【更新未定】This sky is… 天駆ける流星【供養】   作:アママサ二次創作

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 スマホから流れる音楽に気づき、翔は模型製作の手を止める。その音楽は、最も親しい、交友関係の薄い翔にとっては唯一の親友と言える相手からの連絡を表していた。

 

「もしもし」

 

『翔、俺の方はもうソフト届いたぞ。そっちは?』

 

「あ」

 

 忘れたいたことを思い出して翔が声を上げると、電話越しに通話相手の呆れが伝わってくる。

 

『あ、ってお前、また忘れてたのか。せっかく教えたのに』

 

「なんか俺宛ての荷物が届いてるとは思ってたけどもう少しで腕が組み上がりそうだったから放置してたわ」

 

『わかったからはやく取ってこい』

 

「了解了解」

 

 通話をつないだまま急いで作業途中の部品や道具を片付け、玄関へと向かう。そこには今朝受け取ったばかりのダンボールが壁に寄せられて置かれていた。

 

「これがそうか……テンション上がってきたー!」

 

 荷物を持って部屋に戻った翔は、ダンボールの中身を見て喜びの声を上げる。そこに入っていたのは、シンプルなロゴで『Dawn Odyssey』と書かれたゲームソフトのケースだった。

 

 『Dawn Odyssey』は、夏休み初日の今日の午後から稼働開始予定の最新のVRMMOである。

 

『今まで忘れてたやつの台詞かそれが』

 

「仕方ないだろ、待ってたら楽しみ過ぎてなにも手につかんから忘れるようにしてたの」

 

『配達の日まで忘れてちゃあ世話ねえよ』

 

 通話の相手の上地佑(かみちゆう)は、翔の小学生来の、有り体に言えば幼馴染という関係にある友人である。ゲーム好きな彼は翔からあるお願いをされており、今回ようやくその願いに応えることが出来たためこうして確認の連絡をしてくれたのだ。

 

「今から思い切り楽しむから大丈夫。それより佑、これ他のゲームと同じ感じで初めていいのか?」

 

『この前一緒に設定いじっただろ? それでそのゲームに対応するようになってるからいつもどおりで入れるはずだ』

 

 何が大丈夫なのかわからない答えを翔が返すのはいつものことで、佑もさらりと聞きながして説明する。それを聞いた翔は、以前他のゲームを遊んだときのことを思い出しながらゲームを始める用意をする。

 棚に置いてあったゲーム機をコンセントと通信ケーブルに繋ぎ、カセットをスロットに差し込んでヘルメットのようなヘッドセットを被る。これで準備は万全だ。

 

『準備出来たか?』

 

「できた! 電源入れるぞ!」

 

 佑の言葉に答えた翔は、ベッドに横になってゲーム開始の操作をする。

 

『あ、ちょっと待て、その前に説……』

 

 呼びかける佑の声は、ゲーム開始直後の浮遊感の中にいる翔の耳には全ては届かず、やがて薄れる視界とともに途切れた。

 

 

******

 

 

『ようこそ Dawn Odessey の世界へ』

 

 自分に向けられた声に目を開けると、『Dawn Odessey』という機械的な文字列が目に映る。周りを見渡すと、白一色の空間が広がっていた。

 

「何だこれ。ロード画面か?」

 

『ゲーム開始前のアバターとか色々の設定をする場所だよ。人が説明しようとしてるのに突っ走るな馬鹿』

 

見慣れないその空間に翔が声を上げると、ここにはいないはずの友人の声が聞こえてきた。

 

「佑?」

 

『別の場所から通話してる。もう初期設定は始まったか?』

 

「いや、えっと……」

 

 白い空間で何か目印になるものが無いかと探す翔の耳に、機械の音声が響く。

 

『《Dawn Odessey》インストール完了。セットアップを開始します』

 

「セットアップ中みたいだな」

 

『ならそれが終わるまでは待ってろ。説明はアバター作りながらするから勝手に進めないでくれよ』

 

「了解であります! 鬼軍曹殿!」

 

『……ふざけるなら教えないぞ』

 

「すまんかったと思ってる」

 

 真面目に話す佑に対して翔がふざけるのはいつものことだ。慣れている佑はため息をついて、セットアップが終わるのを待つことにした。

 

 

******

 

 

 大空翔は、ロボットが大好きである。

 

 機械やメカが好きなのもあるが、とにかく人型をしたロボットが好きなのである。人間には不可能な運動を、機動を、スラスターやアンカーといったロボットならではの装備、能力によって実行してしまうかっこいい存在としてのロボットが好きなのだ。

 

 翔が初めて機械に触れたのは、まだ歩くこともままならなかった1歳の頃のことである。生来の機械好きとして整備士として働いている父が、母親に呆れられながらも翔に色々な機械を触らせたのだ。そして家族の予想に違わず、翔は機械が好きになっていった。

 

 そんな翔が初めてロボットを見たのは、5歳のときのことだ。父が翔に見せた様々なアニメの中で、子供向けの色々な物語に混ざってそれは存在した。

 戦車よりも速い速度で縦横無尽に地上を走り回り、戦闘機よりも自由に空を飛び回る人型のロボット。あまつさえその機械の体で格闘戦を行ってみせた。

 

 それを見た翔は、すぐにそのロボットに魅了された。初めは両親に頼み、そのかっこいいロボットの出てくるアニメをいくつも見た。

 そんなかっこいいロボットを現実に見たい、目の前で動いているところを見たい、と思い始めるのに時間はかからなかった。

 しかし、もちろんそんなものは現実には存在しない。今であれば技術的な問題だけでなく様々な理由があると理解できるが、その頃の翔には理解できなかった。なぜあれほどかっこいいのに存在しないのか、と。

 

 そんな翔に両親が見せてくれたのが、ロボット同様に重々しい砲撃を行う戦車や、高速で飛翔する戦闘機だった。

 それを見た周りの見物客たちが大きな歓声を上げる中、翔は一人、その迫力に驚くと同時に確かな物足りなさを感じていた。

 

 彼は戦車や戦闘機、重機などといった機械そのものも好きであるのだが、その中でも特に自由に戦う人型ロボットが大好きだな少年だったのだ。戦車や戦闘機では、彼の想像の中にいる人型ロボットを超えられなかったのである。

 

 とはいえ、彼の望むようなかっこいい動きのできるロボットが実現されることはない。

 小学校低学年から高学年へと成長するにつれ、現実には自分の思い描くそれは存在しないのだと翔は理解し、自分の手でロボットの見た目を作り、それを想像の中で動かし初めた。

 

 小さい頃から祖父の工場で培った機械いじりの技術は、ロボットのプラモデルや、更には自作の精密なロボットの模型に向けられていった。

 そして次第に、かっこよさへの憧れを打ち消すように、見た目だけでなく構造まで精密に再現した模型を作るようになっていった。

 

 だが、いくら精密なロボットの模型の制作に凝っていたとしても、彼の心のそこにはいつも、機械としてのロボットではなく、自由に動き回り戦うかっこよさの象徴としてのロボットへの憧れがあった。

 

 そんな翔の心の底にある、本人も押し隠してしまったような憧れを唯一理解していたのが、親友である佑だった。

 

 模型作りに励む翔を見て両親や祖父が彼が満足しているのだと思う中、誰よりも長く子供としての翔と向き合ってきた佑だけが、彼が憧れを打ち消すために再現に躍起になっているのだと気づいていた。

 

 至極当然な話である。目の前に夢見た動きをするロボットがあったとして、果たしてロボットの模型を作り続けるだろうか。自分がそのロボットのようにかっこよく戦えたとして、いつまで偽物を作り続けるだろうか。

 

 それを、佑だけは知っていた。知っていて、そんな憧れをすくい上げることこそ佑自身の愛するゲーム本来の役割だと思い、彼に様々なゲームを勧めた。

 

 初めは、お金が無い中で安く揃えることのできるコントローラーで遊ぶことのできるゲームばかりだった。そのうちいくつか、特に有名なアニメを題材としたロボットが激しく飛び回って戦うゲームや操作の自由度の高いゲームを翔は楽しんでプレイした。その中でも攻略サイトや佑からの情報に頼ることなく独自の戦い方を見つけて遊ぶことが多く、純粋にゲームを楽しんでいる姿を見た佑は嬉しく思った。

 

 だが、実際に自らの身体で感じることのできるVRゲームを紹介しても、翔はほとんどプレイしなかった。これならば、と佑が思った戦闘機やロボットを操縦するゲームも、少し触れただけですぐにやめてしまった。

 

 『コントローラーのゲームなら、自分のやりたいように動かすのが楽しいで遊べる。でもVRは、体で感じられる分、面白いところがあっても思ってるのと違うってのが悲しくなる』と。

 

 そう感想を述べた自分を見て悔しがる佑に、翔は一つお願いをした。

 

『機械があってさ。でも戦闘機とか戦車みたいに不自由なんじゃなくて、ロボットみたいに自由に走り回って飛び回れるゲームがあったら教えてくれよ。あ、でもコックピットに入るよりは、俺がそのロボットみたいに動けたほうが嬉しいな。後やっぱり戦いたい。俺はゲームは詳しくないから見つけられないけど、佑なら見つけてくれるって信じてるぞ』

 

 それから3年の月日が立ち、変わらず模型やエンジンのレプリカ制作と、新しく3DCGによる動くロボットの映像の制作を初めた翔に、随分と久しぶりに佑がゲームを勧めてくれた。

 

 それが、《Dawn Odessey》。プレイヤーが、機械の鎧を身にまとって戦い、冒険するゲームだ。

 

 それをβテストで体験した佑は、これなら翔の願いが、『あのロボットのように機械の力を借りて、人の体よりも自由に大地を、そして空を動き回り戦ってみたい』という願いが叶うだろう、と期待をこめて勧めたのである。

 

 結果、翔は今ゲームの中にいる。ゲームをできるのを楽しみにしながら。

 

 

******

 

 

『セットアップが完了しました。初期設定を行います。アバターの作成を行ってください』

 

 アナウンスが流れると同時に、自分と同じ背格好のアバターが目の前に回り始める。

 その前に浮かんでいるウインドウをスクロールしてみると、名前や種族と言ったシステム的設定から、性別、身長、肩幅、顔つきなど見た目まで様々な項目を操作できるのが見て取れる。

 

「佑、セットアップ終わった。アバターの作成できるぞ」

 

『OK。このゲームはアバターは戦闘とかの性能にはほとんど関係ないから、好きなように作って大丈夫だ。まあデカかったら被断面積が増えるし小さかったら格闘戦が不利になったりするが、普通のお前と同じサイズならどっちも問題ない』

 

「なるほど。じゃあもう現実のまんまにしてもいいのか?」

 

『お前整った顔してるし良いんじゃないか? 髪の色ぐらいはいじったほうが新鮮だと思うが』

 

 自分もアバター制作をサクサクと進めながら、佑は翔の疑問に答える。

 

「髪かー。染めたこと無いんだよな」

 

 翔の身長は170センチほどで太ってもおらず痩せてもおらず、少ない脂肪に適度に筋肉のついた見た目は悪くない体型をしている。現実をそのまま反映しているアバターの初期設定の目と髪は日本人らしく黒色だ。

 

 試しに髪と目の色を変えてみて、派手すぎず、しかしファンタジーらしさのある明るい銀色を髪に、暗めの灰色を目にセットする。

 髪型はかなり短く刈り上げた現実世界と近い髪型をプリセットの中から選択した。翔はおしゃれなどに疎く髪型も詳しくないため、下手に弄って変な見た目になると困るのだ。また現実と違う長い髪にしてしまうと、違和感やそもそも長い髪が鬱陶しいのが相まってプレイの邪魔になりそうだったの嫌だったのである。

 

 アバターの作成を終わった翔は、確認を押して『未入力の項目があります』と渓谷を受ける。

 

「あ、名前つけてないわ。なんにしよ」

 

『俺はタスクにした』

 

「なるほど。俺はライトにしとくかな。気取った名前は恥ずかしいし」

 

 今度こそアバターの作成を終えて確認を押すと、体が薄く光り今作成したアバターに変化する。

 

「変わったかどうかまったくわからん」

 

 変更した場所である髪を触りながら翔がつぶやくと、タスクから返事がある。

 

『鏡があるだろ』

 

「あ、ほんとだ」

 

 先程アバターが浮かんでいた場所に出現した姿見の正面に立ち、自分の姿を確認する。

 

「ちょっといつもより引き締まってる、か?銀髪結構良いかも」

 

『満足だったらもう一回確定を押せ。それで次の項目に進むから』

 

「はい、ぽちっとな」

 

 言われたとおりに確定を押す。

 

『最初に装備するInner gear及びMagi machina unitを設定します。それぞれの一覧から一つずつ選択してください』

 

 アバターを決定したことで、設定が次の項目に進む。再び全身のアバターが表示され、その隣に今度は二枚のウインドウが表示される。

 

「これは?」

 

『今説明があったとおり、このゲームのプレイヤーはInner gear(インナーギア)Magi machina unit(マギマキナユニット)という二つの装備をつけて、そこに武器を装備して戦うことになる』

 

どうせ攻略サイトを見てないだろうとあたりをつけた祐は、すぐに説明を始める。

 

「ほんほん?」

 

『とりあえずInner gear(インナーギア)の方からどれか選んでみろ』

 

 翔が一番上のType-Aと銘打たれたギアを選択すると、目の前のアバターの衣装が代わる。と同時に、自分の体にも同様の装備がつけられた感覚がする。

 

 変化があったのは上半身で、赤い裾の長い半袖にインナーが手首まで伸びていたのだが、今は背中の部分に服の上から薄い機械が張り付いており、その機械が背中の半分ほどと肩口までを覆っている。

 

 機械の中心部分には何かが入っていそうな膨らみがあり、上部にはキャップ、そして背中の中心部分には後ろに向けて大きな穴と幾つかのジョイントがある。

 

「なんか背中に張り付いてる。これ接続部分だろ?」

 

『ああ。それがInner gearと言ってプレイヤーとユニットを繋ぐ装備だ。それ自体は大した能力はないが、背中の中央の膨らみのところにエーテル・コアっていう、まあこのゲームにおける燃料が入ってる』

 

「ああ、どうりで」

 

『それじゃあ次に、Magi machina unitの方を一個選んでくれ』

 

 佑に言われるままにもう一つのウインドウからソルジャーユニットなる物を選択する。

 

 すると、先程のギアを覆う形で機械の鎧、というかパワードスーツが出現する。ギアとは違って、手足の先や体の前側、頭部までを覆っている。顔の部分は露出しているものの、バイザーらしきものが顔の半分ほどを覆っている。

 

「鎧が出てきた」

 

『それがユニットだ。ギアの上から装着することで稼働する。ちなみに、鎧じゃない見た目をしたユニットもある』

 

「ほーん」

 

『後はとりあえずウインドウの説明を見ながら選択してみてくれ。とりあえずユニットから決めて、それにあったギアを選択するといい』

 

「なるほど?」

 

『まあわからなかったら聞いてくれ』

 

「りょうかいりょうかい」

 

 佑に促されるままに、一通りユニットを選択してみてはそれぞれに付随する説明の文章を読んでみる。戦闘用から支援用、輸送用まで、少なくない種類のユニットが存在するようだが、翔はその中から目ぼしいユニットを4つ選び出す。

 

 重装甲と高火力が謳い文句の『アサルトユニット』。

 アサルトよりは小型で近接戦特化の『ストライカーユニット』。

 万能に様々な武器を扱える『ソルジャーユニット』。

 唯一空を飛べる『フライトユニット』。

 

 翔にとっては、人型ロボットといえば人型の利点を生かした高速の白兵戦が魅力だ。かといって、銃を扱う万能さも捨てがたい。そんな考えから選んだ4種類だ。この中から、佑の説明を聞いて使うものを決めるつもりである。

 

「佑はどうするんだ?」

 

『俺はひとまずソルジャーだな。ユニット自体はゲーム内で買ったりして別の系統を使う事もできるから、最初は万能なソルジャーが都合がいい。どっちにしろ他もいずれ揃えるつもりだしな』

 

「なるほど。となると俺はソルジャーはやめておくか。うーん、空中戦もやってみたいし、地上も捨てがたいんだよな」

 

 翔が悩んでいると、通話の向こうからアドバイスが飛んでくる。

 

『個人的におすすめ、というか見てみたいのはフライトユニットだな』

 

「飛べるけど一番使いにくいユニット、だったよな?」

 

 事前に佑から聞かされた話を薄っすらと思い出しながら翔は尋ねる。

 

『そうだな。まあ飛ぶだけなら難易度がそこそこ高いぐらいで割と誰にでもできるんだが、自由自在に飛び回るってなると相当難しいんだよな。ユニットの操作の仕方も難しいし、ユニットそのものの改造も難しい。お前ならそれをうまくやってすごい動きしてくれそうだと思ってな』

 

「確かに、それはかっこいい、てかロマンだから絶対にやってみたくはある。……思ったんだけど、フライトユニットの飛行ユニットにソルジャーの足つけて地上も空中も、ってことは出来ないのか?」

 

 通話の向こうから沈黙が帰ってくるので、翔は疑問に思い声をかける。

 

「おーい?」

 

『……βテストのときは出来なかった、って話があった気がする。そもそも出来てしまったらゲームバランス的にもまずいからな。システム上どっちかに区分されて機能が制限されるとは思う。後はフライトユニットの重量オーバーもありそうだしな。ただ改造次第で、お前が本当に構造とか仕組みを理解して改造したらやってやれないこともないかもしれないような気がするんだよ』

 

「可能性めちゃくちゃ低いじゃねえか」

 

『普通じゃないからな。普通改造するって言ってもそれぞれのユニットの区分は守られるもんだし』

 

「流石にそんな甘くないかー」

 

 普段は地上で格闘戦、射撃戦を演じ、そのまま空中に飛び上がって空中戦をする、というのを想像したのだが、そうはいかなそうだ。

 

『気になるなら自分で試してみてくれ。俺はお前と違って機械はいじれないからこのゲームの改造もほとんど出来ないんだ』

 

「了解。ならまずはフライトでやってみるか……。一番難しそうだし、飛ぶのも楽しみだしな」

 

『だろうな。まあ他のユニットがやりたくなったら後からつけ足せばいい』

 

「だな」

 

 翔は悩んでいたが、長年彼を見てきた佑からすれば、機械いじりが大好きで、ロボットが大好きで、ゲームでは難しいキャラクターが大好きな彼がフライトユニットを選ぶのは最初から予想できていたことだった。

 

 フライトユニットを選択し、Inner gearはフライトユニットとの適正が一番高いType-Bにして確定を選ぶ。

 

 もうすでに翔の心は他のユニットの事を忘れ始めていた。自由に動き回り戦う人型ロボットの中でも、空中戦、宇宙戦というのは特に心ひかれる部分なのだ。

 

『ポイントボーナスを獲得します。初期生産特典により二〇〇ptsが加算されます。合計ポイントは一二〇〇ptsです。一覧から取得するボーナスを選択してください』

 

『そしたら次の設定するぞ』

 

「ほいほい」

 

『ポイントボーナスのウインドウが開いてるだろ?』

 

 目の前のウインドウの一覧をめくると、確かに様々な物がポイントと交換可能になっている。

 

「イエス」

 

『ゲームを始める前にスキルとか武器とかが入手できるようになってる』

 

 一枚目のタブには、ハイサーベル100pts、ハイレイピア100ptsといった武器やアイテムが、二枚目のタブには【MP増加・大】600pts、【AP増加・大】500ptsといったスキルが並んでいる。

 

「スキルっていうのは、プレイヤーにつく特殊能力ってことか?」

 

『そういうことだ。武器もスキルもポイントボーナスは強力な物が多いけど、武器とかスキルはゲーム内でも入手できる。だからお前の場合は、試してからやることを決めるためにも全部リラに交換した方が良いと思う』

 

 三枚目のウインドウを選択すると、『所持資金+20000リラ200pts』といった表示がある。

 

「最初に使う武器が一つくらいあった方が良いんじゃないか?」

 

『一応何も選ばなくても、最初に最低品質のサブマシンガンと剣がもらえるようになってる。それにお前の場合は、武器使う前に動いてみるだろ? だから後回しでいいと思う』

 

「当たり。何かしらあるならわざわざ用意しなくてもいいな」

 

とりあえず実戦に入る前にキャラクターの動きの限界を知る。それはコントローラーのゲームでもVRゲームでも変わらない翔の遊び方だ。

 

『何度も言うがスキルとか武器とかはゲームに入ったら手に入るから、それよりは中で欲しい物ができたときに買えるように金にしておいたほうが良いと思う。ユニットを作ってもらうにしろ自作するにしろ金はかかるし。それに武器も、普通のアサルトライフルとかサーベルじゃあ満足できないんだろ?』

 

「アンチマテリアルライフルとかないの。できればセミオートで」

 

 ポツリと、翔は自分の大好きな武器の一つについて佑に尋ねる。

 

『そんなの初期のフライトユニットが持ててたまるか。フライトユニットってのはほんとに飛ぶことに特化したユニットだからな。それがスナイパーライフルの中でもやばいそんなもの持てたら、スナイパーユニット使う人がいなくなるだろ。そもそもあれはボルトが基本だろうが。とりあえず、そういうもろもろをやってみてから選びたいなら金にしとけ。あ、ちょっと待てよ』

 

「おん?」

 

『フライユニットにするなら、【フライトユニット開発経験値増加】っていうスキルはとっとけ。次のユニットの開発が早くなる』

 

「ユニットの開発に経験値を使うのか?」

 

『経験値がたまると上位のユニットがアンロックされてくんだ。経験値っていうか開発ポイントとか研究ポイントって感じだな。そのあたりは始めてから教えてくれる相手を用意するから、とりあえず【フライトユニット開発経験値増加】だけとっとけ』

 

「なんか急いでんね」

 

『楽しみにしてるのがお前だけだと思ってるのか? 俺も楽しみすぎて早く入りたいんだ』

 

 のんきに言った翔に、佑は尖った声を返す。

 

「はい」

 

『わかったか? わかったらとりあえずスキルと金だけ取得する! お前も早く動かしてみたいだろうが』

 

「お前が友達で良かったと思ってる」

 

『やかましいわ』

 

 軽口をたたきながら【フライトユニット開発経験値増加】スキルを400ptsで取得し、残りを全てリラと交換する。

 

 ポイントが0になったら確定を選択し、最後に最終確認として表示されたウインドウでアバターやユニット、ポイントボーナスを確認して、最終確認を選択する。

 

『最終確認が行われました。初期設定を終了します。サーバーに接続します……接続完了しました。ログインします…………』

 

 ログインが始まると、周りの白い空間が光りに包まれ、視界が白色に染められていく。だが、目に痛みは感じない。

 

『ようこそ《Dawn Odessey》の世界へ』

『さあ、楽しい楽しいゲームの始まりだ』

 

親友と機械の歓迎の声に背中を押され、胸の高鳴りとともに翔、いや、ライトは、新たなる世界への扉をくぐった。

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