【更新未定】This sky is… 天駆ける流星【供養】 作:アママサ二次創作
「久しぶり」
「久しぶり。元気にしてたみたいだな」
「うん」
明けて翌日。家を訪れた従兄妹の奈緒と翔は短い挨拶を交わす。
「翔は、また模型作りしてるのかい?」
「まあいつもどおり。最近はゲームやってるからそんなに大規模なものは作ってないけど」
「ふーん。まだロボット作ってたんだ」
翔の返事に、彼女は興味が薄い様子だ。だが、翔の続く一言で表情が変わる。
「最近は飛行機もちょっとやってるぞ。まあゲームで必要だったからだけど」
「え、飛行機? どういう風の吹き回しだい?」
翔はこれまで、彼女から飛行機の話をされても興味を示さずに来た。むしろ現実に存在しているそれへの嫉妬心もあって忌避すらしてきた。積極的に避けるというわけではないが、自ら知ろうとはしてこなかったのだ。
「だからゲームで飛行機関連の知識がちょっと必要になったんだって。そしたら意外と面白くてな。もちろんモビルスーツの方が面白いけど」
「ふーん。まあボクは飛行機の方がかっこいいと思うけど」
「さいですか」
「飛行機の模型も?」
作ってるのか、と尋ねる奈緒に翔は頷く。
「簡単なものだけどな」
「見せてほしい」
「はいはい」
飛行機と聞いてテンションの上がった奈緒に迫られ、翔は彼女を作業部屋へと案内する。作業部屋といっても翔の自室であるが。
「うわっ、相変わらず散らかってるね」
「悪かったな。ほら。これだ」
作業台の上から回収した数個の模型を、奈緒の方へと放る。
「わっ、とと。壊れたらどうするのさ」
「設計図は残ってるしもう頭に入ってる。ほしいならやるぞ」
「別に良いけど……ううん、もらっとこうかな。結構丁寧だね。」
「どーも」
奈緒の世話をしろと両親からは言われていたが、その奈緒の意向で作業部屋にやってきた翔は、これ幸いとばかりに模型作りを始める。
「あ、ちょっと。放っておかないでよ」
「奈緒も俺と遊びたいってわけじゃないだろ。部屋は好きに使ってもらって構わないから、適当にしててくれ」
「まったく。相変わらず可愛げがないね。かわいい女の子が来たんだからちょっとぐらい構ってくれても良いだろ」
奈緒は、確かに見た目は可愛い。それこそ、田舎の学校では幾度も告白を受けているぐらいには。とは言え、翔はその容姿には見慣れているし、女性よりロボットな翔だ。
「自分で言うな」
「みんなから言われるからね。今作ってるのは戦闘機? それにしては……」
作業している翔の手元を後ろから覗き込んだ奈緒が、翼とエンジンを見てそう尋ねる。
「戦闘機ではないかな。今やってるゲームで、こんな感じの装備があるんだよ」
そう言いながら、ライトはパソコンのモニターに写っている設計図代わりのポリゴンを示す。今はまだ出来ないが、ゲーム内でいずれは作りたいと思っているフライトユニットを3DCGで描いて模型を作っているのだ。
「え、これは……」
「知ってるのか?」
翔の問に答えること無く、奈緒はスマホを操作して一つの画像を呼び出す。
「このゲームかな? それならボクもやっているんだけど」
それは一つのゲームタイトルの画像。《Dawn Odessey》のそれだった。
******
『フライトショップの前で集合だよ。来なかったら……わかってるよね?』
何がわかってるよねだ、と言い返したいところだったが、以前奈緒との約束を破ったときには、模型のパーツがあちこち入れ替えられていたり変な方向を向いていたりと陰湿な嫌がらせを受けた。
しかも多少慣れているためかパーツが壊れるようなことをされることはなく、ただただもとに戻すのがめんどくさいという徹底した嫌がらせぶりだ。あそこまで丁寧に嫌がらせをされては怒るに怒れない。
『こんにちはライト。今日は来れないという話だったと思いますが』
「こんにちは。その予定だったんだけどな。面倒見なきゃいけない相手に一緒に遊ぼうって誘われたから来れた」
『なるほど』
アイラに事情を説明したライトは、道のりを覚えたフライトユニットの専門ショップへと向かう。どうやらここはフライトショップとサバイバーの間で呼ばれているらしい。
「遅いよ」
「お前より長々と片付けさせられてたからな」
まずはライトのベッドからシーツや毛布などを撤去させられ。代わりにそこに客用布団を設置して奈緒にベッドを奪われ。ライト自身は作業スペースと物置きスペースを整理して布団をひく場所を確保してようやくゲームにログインすることが出来た。
「君がボクのために場所を開けておいてくれないのが悪いんだよ」
「ソファーででも寝てろ」
「ひどいね」
冗談抜きで自分の部屋を寝場所にしないでほしいと思ったライトだが、彼女がいつも泊まっていた兄の部屋も兄が戻るまで勝手に立ち入りたくないと言うし、他に空いていた部屋も増えた色々なもので埋まってしまっている。
その兄への気遣いを自分にも使ってほしいものだ。
「私はこのゲームではノアっていう名前を使ってるよ」
「俺はライトだ」
「それはライト兄弟からとったのかい?」
「右を英語にしただけだ」
すげないライトの対応にナオがしょんぼりしているが、ライトはライト兄弟に思い入れは無い。むしろそういう方向性でつけるならアニメ内の技術者や主人公から取るだろう。ミノフスキーとか。
「それで、一緒に遊ぶのか? 俺は全くゲームを進められてないから足を引っ張ると思うんだが」
「ふふっ、大丈夫だよ。それじゃあ行こうか」
どこに、とも説明しないナオに連れられ、街の出口へ向かってあるき出す。
ゲームでのナオは、現実と同じショートカットにスラっとした見た目をしている。顔の造形は現実と変わらず、髪の色が深い青、目の色が翡翠色だ。
その色合いのおかげで現実世界の凛とした雰囲気に加えて、爽やかな美しさといえるようなものが加えられている。
服装はタイトな紺色のパンツに淡い水色のブラウスを羽織ったカジュアルな格好をしている。
「ライトは、どういう経緯でこのゲームを初めたんだい?」
「佑に進められて。ロボットみたいに自由に動き回れるSF系のゲームはないかって尋ねてたんだ」
「なるほど。それでこのゲームになったんだね。佑くんもいい目線をしている」
奈緒と佑は、翔経由で面識があるのだ。
「ノアもアバターは特にいじってないんだな」
会話が途切れたので、何か話そうとライトはノアの容姿について触れる。
「髪と目の色ぐらいだね。ボクに長髪は似合わないしね。あ、でも種族は変えているんだよ」
「種族?」
「そう。ライトは知らないかもしれないけど、キャラクターは見た目でいくつかの種族に分かれてるんだ。といってもシステム的に違いは無いんだけどね。ほら」
そう言ってノアは、耳元の髪をかきあげる。すると、髪の下から通常のそれよりも長い、いわゆるエルフ耳と呼ばれる耳が現れた。
「耳が長いな」
「何か変えてみたいと思ってね。耳だけ変えてみたんだ。どうだい?」
「俺に女性の容姿はわからん。お前はもともと見た目は良いしな」
「それは、ありがとう、かな?」
珍しくノアを褒めるライトの発言に、ノアは困惑した様子だ。ライトとしては、ただ客観的にそうであろうことを述べただけだ。だから見た目「は」とも言っている。
「それで、街の外まで来てどうするんだ? さっきも言ったが、俺の戦闘力じゃあ迷惑になるだけだと思うぞ」
「大丈夫だよ。別に戦うわけじゃないからね。せっかくの少ない同好の士だから……」
そう言ってノアはユニットを装着する。魔法の光が消えた後には、大きな機械の翼を背負った彼女が立っていた。
「一緒に飛んでみたいと思ったんだ」
「フライトユニット?」
ライトのそれよりも翼が薄く、プロペラは2枚。ユニットの本体部分は一回り小ぶりだが、二基のエンジンが積まれている事が見て取れる。形は違うが、紛れもなくフライトユニットだった。
「そうだよ。ボクも君と同じ、フライトユニットユーザーさ」
「もったいぶらないで最初から言ってくれりゃあわかりやすかったのに」
「驚かせてみたいと思ってね。驚いたかい?」
「さあな。まあ、飛ぶぐらいなら俺にも出来るな」
ノアに続いてライトもユニットを装着する。それを見たノアが何か言いたげな顔をしているのを見て、ライトは嘆息する。
「不格好だろ?」
「まあ、ね。なんでそんなに増槽を積んでるんだい?」
「何から手をつければ良いかわからないからとりあえず飛行時間を伸ばしておいたんだ」
ノアのユニットには、ライトのように不格好に見える増槽は装着されておらず、翼の下に2つずつ計4つの紡錘形のものが装着されているだけだ。
「なるほど。もし困っているようなら、先達として教えてあげようか?」
こういうことをさらりと、特に嫌味に感じさせずに言うのがノアのすごいところだ。
「まだいいよ。タスクにも自分で探すことを楽しめって言われたしな。ああタスクってのは佑のことな。もうしばらく自分でやってみる」
「そうか。……それじゃあ早速、空の旅への出発と行こう」