B級1位柿崎隊万能手、
綾瀬川は確かに強い。
それは木虎、嵐山、ここにいる全員が分かっている。
柿崎隊をB級1位に導いた立役者であり、弧月、バイパーの腕は既にマスタークラス。
完璧万能手に最も近いと言われる男。
侮ったりなどしていない。
それでも、A級5位の連携力ならばボーダートップクラスの嵐山隊、中距離の火力に定評のある諏訪隊。
この2部隊に綾瀬川1人で戦うと言うのは些か無謀である。
開戦の狼煙は諏訪、堤によるショットガンの音だった。
それに合わせて、笹森はカメレオンを発動して、綾瀬川の視界から消える。
木虎、嵐山もアサルトライフル、ハンドガンを綾瀬川に向けた。
「…」
綾瀬川はゆっくり弧月を構えると地面を踏み込む。
その踏み込み1回で綾瀬川は嵐山の眼前に現れる。
「!」
そのまま弧月を振り、嵐山の右腕を奪う。
片腕は既に三輪の
「!、嵐山さん!」
「…ヤロォ…!」
諏訪は再び綾瀬川にショットガンを向ける。
綾瀬川は弧月を諏訪のショットガン目掛けて投げると、ショットガンの銃口に刺さり、ショットガンは暴発。
諏訪の片腕が吹き飛ぶ。
「なっ…?!」
その致命的な隙に、綾瀬川は既に諏訪の懐に潜り込んでいた。
「諏訪さん!!」
笹森はカメレオンを解除し、綾瀬川に切りかかる。
しかし、全て空を切る。
綾瀬川は数回弧月を躱した後に、弧月を振るう笹森の腕を掴み、足払い。
「っ?!」
そのまま、バランスを崩した笹森を回し蹴りで諏訪の方に蹴飛ばすと、弧月で諏訪諸共貫いた。
「このっ…」
堤が言い切る前に、いつの間にか距離を詰めた綾瀬川はスコーピオンの生えた足で堤の胸に飛び蹴り。
そこから一気にトリオンが吹き出す。
着地した綾瀬川は嵐山に向き直る。
『賢!!』
佐鳥に背中を見せた綾瀬川に、嵐山は佐鳥の名前を呼ぶ。
『は、はいぃ!!』
その瞬間、綾瀬川の背後から銃声2発。
佐鳥のイーグレット2丁による狙撃。
しかし、綾瀬川は少ない首の動きで後ろを向いたまま避ける。
「…くそ…!化け物か…!」
嵐山はスコーピオンを足から生やすと、テレポーターで綾瀬川の後ろに回り込む。
しかし、綾瀬川の後ろにテレポートした途端、飛んできた弧月に胸を貫かれる。
「…なっ…?!」
「驚く事じゃないだろ。…視線からテレポート先くらい逆算できる。」
「くそ…すまない…迅。」
「…嘘でしょ…」
決着は一瞬だった。
あまりの呆気なさに、木虎はハンドガンを落とす。
その瞬間、木虎の視線は低くなる。
気付くと木虎はその場に倒れ、三門市の夜空を見ていた。
木虎の両足は切り落とされ、木虎は仰向けに倒れ込んだ。
A級としてのプライド、経験。
嵐山隊の戦略、連携。
それらを踏みにじるように、綾瀬川は木虎の顔に足から生えたスコーピオンを突き立てた。
木虎が最後に見たのは、こちらを見下ろす怪物の、無機質な瞳だった。
「う、嘘だろ…嵐山さん…木虎…?諏訪さんまで…?」
遠くからその状況を見ていた佐鳥は眼を疑う。
「っ!!」
佐鳥はすぐに切り替え、スコープを覗く。
「!!」
スコープに映ったのはこちらに視線を向ける綾瀬川だった。
もちろん狙撃のあとは位置を変えている。
それでも綾瀬川はこちらに視線を向けていたのだ。
慌てて、スコープから目を離したその時。
佐鳥の頭は撃ち抜かれた。
「…アンタも生きてたんだったな。」
佐鳥を撃ち抜いた当真は、綾瀬川のいる小さな広場に降りてきた。
「…まあな。…にしても…バケモンだな、おめー。」
「…」
綾瀬川は当真の横を抜けると歩き出す。
「敵はまだ残っている。
…アンタらの尻拭いはしてやるから手伝え。」
「…へいへい。」
──
『嘘…嵐山隊と諏訪隊が全滅しちゃった…。』
5つの光が空に上がった数秒後、もう1人佐鳥も緊急脱出する。
柿崎隊オペレーター、宇井真登華は信じられない報告を柿崎、照屋にする。
『迅さん、全員落ちました…。…諏訪さん達もです。…そっちに向かってます。』
『すまない、迅…何も出来なかった。』
嵐山隊、綾辻、嵐山の通信に迅は俯いた。
「すまん、ザキ。未来が確定した。…新たな刺客の正体は…」
太刀川の後ろに、出水、三輪が到着する。
「お前達、何故ここに?何が起こっている?」
到着した出水、三輪に風間が尋ねた。
「はぁ…城戸さんが
「…」
三輪もやるせなさそうに俯いた。
「…でもまあ…俺らの勝ちですよ。」
「刺客の正体は、やっぱりお前だったか。綾瀬川。」
無防備に。
まるでコンビニに出かけるかのように無防備に。
ポケットに手を入れながら歩いてきた綾瀬川に迅は冷や汗を浮かべながらそう言った。
「清澄…か?」
「清澄先輩…。」
チームメイトの名前を柿崎、照屋は信じられないと言った様子で呟いた。
「…どう言う事だ、綾瀬川。お前の加勢など聞いていないぞ。」
風間が綾瀬川に尋ねた。
「…どう言う事も何も、俺は上からの命令でここに来た。迅悠一が柿崎隊、諏訪隊を応援に呼んでいた時点でオレが加勢する未来は確定していた…という事だ。」
「?…何が言いたい?」
「分からないのか?…A級トップチームが揃いも揃ってブラックトリガー1人とA級5位に負ける未来が見えてたって事だ。
…オレはその尻拭いに来ただけだ。」
「「っ?!」」
風間、太刀川は目を見開く。
綾瀬川はゆっくりと弧月を抜く。
「ここからの指揮はオレが執る。片腕だろうがなんだろうが働いてもらうぞ。」
形勢は逆転した。
ブラックトリガーの風刃があるとは言え、6対3。
迅は冷や汗を流す。
「何がパワーバランスだよ…お前みたいな化け物がいるならあいつのブラックトリガーは必要ないだろ?ここは1つ引いちゃくれないか?綾瀬川。」
「知った事か。オレはオレに与えられた任務を遂行するだけだ。道を開けろブラックトリガー。この状況でまだ抵抗を選ぶのか?」
綾瀬川、迅は睨み合う。
「…どうかな?お前でも予期しない助っ人がいるかもしれないぜ?」
ギィン…!!
綾瀬川は後ろからの弧月をノールックで受け止める。
「どう言うつもりだ?…太刀川さん。」
「太刀川!何をやっている?」
予想外の行動に風間も声を上げる。
「…フッ…気が変わった。今ならお前の本気が見れそうだぜ…綾瀬川。」
「ちっ…戦闘狂が…。」
──
「ザキ…綾瀬川が刺客として現れる時点で…太刀川さんがこっちに着く未来も確定してた。…だから…その…。」
「謝んなよ。ここに来る前に何となく分かってたんだ。お前の言う手強い刺客が清澄なんじゃないかって。」
「はい。」
迅のその言葉に、柿崎、照屋は笑みを見せる。
「言っとくが迅!お前に味方した訳じゃねーからな!綾瀬川の次はお前だ!」
そう言って太刀川は弧月2本をクロスさせ、綾瀬川目掛けて駆け出した。
「それよりも太刀川さんがあいつを抑えている間にやる事をやろう。」
柿崎は三輪、出水、風間に視線を向けた。
『当真先輩も生きてるよ。気をつけてね。』
宇井の通信に柿崎、照屋は臨戦態勢に入る。
「三輪、風間さん、当真さんは柿崎隊の相手を。相打ちでも良いから落とせ。」
太刀川の連撃を捌きながら綾瀬川は淡々と告げる。
『…その柿崎隊ってのはおめーも入ってんのか?』
当真が尋ねる。
『…誤射は構わないがその場合アンタから落とすぞ。』
『おー、こえーこえー。』
「…出水はオレのサポートだ。
…太刀川さんとブラックトリガーを抑え込む。」
綾瀬川は太刀川の弧月を上に弾くと、迅に切りかかる。
「そう来るよな…!」
迅は風刃でそれを受け止める。
「出水、絶え間なく撃て。トリオンが切れても良い。」
「使い潰しかよ…りょーかい。バイパー。」
出水はトリオンキューブを分割、迅目掛けて曲げる。
迅は、建物を射線に入れて飛び上がる。
「お前の相手は俺だ…!綾瀬川…!」
笑みを浮かべながら太刀川は綾瀬川に切りかかる。
綾瀬川はギリギリで避けると弧月の隙間を縫うように、鋭い突きを太刀川に入れる。
「っ?!」
肩を切り裂かれ、太刀川は飛び退く。
そのまま、距離を詰めようとした綾瀬川だが、壁を伝った斬撃を見抜き、急停止する。
「おいおい、風刃を初見で避けられたのは初めてだぜ?」
「…」
「ハハッ!おもしれぇ!やっぱり爪を隠してやがったな綾瀬川!!そう来なくちゃ面白くねえ!…旋空弧月。」
綾瀬川、出水をまとめて切り裂くように、太刀川は旋空を放つ。
出水はどうにか飛び退いて躱す。
「ひー、あっぶねえ。」
しかし、そこに綾瀬川の姿はなかった。
「はっ…お前ならこれくらい避けるよな…。」
反撃を警戒して、太刀川は距離をとる。
「随分と呑気だな。」
「!」
「!、太刀川さん!!」
太刀川の眼前に迫った綾瀬川は太刀川の首を掴むと地面に叩きつける。
そして、地面から生えたスコーピオンに後頭部を貫かれた。
綾瀬川清澄
本気の時のトリガーセット
メイン:弧月、旋空、スコーピオン、シールド
サブ:アステロイド(ハンドガン)、バイパー、スコーピオン、シールド
そしてパラメーター…
…はまだ時期尚早かなw
感想、評価等お待ちしております。
多分バレンタイン回の続き書く。じゃあアンケートの意味無いじゃんって?細かいことは気にすんな。
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日常小話(バレンタイン)
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掲示板形式のやつ(書いてみたい)
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誰かしらの独白
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17歳組のランク戦
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なんでもいいよもう
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しつこい好きに書けって
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アンケート邪魔
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五条先生…