【更新未定】This sky is… 天駆ける流星【供養】 作:アママサ二次創作
ガビとは、彼が村についてすぐログアウトするということで別れた。そんな彼は、さり際に一つ、気になる言葉を残していった。
『そやそやライト。言うの忘れとったけど、魔力草が目的や無いんやったらここの山はしょっぱいで』
どういうことだと返すライトに、ガビはニヤリと笑いながら返す。
『ここよりも鉱石がよう取れる場所があるゆうこっちゃ。とくにあんさん向きのな。具体的な場所はアイラちゃんにでも聞いたってや。ほな』
言うだけ言って去っていくガビの背中を、ライトはぽかんとしながら見送った。
「アイラ、もっと鉱石が取れる場所があるって」
『……そうですね』
「教えてくれても良くない?」
『ライトが到達していない地点について教えるのはゲームを楽しんでもらうことの妨げになりますので』
「あそう」
つまりは自分で探せと。攻略サイトを探せばもちろんすぐには見つかるのだが、それをしないプレイヤーには教えないことで探検を楽しんでもらうようになっているのだ。
目的ではない場所に来てしまったことを知ったライトは、気を取り直してアイラの説明を聞きながら村の中を探索する。村の中には街ほどの施設は無いが、弾薬の補給が可能なショップや、小さな休憩所兼カフェ、ログアウトポータルなど、一通り拠点としての役割を果たせる施設は揃っていた。
『この村は、酪農で有名でもあります。牛乳や生クリームなどを使用した料理やお菓子も販売されていますので、興味があるならどうぞ』
「せっかく勧めてくれたところ悪いけど、俺果物とか炭酸飲料とかの爽やか系の甘さが好きなんだよな。まあそのうち、だな」
『了解しました』
村に入ると街と同じように自然に装備は解除され、MPも満タンになった。おかげで次の探索には迎えるのだが、ライトには気になる事が一つ。
「そう言えばアイラ」
『なんでしょうか』
「ずっと聞くの忘れてたんだけど、アイテムってどのぐらい持てるの? 無限に持てたりはしないよね。確かユニットの中に運送用みたいなのもあったし。さっき多分説明しようとしてくれてたよな?」
『そうですね。アイテムの仕様に関してですが、まずインベントリのスロットを確認していただけるとわかると思いますが、フライトユニットにおいては10個しかアイテムを所持できません』
先程アイテムを入手した際にアイラはまさにインベントリの仕様について説明しようとしていたのだが、モンスターの襲撃があって中断されたのだ。結果説明は村についてからとなった。
ライトが言われるままにインベントリを確認すると、たしかに枠が10個しかなく、その半分以上がすでに埋まっていた。だが一つのスロットに一つだけというわけではなく、例えば弾丸が入っているスロットには80発近い弾丸が入っている。
『スロットに関しての説明ですが、同一品質の素材系アイテムなら一つのスロットに最大99個、ポーション系の消費アイテムなら10個まで所持する事が出来ます。また、同じアイテム、例えば薬草でも、品質が異なるものは同じスロットに入れることはできません。銃弾やグレネード弾などはまた別で、銃弾は1スロットに999個、グレネード、及び類似の弾丸は99個まで所持できます。またインベントリの仕様とは関係ありませんが、こうしたアイテムがインベントリを一枠埋める量のことを1スタックと呼称します』
「多いな。ちょっと待て一個ずつ確認しよう。まず一個目は、品質Dの薬草10個は一枠で持てるけど、CDE1つずつだったら三枠使うってことか?」
『そういうことです』
「なんじゃそりゃ。アイテム持つの大変じゃねえか」
『はい』
「増槽みたいに予備のスロットをつけたりは出来ないの?」
『ライトのユニットでは不可能です。そういう用途のパーツは存在しますが、装着できるのも特定のユニットのみになっています』
特定のユニットとは、トランスポーターユニットという運搬専門のユニットや、ダイブユニット、フライトユニットなどの移動に使用されるユニットの中でも一部の特殊な用途に使用されるもののみを指す。それ以外のユニットに追加ストレージを装着しても、インベントリの枠として機能しないのだ。
「まあ……そうだな。そういう役割のユニットもあるぐらいだしそう簡単にはいかないか。それじゃあ次は、確か銃弾とグレネード系がたくさん持てるんだよな?」
『そうです。ですが銃弾に関しても特殊な弾丸などは別枠になったり一枠の所持数上限が変化しますので気をつけてください。またグレネード系とは言いますが、グレネードランチャーなどの擲弾、ロケット弾もその枠に当てはまります』
「じゃあさ、大量にグレネード運んで爆撃みたいな扱いすることもできるの?」
一枠に99個として最大積載で言えば990個。それだけ積めれば爆撃に十分である。ライトがそう尋ねると、アイラが一瞬黙り込む。また答えられない内容なのかと思ったが、そうではないようで答えてくれる。
『可能ではあります。グレネードはそれなりに高価なものですが、資金があれば十分に可能です』
「そうか」
『ですが。ライトには以前ライトの目指すユニットについて聞いたときにもお伝えしようか悩んだのですが、このゲームにおいてそれほど大規模な集団戦は発生しません』
「どういうことだ?」
『つまり、ライトが言っていたようにたくさんの敵の中を縦横無尽に飛び回ったり、敵の大群を爆撃するという運用をする場所が無いのです。もちろんライトが有用性ではなく憧れたことを実現したいと考えているのは理解しています。ですが、それを実現しても使える場所がほとんど無いというのも、知っておいてください』
「あー、そういうことか。まあ確かに、爆撃するなんて言ったら相当数の敵がいないといけないしな。俺が1人で飛び回っても、付き合ってくれる相手はそうはいない、か。まあそれはまたゲームが進んでから考えるよ。もしかしたら俺の知り合いが同じレベルで戦ってくれるかもしれないしな」
初めに飛びたくないと言っていたタスクを想像し、次にノアの顔が浮かぶ。ノアは女性だし、戦うことよりも純粋に飛ぶことが好きそうだった。あまり戦いたくはない。ならばタスクを無理やり空に上げたほうが良いだろう。
「それより、インベントリの話に戻ろう。最後にスタックって言ってたけど、つまり銃弾なら1スタック999個、ポーションなら10個を示すってことか?」
『そう言うことです。取引の際に使われることもあるので覚えておいてください』
サブマシンガン用の通常弾薬1スタックくださいとか、ポーション1スタックで500リラとか。つまりは、ダースを少しばかりゲームの仕様に合わせて使いやすくした単位ということだ。NPCショップでもプレイヤー間での取引でも使える単位である。
「なるほど。インベントリに関しては……多分それで十分だな。じゃあ一回街に戻ってアイテムおいてくるか。もっと良い採掘場所も俺向きってことは洞窟とかじゃなくて多分山だよな。てことは残りの方角のどっかに山がある感じか。……また飛びながら探索するしか無いな」
こういうときは攻略サイトを見てしまえば楽ではないかと思うのだが、せっかくタスクが用意してくれたゲームだし少しは時間をかけて探してみようと思えるのだ。
******
「あれだな」
アイテムを全てマイルームにおいてきたライトは、墜落前提の遠距離飛行で西と南の先のエリアを確認しに行った。それぞれのエリアにはドヴェルグ山岳ほどの山は無かった。
そして北。最後に向かったそこだが、街から少し離れた場所から広がる申し訳程度の雪原の奥に、ドヴェルグ山岳と違って尖った形状の雪山が一つ。そびえ立っていた。
「先に村を探しておくか」
村は街とつながるワープ先となるため、先にポータルの登録をしておけばたとえ墜落してもすぐに戻ってくることが出来るのだ。
「アクーニャ山脈にシナト村ね。アイラ、地名の由来ってあったりするのか?」
『詳細はわかりませんが、語感を重視したものや何らかの由来を持つものなど一貫性は無いようです』
「なるほど。ユニット作ったらどんな名前にしようかな~」
そうこうしているうちに、山腹に村を見つけた。デリコタ村とは違い、少し山に入り込んだ位置に存在している。
門前に着陸したライトは村に入ってポータルに登録を行った後、村の探索は後回しにして空へと飛び立つ。
『ライト、一点お伝えしたいことが』
「なんだ?」
『寒冷地における寒さダメージに関してです。寒冷地においては、寒さによってダメージを受けるようになっています。ですが、ユニットを装着しMPが残っている場合においては、10分にMPを1消費することで寒さを防ぐことが出来ます。ギアのみの装備や何も装備を装備していない状態では寒冷地対応の服を来なければ寒さダメージによってHPにダメージを受けますので、気をつけてください』
「じゃあユニット背負ったまま採掘しないと駄目ってことか。邪魔だなあ」
『我慢してください。それにおそらく心配は無用です』
「なんで?」
『行ってみればわかります』
「さいですか」
これ以上は何も言えません、とばかりに言い切るアイラにそれ以上尋ねるのを諦めて、ライトは着陸できそうな高所を目指して飛ぶ。
「すごい位置に採取ポイントあるな。あれフライトユニットじゃないと厳しいだろ」
険しい岩壁の上の方、明らかに徒歩でのアクセスが不可能な場所にもいくつか採掘ポイントが見受けられる。アイラが言っているのは、こうした場所が多数あるためいちいちユニットを装備したり解除したりする必要がないということだ。
「とりあえずは降りれそうなあたりの採掘ポイントをつついてみるか」
周囲の状況を確認したライトは、山肌からせり出している岩場へと着陸する。その場所も、他のユニットを装備しているサバイバーではガビのようにクライミングに特化していなければ到達出来ないような場所だ。
壁に数箇所見当たる採取ポイントの一つに近づき、ライトはつるはしを振り下ろす。
〈鉄鉱石を入手しました〉
〈鉄鉱石を入手しました〉
〈方鉛鉱を入手しました〉
〈ボーキサイトを入手しました〉
〈ボーキサイトを入手しました〉
〈方鉛鉱を入手しました〉
「明らかにあっちよりこっちの方が取れる鉱石が良いな」
ドヴェルグ山岳よりアクーニャ山の方が鉱石の採掘に適している、だけでなく、希少な鉱石であるはずのボーキサイトが複数個一箇所の採取ポイントから取れたのは、ライトが採取を行ったのが険しい山の崖から飛び出した、通常ではたどり着けない場所にある採取ポイントだからだ。
同じエリア内においても、到達が難しい場所や奥まった場所にある採取ポイントは希少な素材が出やすくなっているのだ。
「インベントリは……しっかりうまってくれてんなあ」
採取できた鉄鉱石は品質DとEが一つずつ、方鉛鉱もそれと同じ。ボーキサイトはEのみということで嬉しいのか悲しいのか、インベントリは5個うまるだけですんだ。
「まあどうせ品質の良い鉱石は……アイラ」
『なんでしょう』
「採取できるアイテムの品質はどうすれば上げられるんだ?」
『まず採取場所を変えることがあげられます。エリアごと、例えばこのアクーニャ山では鉱石の品質の最低値、最大値がそれぞれ設定されています。更にその中でも、難所に進むほどに入手可能な鉱石の品質の平均値は高まっていきます。またそれに加えて、より行為の採取スキルを有していればエリアの最大値に近いものが採取できます。他には、特定のスキルの効果によって取得できるアイテムの品質を一時的に高めることも可能です。この方法を使えば、場合によっては入手可能な品質の上限を突破することも可能です』
「やっぱりそんな感じか。ありがとう」
ライトはまだ自分で製作を行っておらず、またユニット開発の経験値もたまっていないためわかっていないが、ユニットの製作においては素材アイテムの数だけではなく、品質も要求される。例えば最低品質はE以上で、といった感じだ。そのためいくらエリア上限が設定されているとはいえ、要求に合わせて高い品質のものを集める努力をしたほうが良いのである。
「とりあえず適当に集めて、MPが少なくなったら村に飛べばいいか。インベントリいっぱいになるまで集められたら俺の勝ち、だな」
現在のライトのMPは360ほど。増槽を外せば125。村に戻る前に増槽を切り離すぐらいが丁度いいだろう。もっと無茶をしてもいいが、そこまでしなくても往復する時間は十分にあるのだ。