【完結】俺モブじゃん……〜ギャルゲの世界に転生した俺は超不遇当て馬ヒロイン救済のため、モブで才能ないけど頑張ります!〜   作:花河相

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花河相です。
 
読んでいただけると幸いです。


プロローグ

 僕に前世の記憶があると思ったのは5歳の頃だった。

 成長し大きくなるにつれて、別の人間の人生の記憶が徐々に頭の中に入り込んできたからだ。

 その影響か、僕は自分のことを俺と言うようになった。

 その頃から、自分の名前「アルト=クロスフォード」を聞くと、何時か何処かで聞いたことがある、そんな不思議な感覚が芽生え始め、自分の名前のはずなのに、まるで他人の名前であるように感じた。

 それから年月が経つにつれて様々な別世界の知識、経験の記憶が入り込み、俺の自我と別世界の人間の自我が徐々に混ざっていった。

 7歳になるときには俺は周りから神童と呼ばれるようになった。

 記憶の経験則から算術はもちろん、学んだことはすぐに理解をして、どんどん知識を身につけた。

 8歳になって父上が、お前なら「王立フューチャー学園」に入るのも夢じゃないと、言われた。

 初めて聞いたはずの言葉なのに、何故かその言葉を知っていた。

 そしてその日、急に大量の情報が脳に入るのを感じて、頭痛で気絶をした。

 その時に、もともとあった「僕」と「俺」の自我は、完全に一つとなった。

 

 

 どのくらい気を失っていたのだろう?

 俺は気がついたらベッドの上に寝ていた。 

 俺は起き上がり周囲を確認する。

 そこは見慣れた俺の部屋であった。

 ふと、ズキリと頭が痛くなるのを感じた。

 俺は頭を押さえて痛みが治るのを待つ。

 そして、徐々に前世の記憶が脳に定着していることがわかった。

 そして自覚をした。

 俺は死の運命を持っていることを。

 その後の行動は早かった。

 もともと剣や魔法を使う訓練をしていたが、より一層努力をするようになった。

 自分に死の運命が待ち構えているのに、黙って何もしない、なんてことはしたくなかった。

 

 しかし、残念ながらは凡人を脱する才能はなかった。

 死の運命を跳ね除けられるほどの才能は皆無であった。

 それでも俺は何をすれば良いか、何をするべきかをひたすら貪欲に考え努力をし続けた。

 

 それからしばらく経って、ようやく自覚した。ここは俺の前世のギャルゲーム「純愛のクロス」の世界だということを。

 「純愛のクロス」は俺が前世の時にほんの少しだけハマり、すぐに断念した。

 その理由は、俺が最も好きだったヒロイン、サリー=クイスの不遇すぎる待遇にある。

 

 「純愛のクロス」

 魔法と剣の異世界に存在する王立フューチャー学園を背景に行われる恋愛シミュレーションゲームで、バトル要素もある。イベントで主人公の幼馴染が魔神復活のため殺されてしまい、魔神を倒すためにヒロインと共に苦難を乗り越え、絆を深めながら冒険をするというシンプルな内容のゲーム。

 

 そのゲームで死んでしまう幼馴染がサリー=クイスであり、少女の扱いは本当に可哀想である。

 サリー=クイスは主人公とヒロインの成長のため、そして絆を深めるためだけの生け贄なのだ。

 俺はこのゲームを始めたきっかけはサリー=クイスに見惚れて、このキャラを攻略したいと思ったからだ。

 はじめはタイトルの意味が分からないまま、ゲームを始めた。そして序盤でその意味を理解した。

 「クロス」とは十字架を表していたのだ。

 「純愛のクロス」はヒロインと主人公の1つのルートしか存在しない。

 サリーはゲームにおいて当て馬的存在なのだ。

 製作側からいいように使われて殺される。

 幸せを願っていたとしても、製作側の都合によりその思いは踏み躙られる。

 俺はサリーの扱いに抗議をした。

 生存ルートがないか、全てを模索した。

 しかし、それは全く意味をなさなかった。存在しなかった。

 何故かと言うと「純愛のクロス」のシナリオはサリー=クイスの死すらも無かったことにするくらいに名作だったからだ。 

 そして、サリー=クイスの死がなければ成り立たないような不朽の名作だからだ。

 初めは俺と同じように抗議をあげた者達も、流れに流されゲームを進めた。

 そして、ゲームクリアした者たちは皆サリー=クイスの死は仕方ないと判定をつけてしまった。

 しかし俺は一人納得することができなかった。

 そして周りからやるように促されても、俺は最後までやることはなかった。

 どうしても「純愛のクロス」のシナリオに必要なことであったとしても、製作側の都合によるサリー=クイスの扱いを許せなかったのだ。

 

 しかし今現在、幸か不幸か俺にはサリー=クイスを救済できる可能性を秘めている。

 前世では絶対に達成することのできない。

 サリー=クイスを助けることのできる世界にいる。

 だから俺は決意した。

 彼女を救済しようと。

 俺は彼女の幸せのために運命に抗おうと。

 転生した俺はまず今の状況を整理することにした。

 自分の現状理解ができなければ方針を決めることが出来ないのだ。

 そしてまずは自覚しなければいけない。

 認めなければいけない。

 俺は鏡をみて自分の容姿、黒髪でブルーアイの自分を見て呟いた。

 

「俺モブじゃん……」

 

 そう、俺が憑依したアルト=クロスフォードは簡潔に言ってしまえば即死モブだ。

 サリー=クイスと共に転移をして巻き込まれ、何も出来ずに死亡する。

 何故、俺がこんなモブの名前を覚えているか。それは何回も何十回も周回し、全ての選択肢を調べて、サリー=クイスの救済ルートを探したためだ。

 結果は無駄に終わってしまったが、そのおかげで俺は前世を思い出せ、自分の運命を知ることができた。

 まずは俺自身について確認しようと思う。

 俺には今この世界で過ごした8年のアルトの記憶、そして前世の記憶がある。

 まずは俺の生家、クロスフォード家は辺境を治める子爵家。

 目立った特産物等もなく、ただの田舎。

 領民は多くもなく少なくもない。 

 俺はそこのクロスフォード家の嫡子。

 本当によくあるモブ貴族の設定である。

 次にアルト自身についてだが……これが一番ショックだった。

 よくあるモブ貴族設定で多分と思っていたが、本当に当たってしまった。

 この世界の優劣の基準は魔力総量と属性によって決まる。

 属性は上から闇、光、炎、水、風、土の6種ある。そして上から順に属性持ちは少なく、重宝される。闇属性はもうほとんどいないが。

 そして魔法は込める魔力量によって威力が異なる。

 この俺、アルトは属性は風、魔力総量は平均値にも満たない。

 本当にお先真っ暗である。

 これでは原作に喰らい付くどころか足手纏いにしかならない。

 俺がもしも原作主人公に憑依していたならこんなことで苦労しなくて済んだ。

 原作主要キャラはチート持ちだ。

 魔力総量もほぼ無限、属性も希少性のあるものしかない。

 それに「純愛のクロス」は戦闘描写はあるが、シナリオがメインである。

 そのため、シナリオに沿っていけば勝手にレベルも上がり、面倒なレベリングも必要がない。

 

「はぁー」

 

 本当にどうしよう?

 決意したまではいい。しかし打開策が全く思いつかない。

 アドバンテージがあるとすれば序盤のギャルゲームの知識があるくらいだ。

 しかし俺の初期値が低すぎる(原作キャラに比べて)ため、未来を知っていたとしても、役に立たない。

 しかも、その知識も序盤しかないため、物語中盤、終盤に出てくるようなアイテムも手に入れることもできない。

 

「こんなことなら物語全てやればよかったなー」

 

 後悔先に立たず、もうどうしようもないのに前世の俺に文句を言いたくなる。

 でも、まだ唯一の救いは原作開始まで時間があること、なにより今世の知識から可能性があるとわかるくらい。

 

 壁は高い。どんなに努力が必要かはわからない。それが達成出来るかもわからない。

 それでもやってやる。抗ってやる。

 どんなに周りから言われようが思われようが、せっかくあるチャンスなんだ。

 

 その日俺は決意した。

 必ずサリー=クイスを救済すると。

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