【更新未定】This sky is… 天駆ける流星【供養】 作:アママサ二次創作
「飽きた」
『もうかれこれ5時間ほど採取してますからね。休憩を挟んではいかがですか?』
「いやー、でもとっととユニット改造したい」
今やっている作業はとてつもなく退屈である。たとえ飛ぶことがそれなりに楽しいと思い始めているとしても、繰り返しは飽きるのだ。
とはいえ、自分でユニットを作るためには鉱石が必要なのである。やりたくないけど目標のためにやらないといけない。嫌なジレンマである。
しかし、そこにアイラが光明をもたらした。
『ライト、現在のライトに必要なことを確認してはいかがでしょうか』
「どういうことだ?」
『先日、ライトの現在の目標のイメージを聞きました。それを考えると、ライトは一つのことに集中する段階に無いように思います』
アイラのあえてぼかした言い方に、ライトは少し考えて言われていることに気づく。
「……一つのこと、ねえ。全部同時進行ですすめるよりは一つ一つ揃えてく方が好きなんだよな俺」
『そうでしたか』
「まあでも、今回はやり方を変えてみるよ。ありがとな」
アイラのアドバイスを聞いたライトは、シナト村から街へと戻る。
一つのことに集中する段階にない。つまり、素材を集めることに集中する段階にない。
ライトの現在の目標は、TierⅡ、つまり次開発するユニットをカスタマイズして自分好みにすること。そして、それに合わせて武器を調達することだ。そのためにライトがしなければならないことはたくさんある。
例えば、今躍起になってしていたアイテム採取もその一つだ。
だが、それだけではない。まずユニットを開発するには、経験値を稼いでユニットをアンロックしなければならない。そしてライトが自分好みにカスタマイズするには、一度そのユニットを製作した上で構造を把握し、改めて設計図を作る必要がある。
また、武器の入手。現在のライトは、初期から装備可能なサブマシンガン・ライトSMGとショートソード、そしてチュートリアル達成報酬のライトカービンというアサルトライフルしか所持していない。
つまり、武器を入手することに関しての知識がまったくないのだ。店で買えることは確認しているが、出来ればある程度カスタマイズしたい。
さらに製造の実際の仕方すら、まだ一度も見たことがない。
躍起になってアイテム採取に専念しなくても、やることはたくさんあるのである。特にアイテム採取に関しては、村から近い場所のアイテムを採取し終えて、少し離れた位置まで移動する必要が出てきていた。それならば、アイテムが復活するのを待ってその間に別のことをしておくことも効率がいい方法のひとつなのだ。
******
「何からしてくかな」
『ひとまずクエスト及びモンスターの討伐をして開発経験値を稼ぐのはいかがでしょうか。ライトは飛行にはかなり卓越したようですが、他の活動にはまだ慣れていないようですので』
「このユニットで戦うのは納得できないから嫌なんだよ。とりあえずクエストからやってみるか。それに飽きたらちょっと武器見に行ってみる」
『クエストはサバイバー協会だけでなく、村や街のNPCから直接受注することも出来ます。そうしたクエストはサバイバー協会への納品や報告ではなく、該当NPCへの報告で達成する事ができます』
「了解」
早速そのままの足でサバイバー協会に向かい、受注可能な限りのクエストを受注する。クエストの内容はモンスターの素材や採取アイテムの納品、またはモンスターの討伐など多岐に渡る。現在のライトが受注可能なクエストは基本的に期限が無いものばかりなので、いくら受けても大丈夫なのである。
ついでに、すでにアイテムを持っているクエストは数を考えて納品していおいた。具体的には、方鉛鉱、鉄鉱石、薬草、魔力草の納品クエストである。
方鉛鉱、鉄鉱石に関しては、品質Eのものは手放しても問題ないと判断し、その分を納品したのだ。入手難易度の低いアイテムの納品クエストに関してはクエストに設定された個数をひとまとめにして納品すれば、クエストを受注する手間を省いてクエストを複数回まとめて達成することが出来る。それでも経験値と報酬は獲得できるので、アクーニャ山で鉱石を荒稼ぎしているライトにとってはそれなりに効率の良い稼ぎ方である。
とはいえ、それだけを繰り返しているのであればまた飽きが来るし新しいことをしていることにならない。
「よし、じゃあシナト村に行ってみるか」
『村で受注可能なクエストを探すのですか?』
「それもあるけど、道中のモンスターと戦ってみる」
『武器は、現状のもので大丈夫でしょうか』
「知らね。よっぽど切羽詰まってきたら考えるけど、とっとと金稼いでお目当ての武器を探したいからな。なんとか今の武器でやりくりしたい」
『でしたら、先に武器の入手を目指したほうが良いのでは?』
「いや、俺が想定してる感じだとそれ無理なのね。実際に今俺が想定している運用はこんな感じなのよ」
そう言いながらライトは、武器とユニットを合わせた状態の自分の戦闘時の想定イラストを見せる。
『これは……今のユニットではライトが目的としている武器が入手できたとしても使えないということですか』
「一応そういうふうに考えてる。先に武器だけ作ってお預けってのはショックだしな。やっぱりはやいとこユニットを作り始めないと」
『確かに、これはユニットの製作を最優先にしないといけませんね』
「だろ? だからとっととユニットの設計図アンロックしないとな この経験値の感じだともう少し頑張ればいけそうだし」
最終的には鉱石を乱獲して納品するという手段もある。
戦闘を行いながらシナト村へと向かうことに決めたライトは、ユニットを装着して北に向かって歩き始める。
これまでライトは、地面を行ったことがない。シナト村もデリコタ村も街から空を飛んで発見している。そのため地面をいったときにどれぐらいの時間がかかるか、また現在の戦闘力で無事にたどり着けるのかは把握していないが、それこそやってみなければわからない。だから行くのだ。
街を出て北へと続く街道を歩いていく。特に戦闘もなく草原をぬけてウノス雪原に入った。街道沿いはそれ以外の場所と比べてモンスターとのエンカウント率が下がっているのである。
「雪原ってか、雪解けっぽいよな。この感じ」
雪原とは言いながらも枯れ草があちこちに露出しており、雪が見えている部分もあまり積もってないように見える。離れた位置の木々もわずかに新芽を出し始めている状態だ。そんなライトの言葉を聞いて、アイラが説明を始める。
『現在の季節は春に設定されています。そのため、現在は雪解け真っ只中ということですね。雪原の中でも山に近い位置やアクーニャ山では夏でも雪が残る場所もあります』
「え、季節があるのか?」
『《Dawn Odyssey》内では日本と同様の四季が40日にひとつ、すなわち160日、およそ5ヶ月で一周するようになっています。季節に合わせてエリアの様相も変わり、様々な姿を楽しんでもらえる予定です』
「へー。そんなところまで再現されてんだな」
じつはこの季節の実装。運営サイドでは企画の段階でかなり揉めた。
MMOにおいて、季節というのは現実のそれとはかなり意味合いが異なるからだ。
例えば、ドヴェルグ山岳。夏場には草の背丈も伸び青々とした山を見ることが出来る。そして冬には、草が減り、わずかに雪化粧をした山を見ることが出来る。
この説明を聞く限りでは、現実とMMOにおいて季節の意味合いに大きな差はない。では、どこに差があるのか。
それは、サバイバーが活動する場所の変遷だ。現実においては、人間は基本的に年間を通して一つの場所で生活をする。季節ごとに住む場所を変える人間というのは少ないだろう。
それに対して、ここはMMO《Dawn Odyssey》の世界。サバイバーは街と各地の村を拠点としながらも、実力がつけば別のエリアへと進んでいく。すなわち、複数の季節にまたがって一つのエリアで活動するサバイバーはそれほどいないのである。
更に言えば、季節は4つある。2つの季節にまたがるならまだしも、4つの季節を一つのエリアで越すことはよほどそのエリアにこだわりのあるサバイバーでなければありえないだろう。
季節を4つも各エリアごとに作るというのは、手間の割にはリターンが少ないのである。
また、ここがゲームの世界であるがゆえの各エリアの特徴というのも、季節の実装に対して向かい風であった。ここはゲームの世界であり、フィールドの特性も現実のそれとは違って隣合ったエリアでも大きく変わりうる。その中で、様々な特徴を持ったエリアを用意すれば良い。
つまり、わざわざ全てのエリアに四季を実装しなくても、エリアごとに四季を体感できれば良いのである。
げんに、街の東に広がる草原とその先のドヴェルグ山岳では春が、そして北に広がる雪原とアクーニャ山では冬が体感できる。これからサバイバーがより広範囲へ進出していけば、更に厳しい寒冷地だったり砂漠だったり、熱帯雨林だったりと、現実に存在するありとあらゆる環境を用意することも可能だろう。
そうした事情も相まって、わざわざ各エリアごとに基本は変わらないままとはいえ4種類の仕様を用意するのと、新しいエリアを作ることに注力するののどちらを取るのかという話し合いが行われたのだ。
そしてそこで出た結論がこれ。
『両方全力でやれば良いじゃねえか馬鹿野郎』である。これはプロデューサーのありがたいお言葉であるが。この言葉に現場は不眠の覚悟を決めたとかなんとか。
そうしたわけで、《Dawn Odyssey》のフィールドはそれぞれの場所ごとに四季がきっちり設定されているのである。例えば、雪山の夏は夏とはいえ雪は溶けないままだし、逆に温暖なエリアでは冬でも積雪は無いのだ。
『作るのが大変だったから是非季節ごとにエリアを回ってくれ、と開発スタッフがメッセージを残しています』
「大変だったんだな。まあ見て回るぐらいならそれほどかからないだろうし、季節が回って気が向けば見て回るよ」
『ありがとうございます』
説明を受けながらもライトは、更に北に向かって歩を進めている。ちなみに、この間にライトは複数のサバイバーの集団、パーティーから追い抜かれており、そのたびに一人で話しているライトは彼らから疑問の目を向けられたが、あるきながらフレンド通話をしているのだろうと納得されていた。
「お、接敵したな」
少し進んだところで、先を行っていたサバイバーのパーティーが街道から少し離れた位置の木々の近くで、モンスターの群れと戦っていた。
「あれ多分勝てるよな?」
『私に実際の戦闘を判断する能力はありませんが、他のサバイバーの戦闘には関与しないほうが良いでしょう。それより先に進まないと、全てのモンスターを先行したパーティーに倒されてしまう可能性があります』
「あ、そうか一回倒されたらもっかいリスポーンするのに時間かかるんだっけか」
街道沿いを行くサバイバーは多く、モンスターの絶対数が少ないのと相まって街道沿いでの戦闘回数は平均して非常に少ない。ライトが街道の移動中に戦闘をしたいのであれば、他者に遅れをとってはならないのだ。
「急いで進みたいとこだけど……無理だよなどう考えても」
先を急ぎたいライトであるが、そうそうに諦める。現在のライトがMPを使用せずに出来る移動方法は、フライトユニットを背負ったまま移動するか、ギアのみを装備して移動するかだ。ライトのギアは身体能力を強化するものではないので、それだけになったとしても今と移動速度はほとんど変わらない。他のユニットからしてみれば、とても遅いか遅いかの違いでしか無いのだ。
『ライトが移動のために初期のソルジャーユニットでも購入していれば……』
「それは俺のこだわりに反する。フライトユニットでやると決めたらこれで頑張るの」
『わかっています』
以前から幾度か、ユニットは一度に3個まで携帯が可能であるためライトもソルジャーユニットを持っておけば戦闘に移動にと何かと便利であるとアイラはアドバイスしているのだが、ライトは聞き入れない。
そのわりにライトはこうして普段からフライトユニットの不満を漏らす事がそれなりにある。おかげでアイラも意地になり始めているのだ。
そんなとき。ライトは、先程のパーティーが戦っていたのとは反対側の木々の隙間から、自分の方を睨みつけるモンスターに気づいた。