ジャグラーさんがトレセン学園でなんかやらかすようです。 作:気まぐれな富士山
感想が来てる⋯⋯⋯⋯だと⋯⋯⋯⋯
ありがとうございます!文才が尽きる前にもっと書くぞー!
〜ジュニア級 9月中旬〜
「さぁて、バンブー。」
「押忍!用意はバッチリっス!全員ぶっちぎってやるっス!」
「おい待て。まだパドックだぞ。」
中山レース場のパドック。
そこには、バリバリに緊張したバンブーメモリーの姿があった。
「お前、そんなに緊張するようなタイプだったか?」
「ききき緊張なんてしてないっス!行ってくるっス!」
観客席から見ても緊張している様子が見て取れる。
「体の調子はいいんだが⋯⋯⋯⋯」
蛇倉も頭を抱える。
メイクデビュー。
ウマ娘達にとって1番最初の公式レース。
当然、ジュニア級のウマ娘が緊張して実力を発揮できないことも多い。
「にしてもこれじゃあな⋯⋯⋯⋯」
差しの練習もダンスも練習済みだ。
あとはあの緊張の様子だが、
「しゃあない、やってやるか。」
少々面倒くさそうにスタート前のトンネルへ向かうのだった。
「はぁ〜⋯⋯⋯⋯」
「レース前にため息なん吐いて、縁起悪いぞ。」
「あっ、蛇倉トレーナー。」
「珍しい反応だな。いつもなら『押忍!』とか大声で返してるのに。」
余程緊張しているらしく、脚も小刻みに震えている。
「⋯⋯⋯⋯アタシ、駄目、なんスかね。こんなことで緊張しちゃって。」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯お前は、緊張しているのを悪いことだと思うのか?」
「え?」
「これは、俺が聞いた話だが、戦いの中で緊張することをなんて言うか知ってるか?」
「えーっと⋯⋯⋯⋯」
「武者震いだ。お前は、緊張を『否定』しているのさ。」
完全に否定し、認めない。
それは悪いことだと断じる。
「認めてみろ。自分は緊張しているってな。自分の心に素直になるんだ。」
「認める⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
自分の心を素直に受け止める。
それこそ、もっとも実力を発揮する手段。
「うぉぉぉぉ!緊張するっスーー!!」
「緊張して勝てないか!?力が出ないか!?」
「それでも勝つっスーーー!!!」パァン!
思いっきり自分の顔を叩くバンブーメモリー。
どうやら覚悟は決まったようだ。
「緊張は解けたな。」
「押忍!今なら、自分の全力を引き出せそうっス!」
「よし!行け!」
「押ォ忍ッ!」
思いっきりスタートへ走っていく。
「⋯⋯⋯⋯やっぱ、俺はサポートに向いてるな。」
熱血なのは、やはり自分は合わない。
だから、元相棒の真似をした。
「猿真似も似合わないな⋯⋯⋯⋯いつからこんなことする気になったのか。」
あのバカに熱を当てられたらしい。
「やっぱり、正義の味方ってめんどくせぇ。」
心底面倒くさそうで、なんとなく懐かしい様な面持ちだった。
光の勢力にはなれない。しかし、闇に好き勝手される気は無い。
今はただ、夜明けに落ち着いていたい。
『本日デビューを迎える12人。栄光ある夢を掴むのは一体誰なのか。デビュー最速、輝く新人マイラーの座に着くのは一体誰なのか。1番人気⋯⋯⋯⋯』
これからのシーズンのマイラーが決まる。
重大なイベントだ。
『各ウマ娘、出走の準備が整いました。』
『誰が勝ち上がるのか、注目です!』
『さあゲートイン。今、メイクデビューの火蓋がーーーーー』
そのイベントを勝ち残ってこそ。
この戦いに勝ってこそ。
自分の夢を、誰かの夢を背負える。
「勝ぁつ!」
ガコンッ!!
『落とされた!各ウマ娘一斉にスタートを切りました!先頭は6番___________!3番____________はその後ろに着いています!8番バンブーメモリーは3番手!2番手から2バ身ほど離れています。続いて4番手⋯⋯⋯⋯⋯⋯』
(序盤からぶっちぎりで逃げるのはアタシらしいっスけど、1600mじゃ息が上がる!だから、仕掛けるなら⋯⋯⋯⋯)
『第2コーナーカーブ!』
『中団がダンゴになっています!ここから抜け出すのは厳しいですよ!』
(良し!後ろは詰まってる!後は!)
『最終コーナーに差し掛かった!先頭は5番!2番手にバンブーメモリー!しかし先頭とは2バ身以上の差があるぞ!』
「今っス!!!」
『バンブーメモリー仕掛ける!バンブーメモリーが追い上げてきた!残り200!バンブーメモリー追いつけるか!』
(勝つ!絶対勝って⋯⋯⋯⋯!あの『怪物』を破るっス!)
「うおぉぉぉぉぉ!!!」
『バンブーメモリー追い上げる!差を開いた!先頭はバンブーメモリー!バンブーメモリー!5番______________食い下がるか!しかし先頭バンブーメモリー2バ身離した!バンブーメモリーだ!今1着でゴールイン!強い!これがバンブーメモリー!』
「ハァッ、ハァッ、ハァッ⋯⋯⋯⋯⋯⋯勝った⋯⋯スか?」
顔を上げると、確定のランプが光る。
自分は勝った。その証明の光。
「やった⋯⋯⋯⋯やったっス!アタシ!」
「やったな。バンブー。」
「あっ、トレーナー!やったっス!アタシ、勝てたっス!」
「おう。よくやったよくやった。」
満面の笑みを浮かべるバンブーメモリー。
蛇倉も、決して悪い気分ではなかった。
「さて、シャワー浴びたらウイニングライブだぞ。」
「押忍!ダンスも抜かりないっス!」
もうスタート前の様な緊張は無い。
期待と夢に思いを馳せる面持ちだった。
〜トレーナー室〜
「かぁ〜ッ!疲れたっス〜!」
「ライブもよかったぞ。お疲れさん。」
「ここで甘んじてちゃ駄目っス!今日のレース、まだまだ改善出来るところがある筈っス!トレーナー、どうっスか?」
「んーそうだな。今日は特に気にせず、明日のトレーニングから直してもいいが、どうする?」
「そんな悠長なことは言ってられないっス!」
「おう、どうした。なんか新しい目標でも見つかったのか?」
すると、バンブーメモリーは満を持してこういった。
「アタシ、今日のレースで新しい『夢』が出来たっス!」
「夢?」
蛇倉の脳内に、シンボリルドルフの言葉が浮かぶ。
『夢を見る少年のような面持ちでね。』
自分の夢と重なる様な言動。
「アタシは、誰かに夢を与える様な、トップマイラーになりたいっス!誰よりも速く走って、誰かが夢を見れるようなウマ娘になりたいんス!」
「ッ!」
あの時の言葉が、やっと理解できた気がする。
『誰も傷つけずに戦う、それができれば、どんなに素晴らしいか⋯⋯⋯⋯』
そんなことは理想だと跳ね除けた相棒の元言葉。
(アイツも、こんなことを思っていたのか。⋯⋯⋯⋯俺は、夢を、理想を想うことが出来なかったのか?)
「トレーナー?どうしたっスか?」
心配そうにバンブーメモリーが顔を覗き込む。
「⋯⋯⋯⋯いい夢じゃないか。しかし、ただ語るだけなら夢で終わってしまう。夢は、目標にしなきゃならない。」
「ッ!!」
フッ、と笑う蛇倉。
「明日から、これまでよりもっと厳しく行くぞ!着いてこれるか?」
「ッ!押忍ッ!!」
「ならよし!それじゃ、これから祝勝会だ!明日からの活躍も願ってな。」
「本当っスか!?焼肉がいいっス!」
「おう!好きなだけ食わしてやるよ。」
お互いの心が通じあった気がするバンブーメモリーと蛇倉だった。
(たまには、こういうのも悪くない⋯⋯⋯⋯か。)
〜???〜
「ヨシ、コレデ完璧ダ⋯⋯⋯⋯」
月明かりに光る謎のマシンと人影。
しかし、それは明らかに人ならざる者の影だった。
「モウスグ⋯⋯⋯⋯わたシのテのウえに⋯⋯⋯⋯」
影と形を変え、一般人になる怪人。
「待っていロ⋯⋯⋯⋯ウマ娘⋯⋯!」
トレセン学園に、不穏な影が迫る。
次回、レジェンド降臨です。