決着ですね。
「オラ、どうした綾瀬川ァ!そんなモンじゃねえ筈だろーが…!」
繰り出される影浦のスコーピオンの連撃。
綾瀬川は弧月で捌きながら後退る。
「当然でしょ。…こっちはあんたに仲間をやられてるんだ。やり返させてもらう。」
綾瀬川は、引き気味にスコーピオンを受け流すと、再出力の合間に、影浦との距離を詰める。
「ハッ!やってみろや。」
影浦は身体を仰け反らせ、そのままバク転。
距離を取ると、綾瀬川の喉元目掛けてスコーピオンを伸ばした。
綾瀬川はひらりと躱すと、トリオンキューブを生成する。
「バイパー。」
「!」
綾瀬川の得意パターン。
バイパーと旋空弧月の駆け引き。
影浦はトリオンキューブが分割される前に、綾瀬川との距離を詰める。
そして綾瀬川のトリオンキューブ目掛けてスコーピオンを伸ばした。
「ちっ…。」
舌打ちをして、トリオンキューブを消す綾瀬川。
「旋空弧月。」
影浦はスコーピオンを重ねて、受け流す。
そして、笑みを浮かべて、綾瀬川に飛びかかる。
拳の先に、スコーピオンを付けた殴りを綾瀬川は紙一重で避けると、そのまま回し蹴り。
影浦は、左手で受けながら、後退ると、スコーピオンを伸ばした。
それを逆手で抜いた弧月で捌く。
その隙に影浦は飛び上がり、距離を詰めると、足から生やしたスコーピオンで綾瀬川に蹴りかかる。
綾瀬川が弧月でそれを受けた時、影浦の足元の地面にヒビが入る。
「!」
飛び退くと、地面からスコーピオンが飛び出した。
「チッ…お見通しかよ…!!」
「バイパー。」
飛び退いた綾瀬川の背後で、トリオンキューブが分割される。
影浦は旋空を警戒しつつ、シールドを広げ、バイパーを受け切る。
──
『さあ、会場のボルテージも上がってきました!白熱のラストバトルを制するのは影浦隊長か…!!綾瀬川隊員か…!!』
武富が興奮気味に実況をする。
『…ねえ風間さん。あの…ボサボサの人、スコーピオン以外にトリガー入れてないの?』
そんな時、榎沢は風間に尋ねた。
『影浦だ。…攻撃用のトリガーはスコーピオンだけの筈だ。射程はマンティスで補えるからな。』
『じゃあ、あの人はスコーピオンだけの攻撃手なんだ。』
『そうなるな。』
『ふーん。
…じゃあこのバトルは綾瀬川センパイの勝ちだね。』
榎沢はそう言ってモニターに視線を戻した。
『それはどういう事でしょうか…?』
武富が榎沢に尋ねた。
『いや、サイドエフェクトがある限りふつうの攻撃手じゃ綾瀬川センパイには勝てないでしょ。』
『え…?…つまりどういう事でしょう?』
武富は困ったように榎沢に尋ねる。
『綾瀬川は既に影浦のマンティスを見切り始めている。』
代わりに口を開いたのは風間だった。
『あまり使っていなかったモールクローや、肉弾戦も交じえているようだが全て綾瀬川の予想通りの搦手だ。初見殺しには至らない。長期戦になれば不利なのは影浦だ。それに、綾瀬川と影浦は常日頃個人ランク戦を行っている。普段の影浦の動きを知っているという事だ。そんな相手の演算などあいつはすぐに終わらせるぞ。』
風間はそう言って目を細めた。
『しかし、それは影浦隊長も同じ条件では?影浦隊長にもサイドエフェクトによる攻撃箇所の先読みがあるはずですが…。』
『…どういう訳か綾瀬川には影浦のサイドエフェクトが通じないらしい。』
──
っ…やっぱり何度戦っても慣れねえな、クソが…。
影浦は内心で毒づく。
大抵の相手は攻撃する時に、その箇所を攻撃するという感情が刺さる。
もちろん、物量がある攻撃や、認識してからのスピードが異常に早い、ライトニングなどの攻撃など、避けきれないものは存在する。
だが、弧月などの直接攻撃は大抵避け切れる。
っ…
まだ刺さらない。
まだだ。
「っ?!」
そして感情が刺さらないまま綾瀬川の弧月が影浦を襲う。
普通の事だ。
普通攻撃の感情が刺さって痛いということは無い。
自分がおかしいのだ。
なのに…
「っ…気持ちわりぃ…。」
気持ち悪い。
攻撃の感情が刺さらない目の前の敵がでは無い。
クソサイドエフェクトに頼りきっていた俺が、だ。
皆、この土俵で戦っているのだ。
先読みの通じない戦い。
これこそが普通の戦いだ。
対して影浦は目の前の怪物に視線をやる。
冷静沈着。
機械のようにこちらの手に対応する戦闘IQ。
予測不能な圧倒的な手数。
そして、自分の代名詞だと思っていた、サイドエフェクトによる攻撃の予測。
攻撃が当たらない。
対して、こちらは綾瀬川の攻撃を対処するのが手一杯になってきた。
「おもしれぇ…!!」
手に汗握る戦い。
圧倒的に不利な状況下、笑みを浮かべる影浦雅人という男はどこまでも戦闘狂であった。
「っ…?!」
だが、長くは続かない。
影浦の肩に大きな一撃が入る。
今までとは比にならない程の、神速の一撃。
綾瀬川の受けに回って、カウンターを狙った今までの模擬戦での戦闘スタイルとは違い、今度は綾瀬川から仕掛けてきた。
影浦は飛び退いて、綾瀬川を睨む。
「てめえ…!」
「そろそろ時間切れになりそうなんで。」
──
『そして何より、綾瀬川が影浦との模擬戦でどれだけ経験値を与えているかが未知数だ。』
風間はさらに続ける。
『サイドエフェクトのある村上ほどでは無いが、人間は学習をする。模擬戦の経験を通してだ。だが…綾瀬川は底を見せていない。』
『つまり…?』
『影浦は知らないあのスタイルの綾瀬川に、対応できない。』
──
「やっぱり隠してやがったなてめえ…!」
「別に隠してたつもりは無いですよ。受けに回ってた方が色々盗めるんで。」
綾瀬川の突きが影浦のスコーピオンを砕く。
「バイパー。」
そう言って、至近距離でトリオンキューブを分割しながら、綾瀬川はさらに弧月を振り下ろす。
影浦の左腕が飛ぶ。
「クソが…!」
影浦は逃げるように飛び退くが、綾瀬川は影浦の顔目掛けてさらに弧月を突き出す。
「っ」
頬が切れ、トリオンが漏れ出す。
「ヤロォ…!」
右手から、スコーピオンを伸ばすが、綾瀬川は斜めに避けると、距離を詰め、影浦の右腕を掴む。
「っ…クソが、今回はテメェの勝ちにしといてやるよ。」
「どうも。」
そう言って綾瀬川は、影浦をこちらに引き寄せ、勢いそのまま弧月で両断した。
──
『影浦隊長、緊急脱出!激戦を制したのは綾瀬川隊員!』
柿崎隊
柿崎 0P
照屋 1P
巴 0P
綾瀬川 3P
生存点+2P
合計 6P
影浦隊
影浦 3P
北添 0P
絵馬 1P
合計 4P
弓場隊
弓場 0P
外岡 0P
帯島 0P
合計 0P
『前シーズンの好調は健在か!ボーダートップクラスの点取り屋有する二部隊を圧倒し、柿崎隊の勝利です!』
「…」
綾瀬川は影浦の右腕を掴んだ、左手に目をやる。
手のひらに穴が開き、トリオンが漏れていた。
「…強いな。」
そう言って怪物は無機質な目を細めた。
──
『さて、試合の結果を受けて、総評を頂きたいのですが…。』
武富の問に、口を開いたのは時枝だった。
『そうですね。まずは弓場隊。やはり、神田先輩が抜けた穴が大きかったですね。この試合は弓場隊長と帯島隊員が合流する動きを見せていましたが、相手が悪かったですね。神田先輩の抜けた穴をどう対応するか。それが弓場隊の今後の課題であり、見どころでもあると思います。』
──
弓場隊作戦室
「なんだアイツ?バケモンかよ…。」
そう言うのはオペレーターの藤丸のの。
「…」
腕を組み、目を閉じていた弓場は目を開く。
「課題は山積みだ。それに今回は綾瀬川にやられたせいで新戦術も試せてねえ。…気ぃ引き締めろよ、帯島!外岡ァ!」
「「ッス!!」」
──
『影浦隊はいつも通りの動きが出来ていた。北添が場を荒らし、影浦が点を取る。絵馬も援護、得点、両方を担っていた。』
次いで、風間が影浦隊の総評をする。
『絵馬隊員の判断の迅速さが良かったですね。柿崎隊に狙撃が通じないと分かると狙いを弓場隊に変えていました。絵馬隊員が帯島隊員を落としていなければ柿崎隊は7点取ってたかもしれませんから。』
──
影浦隊作戦室
「っ…クッソ…。」
影浦は悪態を吐いて戻って来た。
「おつかれー。惜しかったね、カゲ。」
「ああ?慰めなんて要らねえんだよ。どう見ても俺の惨敗だっただろーが。」
北添の言葉に影浦はそう返した。
今のままでは綾瀬川には勝てない。
「オイ、ヒカリ。」
影浦は仁礼に声をかける。
「あん?」
「あいつのログまとめとけ。…あのヤロウ、俺相手に出し惜しみしてやがった…。ぜってー勝つ…。」
そう言って影浦は笑みを浮かべた。
「おー、分かりやすく火、着いてるねー。」
「…俺も見る。」
「…ユズルも?」
──
『柿崎隊は新戦術が良かったですね。あの鉄壁を崩せる隊は中々いないと思います。戦わないとなんとも言えないですけど…さらに磨けばA級でも通用するんじゃないでしょうか?』
『そうだな。宇井の射線管理に、エスクード、グラスホッパーによる援護。うちとしては戦いたくない。』
風間はそう評した。
『そして何より…』
『綾瀬川センパイだね!!』
風間の言葉を遮るように榎沢が割り込む。
『いやー、どれくらい見せるのかなって思ってたら結構見せるんだねー。』
榎沢はそう言って続ける。
『やっぱり狙うなら雑魚からかなぁ…。色々考えなきゃ…
…さすがあたしの将来の隊長だね!!』
『え?将来の隊長…ですか?』
『うん。あたしが柿崎隊にランク戦で勝ったら、綾瀬川センパイに隊長やってもらってあたしと綾瀬川センパイで綾瀬川隊を結成するって約束したから。』
『えぇ?!!』
『へえ、それは…とんでもない化け物部隊になりそうだね…。』
『…』
武富はそう声を上げ、時枝は冷や汗を浮かべる。
風間はただ1人、怪訝な目で榎沢を見ていた。
──
柿崎隊作戦室
「ちょ、ど、どういう事?!清澄先輩!!」
「聞いてないですよ!!」
「オペレーターどうするんですか?」
「文香…そう言う問題じゃないだろ…?」
榎沢の爆弾発言により、綾瀬川は質問攻めに合っていた。
「いや、あいつが勝手に言ってるだけだからな?そんな約束一言もしてないし、オレは柿崎隊を辞めるつもりは無い。」
綾瀬川は困ったようにそう返した。
「…ホントですか?」
「ああ。」
怪しむような目で見る宇井に、綾瀬川はそう返した。
「よかった…。」
巴は安心したようにそう言った。
「でもまあ…俺は止めねえよ、清澄。」
柿崎はそう言って綾瀬川の肩に手を置く。
「お前は誰かの下に埋もれるのは勿体ねえ人材だからな。」
笑みを浮かべながらそう言う柿崎に、照屋も賛同する。
「確かにそうですね。…出来れば相手にしたくないですけど。」
「いや、柿崎隊気に入ってるんで。」
柿崎と照屋の賛同を綾瀬川はそう一蹴した。
「どうかなー、榎沢さん可愛いから清澄先輩鼻の下伸ばしそうだしー。」
宇井はまだ納得行かない様子で、拗ねたように顔を背ける。
「拗ねるなよ…。それに文香が言ったようにオペレーターもいないしな。」
「そんなの清澄先輩くらいの実力があれば、どんなオペレーターでも上手く使うじゃん。」
「?…いや、お前以上のオペレーターなんてそう居ないだろ?」
「…え?」
綾瀬川のその言葉に宇井は素っ頓狂な声を上げる。
「風間さんが言った通り意識外の狙撃はどうにもならないからな。オペレーターはお前以外ありえないぞ?」
「ふえ?!」
綾瀬川のその言葉に宇井は一気に顔を赤くする。
「ちょ、急に褒めないでください!」
「?…ただ事実を言っただけだが…。」
「…清澄先輩の馬鹿!」
弾んだ声でそう言うと、宇井は顔を逸らしてしまった。
「?」
綾瀬川は困ったように3人に視線を向ける。
「「「知らねえよ。」」」
各キャラからの印象&各キャラへの印象
影浦雅人→クソが、次はぜってー勝つ
藤丸のの→バケモン。
絵馬ユズル→…ログ見る。
榎沢一華→どう攻略しよっかなー。将来の隊長。
宇井真登華→女たらし。もう知りません。…って、褒めてもなんも出ませんからぁ!
影浦雅人←強いな。
藤丸のの←女ヤクザ。
絵馬ユズル←横取りしやがって。
榎沢一華←この野郎、面倒臭いことしやがって。
宇井真登華←最高のオペレーター。何怒ってんの?感情が忙しい奴だな。
感想、評価等お待ちしてます。
幕間何読みたいんじゃワレェ!
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誰かの独白。多分榎沢か三輪。
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掲示板形式のやつ。(作者無知)
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日常小話。
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if(綾瀬川VSボーダー)
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住民税高すぎ。