【更新未定】This sky is… 天駆ける流星【供養】 作:アママサ二次創作
「よーしよし、なんとか間に合ったな」
低空飛行から着陸した勢いのまま街の安全圏内に突入したことでユニットの装備が解除され、ライトはゴロゴロと地面を転がった。
フライトユニットの操作に慣れてきたライトは、現段階で自分が出来るであろう最大限の機動をいくつか組み合わせて、それを自分への課題として課していた。
言ってみれば、自分の中でこの機動が出来れば合格点というラインを設けたのだ。
少なくない回数の挑戦を経てようやく、今それが成功した。既存のドッグファイト用の飛行技術を順番につないだだけのものなのでライトは完全に満足しているというわけではないが、それでも速く鋭く飛ぶことは出来た。
少なくとも、それだけの機動をすることは出来たという指標にはなる。
「次はどうするかな……やっぱり先に支援用AIとやらを買いに行くか。あって困るものじゃないだろうし」
その場に座り直して少し考えたライトは立ち上がり、ウインドウを開いて街の地図を確認しながら歩いていく。今の飛行では、このゲームを始めてから初めて墜落することなく街に戻ってくることが出来た。もちろんそれがライトが自らに課した課題の一環であったわけだが。
そんなライトに対して周囲のプレイヤーが奇異の目を向けていたのだが、ライトはそれに気づくこと無く街へと入っていった。
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「へー、AIにもいろんな種類があるんですね」
「そうなんです! サバイバーさんはどんなAIが必要ですか?」
地図と街にいるサバイバーのアドバイスを頼りにライトがたどり着いたNPCのショップで彼を迎えてくれたのは、小柄だが厳しい顔つきをした男性とその娘らしき元気な少女だった。
ライトに対応してくれたのはオレンジ色のショートカットに可愛らしい笑顔、活動的な格好をしており、一部のプレイヤーがファンクラブを作ろうとしているほどのNPCの少女である。
支援用のAIがほしいと言ったライトに対して彼女が見せてくれたのが、さまざまなカードが並ぶ店の一角だった。
この『Dawn Odessey』では、支援用のAIはスキルの一つとして管理される。そのためライトは理解していないが、今ライトが来ているのはNPCの運営するスキルショップの一つだ。
「基本的な疑問に答えてくれるやつが欲しいです。どのショップでどんなものが買えるかとか、どのスキルがどんな効果を持っているかとか。後はユニットの作り方も教えてもらいたいです」
ライトがそう答えると、少女は2つのスキルカードを持って戻ってくる。
「だったらこの2つが良いと思います。こっちのは初心者支援用AIで基本的な疑問に答えてくれます。そしてこっちは、ユニットの製造や改造をする際にどうやればいいかをそれぞれの部品やパーツについて具体的に教えてくれます。ただ、こっちの【製造・改造支援AI】はかなり高額になりますけど……」
「その初心者支援用AIの方だと、生産の仕方は教えてくれないんですかね? パーツごとの構造とかは自分で試してみるから別にわからなくて良いんですけど、そもそもどうやったら製造とか改造をすることが出来るかがわからないので」
ライトがそう言うと、少女は安堵したように笑う。
「それならこっちの初心者支援用AIだけで大丈夫だと思います。それぞれのスキルの基本的な使い方は教えてくれますよ」
「というと、製造もスキルなんですか?」
ライトがそう尋ねると、少女は製造・改造支援AIの方を棚に戻してライトに向き直る。
「それは、このAIを買ってから聞いてみてくださいね」
にっこりと笑ってそう言われると、じゃあ買うかという気になってしまう。もちろん最初から買うつもりであったのだが。
この初心者支援用AIは、文字通りゲーム内でわからないことがある初心者や。そもそもゲームになれておらずゲーム内の説明が理解できないような子供やゲーム初心者のプレイヤーに向けて用意されたスキルだ。
そうしたプレイヤーは自らヘルプを参照することも出来ない場合が多いので、タスクがライトに説明したように様々なパターンで入手することが出来るようになっているのである。
「買います。いくらですか?」
「1000リラです」
「わかりました」
支払いをしようとしたところでライトは気づく。自分が今1リラも所持してないことに。
「すいません、今1リラも持ってないんでマイルームに行って持ってきます」
「え?」
唖然とした顔をする少女にライトは説明する。店主であろう男性は、別の男性に相談されて店の奥へと消えていた。
急いでマイルームに戻ったライトは、すぐにある程度のリルを持って戻ってくる。全学を持ってデスすると痛いので、この後必要なものを買っても足りるぐらいの金額を持ってきた。
「はい、ありがとうございます」
初心者支援AIあらため、【支援AI:TypeA】の所有権がライトに映ると、自然とスキルが装備されてAIが起動する。
『こんにちは。サバイバー支援AI、アイラです』
「あ、どうもこんにちは」
どこから聞こえたかわからない声に、ライトはとっさに返事を返しながらもその姿を探す。すると、人の姿は見当たらないがいつのまにか装備していた簡素なブレスレットが2度、3度と光る。
『私は現在ブレスレットの形を取っております。お望みであればイヤリングやネックレスなどアクセサリーの形を変えることも出来ますが、いかがなさいますか?』
「あ、はい。ブレスレットが一番かっこいい気がするのでそのままでお願いします」
『承知しました』
ライトがAIのアイラと会話をしていると、カウンターの向こう側で見ていた少女が笑った。
「あ、これ聞こえてます?」
ライトが尋ねると、少女は首を横に振る。
「サバイバーさんの声しか聞こえませんよ」
それはなかなかに滑稽な姿で。低い試製で独り言を言っているのだ。
「いやなんか恥ずかしいですね。あのーアイラさん」
『私に対して丁寧に話す必要はありません。私はサバイバーの皆様が行き詰まった際や疑問を感じた際にボイスナビゲートによりサポートするAIです。サバイバーの皆様のお手伝いをするのが私の役目です』
「あ、じゃあアイラ。声が他の人に聞こえるように出来る?」
『出来ますが、その場合は音がブレスレットから発生しますのでブレスレットを顔の前に上げるなどの姿勢を取ることを推奨します』
「こう?」
言われたままに、ライトが腕時計を確認するように腕を顔の下辺りに持ってくる。
『それで結構です。では……』
アイラがそう言うと、ライトの耳に直接響いていたような声が左腕のブレスレットから響くようになる。
『改めまして、支援AIのアイラです。サバイバー様のゲームプレイをサポートさせていただきます。疑問が生じた際には気軽にお尋ねください。また、常時起動した状態や、質問された場合のみ起動するなど条件の設定も気楽にお申し付けください』
「じゃあまあとりあえずは常時起動してる状態で。わからんことばっかだし」
『承知しました。まずはお名前を教えていただけますか?』
「ライトだ。よろしく」
『名前を登録しました。ライト、以後よろしくおねがいします』
これだけ丁寧な口調のAIだとサバイバーの名前を呼ぶ際にも敬称をつけそうなものだが、接しやすさや様付けなどの大仰しさを省くためにあえて呼び捨てするように設定されている。
「ああ」
『それでは、私を購入したということは何か御用があるのではありませんか?』
「ああ、まあ色々とわからないことが多そうだなって思って、いてくれると便利だと思ってな」
『承知しました。それでは、待機しておりますので何なりとお声がけください』
「了解。じゃあ早速なんだけど、ユニットの製造とか改造はどうやれば出来るか教えてくれるか?」
ライトがそう尋ねると、アイラが少し考えるかのように数度点滅する。
『そちらの内容は、十分なリルがあるのであれば【製造・改造支援AI】に尋ねたほうがより正確な返答を得られると思います』
そう答えるアイラに対して、ライトは先程少女にした説明をより詳しくする。どのようにすればユニットの製造に着手できるかわからないということ、しかし実際に製造に着手できれば、後は自分で試しながらやってみるということ、少なくとも、機械に関しての知識はある程度はあること。
それを伝えると、納得したことを示すようにアイラが点滅する。
『承知しました。では今後は、【製造・改造支援AI】を利用しない方法を提案いたします』
「そう言えば話は変わるけど、AIの種類ってどんなのがあるんだ? アイラの他にも、その【製造・改造支援AI】ってのもあるみたいだし」
ライトが尋ねると、アイラがライトを先程アイラが収められていたショップの一角へと案内する。
『まず、私は基本的な疑問に答えたり、施設の利用法やスキルの簡単な説明をすることを主に行っております。それに対して他の支援AIは、特定の行動に特化したものが多数を占めます。全てをあげるとキリがありませんが、映像の撮影や音声の録音をサバイバーから独立して行う【記録支援AI】や、先程からあげられている【製造・改造支援AI】などが例として挙げられます。他にも、かなりの高額にはなりますがユニットの使用を支援するAIも存在します』
「なるほど。結構色々あるんだな」
アイラが上げた例の他には、スナイパーユニット使用時に狙撃の支援を行うAIや、アーティーユニットによる砲撃を支援するAI、フライトユニットの飛行を支援するAIなど様々なものが存在する。
それらの全てに共通するのは、あると便利だが無くても問題はないということだ。
それらのAIが必須装備になってしまっては、何より他のプレイヤーとともにプレイできるというMMOの面白い点を潰してしまう。
だからこそ、雰囲気付けやソロプレイのお供としては有用だが、実際にレコンユニットなどを装備して支援を行うサバイバーには性能や有用性で劣るように設定されている。こうしたAI関係のバランスは運営の強いこだわりが感じられるため、サバイバーからの評価はそれなりに高い。
『続けて、製造関係の説明に写っても良いですか?』
「ああ、よろしく頼む」