【更新未定】This sky is… 天駆ける流星【供養】 作:アママサ二次創作
「この当たりは木が生えてるんだな。飛ぶ練習に最適じゃん。もうちょっと木が多いとなお良いんだけど」
『あそこへ突入するのですか?』
「正解!」
ライトSMGを小脇に抱えたライトは、エンジンに火を入れモンスターの方へ向かって離陸する。
対面しているモンスターは5体。先日戦ったことのあるゴブリンが2体と、ゴブリンがステップウルフに乗って戦うゴブリンライダーというモンスターが1体の、計3体だ。
高度を上げること無く、ゴブリンの攻撃が届くかどうかという位置を維持して接近しながら弾丸をばらまく。現在ライトが所持している武器のうち、ライトカービンというアサルトライフルのほうが遠距離での命中精度や威力は高いのだが、ライトはライトSMGをいまだに使い続けている。
それは、ライトSMGなら片手での運用が可能だからだ。見た目的にもライトの好きなロボットアニメに登場するロボットの大半は、銃を片手で使用している。それを再現したいという思いもあり、またそうしたロボットが右手で銃を使いながら左手で近接武器などを使っていたのが戦闘において有利に働くと考えてライトSMGを使っているのだ。
「こっちだけ遠距離武器持ってるのか」
サブマシンガンを連射するライトに対して、ゴブリンとライダーは突っ込んでくるだけである。なんとも、芸がない。初期エリア付近にしか出現しないこいつらは、遠距離攻撃の手段は持ってないのだ。
ライダーが先頭に立ち、その後ろに隠れるように徒歩のゴブリンが走ってくる。というか置いてきぼりにされている。
「その足回りでその程度じゃあな!」
ライダーの足を奪うために、ゴブリンでは無くその騎乗しているウルフへと射撃を行う。すると、ライダーのHPバーがガリガリッと削れる。
「1ユニット扱いか。なら……」
ウルフとゴブリンがまとめてゴブリンライダーという1ユニットのモンスターだと理解したライトは、的がでかくなったとばかりにライトSMGをきっちりワンマガジン撃ちきり、とどめにショートソードを斜め下から振り上げて切り裂く。以前の戦闘から更に進化して、今回は旋回の勢いのおまけ付きだ。
更に光の粒子になったライダーの後ろから迫るゴブリンに対して、リロードを保留したまま剣を振るう。フライトユニットの振るう剣は本来は威力がそれほどないのだが、勢いをうまく生かした場合は話が別。ゴブリンのHPを半分近く消し飛ばす。
二匹のゴブリンの頭上を飛び抜け、木々の間を縫って旋回したライトは、次のアタックで決めるべくライトSMGを先程切りつけた方のゴブリンに叩き込んで倒しきり、残った一体に向かってユニットの角度をいつもより起こしながら突撃する。
以前ウルフと戦ったとき。ライトは、止めをさす際に剣を突き出した体当たりを敢行し、ウルフを倒すと同時に自分も地面に衝突して死亡し街送りになった。
だが今回は違う。
主翼と角度のついた体を利用して減速し、ゴブリンに剣を突き立てて押し倒しながら地面についた足と進行方向に対して垂直に戻した主翼で最後の減速をかけて着地する。やたらと時間をかけた飛行訓練でライトが身につけた飛行技術だ。
止めとばかりに、以前とは違ってスムーズに腰に戻していたライトSMGのリロードを終え、ゴブリンの頭部に弾丸を撃ち込む。《Dawn Odyssey》もシューティングゲームの例にもれずヘッドショット判定、というよりは弱点判定を採用している。おかげで、マガジンの半分も使うこと無くゴブリンを倒しきることができた。
『随分と卓越しましたね、ライト。お疲れさまです』
「んー……」
労いの言葉をかけるアイラに対して、ライトの返事は鈍い。
『どうかしましたか?』
「木の隙間で悩んで減速してしまった。本当は最適なルートを設定して最短で旋回するつもりだったんだけどな」
木がまばらに生えている程度とはいえ、高速で飛行し大きな主翼を持つフライトユニットにとっては迷惑な障害物に違いない。その隙間を飛ぶとき、ライトは迷ってしまい、減速してしまったのだ。
『今の戦闘に納得が行っていない、と?』
「戦闘というか木の間を飛び抜ける方だな。またいい森を見つけて練習しに来よう」
障害物の間を飛ぶというのは空でマニューバを行うというのとは全く話が違う。ある意味では、飛ぶルートを定められた上でそれに合わせて飛行するようなものだ。
ただし、そのコース設定は自分でその場で行わなければならない上に、レーダーなんてものもなく木と木の間隔は目測で図るしか無い。習熟するためには相応の練習が必要になる。
『ストイックですね。しかし、フライトユニットはユニットごとに感覚が大きく違います。ユニットを用意してからのほうが良いでしょう』
『良いでしょう』。ライトの性格がわかり始めたアイラは、『良いのではないですか?』と聞くのではなく、あえて断言した。そうしなければライトがこの場で飛ぶ練習を始める可能性があると思ったから。
「まあそうだな。今はユニット作る方に集中するか」
アイラに言われた通り、ライトは街道に戻って再びシナト村へと向かって歩き始める。今の戦闘で消費したMPは50程度。まだまだ余裕はある。
とはいえ、今のライトのMPでは今の戦闘を10回すら繰り返すことができない。一つ一つの戦闘の時間の短縮も今のライトにとっては大きな課題だ。
シナト村に向かって進みながら複数回の戦闘をこなしたライトは、MPの残りがエーテル・コアのみになったところで離陸し、高高度から滑空を始める。どうせ歩いたところでモンスターと遭遇しても戦う余力は無いだろうし、それなら村へ飛べば良いという判断だ。
滑空を最大限に利用したライトは、村の門前に着陸しようと体制を取る。
その時。
ライトの周囲の音と光景が一瞬で暗闇にのまれた。風を切る感覚すら感じられなくなる。
何事かと身を起こしたライトが目を開けると、ヘッドセットのディスプレイが目に飛び込んできた。
「おはよう」
「え……?」
今ひとつ状況のつかめてない翔は、ゆっくりとした動作でヘッドセットを頭から外す。周りを見ると、いつもとは違う自分の寝床だった
「急にゲームが切れたんだけど」
「電源を切ったからね」
「なんで?」
「今、何時だと思ってるんだい?」
お決まりの澄ました笑顔ではなく、少し怒った表情の奈緒の言葉に、翔は部屋の時計を見る。
「7時だな」
「夕食の時間だよ? ボクはお腹が減ったんだけど」
つまりは、翔がゲームに熱中しすぎて夕食の時間を忘れていたのだ。翔の家では、家にいる人間は一緒に夕食をとることになっている。それに遅れたために、奈緒が強硬手段に出てゲームから引きずり出したのだ。
「悪いな。考えることが多くて飯のこと忘れてた」
「アラームをセットしておけばいいじゃないか。ゲームにもゲーム機にもついてるだろ」
「そうなのか?」
「そうだよ」
VRゲームをほとんどしてない翔は、ほんとにゲーム機の機能すら把握していない。
「てかゲーム内で連絡してくれよ」
「わざわざ君のためにログインするのはめんどくさいだろ。それなら叩き起こしたほうが早いんだよ」
「はいはい。てか、途中で抜けちゃったけど俺のゲームはどうなったんだ? ログアウト扱い?」
「アバターが2時間ぐらいフィールドに取り残された後ログアウトされるよ。急いで戻ればその場所から再開できる」
「へー、そんな仕組みになってるんだな」
その仕組みは、ゲーム内で強制ログアウトを実行したときに発生する仕組みと同じである。なぜそんなことになっているかと言えば、ゲーム内で死亡しそうになったときに強制ログアウトをして死なないように悪用される事があったからだ。
片道切符でのアイテムの回収なんかをされてはたまらないため、ログアウト後2時間はアバターがその場に残ってモンスターの攻撃なんかを受け付ける様になっているのである。
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『おかえりなさい。突然意識を失ったので驚きました』
「ただいま。飯の時間忘れてたから外から無理やり引きずり出された。ここは?」
2時間とおかずに再度ログインしたライトが辺りを見回すと、カフェのテラスの隅っこの方の一席に座っていることが確認できた。
ログインする前は村の門の前に横たわっていることを想定していたため、その想像とのギャップに驚いたのである。
『ああ、それは……』
「目が覚めたか?」
隣のテーブルから聞こえた声に目を向けると、2人のサバイバーが座っていた。女性と男性。背の高い女性の前にはカップが一つ。背の低い男の前には複数のケーキが並んでいる。
「おはようさん。あんさん、村の前でぐっすりやったんやで」
「ガビ」
「ガビさんが知り合いだと言うから運んでおいたんだ。ガビさんに感謝しろ」
ガビはフレンドリーに。背の高い女性は高圧的に言う。
「ありがとう」
「ふん。ガビさん、もう行きましょう。こいつも目を覚ましたみたいですし」
「ヒイロちゃん、あかんでそんな怖い顔しとったら。スマイルスマイル。それにわし、まだ食べ終わっとらんねん」
「なんでそんなに頼んだんですか」
「ええやん、ここならどれだけやって食べれるんやで。せっかくこっちの山まで来たんやから。ヒイロちゃんも食べる?」
「……いただきます」
自由奔放なガビに言ったところで何も聞いてくれないだろうと判断したヒイロは、大人しくおすそ分けをもらうことにしてパンケーキに口をつける。シナト村のカフェでは、村の中ですら肌寒い気候に合わせて温かいスイーツが提供されている。
「拾ってもらった礼に俺が奢るよ」
「ええねんええねん。ヒイロちゃんに運んでもらっただけやからな。礼ならヒイロちゃんに言ったって」
「必要ない。私はガビさんに言われたからやっただけだ。でなければ誰が知らないやつをわざわざ拾うものか」
拾ってくれた礼を穏便な形でしようと提案したにも関わらずこのざまである。なんというか、相性がよろしくない。
「そうか。じゃあ改めて礼を言っておく。ありがとう」
「ほいほい。それにしても、無事ここを見つけられたんやな。今日は鉱石採掘かな?」
「いや、村で受けられるクエストを達成してみるのが主だな。経験値を稼がないとユニットがアンロックされないし、俺のユニットじゃあ戦闘は効率が悪いからな」
「ソルジャーユニットでも持っといたらええのに。3つのマイセットに登録されてるユニットやったら経験値も共有されるんやで? 装備してないやつには5割ぐらいしか経験値が入らんゆう話やけど」
「そのうちソルジャーユニットも作ってみる気ではいるけど、フライトで不便なところをソルジャーでやるってのは嫌なんだよ。どうせやるなら、一個に拘りたいからな」
そう言うと、ヒイロが理解し難いという顔を向けてくる。
「わざわざフライトユニットなんて選んだ上に拘ってるから他のユニットを作らないなんて馬鹿じゃないのか? どう考えたって他のを使ったほうが効率が良いだろう」
「効率は求めてないからな」
ゲームの攻略が主な目的であるヒイロには理解し難いが、隣のガビはおかしそうに笑っている。
「ヒイロちゃん、そんなこと言うたらわしがわざわざ壁登ったり降りたりすんのも意味がわからんゆう話になるやろ? わしもライトも、それが好きやーいうだけなんやって」
「ガビさんのクライミングはかなり有効だと思いますが」
「ちゃうちゃう。それは偶然や。わしはクライミングが好きなんや。誰も届かんとこのアイテムなんてどうでもええねん。目的はクライミングであってアイテムやないんよ。ライトもそれは一緒ってことやな。まあライトの方はわし以上に役立つ場面が限られとる思うけど。しかも拘りで縛っとるし」
「ピーキーなものが好きなのは昔からだからな。そういうのが好きなんだろ多分」
ロボットのように明確に好きと断言できるわけではないのだが、ライトにとってはそれが普通なことなのである。誰も使っていないような方法を選んだり、他人から見ればくだらないことにこだわるというのは。
「ガビは鉱石掘りに来たのか?」
「それは秘密や。まあ今回はアイテム採取やないわな」
「ガビさん」
「わかっとるわかっとる。そんな気にせんでも言わんて。それにライトが本気になったらどうせ行けるから変わらんて」
「それでも、です」
意味ありげな2人の会話をライトが聞いていると、ガビが苦笑しながらライトに話しかけてくる。
「ほな、わしらそろそろ行くわ」
「ああ。ありがとう」
「はいはい。ライトもなんや困ったら連絡してや。報酬次第で何でも請け負うたるで。言うても、アイテムは自前で用意できるやろうけどな」
「アイテムも金も自前でそれなりに用意できるから、呼ぶなら別の用事だろうな」
軽く手を上げたガビは、ライトの方に興味なさげな視線を向けたヒイロを連れて離れていく。ヒイロはライトのことを嫌っていると言うよりは、知らないやつのために自分の時間を割く気がないだけだろう。
「俺も自分のことするかね」
『クエストは街中の頭上にエクスクラメーションマークが浮かんでるNPCから受注することができます』
「ビックリマークって言ったほうがわかりやすいと思うぞ」
『以後気をつけます』
ガビとヒイロを見送ったライトは、アイラと軽口を叩きながら村の中をあるき出す。ライトにはライトで、することがあるのだ。