試合自体は決着です。
「!」
トリオン体を吹き飛ばされ、虎太郎はそのまま、緊急脱出する。
オレは放たれたアイビスの弾道の先に目をやる。
不敵に笑う天才、東春秋がそこにはいた。
「ちっ…。」
オレ目掛けて、もう一度放たれるアイビス。
オレはそれを極小に固めた集中シールドで防ぐ。
「文香、作戦変更だ。…王子先輩はお前に任せるぞ。遠距離の要が落ちた。オレは逃げ延びる。」
その言葉に文香は息を大きく吸う。
「了解。」
そして、B級1位のエース攻撃手は短く答えた。
──
『ここで東隊長が動きました!ワープ先を狙った的確な砲撃に、巴隊員が緊急脱出です。』
『ワープの位置が不自然でしたからね…。そこを読んでの狙撃でしょう。』
『これには綾瀬川隊員、たまらず近くのショートワープに足をかけました。』
『隠岐、東さんが残っているからな。精度はどうあれ遠距離戦の要である巴が落ちた。シールド1枚の綾瀬川がこれ以上姿を見せているのは得策じゃない。』
『なるほど。中央の戦闘は柿崎隊のエース攻撃手、照屋隊員と王子隊長の一騎打ちとなりました!』
──
「いい機会だね、てるてる。前シーズンの最終戦のリベンジをさせてもらおうかな。」
王子はそう言って弧月とスコーピオンを構える。
「私の名前は照屋です。」
照屋はそう返すと弧月を握り直す。
まず仕掛けたのは照屋だった。
体勢を低くして、初動は斜めに動く。
「!」
(斜め…ですか?)
(ああ。人間は上下左右の動きには敏感で対処されやすいが…斜めは左右程敏感じゃない。特に斜め下だな。…低く、そして斜めに切り込め。)
視界の左斜め下から迫る弧月に、王子は何とか対応し、弧月で受けると、スコーピオンで切り掛る。
(お前は弧月とスコーピオンの両刀だろ?スコーピオンは弧月で受けるな。お前はトリオンも高いからな。スコーピオンの受け太刀はスコーピオンだ。弧月じゃ勿体ない。)
王子のスコーピオンを、照屋は左手から生やしたスコーピオンで受ける。
そして、そのまま、ハンドガンを生成する。
(いーい?メテオラはあくまで陽動。文香の攻撃手段は弧月かスコーピオン。当てるつもりで撃たなくていいわ。)
「メテオラ。」
ハンドガンから放たれたメテオラ。
王子はシールドで受けるが、爆風が視界を奪う。
(相手の視界を奪うって言うのはリスクが付き物よ。あっちがこっちを見えないってことは、こっちもあっちは見えないの。慎重に行きなさい。私?わ、私は別に良いのよ。ほら、感覚派だから。)
照屋は王子から距離をとると、スコーピオンを投げる。
そして、すぐに切り込む。
王子は飛んで来たスコーピオンにどうにか対応し弾く。
しかし、その隙の刹那、爆風を切り裂くように照屋の弧月が王子に迫る。
「っ!」
流石はB級上位の攻撃手。
王子はどうにか反応し仰け反るように躱す。
(手段が多くて考えて動く攻撃手…B級なら王子先輩か。そういう相手と戦う時はとにかく攻撃の手を緩めるな。主導権は握らせちゃダメだ。お前が後手に回ってちゃ相手に選択の猶予を与えることになる。相手を後手に回らせるんだよ。)
鋭く繰り出される、弧月とスコーピオンの連撃。
王子は防戦一方になっていた。
(お前はトリオンが高い。片方のメテオラはキューブじゃなくてハンドガンの方がいいと思うぞ。)
(どうしてですか?)
(ハンドガンは出したままスコーピオンを使えるようになれ。そうすれば相手は弧月、スコーピオン、そしてハンドガンの3つに警戒しなきゃ行けなくなる。相手に択を絞らせるな。)
ハンドガンは持ったまま、腕の側部からは、スコーピオンが生えている。
そして頻繁にこちらに向けられる銃口。
王子は発砲を警戒してか、攻めあぐねていた。
…強い。
王子はそう思わざるを得なかった。
当然と言えば当然だろう。
ボーダー最強部隊、玉狛第一のエース攻撃手、小南桐絵。
そしてボーダー2人目の完璧万能手、綾瀬川清澄。
2人のボーダー最強格に師事して数ヶ月。
持ち前のセンスと戦闘IQを活かして今や弧月、スコーピオンどちらもマスタークラスの攻撃手へと化けた。
「旋空弧月。」
照屋は弧月を振りかぶる。
王子は来るであろう斬撃に備え、弧月を構える。
ここで王子は気付く。
照屋と、トラップの反応が重なっていることに。
しまった。
そう思った時には弧月は加速を始めている。
そして消えた照屋。
真横からの斬撃に、王子はトリオン体を両断された。
「っ…最後の最後にやってくれるね…利根川。」
そう言いながら、王子の足元の、トリオンキューブが光り輝く。
置き弾のハウンドである。
(あと最後に1つ。敵の死に際は油断するな。ROUND2でもお前は那須の置き弾にやられただろ?)
照屋は振り返り、弧月を納刀。
そして、シールドが照屋を覆った。
「…完敗だよ。
…本当に。」
納刀と同時に、王子のトリオン体は光となって空に上がった。
そして、放ったハウンドは虚しくシールドに弾かれる。
──
『ここで王子隊長も緊急脱出!柿崎隊が4点目を獲得しました!』
『強いですね。照屋さん。自分も1対1の斬り合いはしたくない相手です…。』
──
『援護ありがとうございます…清澄先輩。』
照屋はバッグワームを羽織り、すぐに離脱。
拗ねた様子で綾瀬川に通信を入れた。
『なんで拗ねてるんだよ…。』
『…結局援護されたなと。』
『それがトラッパーの仕事だろ…。それに今は個人ランク戦じゃなくて、チーム戦だ。…最後に柿崎隊が勝ってれば良いんだよ。』
『そうですけど…。それでいいです…。東さんと隠岐先輩は撃って来ませんでしたね。』
『それはそうだろ。東さんはオレと隠岐。隠岐はオレと東隊がどこにいるか分からないんだ。それにここは「市街地A」。高台は限られる。位置バレの恐れがある以上
その通信を受けた直後。
照屋の視界にバッグワームが映り込む。
泣きボクロが特徴の機動型狙撃手、隠岐孝二は小さな笑みを浮かべ、照屋にライトニングを向けていた。
──数分前。
『いやー、何とか王子隊に一泡吹かせましたね。』
生駒の援護をした隠岐は、グラスホッパーで位置を変えながら、作戦室の4人に通信を入れた。
『まあいいとこまで行ったんちゃう?』
『あとは時間切れまでバッグワームで潜んどきや。』
『りょーかいですわ。』
細井、水上の通信に隠岐は短く答えた。
生駒隊作戦室
「いやー、柿崎隊強いなぁ。」
生駒は作戦室の椅子にもたれ掛かり、グラグラと椅子の脚を揺らしながらそう言う。
「照屋ちゃんヤバいっすね。王子も防戦一方やないすか。」
「いやー、きよぽん先輩ぶった切れなかったですねー。」
「こりゃきよぽん逃げ切り作戦使いますよ。」
水上の言葉に作戦室に沈黙が生まれる。
「…ええんか、きよぽんの思い通りにさせて。」
スイッチが入ったように生駒は立ち上がる。
「3人も彼女いるんやで?」
「いや、付き合ってへんでしょ。てか結局妬みやないですか。」
「きよぽんに…いや、隠れてるから無理か…。そ、それなら柿崎隊にやり返さな終われへんやろ!」
『隠岐!!』
『え?あ、はい?』
──という訳で今に至る。
放たれたライトニング。
至近距離且つ高トリオンの隠岐により放たれた神速の弾丸は、照屋のトリオン体を撃ち抜いた。
その直後、隠岐のトリオン体は、隠岐の横の路地からバッグワームを羽織り現れた、小荒井により切り裂かれる。
「ですよねー。」
2筋の光が空に上がる。
生駒隊、東隊にそれぞれ1点ずつ加点される。
──
「ちっ…。」
やはり生駒隊は思い通りに動かないな。
そういう意味じゃ、水上先輩みたいなタイプが4人いた方が相手としては楽だったかもしれない。
感情で動くタイプはどうもやりづらい。
「4対3対2対2か。まあ重畳だな。」
オレはマンションの屋上への扉を開ける。
…決着は次の機会にとっておくとしよう。
横からの砲撃。
オレは集中シールドで防ぐと、視線を向ける。
そこには天才、東春秋がこちらにアイビスを向けていた。
「…」
オレは遠くに見える天才を見据える。
「東さん、あんたはオレに敗北を教えてくれるのか?」
柿崎隊
柿崎 0P
照屋 2P
巴 1P
綾瀬川 1P
合計 4P
生駒隊
生駒 1P
水上 0P
隠岐 2P
南沢 0P
合計 3P
王子隊
王子 1P
蔵内 1P
樫尾 0P
合計 2P
東隊
東 1P
奥寺 0P
小荒井 1P
合計 2P
まあこんな感じでROUND2は決着ですね。
照屋ちゃんの回想シーンでは、小南、綾瀬川が2人で照屋を教えているシーンを最初書いていたのですが、最終的に照屋ちゃんが「てめえらイチャイチャしてんじゃねえよ。」で終わる脱線エピソードになりそうだったので辞めましたw
見たい人が多そうだったら書くかも?
繁忙期で不定期にはなりますが、気長にお待ちいただけると幸いです。
感想、評価等お待ちしております。
幕間何読みたいんじゃワレェ!
-
誰かの独白。多分榎沢か三輪。
-
掲示板形式のやつ。(作者無知)
-
日常小話。
-
if(綾瀬川VSボーダー)
-
住民税高すぎ。