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「頑張ってきてね」
「あの
「……強敵が多いわ、無理はしないようにね、身体は労りなさい」
「頑張れ」
控室にて、エアコンボハリアーはアラビアントレノ、ワンダーグラッセ、キングチーハー、セイランスカイハイに、それぞれ応援の言葉をかけられた。
「…あたし、勝ってくるから…あと…アラ!」
「…これ、トレーナーに渡しといて」
エアコンボハリアーは普段はつけているパイロットゴーグルを取り出し、アラビアントレノに渡した。
そして、地下バ道では、エルコンドルパサーがシンボリルドルフに声をかけられていた。
「エルコンドルパサー」
「ルドルフ会長…」
「私から言えることは唯一つ…絶対を見せろ!」
「ハイ!勝ちます、絶対に、世界最強の為に!!」
日本ダービーの時と同じようなやり取りを交わし、エルコンドルパサーはパドックへと向かっていった。
(とは言ったものの…結局…あの娘が誰だったのか分からなかった…グラスは“先輩のうちの一人でしょう”と言っていたけど)
しかし、その心境は穏やかではなかった、エルコンドルパサーの心の中には、自主トレ中に、自分に何度も食いついてきた
(あの娘はいっつもいつの間にか居なくなってたけど、あのまま走り続けていれば、多分ワタシは抜かれていた…そして、今日の出走ウマ娘に、その娘は居ない)
「………」
エルコンドルパサーは顔をブルブルと振って、歩みを再び進めたのだった。
パドックでのお披露目が終わり、ウマ娘達はゲートの近くまで移動した、エルコンドルパサーはエアコンボハリアーのところまで行き、声をかけた。
「あの!!」
「……あたし?…えーと…誰?」
「…ワタシはエルコンドルパサーデス!!」
エルコンドルパサーは自分の名前が知られていると思っていたため、そう返されてあまり良い気分を抱かなかった。
「あたしはエアコンボハリアー、それで…中央の選手がどうかしたの?」
「アナタ、相当な実力者だと聞いています…今日は負けまセンよ!!」
エルコンドルパサーはエアコンボハリアーに対し、宣戦布告をした。
「宣戦布告……驚いた、じゃああたしからも言っておこうかな………軽くひねってやる、今日の相手に、あたしの敵はいない…」
「………!!」
「それじゃあ」
エアコンボハリアーはそう言って自分のゲートの前に移動した。
「…………」
エルコンドルパサーは拳を固く握りしめた。しかし、周りのウマ娘らはどんどんゲートインしていく、エルコンドルパサーもそれに続いた。
『さあ、全てのウマ娘がゲートインしました、世界の強豪が集うG1、ジャパンカップ…』
ガッコン!
『ゲートが開いて今、スタートしました!!』
曇天の空の下、ジャパンカップはスタートした。
『こちら第一コーナー前、
電話の向こうから、別の場所で観戦しているワンダーの声が聞こえる。
「固まっているからこっちからじゃ状況が分からないの、どう?ハリアーは遅れてない?」
『いつものレースと比較すると少し遅くは感じます、ですが、十分食いつけてはいるかと』
「良かった、抑えつつも遅れない走りができているわね」
火喰トレーナーはワンダーに状況を聞いている、ハリアーはいつも先行策を取るウマ娘だ、今回も例外じゃない、でも、今回は少し抑え気味のようだ。
『外からようやくサイレントハントがジワーッと出てきています、エルコンドルパサー、ウンガリオ、そしてエアコンボハリアーで二番手争い、そして後ろにエアグルーヴ、そしてキンイロリョテイとスペシャルウィーク、ラファイエットが外から行く!』
私は空を見上げた……天気は…どうなるか…
『外からようやくサイレントハントがジワーッと出てきています、エルコンドルパサー、ウンガリオ、そしてエアコンボハリアーで二番手争い、そして後ろにエアグルーヴ、そしてキンイロリョテイとスペシャルウィーク、ラファイエットが外から行く!』
(流石はダービーウマ娘、あの程度の揺さぶりをレースまで引きずる程甘くはやらせてくれないか…)
エアコンボハリアーはレース前、エルコンドルパサーの事を知らないといった態度で接していた、そしてレースが始まり、エルコンドルパサーの精神の乱れが消えたことを確認したのである。
(ワンダーが手に入れてきた自主トレメニューの情報から、ラストスパートでどのぐらいのノビがあるのかは予測できる。後は、それをどれだけ封じてやれるか…!)
(流石はルドルフ会長が警戒対象にしたウマ娘、手強い、整ったフォームをしてる…)
そして、エルコンドルパサーはスタートの時の事を思い出し、シンボリルドルフがエアコンボハリアーを警戒するよう言ったことに対し納得した。
((今日の勝負は…油断できない…だけど…))
(アラをぶち抜く前に…)
(世界一になる前に…)
((まずはそっちを…))
((ブッちぎる!!))
二人は同じ様な事を考え、第一コーナーへと入っていった。
『レースは第一コーナーへ、サイレントハントを先頭にしてそこそこ縦長の展開、二番手ウンガリオ、そして3番手を積極果敢に進む
エルコンドルパサー、その内を並ぶように進むエアコンボハリアー、その後ろにはキンイロリョテイ、そしてスペシャルウィーク、その後ろ内からエアグルーヴ、後団は内からフェイスフルアトン、外からはゴーイングスズヤが上がっていく!』
(…手強い、エアコンボハリアーはコーナーが速い……一筋縄ではいかない強敵、目一杯の全力勝負に突っ込む……ついて来れマスか?)
エルコンドルパサーは後ろの様子を伺いつつ、脚に力を込めた。
「夏合宿を経て得た最大の武器は、旋回スピードの高さ…それを忘れないでね、ハリアー、ストレートだけで勝負をしようとすれば負けるわよ、ローカルシリーズはコーナーリング命だから」
火喰はレースを見て、そう言った。
地方レース場は中央のそれと比べて狭く、コーナーがきつく、遠心力も大きい、夏合宿の成果もあり、エアコンボハリアーはいつもより速くコーナーを進むことができていた。
(チハの言ってた通り、相手の巡航速度は速め、そして似てるね、エルコンドルパサー、昔のあたしとそっくりなレース運び、闘争心剥き出しの攻撃的な走り…)
一方でエアコンボハリアーはエルコンドルパサーの走りから溢れ出す闘争心を感じていた
(確かに強さは感じる、だけど、その走りは自分で思っているほど速くはない、闘争心に頼って走る事で得られる強さには限界がある、あたしはトレーナーと姉さんにそれを教えられた、それがあたしとあんたの…決定的な差だ…!!)
エアコンボハリアーはエルコンドルパサーを睨みつけ…
(言ったはずだ、今日の相手にあたしの敵は居ないってね!!)
と心の中で叫んだ、それほど彼女は理想的な 走りができていたのである、もちろん冷静さも忘れてはいない。
ハリアー達が向正面へと入った
『レースは向正面へ、先頭サイレントハントその後ろ2番手ウンガリオ、そして3番手をゆくエルコンドルパサー、内にいるのはエアコンボハリアー、その後ろにはキンイロリョテイ、そしてスペシャルウィーク、その後ろ内からエアグルーヴ、2バ身差でカンダノが中団の位置、内にフェイスフルアトン、外にはラファイエットで中団グループを形成後団は更に2バ身離れシルクジャスティー、ゴーイングスズヤ、あるいはマックスジース、そしてチーフダイアベア、しんがりはユーセイトップスです』
ポッ…ポッ…
「あっ、降ってきた」
ランスが空を見上げてそう言う。
サアァァァァァ…
「雨ぇー、これ、ヤバくない?」
「全力レースの真っ最中なのに…」
「よく言うじゃん?雨は降り始めた直後が一番怖いって」
「あっ分かるー私なんか、河川敷をランニングしてる途中でゲリラ豪雨に見舞われてさ、止まろうとしたらめっちゃ滑ったー」
「そうそう、私達、蹄鉄付けてるから一度滑ると上手く転ぶぐらいしかなくなるんだよねー、このレース、後半が荒れそうだね」
私からさほど遠くないところに居る中央の生徒の会話が聞こえてくる、雨の降り始めは、芝に染み込んだ汚れとかが水で浮き上がって滑りやすくなる、そして、私達の靴は蹄鉄シューズ、人間達が野球やサッカーとかで使ってるスパイクとかと違ってとげは無い、つまり、アーチ型の鉄板がひっついているだけだ、だから物凄く滑りやすくなる。
「チハ、どうだ?」
「……ハリアーにペースを落とす素振りは見られないわ、かと言ってキレた走りをしてる訳じゃない、皆の情報をうまく使って、冷静に走れているわね」
軽鴨トレーナーとチハがそう会話する、私はトレーナーの方を見る。
「…………」
やっぱり、難しい気持ちなんだ。
トレーナーはレーサーだった、「雨が降れば、芝もアスファルトも滑りやすくなる」…
そう言っていた。
トレーナー自身は雨の日のレースが好きらしい、そしていつ雨が降っても良いようにと、雨でも外でトレーニングをする。
でもトレーナーはその雨の日のレースで死んだ身でもある、だから複雑な気持ちなんだろう。
『レースは向正面へ、先頭サイレントハントその後ろ2番手ウンガリオ、そして3番手をゆくエルコンドルパサー、内にいるのはエアコンボハリアー、その後ろにはキンイロリョテイ、そしてスペシャルウィーク、その後ろ内からエアグルーヴ、2バ身差でカンダノが中団の位置、内にフェイスフルアトン、外にはラファイエットで中団グループを形成後団は更に2バ身離れシルクジャスティー、ゴーイングスズヤ、あるいはマックスジース、そしてチーフダイアベア、しんがりはユーセイトップスです』
ポッ…ポッ…
サアァァァァァ…
(…来た!!よし…雨の走り方は…アラが教えてくれてる…!!)
地方所属のエアコンボハリアーは本来はダートウマ娘である。芝メインのエルコンドルパサーに対しては分が悪い。
そして、東京レース場の向正面には登り坂がある。こちらは全ての出走ウマ娘に等しく襲いかかる傾斜であるが、日本ダービーに出走したエルコンドルパサーはもちろんそれを経験済みであった。
それ故、エアコンボハリアーはV-SPTの応用で無駄なくストライドとピッチを切り替える事ができるとはいえ、かなり不利である。
そのため、エアコンボハリアーは、火喰とエアコンボフェザーのアドバイス、そして同期の四人からもたらされた情報から、いつもより少し控え、先行しつつもスタミナと末脚を温存する作戦を立てていたのであった。
そして、雨のため、バ場の状態は変化し、ウマ娘達もその走りのペースが変化する。しかし、エアコンボハリアーはアラビアントレノから雨の日の走り方を教えてもらっていた。すなわちエアコンボハリアーの作戦の効果が出やすくなったということである。
(…出来れば降ってほしくなかった)
一方で、エルコンドルパサーは雨を嫌がった、ここから先の第3第4コーナーは下りであり、スピードを出しすぎると滑って事故になる恐れがあったからである。
『さあ、各ウマ娘、向正面を駆け抜け第3コーナーカーブへ入っていきます、サイレントハント、リードは3バ身、2番手はウンガリオ、そしてその次にはエルコンドルパサー、エアコンボハリアー、キンイロリョテイ、スペシャルウィーク、エアグルーヴと続く!』
(エアコンボハリアーなら、この雨、それに外からでもコーナーリングが速いはず…)
エルコンドルパサーはエアコンボハリアーが外から差して来ると予想し、警戒した、そして日本ダービーの時とは異なり、少し外寄りを選択したのである。
しかし、予想と現実は違っていた。
(さあ…勝負だ!!)
エアコンボハリアーは内側を選択したのである。
(無茶、そんなスピードで行ける訳が無い!!地面か内ラチにドカンと行くのが分からないの!?)
エルコンドルパサーは動揺し、エアコンボハリアーの方を見た。
(行ける、手応えはある、あたしが今まで積み上げてきたものが、行けると教えてくれてる!!)
そして、エアコンボハリアーは内を取ってV-SPTを使い、更に身体を若干内ラチ沿いに傾けた変則的なフォームを取った。
(そして、チハとアラのおかげで分かったあんたの弱点は……“あり得ない”にメンタルがついていけない事だ!!)
『残り800m、サイレントハントが縦長の展開に持っていった、2番手ウンガリオ、3番手がエアコンボハリアー、そしてエルコンドルパサー、スペシャルウィークにキンイロリョテイ、エアグルーヴが内を回る!!大外からはチーフダイアベア!!』
「ハリアー、雨だってのに全くペースを落とすつもりが無いな!」
「しかも、身体を傾けて曲がるのに使ってやがる、勝ちに来てるってことか!!」
「すげぇ!」
雁山、雀野、軽鴨は興奮気味にそう言った。
「見てるこっちがヒヤヒヤする、金縛りになっちゃいそうだよ!!」
セイランスカイハイは隣りにいるキングチーハーの肩を叩きながらそう言った。
エアコンボハリアーは身体を傾ける事で遠心力を軽減し、スタミナを更に温存していた。
そして、その状態のまま最終直線へと入ってゆく。
「…勝ったな」
サカキムルマンスクのトレーナーはそう呟いた。サカキムルマンスクは怪我の後にサポートウマ娘に転向しており、“ある目的”のために猛勉強をしていた。そして彼はそれを支えるため、彼女の代わりにジャパンカップの観戦を行っていたのである。
(コーナー出口の立ち上がり…行ける!!)
ドォン!
『第4コーナーを抜けてエアコンボハリアー、凄い脚だ!!まだこの脚を残していた!!400を切ってサイレントハントをやすやすとパスしてゴールへと駆けてゆく!それを追うエルコンドルパサー、間からエアグルーヴ、外からスペシャルウィーク!!』
(末脚はまだ残ってる、そしてこの雨…行ける!!)
ドォン!!
『先頭エアコンボハリアー、坂を登りきって後続を離してゆく!!エルコンドルパサーが2番手で猛追、エアグルーヴは3番手!!エアコンボハリアー、今、ゴールイン!!』
エアコンボハリアーはエルコンドルパサーの猛追を振り切り、ハナ差でゴールした。
「エルが…」
「負けた…?」
「マジかよ!?」
「有り得ない…」
「……」
そして、観戦していたチームリギルの面々は驚愕したが、シンボリルドルフとマルゼンスキーは複雑な表情をしていた。
「……彼女は“
東条はチームの面々を落ち着かせるためというよりは、自分に言い聞かせるようにそう言った。
「勝った…」
着順が確定した後、エアコンボハリアーは掲示板を見てそう呟き、観客席のアラビアントレノらがいる方向に向け、サムズアップをした。
「うわあぁぁぁぁぁぁっ!!」
そして彼女は泣いていたスペシャルウィークの横を通り過ぎ、地下バ道へと向かった。
「エアコンボハリアー、待って下サイ」
「……」
ウイニングライブ後、エルコンドルパサーはエアコンボハリアーを呼び止めた。
「……何か?」
「……何故…あんな無茶をしたんデスか?あんなスタンドプレー…スリップしたらアナタは間違い無く内ラチか地面に頭をぶつけてました」
エアコンボハリアーはエルコンドルパサーを見た。
「違う」
「違う…?」
「無理だと思えば、あたしは行かないし、あんなのはスタンドプレーのうちに入らない、あの時は行けると分かってたから行った、もちろん、あのフォームにだって意味がある」
「…ッ!」
エルコンドルパサーは悔しさを顔に浮かべ、耳を後ろに反らせた。
「それと…未熟者のあたしが言うのも何だけど、今日のあんたの走りは荒すぎる、最後のストレートは長いから、スタミナの勝負になることは読んでた、今日のレースは強敵揃い、そしてレース中の雨、精神面での負担も大きい、闘争心を出しすぎてスタミナの残量に気づかなかったんじゃないの?」
「…」
「今日みたいな状況でも、あたしはコーナーで踏ん張るためのパワーを維持しつつ、末脚を十分残しておく走りができる、つまり、あたしとあんたのトレーニングの差だよ」
「……ッ!」
「最後に…あんたは一つ大きな勘違いをしてる、あんたは自分や周りのウマ娘達が思っている以上にメンタルが弱い、それが今日、改めて浮き彫りになった」
「改めて…?」
「秋天、思い出してごらんよ」
そう言って、エアコンボハリアーは歩き去っていった。
「……ワタシが…アラビアントレノを恐れたのはメンタルが足りなかった…そういうことデスか?…なら…ワタシは、自分の弱さのせいで…世の中を…動かしたってこと…?」
一人残されたエルコンドルパサーはそうつぶやく。
「…でも…ワタシだけじゃない…バートだって、変なものを感じてた…」
エルコンドルパサーはメジロランバートがセントライト記念にてアラビアントレノに恐怖を感じたことを思い出す。
「今のワタシ…いや、ワタシ達には…何が足りないの…?」
エルコンドルパサーは天井を見てそう呟く。
「エル!」
すると、グラスワンダーがやってきてエルコンドルパサーの肩を掴んだ。
「グラス…」
エルコンドルパサーは力が抜けたようにグラスワンダーに寄りかかった、その目は赤くなっている。
「グラス…ワタシは…弱いですか?」
「……私は何も言えません、貴女が恐怖を感じた秋天でも、このジャパンカップでも走っていませんから」
「グラス…」
「エル、過ぎてしまった時間というのは、取り戻せません、そして…自分の純粋な気持ちとはいえ、世間を動かしてしまった貴女には、これから厳しい目が向くかもしれません。ですが、貴女にはまだこれからがあるではありませんか。エル、自分が弱いと感じるのならば、強くなりなさい、敗北を糧に、そして足りないものを見つけなさい」
グラスワンダーはエルコンドルパサーにそう言い聞かせた。
私達はライブを終えたハリアーを出迎えた。
ハリアーの走りは、圧巻の一言だった。
あんなに凄いものを見せつけられると、身体がムズムズして、じっとしていられなくなる。
「皆」
「…ハリアー?」
「ありがとう」
ハリアーは私に頭を下げた
ありがとう…何故…?
「えっ…?」
「アラに勝ちたかったから、あたしはエルコンドルパサーに勝てた。」
ハリアーは私達を見てそう言った。
「ハリアーもたまにはそんなことを言うんだね〜」
ランスがハリアーに対して、いたずらっぽくそういう。
「ランス、さっきのレースに一番大興奮してたのは、どこの誰かしら?」
「げっ…」
そしてチハが突っ込みを入れた。
「まあ大興奮していたのは、私もそうだから、あまり人のことは言えないわね」
「私もです」
チハにワンダーが続ける、つまり私と同じ物を、皆さっきのレースで感じていたってことだ。
「なら…私達はお互いに刺激し合える大切な存在って事かぁ、良いねぇ」
ランスが嬉しそうな表情を浮かべ、そう言った、歩む道は違えど、私達は、互いに刺激し合える大切な存在…
セイユウ、私は貴方の押し付ける強さより、仲間との関わりの中で得られる強さが欲しい。
そして知ってもらいたい…この世界は、前世と違うということを。
エアコンボハリアーは、多くの報道陣に囲まれ、インタビューを受けていた。そして、アラビアントレノらは、影からそれを見守っていた。
「エアコンボハリアーさん、今日の勝利に一番貢献したものとは何でしょうか?」
「…物凄くハードなトレーニング…と言いたいところですが、違います」
「違う…?どういうことでしょうか?」
「まず、私は今回のジャパンカップに望むにあたり、数年前に優勝したあるウマ娘のことを参考にし、とにかく情報収集を行いました」
「情報収集ですか」
「はい、ですが、私はそのウマ娘に比べると、まだまだ未熟者、情報収集を仲間達に手伝ってもらいました、今回の勝利は、その情報収集で対戦相手の弱点が分かったからこそ、掴み取ることが出来たものだとおもいます」
「なるほどなるほど…」
エアコンボハリアーの言葉を聞き、記者たちはペンを進める。
「そして、この勝利は私一人のものではないと、私は思っています」
「それは…?」
「…皆、こっちに」
記者の質問に対し、エアコンボハリアーはアラビアントレノらに対して手招きをして、共に並んで立つ。
「この4人は、福山トレセン学園の同期で、ライバルです、この4人が、今回の情報収集に全面的に協力してくれました、いや、それだけではありません、この4人は、いつも私と競いあってくれています。この4人に負けたくないという思いが、強豪たちを打ち破ることに繋がった一番の理由じゃないかと、私は思います」
「ふむ…そうですか」
記者はメモを取って時間を確認し、もう時間が残り少ないことを悟り…
「では、〆に一言、お願いしたいのですが、良いですか?」
と言った。エアコンボハリアーはアラビアントレノ達を見て、少し考える様子を見せ…
「今日掴んだ勝利は、ここにいる4人をはじめとした、多くの人々によって、得ることが出来たものです。私達は、ひとりでは強くなれません。」
と言った。
『この4人が、今回の情報収集に全面的に協力してくれました』
そして、インタビューの中継を見ていたエルコンドルパサーとグラスワンダーは、ある重大な事実に直面していた。
「まさか…あの二人が…」
グラスワンダーは驚き、目を丸くする。何故なら、画面の向こうには、ファン感謝祭の時にエルコンドルパサーと共に案内して回った二人が映っていたからである。
「あの娘は…!」
エルコンドルパサーは、自分を追いかけ回していた相手がキングチーハーであることに気づいた。
「………」
そして、その様子を見ていたシンボリルドルフの脳内には、数年前、オグリキャップとタマモクロスが競い合ったジャパンカップでの苦い思い出が浮かんでいた。
「……!」
そして彼女は、何かを察したかのような顔で、その場を後にした。
お読みいただきありがとうございます。
新たにお気に入り登録、評価、そして誤字報告をしていただいた方々、ありがとうございますm(_ _)m
今回はエアコンボハリアーの勝負服のデザインを載せておきます。イメージしたものは零戦や疾風などの戦闘機です。
【挿絵表示】
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