東方狐憑依伝   作:如月日和

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たいっへん、お待たせしました!
戦闘シーンって、やっぱり難しいですね…。


二日目④ 寺子屋と竹林の案内人

 

 謎の妖怪の毒と瘴気に侵された子供を抱えながら、藍と慧音が迷いの竹林に入って数分。このまま何事もなく永遠亭に辿り着けると思っていたときだった。

 

「慧音、後ろだ!」

 

「むっ!?」

 

 元獣であるからか、第六感とも言う感覚が走り、私の後ろを走っていた慧音の方を向くと、彼女の背後の地面が盛り上がっていた。詳細も何も省いた私の言葉に反射的に真横に飛び跳ねる慧音。

 

ビュオン!

 

 その直後、先程まで慧音がいた所を、大きく鋭い何かが通り過ぎていった。

 

「すまない、助かった!」

 

「それより、今のは…?」

 

「分からん。何か鋭い針のようなものは一瞬見えたが…」

 

 言葉を交わしながらも、周囲への警戒を続ける私たち。一歩進んだとたん、今度は間違いなく殺気を私たちの真下から感じて、直ぐ様上空へ避難した。地面を引き裂き、巨大で禍々しい針が突き出してきた。

 

「何だ、あれは!?」

 

 飛び出した針の先には、子供を蝕んでいる毒と瘴気と同じものを感じる。十中八九、あれが件の妖怪か。

 

「いかん、また地面に潜る気だ!」

 

 手応えが無かったことに気づいたのか、針が再び地面へ潜ろうとしている。このままでは、同じことの繰り返しになってしまう。

 

「させん!」

 

 袖より出した符を針間近にある地面に投げつける。妖力を込めて符とその周辺を爆発させると、針の主がようやくその姿を現した。

 

「あれは、蠍か!?」

 

 土煙が晴れて視認出来たのは、巨大な蠍だった。3メートルはありそうな巨体を硬質な外殻が被い、鋭い棘の生えた尻尾の先には、先ほど私たちを襲った針が気味悪い色に輝いていた。

 

「この禍々しい気配に力、一筋縄ではいかなそうだな…」

 

 ちらり、と慧音の方を見る。彼女の腕に抱かれた子供は、私が術である程度毒と瘴気を弱めたとはいえ、大分危険だ。傷が熱を持ったのか、さっきよりも顔が赤く、息も荒い。ここは早く子供を永遠亭に連れて行かなければ…。

 

「慧音、先に行くといい。私はここでアレを止める」

 

「何!?貴女1人置いていくなんて、出来るわけが…!」

 

 慧音の声を遮って、私は彼女の前に立ち、結界を展開する。妖怪蠍の尻尾が一瞬ぶれたかと思うと、その鋭い針が私たちの目の前に迫っていた。ギャリリ、と結界に阻まれて今は何とかなっているが、中々力が強い。しかも急拵えで創った結界のため、あまり長くは持ちそうにない。

 

「いいから、早く!この結界も長くは持たない。子供を先に永遠亭に連れて行くのが先決だろう!?」

 

「…すまない!」

 

 はっ、と慧音は腕に抱いた子供を見る。それでも私1人置いていくことに少しばかり迷っていたようだが、すぐに身を翻し、飛んでいった。

 

「さて…」

 

 慧音が無事この場から去っていったのを確認し、再び奴に向かい合う。結界を展開して支える左手はそのままに、右手を懐に入れて、大量の符を取り出す。

 

「はっ!」

 

 妖力を込めた符を扇状に広げ、放つ。放たれた符はそれぞれ鳥のような形に変化し、妖怪蠍へ向かっていく。その巨体のせいで小さな鳥の使い魔たちに翻弄されている隙に、妖力を集中させていく。

 

「特大の狐火をお見舞いする、ぞ…!」

 

 私と尻尾を囲うように、狐火が浮かぶ。その数、およそ百。その全てを一つへ集め、巨大な狐火へと変えたそれを撃ちだした。大量に放ったその分力も弱い使い魔たちは、既にほとんど妖怪蠍に元の符へと戻され、地面へ落ちていた。だが妖怪蠍をその場に留めることは出来た。巨大な狐火が妖怪蠍を包み込み、燃え盛る。背筋が凍るような金切り声と共に、妖怪蠍は次第に動きを止めていく。

 

 何とか上手くいった、と気を緩めた瞬間だった。

 

ドスッ。

 

「な、何…!?」

 

 衝撃が身体を襲い、右肩が熱い。激痛に苦悶しつつ見やると、針が私の右肩を貫いていた。馬鹿な、私と妖怪蠍との距離は 5 メートル以上離れている。何故、と今だ火に包まれている筈の妖怪蠍に視線を向け、驚愕する。

 

「針を、撃ちだした、だと…!」

 

 奴の尻尾の先にあった筈の針が無くなっていた。今この間にも尻尾の中から新しい針が出て来ているのを見ると、どうやら撃ちだした針は高速再生出来るようだ。

 

「ぐうっ!まずは、この針を抜かなければ…」

 

 舌を噛まないように服に噛み付いて、力任せに針を引き抜く。あまりの激痛に一瞬意識が途絶えそうになるが、何とか持ちこたえる。針を放り捨て、手拭いで簡易だが止血を施す。痛みは断続的にあるが、今は気力で乗り越えるしかない。

 

「…どうやらそっちも再生が終わったようだな。しかし、この火力でまだ燃え尽きないとは」

 

 狐火の炎はほとんど消えており、針も再生が終わっていた。身体の大部分を被っていた外殻が溶けていたが、おそらくそれが身を守ったのだろう。よく見ると、外殻も針と同じで再生が始まっていた。奴を倒すには、再生出来ないほどの火力が必要だ。だが、私はどちらかというと万能型であり、火力特化の術は持っていない。こういう時、「弾幕はパワー」を得意とする魔理沙が羨ましい。

 

「考えても仕方ない。とりあえず、出来るだけ最大火力の術で、何とかするしかない…!?」

 

 視界が突然歪み、踏み出した足が地面を踏み出すことなく、私はそのまま倒れ伏していた。

 

「しまった、毒か…!」

 

 奴の毒のことをすっかり失念していた。マズイ、早くこの場から動かなくては…!

 地面に着いていた顔を上げた時、既に目の前には奴の姿があった。

 動け、と必死に手足に力を入れるが、麻痺し始めているのか、ピクリとも動かない。

 尻尾が持ち上がり、生え変わった針の先が私に向けられる。

 

「一か八か、これで…!」

 

 倒れたままだが、結界を展開して、何とか防ぐしかない!

 奴が針を動かした瞬間、私は術式を展開しようとして、

 

-不死「火の鳥- 鳳翼天翔-」-

 

 頭上から降ってきた不死鳥の炎に妖怪蠍は包まれた。先ほど私が繰り出した狐火とは比べ物にならない威力の炎は、奴の再生能力などものともせず、焼き尽くしていく。

 

「この炎は、まさか!」

 

「お、無事かい?八雲の式さん」

 

 空から降り立ったのは、長い白髪が目立つ緋いもんぺ姿の少女、藤原妹紅。彼女は燃え続ける奴をチラリと見て若干顔を顰めた。

 

「コイツが最近竹林で噂の妖怪か。アンタでさえ手こずるなんて、結構ヤバい奴だったんだね。というか、大丈夫?結構傷が深いようだけど」

 

「少し油断してしまったよ。すまないな、本当に助かった。…そうだ、慧音を途中で見かけなかったか?」

 

「慧音?ああ、確かに会ったよ、永遠亭で。私がここに来たのも、慧音に頼まれたからだしね」

 

 良かった。どうやら無事に永遠亭に着けたようだ。安堵しつつ、身体をゆっくりと起こしていく。回復に力を集中させていたおかげか、先ほどよりは手足が動くようになっていた。少し時間をかけて立ち上がれたが、また直ぐに膝を着きそうになった私の肩を、いつの間にか隣に来ていた妹紅が支える。

 

「無理しない。アンタも永遠亭に行くんでしょ?ついでにその傷もあの薬師に看てもらいなよ。一応、私はこの竹林の案内人として、慧音に頼まれているしね」

 

 妹紅に支えられながら、ゆっくりと私と妹紅は浮かび上がり、妖怪蠍が今だ燃え続けるその場から離れた。ついでにある物も拾って。

 

 

 

…今度、火力重視の術を創っておこう。そう決めた。

 

 




読了ありがとうございました!
今までしばらくシリアスだったので、ギャグを入れ込みたいです。
妹紅の口調が分からない…。
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