Fate Grand Order×鬼滅の刃   作:笛用カモシカ

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FGOと鬼滅の刃のクロスオーバーです。
FGO側主人公は女、名前は藤丸立香。
無限列車前の鬼滅世界にレイシフトする話です


プロローグ

 

 

鬼。

 

鬼とはどのようなモノだったか。

 

荒ぶる魂。

 

まつろわぬ者。

 

簒奪する嵐。

 

人を超え。

 

人を、殺すモノ。

 

生前、そのようなモノに出会った記憶は。

 

はて、どうだったか。

 

カルデアにて出会ったような純然たるモノとは、出会った事が無かったはずだ。

 

有っても雑じり物。

 

半鬼半人。

 

そもそも、この身が生きた時代に、純粋な鬼など居たかどうか。

 

まあ、十兵衞、三厳めならばそういった流麗奇譚の覚えも有るやも知れぬか。

 

なぜ、今このような思考を巡らせているのかといえば。

 

「ふむ、やはり臭うな…」

 

見知らぬ土地に、突然召喚されたからだ。

 

いや、正確には見知らぬ土地では無い。

 

見覚えの有る建物などは全く無いが、それでも雰囲気でわかる。

 

「日ノ本か」

 

そう、ここは間違いなく日本だ。

 

時代はわからぬ。

 

場所もわからぬが。

 

などて日本という事はわかる。

 

それも、日本のわからぬ何処かでも無い。

 

自身の勘が正しければ、恐らくは土地名もわかる。

 

その予感を確信に変えるため、人通りの有る道に向かい、通行人に声を掛ける。

 

「しばらく。異な事をお尋ねするが、此処は江戸であるか?」

 

通行人は此方の出で立ちを見て少しだけ目を丸くした。

 

もしコレがマスター殿の居た現代ならば、正しい反応だろう。

 

我が出で立ちは完全に侍のソレ。

 

腰には得物も差してある。

 

カルデアに招かれて得た知識通りならば、治安維持組織への通報も有り得る。

 

だが、その通行人は声を潜めて、

 

「アンタ、お侍上がりかい?

だってほら、その腰の…。

もしかして廃刀令も聞こえないくらいの田舎の出なのか?

あんまり堂々とぶら下げてちゃ決まりが悪いぜ?」

 

という注意なのか心配なのかを投げてきた。

 

お役人もそんなにヤル気が有るわけじゃ無いけど、流石に目の前に居たら捕まえるだろうし、という添え言葉も付けてくれた。

 

「む、これはかたじけない」

 

頭を下げた私に、通行人はまた目を丸くする。

 

「アンタお侍上がりなのに腰が低いんだなぁ。

悪い人じゃあ無さそうだ。

さっきの質問だけどな、江戸ってのは間違ってないよ。

正確には浅草だけどな」

 

浅草。

 

なるほど、勘は当たっていた。

 

此処は江戸。

 

後は時代だが。

 

「なるほど。拙者山中深くから此処へ来た故、少し時勢に疎く。

また異な事と思われるやもしれぬが………、今は何代将軍の治世であったか?」

 

本日三度目の丸くなった目。

 

「お侍さん、アンタ本当に山奥に居たんだなぁ。

今は大正の世だよ?

徳川様はとっくの昔に幕府を奉還しただろう?」

 

「そう…であったな。ははは、これはとんだ間抜けぶり。

この通り、齢も齢故、耄碌の足音も聞こえる始末よ」

 

大正。

 

確か、江戸の後二つほど隔てた時代か。

 

通りでこの出で立ちが浮かないわけだ。

 

何処となく懐かしい感じがするのもその辺りが理由だろう。

 

「本当に不思議なお侍さんだなぁ。

アンタ、名前は何て言うんだ?」

 

名前。

 

当然の質問だ。

 

偽名を騙るべきか。

 

いや、それでは信義に悖るだろう。

 

「────柳生但馬守宗矩。

しがない流れの侍でござる」

 

「はぁ?………、あー、アレか?昔の偉人と同じ名前を言って自分を大きく見せる?

まあそういうのは悪くないけど、流石にもう少し有名じゃ無い名前にしときなよ。

それじゃあ直ぐにバレてしまう」

 

む。

 

これは予想外の反応。

 

いや、然もあらんか。

 

江戸からこの方数百年後のマスター殿なら知らぬも道理だが。

 

この世は上様が治めた江戸も近い。

 

我が名前も知れているという事か。

 

「はは。流石、浅草は都会で───」

 

私は言葉を切る。

 

臭い。

 

召喚された時にも感じた臭い。

 

かつて居た江戸でも、ましてカルデアに在っては一部の英霊からしか感じなかった臭い。

 

鬼の、臭いだ。

 

魔のモノ。

 

人を食い散らかす略奪者。

 

その臭いが、一際濃くなった。

 

「あ!お侍さん!何処行くんだい!?」

 

後ろから聞こえる声を無視して走る。

 

臭いの元へ。

 

走る。

 

途中、幾つか別の臭いが混じる。

 

少しばかり薄い鬼の臭い。

 

さらに薄い鬼の臭い。

 

そして、太陽のような、流水のような臭い。

 

それらも気になるが、今は無視して走る。

 

急がねばならない。

 

この臭いは、駄目だ。

 

かつて都を蹂躙したという悪鬼達。

 

伝承に伝え聞いた事しか無いが。

 

カルデアにて軽く会った事しか無いが。

 

それでも、わかる。

 

この臭いは駄目だ。

 

人の敵。

 

分かり合えぬ存在。

 

無条件で首を刎ねるべき悪。

 

また別の臭いが混じる。

 

「これは、血の臭いか…!」

 

人混みを走り抜ける。

 

目指すは通りの途中。

 

人気無く、明かり少なな路地裏。

 

其処に、

 

「なんだ、オマエは」

 

鬼が居た。

 

見た目は、通りに居た人々からも散見された所謂洋装。

 

洒脱にハットを被りこなしたその様は、ある種上流の気品を感じる人間も居るだろう。

 

だが、それは所詮上辺の取り繕い。

 

中身は汚泥のソレだ。

 

鼻を抓んでも感じる程の腐臭。

 

魂が腐っているのだろう臭い。

 

斬るべきだ。

 

容赦なく斬るべきだと、腰の刀が告げている。

 

それになにより、

 

「ふむ、拙者この地に疎い故、今からお尋ねする事は異な事かも知れぬが………。

その手に持っているのは、人間の頭部で相違ないか…?」

 

目の前のソレは、倒れ伏した人間のような何かを見下し、手には人の頭部のような何かを持っていた。

 

「だとしたら?」

 

目の前の男は、まるで当然と言った顔で此方の言葉を肯定する。

 

「……………。」

 

此方の無言をどう捉えたのか。

 

男は薄く嗤う。

 

「ああ、鬼殺隊…、鬼狩りかと思ったが。

どうやら違うらしいな。

その腰の刀、日輪刀では無いのだろう?」

 

鬼殺隊?

 

日輪刀?

 

何の事かわからない。

 

だが。

 

「……………。」

 

「ふむ、恐怖で声も出ないか。

だがそれも直ぐに終わる。

私を見たからには、生かして帰すわけにはいかない」

 

男の手が此方に伸びる。

 

だが。

 

だが、そんな事はどうでも良かった。

 

「速やかに、死ね…………は…?」

 

男の手は、宙に俟っていた。

 

いや、正確には俟わせた。

 

「────詰まらぬ問答には飽いた。

これ以上続けても、定型な返ししか出てこんのだろう?」

 

腰の刀は既に抜き身となり、刀身に男の血が滴る。

 

「がっ…!今、何をした…!?」

 

男の顔が苦悶に歪む。

 

此方の攻撃が見えなかったのだろう。

 

だが、それすらもどうでも良い。

 

「答える必要は無かろう?魔は魔らしく、一息に葬ってやろう」

 

今考えるべきは、目の前のこの男を斬ること。

 

それのみだ。

 

 

────────────────

 

 

 

まるで意味がわからなかった。

 

此処に来るまでに起きた事。

 

此処に来てから殺した人間。

 

それは良い。

 

それはわかる。

 

恐らく鬼狩りの小僧も。

 

その場に居た珠世も。

 

別段どうと言うことは無かった。

 

変わらず身を隠し。

 

変わらず敵を殺し。

 

変わらず日常を歩む。

 

その過程に於ける一幕。

 

フラリと入った路地裏で、身寄りも無いだろう屑を殺す。

 

ただそれだけの、有り触れた一幕だったはず。

 

たまさか迷い込んだのだろう侍の老人。

 

目の前の恐怖に震え。

 

私という闇に震えるだけの矮小な老人。

 

同様に殺し、路地裏から出る。

 

そういう筋書きのはずだった。

 

それが今は、意味のわからない光景を見せられている。

 

老人を殺そうと伸ばした手。

 

首を捻り、声を上げさせる間もなく殺そうとした手。

 

その手が、何故か今は宙を俟っている。

 

痛みより、先に来たのは疑問。

 

何故。

 

何故。

 

何故。

 

何が起きた?

 

老人は何かを言っている。

 

何も聞こえない。

 

聞く余裕が無い。

 

老人は刀を抜いている。

 

何時抜いた?

 

アレで斬ったのか?

 

何なんだコイツは。

 

柱では無い。

 

齢を見るに、元柱の育手か?

 

だが、呼吸を使った形跡も無い。

 

わからない。

 

そもそも、只の老人の動きが見えないなどと。

 

そんな事が有るのか?

 

老人が構える。

 

刀を中段に据える。

 

マズい。

 

マズい、マズい、マズい。

 

手はまだ宙を俟っている。

 

嫌に時が遅く感じる。

 

どうする?

 

殺すか?

 

今なら間に合うか?

 

馬鹿な。

 

そんなリスクを冒す必要が何処に有る。

 

斬られた手などどうでも良い。

 

そんなものは直ぐに生える。

 

理由はわからないが、あの老人の一太刀目は日輪刀では無かった。

 

だが、だからと言って日輪刀を持っていないとも、鬼狩りで無いとも言い切れない。

 

ならば、私が取るべき行動は一つだけだ。

 

逃げる。

 

全能力を使ってこの場から離脱する。

 

そのためにも、目の前のソレを観察する。

 

刀を構えた老人の全身から不可思議な闘気が立ち上る。

 

駄目だ。

 

これは一刻の猶予も無い。

 

何かをしようとしている雰囲気。

 

何をするかはわからないが、それだけは伝わってくる。

 

考えるのは、止めだ。

 

逃げる。

 

逃げるのだ。

 

何を捨てても逃げるのだ。

 

私は老人に背を向ける。

 

「背を向けるか。魔のモノならばそれも良し。

此方としても掛ける情けは持ち得ぬ故に。

然らばいざ、参る。

─────我が心は不動、しかして自由にあらねばならぬ。

即ち是、無念無想の境地なり」

 

背を向ける。

 

背を向ける。

 

背を向けた、はずなのに。

 

「何だ…これは…?」

 

周囲は先程までの路地裏では無い。

 

夜半の草原。

 

落葉松の一。

 

薄曇りの空。

 

仄見える月。

 

何だこれは。

 

幻を見せられているのか?

 

何かの妖術なのか?

 

わからない。

 

何もかもが、わからない!

 

「剣は生死の狭間にて大活し、

禅は静思黙考のうち大悟へ至る」

 

老人の姿が消える。

 

「ま、待て…!」

 

「剣術無双・剣禅一如────

鬼如きには、過ぎた業よ」

 

その言葉と共に私の視界は、宙を俟っていた。

 

 

────────────────

 

 

 

宝具の開封と共に男の首が飛ぶ。

 

無念無想の一太刀は、常人には、いや、常人ならぬ魔であっても避ける事能わず。

 

故にこの結末は必然。

 

絶死の一撃が、その役割を果たしたというだけの事。

 

「…………、南無」

 

斬った魔では無く、魔に殺された人間に向けた弔い。

 

「さて」

 

落ちた首、倒れた身体。

 

どうするか。

 

これが魔のモノならば、それに伴った公機関も居るのでは無いだろうか。

 

それこそ上様直属のお庭番のような。

 

確かアレも、徳川に仇為す万障を排するための組織だったはず。

 

聞いたところによれば、それこそ奇々怪々な輩ともしのぎを削ったとか。

 

そういった公機関に任せるのが道理だろう。

 

思えば、鬼が口にしていた日輪刀だの鬼殺隊だのが、まさにその類いと考えれば腑に落ちる。

 

「とは言え、そう都合良く…………む…ぐっ……!?」

 

突然背中に奔る鋭痛。

 

「まさか…本当に日輪刀を使わないとはな…」

 

「な…に…?」

 

振り返ると、其処には首のない身体だけの男が立ち、手を此方に突き刺している。

 

「まるで意味がわからないが…兎も角僥倖であった…」

 

声は、落ちている首から発せられていた。




先ずはお読み頂き誠にありがとうございます。
ハーメルン初投稿のため、色々と拙いところが多かったと思います。
もしよろしければ、今後ともお付き合いください。
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