【更新未定】This sky is… 天駆ける流星【供養】 作:アママサ二次創作
ショップを出たライトは、早速街の外へとやってきた。
「タンクの切り離しってよく考えるとあれだな。俺が放り投げたライトSMGも街に戻ったら手元に戻ってきたしな」
ライトSMGとはライトが最初から所持していたサブマシンガンのことである。
『そうですね』
「それじゃあ離陸離陸、っとその前に数値の確認しとこう」
ライトが両肩、両足に装備した増槽は、全部でMP+120、主翼下部のものも2つで+120になる。通常販売されるものはもう一回り小型のものなのだが、ライトが積めるだけ積んでくれと頼んだ結果割高の大型の増槽になったのだ。
結果、現在のライトのMPはエーテル・コアの125も合わせて365となる。エーテル・コアしょぼいじゃんとは言わないお約束だ。実際に戦闘の際に増槽を切り離してしまえば、頼れるのはエーテル・コアのみとなる。エーテル・コアとはユニットが十全に能力を発揮できる状態でのMPを示すものなのだ。
「だいぶ伸びたな。これでパージまでさせてくれるのか。増槽様様だな。俺はプロペラントタンクの方が好きだけど?」
『どういう意味です?』
「なんかそっちの方が名前かっこよくない?」
『はあ』
どうやらライトのこだわりはアイラには理解できないようだ。というかおそらく大半のサバイバーも理解できない。
ライトが離陸の準備を始めるのに合わせてアイラは静かになる。飛行中のライトにアイラが出来ることはなにもない。
「んん、推力が足りないな。先に速度稼がないとだめか」
今までのライトは離陸してすぐに緩やかに上昇しながら速度をあげていたが、増槽分の重みがかかるためか速度が足りない状態では上昇がうまくいかない。
単純に推力が変わらないのに対してユニットの重量がましたため、加速がこれまでほど自由に行えなくなったためである。
そこでライトは、一度地面スレスレの飛行で加速した後、その速度を利用して一気に上昇する。それでも速度が次第に落ちていくが、失速してバランスを崩すことはない。
「うおー上がれる上がれる。すごいなこれ」
これまでライトは、ひたすら上を目指すというのをしたことがなかった。そのため把握していないが、これまでのMPで上昇できたのはせいぜいが300メートル。
それに対して現在はその3倍近いMPを持つため、かなりの高度まで上昇することが出来る。
「アイラ、これって増槽のMP残量はどうやったら確認できるんだ?」
『メニューウインドウの装備欄から確認できます。また設定を変えれば、通常のMPバーをより細かく表示しておくことも出来ます』
「なるほど」
言われるままにウインドウを操作すると、すでに右肩の増槽は空になっており、左肩の増槽の消費が始まっているのがわかる。
「消費する順番は設定でき……そうだな。設定しておこう」
ウインドウを操作している間にも、MPは減少していく。
「よし……パージ!」
切り離された増槽が落ちていく。ライトは最初に両肩、続いて足、最後に主翼下の増槽が使用されるように設定した。今パージしたのは両肩。左肩はまだMPが残っていたが、バランスを確認するために今回は切り離した。
「流石に外れるときに爆発したりしないか」
パージする際に蒸気が吹き出したり、爆発が発生したりするのを想像したのだが、よく考えればこれはただのタンクだ。外れる際も、ただ落着して落ちていくだけである。
「よし、高度はこれぐらいでいい。それじゃあ、旋回から、だな」
長い飛行時間を獲得したライトは、様々な機動を行う。初めは両足と主翼下部の増槽の重さがある状態で。続いて主翼下部だけの状態で。
残ったエーテル・コアのMPで無事街に帰還したライトは、もう一度飛び立ち更に複雑な増槽の組み合わせでの感覚を確かめていった。
「そう言えば、増槽にダメージを受けた場合って燃料漏れみたいになることはあるのか?」
『発生します。破損具合によって一定の割合で増槽内のMPが減少するようになっています。MPが誘爆して被害が及ぶことはありませんが、特定の増槽にダメージを受けすぎた場合はその増槽が破壊され切り離した際と同様に残っていたMPは失われます。また増槽のみに直撃を受けた場合でも、減衰はありますがAPにダメージを受けますので気をつけてください』
「なるほど。まあタンクで覆ったら無敵とか意味わからないもんな」
『ですが減衰率はかなり高く、また増槽そのものが壁となって追加装甲ほどではありませんが銃弾の勢いを減衰することもあります。貫通せずにユニットに直撃しなければダメージを減らせますので、有効な防御手段ではあります』
「ま、俺は当たらないことを目指すからそっちは基本的にはなしで」
『了解しました』
これまでとは違う感覚とはいえ重りの重さは常に一定であるため、ライトが慣れるのにそれほどの時間はかからない。増槽を購入してから3時間を超える頃には、増槽をフル装備した状態や中途半端にパージした状態でも無装着の状態とほとんど遜色ない飛行が出来るようになった。
一方で、最高速で飛行しようとする際には重りの影響でそもそも出来ない機動が存在することも把握できた。
「よし、確認終わり! 意外といけるなこれ」
昼前になり、マイルームに戻ったライトは一息つく。
「昼飯食った後は遠距離飛行かな……アイテムが取れる場所も見つけないと」
飛行時間はひとまず確保できたとはいえ、やることはまだまだたくさんある。それもこのゲームはなかなか楽しいのだ。
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「鉱石を取るなら山、かなあ」
高高度から、といっても地上の様子が確認しやすい200メートルほどの高さから、地上を見下ろす少年が一人。
『ライト、つかぬことをお聞きしますが、採取の方法は知っていますか?』
「え? 壁を掘って鉱石に当たるまで進むんじゃないのか?」
『いえ、そうではありません。後ほど地上に有りた際に確認しましょう』
「あほんと。じゃあその辺の草の中に薬草が混ざってて食べて回復したりポーションを作ったりは出来ないってことか?」
『そうですね。ポーションの生成に関してはまた別の問題がありますが、薬草系アイテムの採取に関してはそのとおりです。後ほど、薬草を例にアイテム採取を説明します』
「了解」
アイラの言葉に頷いたライトは、少し高度を下げながら飛行を続ける。もともと今回は街へと帰還するつもりはない。燃料の続く限り遠方を探索して、落ちて街へと戻るのだ。
足元に普通に歩いているプレイヤーがいるのは気のせいである。気の所為なのである。街から離れたここは、決して普通に来れる場所ではないのだ。
「あーいえー」
MPの切れたライトは、気の抜けた叫びをあげながら墜落していく。墜落の直前に驚くサバイバーの集団が見えた気がするが、気の所為に違いない。
「おっ、ちゃんとタンクが戻ってきてるな」
街に舞い戻ってすぐに装備を確認すると、パージした増槽が再び装備されていた。
「あ、一斉パージも試して見ればよかった。本番でのお楽しみにしとくか。それじゃあアイラ。採取に関して教えてもらえるか?」
『了解しました。まずは街の外に向かってください』
アイラに言われるままに、ライトは街の外へと向かう。
『採取において回収できるアイテムは、薬草や果物に加え、木材や鉱石など多岐に渡ります。ですが草や木、石であればなんでも良いというわけではなく、フィールド上に存在する採取ポイントからのみ採取をすることが出来るようになっています。試しに、左前方の木の根元まで行ってください』
言われるままにライトが近くの木の根元まで行くと、根本の草が僅かに発行しているのが見える。
「これか?」
『そうです。採取して見てください』
「普通に抜けば良いのか」
その草を抜いて回収すると、〈薬草を採取しました〉とログが表示され、薬草を獲得したことが示される。
インベントリを確認すると、確かに薬草が入っていた。
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[薬草] 品質G
自然に存在した薬草。薬草としての効果を発揮する最低品質。
AP+10 HP+10
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「APも回復すんのか。どういうあれ?」
『ゲームですので』
「あ、そう」
そこは深く考えても仕方がない。
「この最低品質ってのは? 採取場所の問題か?」
『ライトが採取行動に対応するスキルを取得していないためです。スキル【採取】保持者が高品質のアイテムを取得できる場所でも、スキル【採取】を取得していない場合は最低品質のアイテムしか取得できません』
「スキルの取得方法は?」
『主な方法としてはスキルショップでスキルブックとして販売されているものを購入するが出来ます。またスキルによっては、異なる入手方法が設定されているものもあります』
「というと?」
『詳しい方法はお教えできません。今すぐ入手したいのであればショップを利用することをおすすめします』
「自分で見つけろってことね。まあスキルブックの値段を見てから考えるか。近くのスキルショップまで案内しもらっても良いか?」
『了解しました』
スキルを持っていない状態では最低品質の薬草しか入手できない事がわかったので採取はそこでやめ、ライトはアイラに案内されて以前訪れたスキルショップへと向かう。
ショップにつくと、以前よりも多くのサバイバーが訪れていた。他のサバイバーも十分な資金が確保できた者が多く、スキルの検討に来ている者が多いのだ。
「店員さんは……忙しそうだな。自分で探すか」
棚に掲げられているラベルを頼りに探すと、すぐに【採取Ⅰ】と書いたスキルブックが見つかる。その隣にはより上位となるスキルブックも売っているようだ。
「Ⅱはだいぶ高いな……とりあえず様子がわからないからⅠにしておくか」
特に悩むこと無く決めたライトは、棚からスキルブックを取り出す。
「アイラ、スキルブックの場合はどうやって使うんだ?」
『スキルブックを読むことでスキルの取得条件が満たされ、スキルが取得されます』
「なるほど」
カウンターで会計を済ませたライトは、外に出て近くのベンチに座り、スキルブックを開く。
『ライト、読書をするのならカフェに行ってみるのはどうですか?』
「カフェ?」
『はい。《Dawn Odessey》では、ゲーム内での体験をより楽しんでもらうためにカフェや飲食店などの再現に力を入れています。食事や飲み物も現実世界と遜色ないものを提供できますし、雰囲気の再現も行っています。もしよろしければ、利用してみませんか?』
「じゃあ行ってみるか。宣伝上手だな」
『このゲームの魅力の一つだと自負していますので』
《Dawn Odessey》以前のゲームでは、ゲームとしての体験が重視されるあまり、食事や衣服といった現実でも体験可能な日常生活の多くが軽視される傾向にあった。
この《Dawn Odessey》では、その傾向を嫌った開発陣が食事の再現や衣服の快適さなどを現実のチェーン店やメーカーの協力のもとに力を入れて開発しており、ゲーム性とはまた別の部分で高い評価を受けている。
「俺カフェなんてまともに行ったこと無いんだけどな」
『……ご案内します』
「今呆れただろお前」