このメイズィー大陸に於いて、三大国家と言えば、軍事大国のキノコ帝国、そのキノコ帝国から百年ほど前に独立したタケノ公国、そして、スギノコ商業連合の三つを指す言葉だ。
尤も、鎬を削り争っているのは先に挙げた二カ国であり、スギノコに関しては、どちらにも属さず第三国として調停を担っている。
「と言うのは表向きの理由で、実際はどちらにも武器を売りつけ利益を荒稼ぎする、こすからい連中さ」
「なんだってそんな…矛盾してるじゃないか!!」
ハチクの街のタケノコギルド、その酒場にて、タケは激怒していた。
「って言われてもねぇ…」
「実際、それで経済が成り立ってるのは事実だろ?オレらが使ってる武器も、今飲んでる酒も、スギノコの連中がいなきゃあこうして手元に届いてねぇんだぜ?」
そう言うなり、男は木製のジョッキを持ち上げ、喉を鳴らして酒を飲み干す。
「っかぁ〜!!うめぇええ〜!!オメェもどうよ?」
ズイと勧められるが、タケはそれに首を横に振ると、真剣な声色で改めて問う。
「だが!!それじゃあ死んでいった仲間の無念はどうなる?オレのオヤジは…」
「知らねぇよそんなこと。終わったことをピーピー言ってんな」
「付き合ってらんねぇ〜…」
「あっ…おい!!」
この日、タケが率いていたパーティーが解散した。
まぁ、それ自体は何も珍しくは無い。
合う合わないは人それぞれだし、どうしたって不平不満は出てくるモノだ。
だが、タケの場合は、明らかにパーティ解散数が多かった。
今月に入って三度目なのがそのいい証拠だ。
それと言うのも、パーティの目的それ自体が難度が高いどころではないのだ。
『タケノコ派に伝わる伝説の武器、ロンギヌスの竹槍を見つけ出すこと』
最初は面白半分に入ってくれる連中がいたが、本気だと分かると皆半笑いで脱退して行った。
さっきの二人もその口で、本気とわかるや一気にやる気を無くしたという、要するに単なる冷やかしだ。
この国にはギルドという枠組みがあり、その中で仕事の斡旋や、必需品の支給など、それぞれに見合った支援を受けることができる。
その中でも代表的なのは二つ。
ひとつはキノコギルド、この大陸に古くからあるギルドで発言力や影響力もバカにならない。
もう一つはタケノコギルド、新興のギルド…とは言ってもほぼ名前ばかりで、斡旋される仕事もキノコギルドの下請けがほとんどだ。
「くっ…やっぱり、無理なのか…タケノコの未来は…」
「ま、まぁ…落ち着いてよタケ、次のメンバーはきっと…」
幼馴染がなんとかたしなめる。
どう考えても気休めだが、しかし思い詰めすぎてもいい結果にはつながらない。
「でも…」
「あの〜…」
「大丈夫!!タケならきっと…」
「あの〜…」
「そうだな。オレたちならきっと…」
「あの!!」
「うん?ああすまない。えっと、オレたちに何か用事かな?」
振り返ると小柄な人物が一生懸命に声をかけて来ていた。
「あの、わたちをあなたがたのパーティに入れて欲しいのです…」
「えっ!?いいのか!?」
「言っちゃなんだけど、私たちそんな強く無いよ?」
「もちろんです!!わたち、頑張ります!!」
ムンッ!!とその人物が気合いを入れる姿が何やら可愛らしくて二人は和む。
目元を隠した金髪の人物。
声の高さ的に女の子か、もしくは声変わり前の少年か。
いや、後者の場合はギルドがパーティに参加する許可は出さないだろうから恐らくは前者なのだろうが。
「あっ、申し遅れまちた!!わたち、シィっていいます!!」
「うん!!よろしくね!!シィちゃん!!」
「おう。歓迎するぜ!!」
そして、三人は宿屋をとり休息をすることに。
その晩のこと……。
「A茸、B茸、応答せよ、こちらC茸」
宿屋の個室で、通信魔法を行う人影が。
「例のパーティに潜入成功。チョロいもんですよ」
「そうか。何としてもロンギヌスの竹槍を手にさせるな。我々もバックアップを全力で行う」
「ええ。任せてくださいよ」
暗闇にニヤリとほくそ笑むシィ。
夜はまだ長い…。