問題児と本当のバカが異世界から来るそうですよ? 作:まさとら
001
「ってか、なんで誰もいねぇんだよ。この状況だと、招待状に書かれてた箱庭とかいうのを説明する奴がいるもんじゃねぇか?」
「そうね。なんの説明もないままでは動きようがないもの」
「……。この状況に対して落ち着きすぎてるのもどうかと思うけど」
「まぁな。〜んこうやってだべってても仕方ねぇし、そこに隠れてる奴にでも聞くか?」
「なんだ煜も気づいてたのか」
「あら、十六夜くんも気づいてたの?」
「当然!かくれんぼじゃ負けなしだぜ?そっちの猫抱いてる奴もきづいていたんだろ?」
「風下に立たれたら嫌でもわかる」
みんな気づいてたか、そりゃあんだけため息やら足音とかしてたしまぁ当たり前か。
と思いつつ理不尽な招集を受けた腹いせに思いっきり殺気をこめて茂みを睨んだ。
「や、やだな御四人様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけるたら嬉しいでごさいますよ?」
「断る」
「却下」
「お断りします」
「ヤダ!」
とはいったものの出てきたのは、ミニスカにガーターソックス、おまけにうさ耳が生えた黒髪の少女が出てきて正直驚いてるてかクソエロいな誘ってんのか。
「あはっ、取りつく暇もないですね♪」
バンザーイ、と降参のポーズをとる黒ウサギ。
すると耀が黒ウサギに近づき、黒いウサ耳を、
「えいっ」
「フギャ‼︎」
思いっきり引っ張った。
「ちょ、ちょっとお待ちを!触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか⁈」
「好奇心の為せる業」
「自由にもほどがあります!」
「そのうさ耳って本物なのか?」
今度は右から十六夜が掴んで引っ張った。
「…。じゃあ私も」
すると黒ウサギがこっちを向いて『助けて下さい』と半泣きの顔で訴えてきたので、笑顔で返し…何もしなかった。
「ちょ、ちょっと待っー!」
黒ウサギの声にならない悲鳴が近隣に木霊した。
「あ、あり得ない。あり得ないのですよまさか話を聞いてもらう為に小一時間も時間を消費してしまうとは、学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに違いないのデス」
「さっさと進めろ」
半ば本気の涙を瞳に浮かばせながらも、黒ウサギは話を聞いてもらえる状況をつくることに成功し、四人も『聞くだけ聞こう』という程度には耳を傾けている。
「それではいいですか、御四人様。定例文で言いますよ。
さあ言います。ようこそ”箱庭の世界”へ我々は御四人様にギフトを与えられた者だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼンさせていただこうかと召喚いたしました!」
「ギフトゲーム?」
「そうです!もう既に気づいてらっしゃるでしょうが、御四人様は皆、普通の人間ではごさいません!その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその”恩恵”を用いて競い合う為のゲーム。そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できる為に造られたステージなのでございますよ!」
両手を広げて箱庭をアピールする黒ウサギ。飛鳥は挙手して質問した。
「まず、初歩的な事から質問していいかしら?貴女のいう”我々”って貴女をふくめた誰かなの?」
「YES!異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって数多とある〝コミュニティ〟に必ず属していただきます♪」
「嫌だね」
「メンドイ」
「属していただきます!そして『ギフトゲーム』の勝者はゲームの”主催者”が提示した賞品をゲットできるというシンプルな構造になっております」
「……”主催者”って誰?」
「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が人を試すための試練と称して開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示するために独自開催するグループもございます。特徴として前者は自由参加が多いですが〝主催者〟が修羅神仏なだけあって凶悪かつ難解な者が多く命の危険もあるでしょう。しかし、見返りは大きいです。〝主催者〟次第ですが、新たな〝恩恵ギフト〟を手にすることも夢ではありません。後者はチップを用意する必要があり、参加者が敗退すればチップは全て主催者のコミュニティに寄贈されます」
「結構物騒なんだな…チップは何を?」
「それも様々ですね。金品・土地・名誉・権利・人間、そしてギフトをかけることも可能です!新たな才能を他者から奪えばより高度なギフトゲームに挑む事を可能です。ただしギフトを賭けた戦いに負ければ当然ご自身の才能も失われるのであしからず」
やっべ難しい事サッパリわかんね、まぁ要するに負けなきゃいいんだな!
「なら最後に一つゲームそのものはどうやったらはじめられるの?」
「コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期日内に登録していただけばOK!商店街でも商店が小規模のゲームを開催しているのでよかったら参加していってくださいな」
「………。つまり『ギフトゲーム』とはこの世界の法そのもの、考えていいのかしら?」
おっ?と驚く黒ウサギ。
「ふふん?中々鋭いですね。しかしそれは八割正解の二割間違いです。我々の世界でも強盗や窃盗は禁止ですし、金品による物々交換も存在します。ギフトを用いた犯罪などもってのほか!そんな不逞な輩は悉く処罰します。しかし!『ギフトゲーム』の本質は全く逆!一方の勝者だけが全てを手にするシステムです。店頭に置かれている商品も、店側が提示したゲームをクリアすればタダで手に入れることも可能だということですね」
「そう。中々野蛮ね」
「ごもっとも。しかし”主催者”は全て自己責任でゲームを開催しております。つまり奪われるのが嫌な腰抜けは初めからゲームに参加しなければいいだけの話であります」
一通りの説明を終えたのか黒ウサギは一枚の封書を取り出した。
「さて、皆さんの召喚を依頼した黒ウサギには、箱庭世界における全てを説明する義務がございます。が、それらを全て語るには少々お時間がかかるでしょう、新たな同士候補である皆さんを何時までも野外に出しておくのは忍びない。ここから先は我らのコミュニティでお話させていただきたいのですが………よろしいですか?」
「待てよまだ俺はなんも質問してねえぞ」
それまで黙って聞いていた十六夜はさっきまでの軽薄な笑いはなくなっていた。
「…なんでしょうか?ルールですか?ゲームそのものですか?」
「そんなものはどうでもいい。俺が聞きたいのは一つだけ手紙に書いてあったことだ」
そして黒ウサギから視線を外し、他の三人を見回し巨大な天幕によって覆われた都市に向けて。
何もかも見下すような視線でこう言った。
「この世界は……面白いか?」
「……YES。『ギフトゲーム』は人を超えた者たちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」
そして四人は顔を見合わせると笑った。その言葉を待っていたように。