【完結】俺モブじゃん……〜ギャルゲの世界に転生した俺は超不遇当て馬ヒロイン救済のため、モブで才能ないけど頑張ります!〜   作:花河相

10 / 47
09

 ワイルドウルフの咆哮が聞こえた後、俺は走り続けた。

 俺は出来るだけ最短ルート、そしてワイルドウルフの障害となるように木や岩を通り走り続けた。

 しかし障害は意味を成していないのか、どんどん距離を詰められる。

 カインさんとの約束の場所まであと百メートル弱はある。

 考えが甘かった。

 俺は逃げ切れる自信があったが、考えていた以上に相手が早かった。

 このまま逃げているだけではすぐに追いつかれてしまう。そう考え、ワイルドウルフと少しだけ戦闘することにする。

 今回の目的は倒すのではなく、あくまで妨害と足止め。

 逃げ切るための戦闘。

 俺はギリギリまで走り続ける。目標地点まで残り60メートルといったところで後ろからの音が大きくなってきた為、限界と判断。足を止めてワイルドウルフを待ち伏せる。

 待ち伏せを始めてから時間にして数秒、ついにワイルドウルフの姿が見えた俺は目に魔力を送り『見切り』、『バレット』で魔力の塊を四つ生成、最後に左足に魔力を集める。

 

『部位強化』

 

 『部分強化』の応用で四肢の一つに魔力を集める。

 本来なら攻撃に多用する魔法だが、今回は避けるのが目的。

 視界がスロー再生のようになりワイルドウルフの姿がゆっくりと現れる。

 俺はあらかじめ生成していた魔力の塊を目を狙い撃ち込み、そして左足に力を入れて右に移動する。

 

キャン!

 

 ワイルドウルフが俺を横切ると同時に鳴き声が聞こえる。

 魔力の塊が命中したのだろう。

 もともとワイルドウルフは相当速く移動していた為、『バレット』が当たったとき普段以上の効果があった。その後、体勢を崩して転倒する。

 

ドス!バキバキバキ!

 

 木が倒れる音と共にワイルドウルフが地面を引きずっていった。

 俺はすぐに目標地点に向かうため走り始める。

 これで倒れてくれないかな?と思ったものの、世の中そんなに甘くない。

 ワイルドウルフは立ち上がるとすぐに俺を追ってきた。

 このまま逃げ切りたかったが、流石はBランクの魔物。

 残り20メートルほどで追いつかれそうになる。

 でも今度は待ち伏せはできない。

 足を止めた瞬間ジ・エンド。だからこのまま逃げる。

 残り15メートルで俺は『見切り』、右足に魔力をそれぞれ流し『部位強化』を発動させる。

 そして右足がついた瞬間本気で踏み込み前へと飛び込んだ。

 飛び込みながら後ろを見ると、ワイルドウルフが隅々まではっきり見えた。

 本当にギリギリだった。

 少しでも判断が遅れていたら、『見切り』を発動していなかったら死んでいた。

 そして俺は『部位強化』を使って飛び込んだため、速さが増してワイルドウルフを引き離す。

 

 バシャン!

 

 そして俺は着地が出来ないまま、湖に頭を抱えた体勢で湖にダイブ。

 

ドカーン!

 

 そして大きな爆発音とともにワイルドウルフは魔素となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「疲れた」

 

 戦闘終了後、俺はそう呟きながら水の上をゆっくり陸へと移動していた。

 本当にうまくいって良かった。

 少しでも判断を間違えていたら死んでいた。

 でも、今回の経験で格上ともやり合える証明ができた。

 まだ改良の余地はありそうだけど、残り数ヶ月で調整をしよう。

 そう決意を改める。

 

「はぁー着いた」

「アルト君見事だった」

 

 陸について独り言を言った後、俺を待っていたであろうカインさんが声をかけてきた。

 俺のことを褒めてくれるカインさんだったが、今回の依頼ほとんど何もしていない。

 俺がそう思っているとカインさんは話を続けた。

 

「まさか本当に達成するとは思わなかった。途中まで連れてくれば及第点だと思っていたけど、私は君を見誤っていた」

「ど……どうも。あのどういうことですか?及第点とかって」

 

 俺はカインさんの言っていることに疑問を感じたため質問をした。

 

「予想してなかったんだよ。あのワイルドウルフを目的地点まで誘導できたことが。だいたい目標距離の三分の二を達成できればすごいと思っていた。でもアルト君はやってみせた」

「その言い方ですと、俺が死ぬ可能性も考慮に入れていたってことですよね?」

「いやそれはない。もしも大事になりそうならすぐにでも手を貸す予定だったからね」

「あの……言っている意味がわからないのですが?」

 

 本当にわからない。

 カインさんが言っていることを解釈すると、一人で簡単に対処が可能だったということ。

 だったら作戦とかは何だったんだよ。

 初めから言ってくれればいいじゃん。

 俺はカインさんに言いたい文句がたくさんあったが、次の一言で納得する。

 

「新人を育てるのもベテランの仕事だと私は思うけど?」

「確かにおっしゃる通りです」

 

 そういうことか。

 なら俺はカインさんに感謝をしなければいけない。

 実戦に勝る経験はない。

 本当にその通りだ。

 俺はカインさんのおかげで一回り成長することができた。

 しかも知らなかったとはいえ死のリスクがほとんどなかった状態でそのような経験はもうできないだろう。

 

「ありがとうございました」

 

 俺はカインさんにお礼を言った。

 その後は夜遅くで帰るのは危険とのカインさんの判断で野宿が決定、準備に取り掛かった。




最後まで読んでいただきありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。