指を置く。

指を滑らせ音楽を奏でる。奏者に選ばれるだけの実力を彼女は持っている。

美しい手、ピアノを奏でるのに適した長い指。その手から、手の持ち主が奏でる

音にオスカーは扉越しに耳を傾けて聞き入っていた。

 

「オスカー、そこにいるんでしょう」

「…よく気付いたな。相変わらず耳は良いのな」

「耳は、って何?入って来なよ」

 

扉を開くとノエルは変わらず白いドレスに身を包んでいた。

 

「ありがとう、ピアノ運んでくれて」

「いや、元々そこにあったよ」

「ふぅん…じゃあ、そういうことにしてあげる」

 

オスカーは下手な誤魔化し方をする。その真実を察しているノエルは彼を茶化す

ように言う。

 

「まだ、どうしたいのか…決められなくて、ごめんね。なるべく早く答えを

出すから」

「良いんだ。急いで出るような答えじゃねえだろうし」

 

浮かない顔をして、中々答えを出せないことに焦り苦悩するノエルの隣にオスカーは

座り、語り掛ける。

 

「世界を救う…なんてデカイ事を考える必要は無いと思うぜ?」

 

地下から見える景色は無い。今、空には太陽があるのか。晴れているのか、雨なのか

曇っているのか、分からないが少なくとも心の中にあった分厚い雲は徐々に薄く

なっていた。

 

「お前が最も邪魔されたくない、消されたくないものが消される…それを阻止する

為に動いたって罰は当たらねえよ」

「…そうだよね。私たちは英雄なんかじゃないものね。もっと簡単な理由が、

廻り巡って周りの平和に繋がる…そう考えればいいのか」

「で、どうする?ノエル。俺は無理強いはしないぜ」

「勿論、やるよ。そこまで言われたらね」

 

オスカーが差し出した手をノエルは握った。オスカーが立ち上がり何かをノエルに

投げ渡した。

 

「その服じゃあ、目立つだろ。すぐに式典の奏者だとバレる。着替えろよ」

 

自分が奏者だと言いふらしながら歩いているようなものだ。オスカーから貰った

服に袖を通した。白を基調としているのは変わりないが橙色の差し色が

使われたお洒落なドレスだ。

 

「似合ってるじゃん。さぁ、外に出ようぜ」

「似合ってるじゃんって…オスカーが選んだんじゃ…」

「その服、お前の母親が選んだ服だからさ」

 

外に出ると、そこには家の焼け跡が残っているだけだった。この家は焼かれ、

残っていた女性も焼死した。母の顔も、この家も、今や記憶の中にしか存在しない

どれだけ惜しんでも戻って来ない過去である。その過去の悲しみを胸に、未来から

託された願いを今の自分の為に叶える。それはきっと巡り巡って多くの人々の

為になると信じている。

 

旅立ちの街イグネシアス。その街をスタート地点に二人は動き出す。片や式典の

奏者、片や奏者の幼馴染。

 

「でも、オスカー。私、戦う術を持っていないけど大丈夫…かな?」

「どうにかなるさ。自分で戦う時が来るまでは俺がしっかり守るから安心しろ」

 

と、心強い言葉を受けた。

 

「オスカーはここに来る前、私と別れてから何をしてたの?」

 

別れる前。ずっと一緒に行動を共にしていたがオスカーは突然、自分の近くから

姿を消していた。消した後はどのような生活をしていたのか知りたかった。

 

「軍人養成所。色々訓練を受けて、無事に軍人になったけど今はその仕事から

外れてる」

「…クビ?」

「かもしれないな。探せば仕事は幾らでもあるさ。元・軍人ともなれば心身ともに

頑強だ。就職にも便利な経歴だよ」

 

ポジティブな。安定した仕事、公務員、軍人。それもまた次の仕事の為に使える

経略としている。

 

「訓練って…どういう?やっぱり厳しいの」

「こっちの軍の鍛錬、厳しい。と言っても、幾つかのクラスに分けられるときが

一番厳しいんだ。それで人を落として、残った人間を軍人に任命する」

 

それだけ軍人には力が求められるのだろう。頭脳、体力、その他にも求められる

ものがあるのだろう。この学校以外にも軍人になれる学校はある。

 

「推薦された。言葉巧みに、な…でも良いんだ。そのおかげで俺は自分の身と

他人を守る術を覚えた。過去なんか関係ねえよ。過去が無ければ、今は無いんだ」

 

辛かろうが苦しかろうが、その過去の積み重ねの上に現在がある。過去は変えられ

無い。だが未来は変えられるのだ。歩き始めた二人。その後をつける何者か、

ノエルは後ろを振り向いた。それは身を隠し、息を潜める。ノエルは目を伏せ、

聴覚をフル活用する。微かに息を吸って吐く、呼吸の音が聞こえる。

 

「どうした、ノエ―ッ!」

 

オスカーの口をノエルは塞いで、囁く。

 

「誰か…もしくは何かが後をついて来てる」

「ホントか?」

 

ノエルは頷いた。

 

「ここは敢えて気付かなかった振りをして炙り出しましょう」

「だな…下手に暴くよりも、捕まえて色々吐かせた方が良さそうだ」

 

ノエルとオスカーは知らないふりをして先に進む。

 

 

 

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