B級ランク戦のシーズンがやって来た。
個人の力ではなく、チームとしての力が試される場だ。
柿崎隊が綾瀬川を隊に引き入れたのはランク戦のためと言うのが大きい。
1人増えればその分火力も上がるし、柿崎隊のような一枚岩の隊にとっては1人の差は大きいだろう。
その分オペレーターの負担、連携の難しさなどの問題は出てくるわけだが。
だがそんなものは柿崎然り、照屋、巴、宇井も分かっている。
その為、綾瀬川が柿崎隊に入ってからは、殆ど毎日連携の練習をしていた。
隊員全員が、近・中距離を担えることもあり、連携の幅は広く、難しい分、やりごたえがあった。
そうして時間はあっという間に過ぎるもので、翌日にはランク戦が幕を開ける。
「やれるだけの事はやった。清澄との連携も板に付いてきた。」
柿崎はこの日の練習の後、隊室でそう切り出した。
「俺はこのチームは中位に留まるようなチームじゃないと思ってる。」
笑顔を浮かべて話す柿崎に、照屋も巴も宇井も笑みを浮かべる。
「絶対に勝とう…!」
「当然です…!」
「勝ちましょう!」
「うん!この5人で…!」
「…お力添え出来るよう全力を尽くします。」
そう言う彼の瞳を見ると無機質なまでにどこまでも冷えきっていた。
柿崎隊長と真登華に彼の個人ポイントを見せてもらった。
全て5000で揃えられた不自然なまでに平凡なポイントを。
個人ランク戦のデータは殆ど無く、休隊明けにやったランク戦のものしか無かった。
それも特に目を張るものはなく、仲がいい、出水先輩、米屋先輩、三輪先輩、最近だと緑川君、その他B級下位のチームの人とのランク戦のみ。
A級の4人に負けては、下位の人間に勝ち、まるでパズルを揃えるかのように気付くとポイントが5000になっていた。
「偶然だ。ポイントなんて狙って揃えられる訳ないだろう。」
私が彼に聞いた時彼はいつも通りの無表情でそう答えた。
全くその通りである。
ポイント狙って揃えるなんてありえない。
勝って得られるポイント、負けて失うポイント。
それら全てを計算して揃えたのだとしたら…
照屋は考えるのをやめて、隊室から出ていく彼、綾瀬川清澄を見送った。
──
ボーダー内食堂
「明日の柿崎隊、荒船隊、鈴鳴第一のランク戦の解説を俺が引き受ける事になった。」
「…え?」
三輪のその言葉に掴んでいた中華丼のうずらの卵を箸から落としてしまう。
「最終的に選んだのはお前とは言え柿崎隊を勧めたのは俺だ。デビュー戦ぐらいは1番いい席で応援してやる。…無様な試合にはするなよ。」
「…そうか。それは下手なことは出来ないな。」
そう言って中華丼を頬張る。
「どこも柿崎隊にとっては格上だろう。」
「…そうだろうな。だから柿崎隊よりランキングが上なんだろ。」
「…」
その言葉に三輪は眉間に皺を寄せた。
「?…どうしたんだ?難しい顔をして。…唐揚げいらないなら貰うぞ。」
「はぁ…誰がやるか。」
そう言って伸ばした箸を持つ手を叩かれる。
「…呑気に話しているが勝算はあるのか?」
「…さあな、デビュー戦ってこともあるし初戦の作戦は隊長と照屋、宇井に任せてるんだ。オレは柿崎さんのオーダーに従うだけだ。」
オレのその言葉に三輪はため息を吐く。
「ポイントの方はどうなってる?万能手にはなれそうなのか?」
「どうだろうな。緑川って言うかなり強いのに目をつけられてな。ポイントを搾り取られる毎日だ。毎日搾り取られては元のポイント辺りに戻す生活だよ。断りたいんだがしつこくてな。米屋と出水が加わった日なんかは手がつけられん。」
「…そう言えば初見で緑川に勝ち越したらしいな。」
三輪が思い出したように切り出した。
「偶然だ偶然。こっちの手が割れてなかったのと、あっちがスコーピオンとグラスホッパーの乱反射戦法ってのは出水にチラッと聞いてたからな。乱反射戦法には射手が有利だからな。」
「…ともあれそんな体たらくじゃ万能手なんて程遠いぞ。」
「だったら米屋をどうにかしてくれ…。」
そう言ってオレは匙を投げるように言った。
「なんだよあの戦闘狂は。オレのポイント枯らしたいのか?」
「…それはすまないな。」
三輪の手にも負えないのだろう。少し考えたあと、申し訳なさそうに謝った。
「…まぁ万能手にならなきゃ弾トリガーと孤月一緒に使っちゃいけないなんてルールないだろ?荒船隊の隊長だってライフルと孤月使ってたしな。万能手はゆっくり目指すさ。」
そう言いながら味噌汁を1口啜った。
「ごちそうさま。三輪、この後どうするんだ?オレは個人ランク戦フロアに寄ってから帰ろうと思うんだが…。」
「…俺も行こう。」
「分かった。待ってる。」
初めてあった時から綾瀬川清澄という男はよく分からない男だった。
姉を殺した近界民を絶滅させる為ボーダー設立時の隊員募集で入隊した時の入隊式で初めて出会った。
なんの感情も篭っていない目。
抑揚のない話し方。
父は教育者で母は第一次近界民侵攻の際に亡くなったのだと言う。
その話をする時も瞳はまるでビー玉のように無機質だった。
それから家の用事で休隊。
連絡も取れずに3年半が経った頃、こいつは突然戻ってきた。
結果、3年半も休む、家の用事とやらは分からなかった。
三輪秀次は綾瀬川清澄と言う男に少なからず好感を抱いていた。
と言うのも三輪が隊長を勤める三輪隊はスナイパーが2人と前衛が2人のため、同じ前衛である、米屋陽介と言う無駄に騒がしい男と一緒にいることが多い。
そのため、物静かな綾瀬川は一緒にいて楽だった。
それに加えて、近界民に家族を奪われたという似た境遇。
自然と気にかけてしまう相手だった。
「ポイントは今どんな感じなんだ?」
「弾トリガーと弧月が5000くらいだな。あと1000Pt欲しいんだが…。」
「そうだな、お前は射手だ。とりあえずアステロイドのポイントを稼いだ方がいいだろう。」
「…相手がなぁ…
綾瀬川が目を向けた方向にはいつもの3人がはしゃいでいた。
そしてこちらに気付いたのかよってくる。
「よう、綾瀬川、秀次。」
「今日は三輪と一緒なんだな、綾瀬川。」
そう言う出水に返したのは米屋だった。
「綾瀬川が話してるのは俺ら以外じゃ秀次くらいだろ?」
「まぁな、休隊してて知ってる人間が三輪くらいしか居ないからな。それに同期だし。」
「はあ?三輪と同期って…相当な古参じゃねえか。」
「?、言ってるだろ?古参だって。」
「そんな昔だとは思わなかったんだよ。なんで休隊してたんだ?」
「家の用事でな。」
「そんな事よりあやせセンパイ!ランク戦しよ!ランク戦!」
大人しく待っていた緑川だったが、痺れを切らして手を引いてくる。
「はぁ…分かったよ。明日の相手は荒船隊と鈴鳴第一だからな。攻撃手との経験を積みたいと思ってたんだ。」
そう言うと米屋も反応した。
「お、鋼さんとやり合う気か?」
鋼さんというのは鈴鳴第一のNo.4攻撃手、
「やり合う気がなくても配置によっちゃやり合わなきゃいけなくなる場合もあるだろ。まぁ勝てる気は毛頭しないけどな。」
「うっわ、綾瀬川弱気だなー。よしっ!じゃあ一番乗りいただき!」
「あ〜!よねやんセンパイずるい!俺が先に誘ってたのに!」
「うるせえ、先輩に譲れよ後輩!」
そんな2人の様子に出水は笑い、三輪は呆れていた。
そんな時だった。
綾瀬川の携帯が震えた。
「…すまない、急用が入った。」
「え〜!」
「悪いな緑川。3人も…」
「気にすんな。明日のランク戦頑張れよ。」
出水が代表して応援してくれた。
「お、じゃあ秀次、久しぶりにランク戦しよーぜ!」
綾瀬川が無理だとわかるとすぐに三輪を誘う米屋。
「断る。…ランク戦…頑張れよ。」
「…ああ…
…ありがとう。」
──
そのまま呼ばれた通り、オレはある扉の前に立った。
「入りたまえ。」
「…失礼します。」
高圧的な扉をくぐるとそこには目的の人物が座っていた。
「…呼び立ててすまなかったな、清澄。」
「…いえ。何のご用でしょう?」
「明日からB級ランク戦だろう。親として応援してやろうと思ったのだが。」
「…結構ですよ。」
オレのぶっきらぼうな返事に目の前の男は眉を顰める。
「自信が無いのか?」
「それ以前の問題ですね。勝てない戦いに自信も何もないでしょう。あの隊は欠点が多すぎる。A級なんて程遠いでしょう。」
「ほう…。」
興味深そうに目を細める男はさらに続ける。
「ならば君でも無理だと?」
「…程遠いとは言ったがなれないとは言ってない。柿崎隊の照屋と巴は伸ばせばA級レベルの逸材です。」
「…柿崎くんはどうだね?」
「…はっきり言って論外ですね。確かにそこそこの実力はある。だが、B級中位にとどまっているのはどう見てもあの人が悪い。」
「…そうか。」
「そんな顔しなくても約束は守りますよ。あんたへの恩はしっかりと覚えているつもりだ…
…城戸さん。」
ちなみに作者のワートリ推しキャラは出水と弓場ちゃん、オペだったら結束ちゃんです。
感想、評価等よろしくお願い致します。
幕間何読みたいんじゃワレェ!
-
誰かの独白。多分榎沢か三輪。
-
掲示板形式のやつ。(作者無知)
-
日常小話。
-
if(綾瀬川VSボーダー)
-
住民税高すぎ。