忙しくて。
「あ。」
「…」
ボーダー本部、ロビーの自販機前。
ROUND5昼の部が終わり、数十分。
缶ジュースを飲みながら、オレの存在に気付いたツインテールが特徴の少女は小さく声を上げた。
「…榎沢か。」
そう言ってオレは財布を取りだしながら、自販機前に歩く。
「やっほ。久しぶり、センパイ。」
「中位は圧勝だったらしいな。弓場さん相手に流石だな。」
「手強かったよ。…センパイ、ココア好き?」
「藪から棒になんだ?」
「いーから。」
その言葉にオレは辺りを見渡す。
「あそこを出て1年も経ってない。…飲んだことないな。」
「あはは、あたしも。じゃあ挑戦だね。」
そう言いながら榎沢はココアのボタンを押す。
「はい。」
そう言って榎沢はオレにココアを差し出す。
「…」
「別になんも入れてないよ?見てたでしょ?バレンタインってやつ。溶かしたチョコみたいなもんでしょ?…ん。」
「…じゃ、ありがたく。「その代わり。」」
受け取ろうとした刹那、手は空を切る。
「ちょっとお話してこーよ。」
そう言って榎沢は小悪魔のような笑みを浮かべた。
「それで?もので釣ってなんの用だ?」
オレはココアの飲み口を開けながら榎沢に尋ねた。
「別になんも企んでないってば。」
榎沢はジト目でオレにそう言った。
「あれから会ってなかったからさー。センパイは最近どーよ?」
「どう…とは?」
「…あたしあんまり世間話とかしたことないわ。何話す?」
「帰っていいか?」
そう言ってオレは立ち上がる。
「あーん、待ってよぉ。」
榎沢はオレの裾を掴む。
「ココアどお?美味し?」
榎沢が話題を作るべく、強引に尋ねた。
「…前に隠岐と飲んだチョコシェイクに似てる。」
「ふーん…。」
そう言って榎沢はオレのココアを一瞥。
口を離した瞬間、オレの手からココアを取り上げる。
「一口貰うねー。」
「おい、まじかお前。」
オレが口を付けたのも気にせず、榎沢はココアを口に運んだ。
「うっげ…あまぁ。」
榎沢は舌を出しながらそう言って笑う。
「あたしもっと苦いやつがいいな。」
「意外と舌は大人なんだな。」
「意外とって…失礼しちゃうなー。」
「コーヒーなんかがいいんじゃないか?オレでも飲めたし、美味かった。まあ、これはこれでオレは好きだが。」
そう言ってオレは榎沢からココアを返してもらうと、残りを口に運んだ。
「コーヒー…ね。ここに来てから毎日が色んな経験だよ。センパイは居酒屋って知ってる?」
榎沢がオレに尋ねた。
「知ってるが行ったことは無いな。」
「なんかもうすごいとこだよ。あそこに入った後だと風間さん、ポストと格闘始めるからね。」
どう言う状況だ?それ。
「焼肉も美味しかったなー。」
「…諏訪隊で行ったのか?」
「うん。」
「…そうか。」
「何?その間。」
榎沢が横目でオレに尋ねた。
「仲良くやってるんだなと思ってな。」
「…別に。そう言うんじゃないし。」
榎沢は目を逸らしながらそう言った。
「あたしは失敗作…それは変わらない。センセイからの評価は変わらないし、センセイはあたしになんの期待もしてない。でも…でもさ。諏訪さんに瑠衣ちゃん、日佐人くんにつつみんさん。…二宮さんも。皆…失敗作としてのあたしを認めてくれてるみたい。…迷惑な話だよね?」
榎沢は儚げな笑みを浮かべ、オレに尋ねた。
「さあな。オレが知ったことじゃない。だが…ログしか見てないが、オレは諏訪隊のお前を弱いと思ったことは無い。」
「…あっそ。」
そう言って榎沢は立ち上がる。
「もう行くね。」
「…ああ。」
榎沢は歩き出す。
だが、数歩歩いて歩みを止めた。
「でも…あたしは綾瀬川センパイを超えるよ。失敗作、榎沢一華じゃなくて…」
そうして振り返る。
「良作、榎沢一華として。」
そう言って榎沢はオレを睨む。
その胸元には漆黒のネックレスが輝いていた。
──
「知っていますか?綾瀬川くん。チェスと将棋は似通っているらしいです。」
綾瀬川の目の前で、白髪の少女はそう言ってポーンの駒を動かした。
「そうらしいな。まあどっちも王を取るって言う意味じゃ同じだろ。」
その言葉に、少女、唐沢有栖は小さく笑みを浮かべる。
「ですが、将棋の方が遥かに難しいと聞きます。取った駒を自分の駒に出来る分、戦術、戦略は百手、それこそ万にも及ぶ程、パターンが増えます。」
「違いない。水上先輩は凄いな。チェスをやらせても強いんじゃないか?それこそ相手はオレじゃなくていい。…降参だ。」
唐沢のチェックに対して、綾瀬川はお手上げと言うように手を上げる。
「ご謙遜を。あなたの実力はこの程度では無いはずです。もう一度やりましょう。」
「あのな…。」
目の前の少女、唐沢有栖。
なんでも、近々あるらしい、アフトクラトルの従属国の侵攻。
その防衛の指揮を執るのが唐沢なのだ。
その為か、少し離れたテーブルでは、太刀川、迅、小南がババ抜きをしている。
「将棋、チェス…どちらも戦争です。」
唐沢はそう言うと、キングの駒を弄る。
「兵が戦い、王を取られれば負け。王を守るように、金将、銀将…ルーク、ビショップ。将棋の戦い方は利口です。倒した兵を捕虜とし、自分の兵にする。…近界民のやり口と似ています。」
唐沢はそう言うと目を伏せた。
「対してチェスは違う。」
目を開き、そして好戦的な笑みを浮かべた。
「敵兵は徹底的に殺し尽くす。有能なナイトであっても。…だから私はチェスが好きなんですよ。」
「怖いんだが。」
「だってシンプルじゃないですか。…今回の任務もそうですよ。チェスに守りの概念は無いです。
…あちらがしかけてくるのなら好都合。真正面から叩き潰しましょう。」
「…」
そんな様子を小南はジト目で見ていた。
「何かご用ですか?小南さん。」
クスリと笑いながら唐沢は小南に尋ねる。
「べ、別に何も無いわよ!」
小南は慌てて視線を外す。
「…小南さん。
…あなたも一戦どうですか?トランプだけでは飽きるでしょう。」
「あんた、司令室のオペレーター?」
「はい、そうですよ。それから小南さん、ビショップは斜め、ルークが縦です。…もしかしてルール知らないんですか?」
「は、初めてやるんだから仕方ないじゃない!」
小南は恥ずかしそうに声を上げた。
「なら初めからそう仰ってください。…嘘をついてまで私にお聞きしたいことでも?」
「…あんた、綾瀬川と親しいのね…。」
小南は目を泳がせながら唐沢に尋ねた。
その様子を見て、唐沢は一瞬驚いたあとクスリと笑う。
「ええ、まあ。」
「ど、どう言う関係なの?」
小南はそう言って、離れた位置で本を読んでいる綾瀬川に視線を向けた。
「ふふ、そうですね。説明するのは難しいですが…簡単に言えば…
…幼馴染のような関係…ですね。」
「お、おさ…ななじみ?」
「はい。」
「そ、それってどう言う…」
言いかけて、迅が立ち上がる。
「忍田さん、有栖ちゃん、敵が来るよ。パターンは一応Aで。」
「基地防衛ですね。」
そう言うと唐沢はモニターに視線を向ける。
「じゃあオレも戻るかな…。」
そう言って綾瀬川は立ち上がる。
「ああ、綾瀬川くんは残ってください。」
「は?」
綾瀬川は素っ頓狂な声で聞き返す。
「柿崎隊は他隊と同様に基地の外を防衛。…ですが綾瀬川くん。あなたは切り札です。まだ戦場に立つ必要はありません。」
「唐沢くん、しかし…」
食い下がったのは忍田だった。
「敵の全容が見えない。綾瀬川くんと言う戦力を使わない手は無いだろう。」
「何も遊ばせる気は無いですよ。天羽くんと同様私のサポートに入ってもらいます。…万が一は戦場にも立てる準備を冬島隊長にもしてもらっています。」
そう言って唐沢は立ち上がり、モニター前に座る。
そして目の前のチェス盤に駒を並べた。
「…心配せずとも勝ちますよ。私は負けることが大嫌いなので。さ、綾瀬川くん、座ってください。」
そう言って唐沢は綾瀬川を唐沢の前に座らせる。
「さて、改めて…
…一戦、お手合わせ願えますか?」
各キャラからの評価&各キャラへの評価
榎沢一華→色んな意味で先輩。崇拝。憎悪。
唐沢有栖→幼馴染のような関係。切り札。
榎沢一華←後輩。警戒。生意気。
唐沢有栖←チェス強いな。
次回から本格的にガロプラ…
の前に幕間かこーっと。
感想、評価等お待ちしております。
幕間何読みたいんじゃワレェ!
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誰かの独白。多分榎沢か三輪。
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掲示板形式のやつ。(作者無知)
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日常小話。
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if(綾瀬川VSボーダー)
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住民税高すぎ。