【更新未定】This sky is… 天駆ける流星【供養】 作:アママサ二次創作
街を出てしばらくまっすぐ歩いていく。すると、丘の上から5匹の犬型の動物が群れているのが見えた。
「多分あれだな」
相手に気づかれていないことを確認してライトはユニットを装着する。最初はフライトユニットを背負ったまま歩いていたのだが、あまりにも移動速度が遅いためギアのみを装備した状態で歩いてきたのだ。
ライトがユニットを装着するさいの気配に反応した5匹の狼が、体を起こしてライトの方へと目線を向ける。そして、一斉に突撃してきた。
「魔法陣にでも反応したか。まあいい」
ユニットの装着が完了してすぐにユニットを稼働させ、狼の方へと加速していく。左手にはサブマシンガン、右手にはショートソード。右手にショートソードを装備したのは、引き金を引くだけのサブマシンガンに比べて武器を振り回さないといけないショートソードの方を利き手で扱いたかったためだ。
まだ離陸していないライトの左手から、サブマシンガンの弾がパパッパパッと続けざまに放たれる。放たれた弾丸は先頭の一匹の頭部と胴体に続けざまに着弾した。
攻撃を受けたステップウルフはノックバックでその足を止める。
「意外とぶれない。それにノックバックもあるのか」
思っていた以上に扱いやすい武器に、ライトは戦闘の予定を変更する。
「次は……剣!」
弾丸を警戒して散開した4匹のウルフの間をすり抜け、ライトは被弾した一匹に肉薄する。その一匹が飛びかかって来るのを横に避けて躱し、離陸の勢いと合わせて左下から右上へと剣を振り抜いた。
胴体に十分な深さで加えられた攻撃はウルフに大きなダメージを与え、HPが0になったウルフは倒れ込み光の粒子となって消えていった。
それを見届けることなく、空中に飛び上がったライトは旋回に苦労していた。
「旋回おっそいぞ! 何だこれ! 戦闘機ならこんなもんか!」
フライトユニットはその性能が飛行機に近いものであるため、その場で180度クイックターンすることは出来ない。その点はまずひとつライトが不満な点である。
ライトが好きな人型ロボットというのは、宇宙での接近戦に対応するために四肢を利用してその場でターンすることが出来るのだ。その点はライトが人型ロボットの中でも好きな設計思想であるため、それが出来ないというのはマイナスイメージになってしまうのである。
加速したまま大きく旋回して戻ってきたライトに対して、残りの4匹は戦意を崩さない。とはいえ、全ユニット中でも最大の直線機動力を持つフライトユニットに対してウルフの機動力は全くついて行くことが出来ず、小学生が跳ね回るバスケットボールに群がるかのような滑稽さがある。
「飛びながらの剣は……意外といけるね。引っかかって墜落するかと思ったけど」
すれ違いざまに、ウルフの一匹に斬撃を入れる。飛行姿勢を維持するために体を大きく使えない斬撃だが、飛行速度に合わせて振り抜けば大きなダメージが発生する。
追撃としてライトは、足元方向に適当にサブマシンガンをばらまいた。あたっているかは確認していないが、少しでもダメージを稼いでおかないと飛行時間の短いライトは不利になる。
再び旋回を挟んでライトがターンしたところで確認すると、残りMPは30を下回っていた。
「オーライ、後一回のアタックだな」
遠くから自分の方へと駆けてくる瀕死のウルフに向けてサブマシンガンをばらまいて体力を削り切る。そしてサブマシンガンを空中へと放り投げると、両手でショートソードを構えた。一時的に上げた高度から待ち構えるウルフへと向かって加速していく。
「南無三!」
ショートソードを突き出したまま、ライトはウルフの一体を貫き、地面へとまっすぐ追突した。
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「うおードキドキした。心臓止まるかと思った」
MP切れで墜落するときよりも更に自分で加速したため一瞬で目の前に迫ってきた地面に、自分で選んだ戦法ながらもライトは内臓がふわっと持ち上がる感覚を覚えていた。
最後の瞬間、MP切れで着陸しなければいけなかったライトは、5匹全てを倒しきるのでなくチュートリアルの対象となる3匹で十分だと考えて捨て身の突撃を敢行したのだ。
突撃の勢いがもっとものる突きに加えて、フライトユニットとライト自身による体当たり。それで3匹目のウルフを倒しきれていたようで、チュートリアルが進行したことを示すログが浮かんでいた。
ライトはログに従ってサバイバー協会に向かい、クエストの達成報告とついでに入手できたアイテムを全て売却する。
入手できたアイテムは魔石というアイテムが3つと、ステップウルフの肉や革といった素材系アイテムだった。換金用アイテムである魔石も料理や裁縫用のアイテムもライトが必要とするものではなかったため全て換金したのである。
「チュートリアルは終わったけど、これは飛ぶ練習が先だな。となると……ネットでいけるかな」
ネットで飛行機関連の知識を調べようとしたところで、ライトはチュートリアルの項目が増えていることに気づいた。
「『エーテル・コアを付け替えよう』。エーテル・コアって何だっけ、なんだっけ~っと」
ヘルプメニューの検索欄にその名前を打ち込んで調べると、インナーギアに搭載されている動力源のことらしい。その性能によってMPの総量が変わるようだ。
ライトが現在装着しているのはTierⅠの低品質のエーテル・コア。先程のクエストを達成するというチュートリアルの報酬としてTierⅠの高品質のものを入手したため、新しいチュートリアルが発生したのだ。
「なるほどねえ。燃料タンクってよりはバッテリーってイメージか。これでMPが125、125秒って言ったら2分ちょいだな。飛行時間の伸び方微妙だなー」
飛行可能時間が増えたものの、ライトの感動は薄い。劇的な伸びではなかったし、もっと自由に飛び回れるなら時間は短くても構わないと思っているぐらいだ。それよりも自由に飛び回る技術と、ライトの意思についてくるユニットを作ることが優先なのである。
「よし、それじゃあ一回ログアウトするか。まあ手元で遊びながらのほうが頭に入るしな」
ライトは普段から、機械の構造を考えたり調べる際にはイラストや青写真を見るだけでなく手元で作ってみながら確認していた。それが機械いじりや模型作りが好きなライトのやり方だ。
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「だからよ。飛行機も結構面白いんだって」
『もうその話3回目だ。そろそろ飽きたぞ』
夜。昼過ぎにログアウトしてからずっと飛行機に関して勉強していた翔は今日一日の成果について佑と話していた。話していたと言っても、テンションの上がったライトが一方的に得た知識について話しているだけだが。
『結局、飛行機に関して勉強するのは効果がありそうなのか?』
「おう。まあ内容が多いからもうちょっとかかりそうだけど。ちゃんと役立ちそうだぞ。どういう物理現象で飛んでるかとか、旋回するときにどういう力が働いてどうすれば一番効率良く旋回出来るかとか。まあ実際にやってみるのはまた別の話だろうけど」
どのように風を受けて揚力や推力を発生させているのか。それは飛行機の仕組みの最も基本的なものだが、それがわかるだけでも大きな違いがある。更にそれを自由に使えるようになれば、空中機動戦闘、戦闘機で言うところでのドッグファイトにも活かすことができるのだ。
普通はそんなことまで考えなくても『Dawn Odessey』のフライトユニットは十分に飛ばすことが出来るのだが、こういうやればやるほど精度が上がることに関して翔はこだわるのが大好きなのである。
『それは良かった』
「それにな、飛行機自体の構造がわかったこともそうなんだけど、おかげで今まで俺が考えてたロボットの構造も違うんじゃねえかってところがいくつか出てきたんだよな」
『というと?』
「まあ何ていうか、結局少ない設定集と現実のものとのすり合わせでこんな形じゃねえかなってやってきたもんだから違うっていうかもっと合理的な形があったりするんだよな。ちょこっとだけど戦闘機の勉強したおかげでそれがわかった」
『それは良かった、のか?』
あまり機械に詳しくない佑は、ライトの細かすぎる話がいまいち納得できていない様子だ。佑の模型作りなどに関する知識は市販のプラモデルを組み立てる程度なので、ロボット内部構造の話なんかは全く考えないことなのである。
「まあマニアックなこだわりだとは思うけどな。俺そういうの好きだから。食わず嫌いで戦闘機は勉強しようとしてなかったけど今回勉強できてよかった。そのうち陸上車両もやってみるかな」
ポツリと呟いたライトの言葉に、通話の向こうから理解し難いという雰囲気が漂ってくる。
『まあお前が良いならそれでいい。それじゃあ、またな。頑張れよ』
「おん。そういえば、お前はフライトユニットは使わないのか? まだまともに飛んでないけど風気持ちいぞ」
別れの際になにげなくライトが言ったのは、はっきりとした疑問というよりはなんとなくの言葉。だが、それに対して答える佑の答えは要領を得ないものだった。
「……まあ、フライトユニットは効率が良くないからな。俺は使わない」
「ほーん」
『別にお前に使うなっていうわけじゃないぞ。ただ普通にやる分にはってことだ』
「ほーん」
翔のことまで配慮して説明してくれる佑に、翔は間延びした返事を返す。
『……』
「……」
『……言わないとだめか?』
先に沈黙に耐えきれなくなった佑が、嫌そうに言う。
「いやまあ別に良いけどな。なんか別に理由があるのはわかったから。お前そんな効率厨じゃないし、どっちかというと効率より試行回数と時間でゴリ押す感じだろ」
『まあ、そのとおりだが。とにかく、俺はフライトユニットは使わない。お前が飛んでるのを見せてくれれば満足だよ』
「ほいほい」
何やら佑にはフライトユニットを使いたくない理由があるようだが、特に問い詰める気はない。ただなんとなく気になって聞いただけなのである。結構楽しそうなのにもったいないとは思うが、まあ佑の勝手だし、と考えているのである。
自分の好きなものの布教が大好きな翔だが、自分より詳しい上でやらないと言っている相手にまで布教しようとは思わないのだ。
「んな、じゃあおやすみ」
『おやすみ』
通話を切った翔は、電話をおいて今作っていた模型を持ち上げる。それは人と翼、まさにゲーム内のライトとフライトユニットを形どった模型だ。
「どこまでこだわるか、だな」
ネットや書籍で読んだ飛行機の機動や飛ぶ仕組みには、様々な理論が存在していた。その全てを理論として覚えた上で動かすのか、ある程度にして実際の動きとして覚えていくのか。
いずれにしろ、頭でも体でも覚えないといけないことが盛りだくさんだ。
「よし、とりあえずこれ読み切ろう。明日はまた動かしてみたいからな」