ジャグラーさんがトレセン学園でなんかやらかすようです。 作:気まぐれな富士山
蛇倉とバンブーメモリーが担当契約をして1週間。
「お疲れ様っス!トレーナー!」
「バンブーも授業お疲れ。んじゃ、トレーニング始めようか。」
蛇倉のトレーニングは思ったよりもハードであり、バンブーメモリーのそれを上回るものだった。
「ぜェ、ぜェ⋯⋯坂路10本終わりましたっス!」
「よし次。直線10本。」
「お⋯⋯押忍!」
彼女の得意とする距離はマイルと短距離。
そして、短距離系はスピードとパワーの強化が必須である。
持ち前の勝気と根性を生かし、自分を追い込んでいくのが得意なバンブーメモリーとハードなトレーニングを適切に組み込んでくる蛇倉トレーナーは、かなり相性のいいチームだった。
「おいどうした〜?直線落ちてるぞ!」
「押ぉ忍!うぉぉぉ!」
バンブーメモリーはかなり癖の強いウマ娘だ。
走りの短所や細かな癖を1本1本指摘していく。
「次はそうだな、背筋伸ばすこと意識してみろ。」
「背筋っスか?どうしてそこを⋯⋯⋯⋯」
「お前、前に行きたがるのはわかるが、意識だけが独り歩きしてるぞ。腰が引けてる。」
適切な説明でわかりやすい。
トレーナー試験の首席は伊達でないらしい。
「さあ行ってこい!」
「了解っス!」ダッ
「あの様子なら、メイクデビューは期待できそうだ。流石に厳しいな。蛇倉トレーナー。」
「生徒会長、いや、ターフの上ではシンボリルドルフかな。」
「そう呼んでもらうと助かる。」
「生徒会長も色々大変だな。生徒の間じゃ、完全に雲の上の存在だよ。」
「生徒会長として威厳がある、といえばいいのだろうが、私としてはあまり本意ではない。もっと頼ってもらえないものか模索しているのだが⋯⋯⋯⋯」
「その術が思いつかないと。あるあるだな。気にすんな。」
「⋯⋯⋯⋯彼女は。バンブーメモリーは君から見てどう取れる?」
初対面の時のような質問。
それを見て、何を思うか問われる。
「熱血で硬派で、良くも悪くも真っ直ぐなやつだ。脚質としては、あの差しは中々見応えがある。育てればあの『怪物』だって敵じゃない。」
「⋯⋯⋯⋯ほう?あの『怪物』も敵じゃない、か。それは期待が持てそうだ。」
「存分に期待しておいてくれ。『皇帝』サン。」
『怪物』オグリキャップ。
バンブーメモリーが選抜レースで敗北したウマ娘。
地方出身で、その頃からその才能を遺憾無く発揮し、日本トレセン学園からの強い推薦もあって中央に移籍してきた。
その走りは、異名の如く『怪物』。
選抜レースの走りも十分じゃなかった。
恐らく次当たるまでに格段と成長しているだろう。
「バンブーメモリーの差し能力と、オグリキャップの末脚。一体どっちが勝つのか⋯⋯⋯⋯。トレーナーとしてあまりこういうことを言うのは良くないんだが、2人の勝敗を見てみたいと思ったのさ。」
「確かに気になるな。⋯⋯⋯⋯フフッ。」
「?何か可笑しなところがあったか?」
「いや、すまない。バンブーメモリーについて語っている君の顔が、夢を見る少年のようで。つい。」
「夢?」
夢など、見ているつもりはなかった。
目的もなくただ宇宙を放浪している蛇倉ことジャグラー。
闇の力に魅入られ、闇の道へ進んでいく。
そんな自分が夢を見ている?
本人も信じられなかったが、
「⋯⋯⋯⋯夢か。悪い気はしないな。」
だそうだ。
「トレーナー!残り5本終わったっス!っと、会長!お疲れ様っス!」
「バンブーメモリー。いい走りだったよ。」
「本当っスか!?ありがとうございます!」
「水分と塩分取って、ダウンしろよ。」
「押忍!それじゃ会長!失礼しますっス!」
シンボリルドルフに褒められて嬉しかったのだろう。
尻尾も耳も喜んでいる。
「彼女、風紀委員長として朝早く学校に来るんだが⋯⋯⋯⋯」
「え、アイツ風紀委員だったの?」
「そこからか。」
どうやらまだまだコミュニュケーションの必要があるようだ。
〜トレーナー室〜
「あ〜⋯⋯疲れたっス⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
「お疲れ。」
制服に着替えたバンブーメモリーは、トレーナー室に戻り、ソファに腰掛ける。
「そういえば、前から気になっていたんだが。」
「何がっスか?」
「お前、なんで竹刀持ち歩いてんだ?」
「そりゃあもう!風紀委員長として、先輩として!後輩に舐められないようこれでビシバシやってくんスよ!」
「風紀委員長が竹刀持ってるって大分怖いけどな。」
そりゃあ調子乗る後輩もいない訳だ。
「なんにせよ、委員会もトレーニングも両立してるとは、お前なかなかやるな。」
「文武両道っス!両方できなくして、強いウマ娘にはなれないっス!」
やはりどこかが前の部下に似てる。
「じゃあ、アタシそろそろ寮に帰るっス。」
「おう。渡したストレッチメニュー、風呂上がりにちゃんとやっとけよ。」
「押忍!お疲れ様でしたっ!」
バンブーメモリーは、元気に部屋を後にした。
『お疲れ様です隊長!』
『チェストーーッ!!』
「お前似のバカがこんなとこにも居たぜ。ハルキ。」
遥か遠くの宇宙でウルトラマンとして戦う元部下。
あの熱い顔を思い出す。
「ダークリングもねぇ、ゼットライザーもねぇ。もう俺はただの巨大化できない宇宙人だ。⋯⋯⋯⋯でも、」
そして思い出される。
新人のウルトラマンと、相棒にして宿敵、ウルトラマンオーブ、クレナイ・ガイのことを。
しかし、自分には甘すぎて、眩しすぎる世界だ。
だから。
「やめだやめだ!やっぱヒーローってめんどくせぇ!こんなこと考えても仕方ない、バンブーのメニュー作るか。」
今はまだ、夜明けの珈琲を啜ることにする。
カイチョーの四字熟語がムズい⋯⋯⋯⋯!