【更新未定】This sky is… 天駆ける流星【供養】 作:アママサ二次創作
「翔ー! 朝ごはん出来たよー! 早く来ないと片付けるぞー!」
「わかった今行くー!」
朝から模型をいじっていた翔は、母親の
「おはよう」
「おはよー!」
「おはよう」
翔よりも元気よく朝の挨拶をしたのが、母親の仁美。それを見ていつもどおり苦笑しながら挨拶をしたのが父親の
翔と奈緒が食卓についたところで、全員で手を合わせて食事を始める。世間一般には家族で一緒に食事をとることは少なくなってきたようだが、大空家では朝と夜は皆で同じ食卓につくことになっている。夜などは祖父が乱入してくることもある。
他愛も無い会話、ただしエンジニアの家系らしくどこの会社が新しい技術を開発しただの、新しいエンジンの話だのを含んだ会話をしながら食事はにぎやかに進む。
「そう言えば翔、最近はあまりもらいに来ないが模型作りはやめたのか?」
翔が模型作りに使っている材料は、同様の趣味を持ち大量のストックを持っている父から譲り受けたものが多い。
「いや、続けてるよ。ただちょっとおもしろそうなゲーム見つけたからそっちやってる時間のほうが多いだけ」
「ゲーム? どんなゲームしてるの?」
大杜が答えるよりも先に、仁美が翔にたずねてきた。仁美はかなりゲームが好きであり、最近はそれほどしていないが若い頃はオンラインゲームの戦場に入り浸っていたらしい。
「パワードスーツみたいなのを装着して戦うゲーム。佑に教えてもらったから一緒にやってみてるんだ」
「面白そう! 私もやってみたいなー」
「母さんは積んでるゲームを終わらせてから新しいのを始めような」
「オンラインゲームは別だよー!」
遊ぶ時間がそれほど無いにも関わらず買いためたゲームが、優に10本以上は積まれている。それを知っている大杜は、興味津々の仁美に釘を指した。
そのまま2人でいちゃいちゃと話し始める両親を放っておいて、翔は食事をすすめる。
すると、後は味噌汁を残すのみというところで再び仁美が話しかけてきた。
「あ、そう言えば翔。明日から奈緒ちゃん泊まりに来るって」
「奈緒が? 俺ゲームで忙しいんだけど」
「翔が忙しいっていうのはいつものことでしょ。少しでいいから遊んであげてよね」
「思春期の従兄弟なんて一番話しづらい相手だろ……。まあ少しは頑張るよ」
「うん。駆ももうちょっとで休暇もらえるらしいから、それまでは頑張ってね」
奈緒というのは、遠く離れた農村部に住んでいる翔の年下の従兄妹だ。こうして長期休暇の際には、時間を作って泊まりに来るのである。彼女の両親はエンジニアというわけではないが、結構な頻度で翔の家に遊びに来ては航空機が大好きな翔の兄の駆に絡んでいたため、自然と飛行機好きになっていった。
そんな奈緒だが、歳が近いせいかそれほど翔と仲良くすることはなく、もっぱら兄の駆になついてばかりである。どちらかと言えば奈緒が翔と仲良くないというよりは、翔が奈緒を苦手としているだけだが。
「兄貴はどうせ戻ってきてもまた出かけてくだろ。まあ良いけどさ。ごちそうさまでした」
食事を終えた翔は、今日担当する家事を母親と話し合って自室に戻る。ちなみに今日は、洗濯物と夕食づくり、そして夕食後の皿洗いと明日の朝食を作ることになった。
「あ、翔。翔の言ってたゲーム名前何?」
「《Dawn Odessey》。両方英語な」
******
ゲームにログインしたライトは、すぐに街の外へ向かって歩いていく。
『おはようございます、ライト』
「おはようアイラ。今日はとりあえずひたすら街から遠くに飛んでみることにする」
『増槽などの購入はしなくても良いのですか?』
「……先にそっちだ。もうショップは開いてるよな?」
『開店しています』
街の外からNPCのショップに目的地を変更し、ライトは歩く。
「そう言えば、増槽はどこで買えるんだ? 昨日のスキルとかAIを売ってた場所だと売ってなかったように思うけど。もしかしてそれもカードになってたりする? そう言えばスキルも見に行かないとだな」
『増槽は街中に存在するNPCのユニットショップで購入できます。全般的に装備を網羅したショップの他にも、各ユニット専門のショップもありますが、どちらに案内いたしますか?』
「んーじゃあフライトユニット専門のところで。詳しい人がいそうだし」
『わかりました』
ライトの予想はあたっており、専門のショップにいるNPCの方が知識が深かったり手際が良かったりする。また街中にはそうした兵装を製作して販売しているサバイバーもいるのだが、それをサバイバーに伝えるのは支援AIの役目ではない。サバイバーどうしの交流は自分たちですることなのだ。
NPCの経営するフライトユニット専門ショップは街の中央付近にあり、看板にはフライトユニットを装備したサバイバーのシルエットが描かれている。サバイバーのシルエットといっても、構図が悪いためかほとんどユニットに飲み込まれているが。
「お邪魔しまーす」
扉を押し開けて入ると、薄暗い店内が目に飛び込んでくる。
「やあ、いらっしゃい」
店内を横切る棚の奥、カウンターの向こうから声が聞こえてきた。棚の間をくぐり抜けてカウンターの前まで行くと、声の主が見えてくる。
優しげな口調と声に違わぬ、線の細い青年だ。柔和な笑みを浮かべており、目は開いているのかわからないほど細められている。
暗めの繋ぎとオレンジ色のニット帽も相まって、まさに優しげなお兄さんといった風貌だ。
「こんにちは。何かいりようかい?」
「こんちは。ユニットに増槽をつけたいと思いまして。どんなものか見せてもらってもいいですか?」
ライトがそう尋ねると、その青年はカウンターの扉を開けながら答えてくれる。
「増槽か。それなら装着しながら見てもらったほうが良いね。幸い今は時間も空いているし、奥へどうぞ」
案内されるままに、ライトは店の奥へと歩く。店の奥では、二人の作業員がパーツを組み合わせて兵装を作っている。
その隣、予備スペースとして空白となっているであろう作業場の一角で青年は足を止めた。
「ユニットを装備してもらえるかい?」
「え、あ、街中でもいけるんですね」
「ここは作業スペースだからね。飛ぶことは出来ないけど装備してもらうことは出来るよ」
言われるままにライトはユニットを装備する。
「試製一型か。なるほど。予算に合わせて積むか、とりあえず積めるだけ積むか、どちらにする?」
「予算はそこそこあるんで、とりあえず積めるだけ積む方針でお願いします。できるだけ多めで」
「了解。それじゃあ少しじっとしててね」
言われるままに突っ立っているライトに、青年が増槽、燃料タンクを装着させていく。
「はい、終わったよ。どうだい?」
示されるままにライトは、目の前の鏡に目を向ける。増槽が装着されたのは、両足に両肩、それに主翼下部の6箇所だ。両足両肩は四角い普通のタンクを取り付けたような形であり、主翼下部の2個は紡錘形のミサイルのような形をしている。
「見た目がよろしくないですね。特に両足と両肩が」
ライトがそう言うと、青年が耐えきれないように笑う。
「ふふっ。正直だね。僕もそう思うよ」
「そもそもこれ空力的に大丈夫なんですか?」
「大丈夫じゃないね。そもそも増槽はつけた時点で機動性が下がるよ」
両肩の増槽なんて明らかに風の抵抗が強そうだし、そうでなくてもおもりである。
「もっと違った形の増槽は無いんですかね。せめて正面側は風に潜る感じになってるとか」
「ここにはおいてないね。一応もっと複雑な形の増槽の設計図はあるけど、それを作るなら素材を持ってきてもらうことになるよ」
「なるほど。それはそれで面倒ですね」
『ライト』
ライトが店主と話していると、アイラがライトへと声をかけた。声はブレスレットから発されており、NPCの店主にも聞こえている。
「おや、支援AIかい?」
「ああ。こいつはアイラです。で、何だアイラ」
『ライトであれば、いずれオリジナルの増槽を作ることも出来るようになります。ですが、今すぐはおすすめしません』
「なるほど?」
『おそらくライトの目的通りに活動するのであれば、現在のユニットではすぐに力不足になるでしょう。その際にはより上位のユニットに切り替える必要がでてくるわけですから、ライトの目的に叶うようなユニットを作ってからそれに合わせてオプションパーツを開発したほうが良いかと』
「確かに。それもそうだな」
アイラの言葉に頷くライトに、店主も頷く。
「アイラくんの言うとおりだね。僕のところで作ってあげられるのはそれぞれのユニットの形に合わせたものばかりだ。もし今使っているユニットにこだわりが無いのなら、新しいユニットを開発してから合わせて揃えることをおすすめするよ」
特に初期のユニットなどというのは、いわばチュートリアル段階で使用するものであり、それよりも先に進んだ段階で普通は更新される程度の性能しか無い。それに合わせて作っても、よほどの縛りを自分に設けていない限りは意味が無いのだ。
「そうしておきます。でもこれ、飛ぶのに邪魔ですよね。どうしようかな」
「そうだね。確かにそれは邪魔だ。でも邪魔といっても、まっすぐ飛ぶ分には問題はないよ。激しく飛び回ろうとしたらだいぶ感覚が違うだろうけどね。だから普段飛ぶ間は装着していて、戦闘に移るときに切り離すことをおすすめするよ」
それを聞いたライトは、耳を疑う。切り離す、と彼は言ったのだ。
「切り離したタンクはどうなるんですか?」
「僕は実際に使ったことは無いからね。なんとも。下の人に当たらないことを祈るぐらいかな」
ライトがその言葉に、使い捨てかあ、とがっくりとしていると、アイラが補足をしてくれる。
『ライト、切り離した増槽は次街に戻ったときに自然に装着され直します』
それは、まさにゲームゆえのことで。
「つまり使い捨てにはならない?」
『なりません』
ライトに光明をもたらすものだった。
それを聞いたライトは、店主が疑問符を浮かべる中アイラに動画を見せる。
「つまり、こういう事もし放題?」
『構造にはよりますが、そういう事がし放題ですね』
「買います。一式お願いします」
「ありがとう。それじゃあ全部で……3200リラだね」
言われるままにライトはリラを支払い、作業部屋を出て店舗部分に戻る。店舗に戻ったところでユニットは装備解除された。
「まいど。また何かいるものがあったらおいで。あまり人が来ないから僕も寂しくてね」
「あんまり来ないんですか?」
「ここはフライトユニット専門店だからね。フライトユニットを使う人しかこないよ。それにしても少し少なすぎる気はするけど……」
そんなものか、とライトは首肯する。大半の人が総合点的な方のショップに行っているのだろうと。
実際には、いくつかの理由が重なって今の段階でフライトユニットを使っている人の総数が少ないため店を訪れる人が少ないという状態を引き起こしている。
「それじゃあ、ありがとうございました」
「またユニットを作るときにでもおいで。といっても、君は自分で作るのかな?」
「あ、はい。多分そうすると思います」
「そうか。もし何か困ったらおいで。手が開いてるときなら手ほどきぐらいはしてあげるよ」
「ありがとうございます。それじゃあ」
優しい店主に別れを告げ、ライトはショップを出る。
「んよし、それじゃあまた飛び直しだな」