【更新未定】This sky is… 天駆ける流星【供養】 作:アママサ二次創作
「それじゃ、ひとっ飛びしてみるわ」
「俺はチュートリアル回した後遊んでる。お前もとりあえずチュートリアルぐらいは見ておいた方が良い。もし支援用AIが取得出来なかったら、おとなしく店で買ってくれ」
「あいあい。まあしばらくは飛行機の勉強だからいらんと思う」
「それじゃあ、な」
「おう」
会話の終わりの合図に拳を打ち合わせ、ライトとタスクは門の前で別れる。ライトはそのまま飛行する練習に。タスクはゲームの攻略へと向かうのだ。
「さてと。それじゃあもう一回行ってみるか」
一人になったライトが門から出ると、門の外にはまだまだ多くの人が集まっている。VRMMOの初日によくあるお祭り騒ぎの状態だ。
「さて、そんじゃあ、行ってみますか」
フライトユニットを装着したライトは、ゲーム機に保存してあった音楽を再生する。ライトのお気に入りのアニメ、その一つの中でも特に盛り上がる、主人公が活躍する場面で流れる曲だ。才能に恵まれなかった主人公が努力で才能を凌駕するその音に、ライトは惹かれた。
先程のようにエンジンを始動し、徐々に出力を上げる。エンジンの具体的な構造やユニットの可動部分の把握は出来ていない。
「ならまずは、なんとなく飛ぶに限る」
プロペラの生み出す推力に耐え、力を蓄える。力がたまりきり、もう耐えられないと感じたところで弾かれるように走り出した。
突如走り出したライトに、周囲のサバイバーが奇異の目線を向ける。ライトはそれらを無視して、ただひたすらに上へ、上へと意思を向け続ける。
フッ……
足元が抜ける感覚とともにライトの体が浮かび上がる。離陸は成功した。そして、ここからが勝負である。
「地面との角度は20度で上昇。まっすぐ、まっすぐ、傾かないように」
ユニットによって真っすぐの状態に維持された体が、地面から斜めに飛び上がっていくことを想像する。さらに、それを言葉にすることで意思を明確にした。
離陸した直後地面と水平に飛んでいた体は、やがて上昇を始める。その際ちらりとユニットを確認したタスクは、背中に対して45度の角度で存在していた翼が、より背中の側に傾いているのに気づく。
「上昇、いや、多分加速だな。普通の航空機も主翼で角度の制御はしないはず……っと危ない危ない。後ろに飛び始めたら大変だ」
現状を認識するにとどめて慌てて前へと向き直る。先程は下を向いていたために下降したのだと判断し、今度は意識を上へと向けることにしたのだ。
体を叩く風は激しくあるものの心地よく、この空が現実のそれでは無いことをライトに意識させた。それがむしろライトには好都合で、現実であれば快感はあれど苦痛を伴う行為が、このゲームでは心地よい部分ばかりを体感させてくれる。
どんどん上昇しているライトが周りを見渡せば、かなりの範囲を心地よく見渡せるのだが今のライトにはその余裕はない。草原の遠方に見える山々も、その向こう側に見えようとしている海も、その全てを見流しながら、ライトはひたすら『上へ』という意思を送り続けていた。
と。
バスン! バタバタバタ……。背中から、ユニットから伝わる振動が途切れ、変わって小刻みで不規則な振動がライトの体を貫く。
「は? え、は?」
エンジンが停止し揚力を失ったユニットが墜落を開始する。それと同時に、ライトの目の前に浮かぶのは《MP0》の三文字。それが何を示しているのかはっきりとはわからないもののなんとなく把握したライトは悪態をつく。
「何だってんだよ全くっ……!」
ひとまずエンジンに再始動の意思を送りながらも、原因にあたりをつけたライトは他の解決策を模索する。
「背中から落ちればいけるか? って現状のユニットの姿勢がわからん!」
案の定エンジンは再始動することなく、どんどん地面が近づいてくる中でライトは一つのことを思い出した。『メニューから自分の状態を確認する項目がある』。
タスクとの会話を思い出したライトは、慌ててメニューから装備の確認画面を呼び出す。
だが、その時点で地面は間近に迫っていた。それなりの高度からの落下だ。速度もそれなりに出ている。
「背中を下に……!」
短い時間の中でなんとか体を捻り、ユニットを下敷きにして着地しようとする。だが、落下の途中からきりもみを初めていた姿勢を保つことは叶わず。
ほとんど体は真横を向いたまま、ライトは地面へと激突した。
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「ぶふう……。ひでえ目にあった」
セントラル広場で目を覚ましたライトはその場に座り込み大きく息を吐いた。MP0、すなわち燃料切れによって落下し、地面と接触したのだ。
その衝撃によって当然の如く柔らかいフライトユニットは破壊されライトも落下死。
だがサバイバーに与えられる感覚としての衝撃は軽減されているため、ライトが感じたのはマットや水に飛び込んだのと同程度の衝撃だ。
それを感じると同時に視界が暗転し、気がつくと寝転がった状態でセントラル広場に放り出されていた。
「体が自由な分戦闘機より怖いなこりゃ」
かつてプレイしたゲームでの戦闘機での墜落と今の墜落を比較し、ライトはそうつぶやく。
戦闘機で墜落する場合、戦闘機のコクピットという狭い空間に閉じ込められたまま墜落することになる。そのため、四肢が自由になって暴れることはない。
一方フライトユニットで墜落する場合は四肢が自由であり、空中で体を起こしたりすることもできる。出来てしまう。
そのため、戦闘機での墜落には耐えられてもフライトユニットは怖いと感じるサバイバーは多い。
「ユニットは……修理されてるな」
メニューから破壊されたはずのユニットの現状を確認し、ひとまず通常の状態に戻っていることにライトは安堵する。タスクが説明していたとおり、ユニットの状態は街に戻ると正常な状態にリセットされるのだ。
「MP0か。MPってなんだったかなあ。多分燃料だよなこれ」
メニューを開きステータスを確認すると、暗くなっているMPという表示が見える。数値は100。先程エンジンが停止した際には目の前に《MP0》というテロップが飛び出した。つまりMPが0になったことでエンジンが停止した。
「冷却材みたいな概念は無さそうだし、あれは無くてもぶっ壊れるだけだしな」
そういえばと。ライトは、タスクがチュートリアルをしてみろと言っていたことを思い出す。チュートリアルとは、ゲームのみならずソフトやPCの使い方を初心者向けに教えてくれるものである。それを確認すれば、このゲームに対する基本的な知識を得られるだろう。何も知らないライトにはその知識すらが必要なものになる。
そう考えたライトは勢いをつけて立ち上がり、ひとまず近くのベンチへと移動する。
「チュートリアルはー、っと項目多いな」
20個程あるチュートリアルの全てにチェックをつけ、まとめて視界に情報が表示されるようにする。
「視界がうるさいなこれ。まあいいか」
チュートリアルクエストだけあって簡単な内容のものばかりであり、『装備を変更しよう』『サバイバー協会でサバイバー登録を行いランク1になろう』『ランク2に上がろう』『クエストを受注しよう』『クエストを達成しよう』といった、ゲームを進行する上でいずれも必要となることばかりだ。
装備を変更するためにわざわざマイルームに戻って武器を回収してきたり、セントラル広場の一角にあるサバイバー協会に行っては迷子になったり。
サバイバー協会はサバイバーが登録を行うことでクエストを受注したり、様々な設備を使えるようになる場所だ。そこでクエストの受注を行い今度はクエストへと出発する。
チュートリアルクエストは初心者向けに報酬もそれなりに高く設定されており、そこそこの額のジルから選択式の武器、ユニットのハードポイントに装着可能なパーツなどを入手できる。
中には今のライトがまさに必要としているものもあるのだが、完全に知識が無いライトはそれが何なのかわかっておらず、とりあえず一通りクリアしようと考えている。
「クエストは……ステップウルフ3匹の討伐か。倒せってことだろうな。生息地は街周辺の草原ね。狼っていうかコヨーテじゃないのかこれ」
まあそのへんはゲームなんだろうと考えないことにする。実際には狼の中には草原を活動区域に含む種もいるし、コヨーテもオオカミと似たような生息地域を持っているため、ライトのつっこみは間違えているのだが、それを指摘してくれる相手はいない。
「ん、待てよ。これステップウルフ見つける前に墜落するんじゃね?」
とりあえずユニットを装備して飛び立とうとしたライトは、滑走を始める前にその事実に気づく。
「何秒飛べるかもまだわかってないんだよな。どっか情報あるか?」
燃料であるMPの消費量に関してどこかに説明が無いかとライトはメニューを探る。
「装備によって違うんだろうな。としたらエンジンあたりの項目に……ビンゴ」
腕や足、胸部のアーマーにはそれぞれ説明文やハードポイントが設定されているがひとまずはそれを読み飛ばして必要な項目を探す。それは背部ユニットの項目の中にあった。
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背部ユニット
『試製一型』 TierⅠ
AP 40
MP 0
物理攻撃力 4
魔法攻撃力 0
対物理防御 2
対魔法防御 13
機動力 250
MP/S 1
ハードポイント1 []
ハードポイント2 []
固定武装・フライトユニット
レシプロエンジン
飛行用レシプロエンジンを内蔵したユニット。稼働させるとプロペラが回転し、推力を生み出す。ユニットの角度調整が可能であり高い機動性を誇るが、耐久力は低い。稼働時消費MPは毎秒1。
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「いち……1! まじかこれ。しかも稼働時消費MPって、滑走段階も含めるよな」
のんびり力をためてから滑走している暇なんてなかったのである。
「飛びながら探したところで戦闘中に落ちたら話にならんしなあ。歩いて探すか。これまともに戦えるのかほんとに」
戦闘が始まってから飛行を開始しても、最大継戦時間は100秒。100秒たってから墜落するか、それ以前に着陸しなければならない。そもそも、敵の目の前でのんきに離着陸出来るとは到底思えない。
「あのやろ、知ってて何も教えなかったな」
目の間にニヤリと笑う馬鹿の姿を見て、ライトは悪態をつく。
「まあとりあえず探してから飛んで、後はダメそうなら着陸して頑張るか」
フライトユニットでも着陸して戦うことは出来るし、ユニットを解除して戦うことも出来る。いざとなれば、そうして戦うことも可能だ。
「空中戦なんて夢のまた夢だな。まあ出来ることからコツコツと、だなあ」
自由に飛び回る事もできないし、飛べたとしても最大100秒。ハードルは高い。だが、まあなんとかなるだろう。このゲームにはまだまだ先があるのだ。
「よし、それでは出陣と行きますか!」