このろくでもない世界で平穏を! 作:8888
2013年2月22日。
(これだから非合理的な人間は…)
電車のホームで、一人のサラリーマンが突き飛ばされて轢死した日付である。
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「────さん、ようこそ死後の世界へ。貴方は不幸にもなたはつい先程、不幸にも亡くなりました。短い人生でしたね。」
「失礼、どちらさまだろうか。」
ここはどこだろうか?ふと気付いたら私は真っ白な空間に設けられた木製の椅子に座っていて、そんな事をなんの前触れもなく告げられた。
少し記憶を整理しよう。
私はレールに沿って合理的な人生を送っていたサラリーマンだ。
だから、目の前にいる水色の髪に水色の瞳を持った痛々しい女性との接点は記憶にない。
…ちょっと待て、今『亡くなった』といったか?
「えぇ、そうよ。あなたはリストラした社員に突き飛ばされて電車に轢かれて死んだの。そして私は、貴方に新たな道を案内する女神です。」
(こちらの胸中を読んだ?!)
「驚いた。悪魔が実在したとは」
「違うわよ!私は!水の女神!わかる?アイ!アム!ゴッド!」
この痛々しい見た目をした「女神よ!女神!」…仮称存在Xは「め~が~み~!」…とにかく自分は神だと主張しているが、神がいるならば世の不条理を放置するはずもない。故に世界に神は「ここにいるじゃない!目の前!ほら!」…いない。証明終了。「勝手に終わるんじゃないわよ!」
「…人が考えているときにうるさくしないでもらえるか?そもそも神だというならば、「うるさ~い!あなたそんなんだからリストラされた人に殺されたんでしょ?人望がないってかわいそ~う…プークスクス」…現代において神などという非科学的な存在を信じているものなど狂人ぐらいしかいませんよ。その点でいえばあなたのほうが人望がないのでは?」
とりあえず、目の前の少女…存在Xは座り込み、『私女神だもん…嘘じゃないもん…』とうわごとのように繰り返している。
とにかくこの空間について調べてみるか…
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「ふっふーん!改めまして、――――さん。私の名前はアクア。日本において、若くして死んだ若者たちに新たな道を導く女神よ!」
この部屋についていくら調べても怪しげな魔法陣?のようなものしか発見することはできなかったため、不本意ながらも『どうせ私は駄女神ですよ!』とかなんとか言って拗ねている少女をなだめて話を聞くことにしたのだ。
するとどうだろうか。一言二言ほめるだけで『そうよ!私はできる子なのよ!』といって完全復活を遂げてしまったのだ。
…彼女の言う天界とやらは人材が足りないのではないだろうか。もう少し人件費をかけてより良い人材を雇うべきだと思う。
「さて、貴方には二つの選択肢があります。一つ目は、このまま天国に行くこと。もう一つは、再び地球に記憶を失い赤ちゃんとして生まれ変わるか。どちらにしますか?」
「では天国で。」
「即答?!」
当たり前だろう。合理的に考えて何も労働をせずに生活の保障というリターンが返ってくるのだ。
ノーリスクローリターン!なんと甘美な響きだろうか!
「天国っていっても貴方が想像しているような素晴らしい所ではないわよ!?できることといえばそこで暮らしている人とまったりお喋りすることくらいだからね!すーっごく、つまらないわよ!」
「…なるほど。」
確かにそれでは『生きている』とは言い難い、家畜以下の生活ともとれる…
「では転生で。」
「あのね?もうちょっと悩んでもいいと思うの。ほら、『自分の記憶が無くなるのは…』とかね?」
「?ごねたところでどうなるわけでもないならば非合理的な行動では?」
第三の選択肢がない以上、一つの選択肢がとりたくなければもう一つの選択肢をとるしかないのは自明の理だ。それならば即決で決めるべきだろう。
「うんうん。そうよね。ほんとに未練がないとかだったら困ってたわ!…なんと、第三の選択肢として『異世界に行く』っていうのがあるの!もちろん体も記憶も引き継げるし、なんなら特典だってついてくるわ!どう?興味ない?」
「それだけならば、こちらとしてもいい提案だが…何か裏があるのでは?」
この存在X、何かを隠している。
その証拠にこの質問をした瞬間から目が泳ぎ始めているのだ。
「…えーっとね?その世界、俗に言う魔王軍ってのがいてね。連中相手にその世界の人族が随分と数を減らされちゃってピンチなのよね~。魔王軍に殺された人たちは、その世界での輪廻転生を嫌がって他の世界に逃げちゃうのよ~」
「やめておこう。」
思った通りリスクが高すぎる。
死ぬ感覚なんぞ二度と味わうのはごめんだ。いかにリターンが大きかろうと、こればかりはリスクが大きすぎる。
「なんでもいいのよ!?ほら、言葉の壁とかもアクア様の超パワーで解決してあげるし!ほら、とりあえずカタログカタログ!」
「だから私は行くつもりはない!何と言われてもだ!大体自称神なんだったら自分で魔王を討てばいいじゃないか!」
「異世界の人たちを可哀そうとは思わないの!?ほらほら選んで!」
「だから私は…」
存在Xめ!放せ!私はそんな危険な生活を送るよりも地球で普通に暮らしたいんだ!
「またまた~冗談でしょ~?私もノルマたまってるからさっさと転生してほしいんだけど~?」
「やっぱりか!それは貴様の事務処理能力の「……」…おい、何を唱えてる。待て、落ち着こうじゃないか。やめろ、何とか言ったらどうなんだ…!」
魔法陣の上まで連れていかれて、何かを唱えながら逃げ出さないように押さえつける存在X。
そして、足元の魔法陣が光って…!
「おぎゃあ!」
(あの悪魔め!存在Xめ!)
「はい、アーン。こらこらしっかりお口を開けましょうね?好き嫌いはいけませんよ?アーン。」
(存在Xに目にもの見せてやる!)
そして私は、非科学的な世界で女に生まれ(魔王軍との)戦争を知り(頭のおかしい連中に絡まれて)追いつめられるのだが、それはまた別の話であろう。