TALES OF NEXUS~テイルズオブネクサス~   作:瑠璃。

4 / 8
ep4「盗賊に間違われて」

先へ進み、とある町へやって来た。商業の街ナッピル。

行商人が集まる場所で騒ぎが起こっていた。

 

「た、大変だ!!盗賊だ!」

 

誰かが叫んだ。盗まれたモノは青の天霊石の欠片だという。青の天霊石自体が

希少なもの。澄んだ水がある場所に現れる神聖なマナの水晶だ。その欠片を

何者かが盗んだというのだ。その犯人を欠片を持っていた人物の従者が

追っているという。

 

「貴様だな、欠片を盗んだのは」

 

オスカー・リューザスの首筋に研がれた刃が当てられている。槍を握る少女は

威嚇するような声を出す。

 

「答えろ。欠片を何処へ隠した」

「俺はオスカー・リューザス。ここに来たばかりだ。その強盗は、誰かを

連れていたのか?」

 

オスカーは振り返ることなく、淡々と告げる。彼は一度ノエルに目を向ける。

槍を持つ少女は「いいえ」と答えた後に「ですが…」と続ける。

 

「誤魔化そうとしたって、そうはいきませんよ。周りに溶け込むために彼女を

攫って脅している…違いますか」

「ちょっと!私たちはホントにここに来たばかりなんですけど!?」

「嘘!まさか脅して言わせるとは…言語道断です!」

 

槍が一度首筋から離れ、首を切り裂こうとする。その刃をオスカーは伏せて躱し

間合いから抜ける。彼はノエル・ステラ・メビウスの手を引き、人混みに

逃げ込む。こんな場所で下手に剣を振るったとなれば余計に目立ってしまう。

木を隠すなら森の中、人を隠すなら人の中、だ。

 

「はぁ…大丈夫か、ノエル」

「大丈夫…それにしても本当に話を聞かないんだね、あの人」

「何処にでもいるさ、相手の言葉に耳を貸さない頭の固い人間が…。ああいう奴は

年寄りだけだと思ってたんだけど」

 

一つ咳払いが聞こえた。先の少女だ。小柄な少女は槍を構える。

 

「何と言われようと構いません。ここで捕らえて見せます!」

「オスカー」

「分かってる」

 

オスカーは真剣、ではなく鞘に納めた状態の剣を構えた。それを見て少女は

不服な顔をする。

 

「私のような小娘には抜く気は更々ないと?舐めないでください!私はナッピルの

大商人ヘルエナ・ジクザスの従者キリカ・ムーシェ!貴方のような悪党に

負けるはずがない!」

 

この町でも有名な富豪に仕えるキリカの槍捌きには目を見張るものがあった。

しかしオスカーはその攻撃をいなし、躱す。キリカは歯噛みする。踏み込めない、

予想以上に相手は力がある。

 

「くぅ…舐めるな!!」

「舐めちゃいない。無駄な殺生は互いに嫌だろう?俺も無闇に人を傷付けたくは

無いんでね」

 

オスカーはまだまだ余裕がありそうだ。その彼を見てキリカは自身と相手との

実力差を思い知る。何と言う男だ…私はそれなりに実力があると自負している。

男だろうと勝って来たというのに!

 

「―そこまでだ、こっちに来い!二人とも!」

 

二人、確信した。ノエルとオスカーを呼んだのだ。オスカーとノエルは壁を伝って

屋根へ上って逃げる。キリカも追いかけようとしたが、足元に矢が降る。

 

「何故…貴方が盗賊の味方をするのですか!」

「お前こそ、もう一度頭を冷やせ」

 

弓矢を携える男はそう告げて、姿を消した。キリカは地団駄を踏む。逃げられた。

失態だ。屋根を駆けて逃げ延びたオスカーとノエルはようやくキリカから

離れることが出来た。

 

「助かったよ、感謝する。アンタはどうして俺たちを?」

「君たちが盗賊ではないことを知っていたからだ。俺はグラヴィス・フォスティア、よろしく頼む」

 

盗賊では無いから助けた。それだけでは納得する理由にはならない。グラヴィスも

それを理解しているので補足する。

 

「俺も青の天霊石の欠片を盗んだ人物を探している。お前はオスカーと言ったな。

ジクザスという名字を聞いた覚えはないか」

 

オスカーは深く考え込み、顔を上げた。聞いた事があった。

 

「ジクザス…オルド・ジクザス!いや、でも…彼は」

「そうだ。彼は投獄された。名前が広がっていたから、彼の投獄の事件は誰でも

知っているはずだ。ブルーキング事件…青の天霊石が嵌められた王冠を

ルーフィア・ノーチェ・メビウスに公爵の証として贈呈する予定だったのだ」

 

ルーフィアは祖母の名前だ。ノエルの祖母、だが公爵になるはずだったということ。

どういうことだ?自分は公爵でも何でもない一般人だ。

 

「贈呈式の際に、メビウス家の事を悪くオルドは周りに広め、異議申し立てを

したんだ。オルド・ジクザスは権威のある男だった…後は…」

 

グラヴィスが押し黙り、代わりにオスカーが先を伝えた。ノエルも先を察した。

 

「ブルーキング事件ってのは平たく言えば非公式、一方的な決闘によりオルドという

男がルーフィアさんを殺害した事件だ」

 

実際に関わったわけではないが、知っている。有名な事件である。同時に

あっという間に消えてしまった事件でもある。そして王冠の行方は分からない。

オルドの口から聞くことも出来ず、ジクザス邸宅をどれだけ探しても発見することは

出来なかったという。

 

「キリカがその過去を知っているかどうか分からないが…今の当主は王冠の

行方を知ってるんじゃないか。そんな話が噂の範囲内で流れてる…そういえば

グラヴィスさんは彼女の事で何か知らないか」

 

オスカーはグラヴィスに尋ねる。オスカーやノエルからのキリカへの評価は

少し頭が固い。よく言えば生真面目な性格だ。そして一度信じた事、もしくは

自分が信頼を寄せる人間の言葉を信じて疑わない。

 

「俺からも同じだ。生真面目であることが悪いとは言わないが、少々柔軟な

思考に欠ける…彼女の戦い方は基本的に型から外れることが無い」

「…何だか彼女の教師みたいな」

 

ノエルの言葉は的を射ていた。

 

「あぁ、彼女に槍を教えたのは俺だからな。先も見せたが、俺の主要武器は弓。

槍はあくまでサブウェポンだ」

「だとしたら、彼女の才能か。もっと鍛えれば彼女はもっと有能な護衛になると

思うが…」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。