「はあ?!綾瀬川と三輪が模擬戦?!」
米屋の言葉に出水公平は声を上げる。
「うん!そう言えばあやせ先輩とみわ先輩が戦ってるとこって見た事ないからさ、いずみん先輩も見に行こーよ。」
米屋、緑川はテンションMAXで出水を誘った。
三輪と綾瀬川が仲違いしていたのは知っている。
でもまさかそんな話になるとは思っていなかった。
「っ…あの馬鹿…
…上手くやれっつってんだろーが!」
そう言って出水は米屋、緑川の後に続いた。
──
ランク戦ブースは多くの隊員で溢れかえっていた。
「…これは何の騒ぎだ?」
「風間さん。」
通りかかった風間は米屋、出水、緑川に話しかけた。
「三輪と綾瀬川が模擬戦やるんすよ。貴重なんで見とこうと思って。」
「…ほう…。」
A級3位風間隊の隊長にして、No.2攻撃手の風間蒼也は綾瀬川の実力を知る隊員の1人。
興味深そうに目を細めた。
周りを見渡すと、荒船や影浦、村上など、多くの隊員が模擬戦の開始を待っていた。
そこには二宮の姿もある。
珍しいと思いつつも、三輪はかつてのチームメイト、綾瀬川は二宮隊をB級2位に落とした張本人とも言える男。
興味を持って当然かと思い、視線をモニターに移した。
「…風間さんはどっちが勝つと思います?」
出水が風間に尋ねた。
「…多くの隊員は三輪と答えるだろうな。」
そう言いながら風間は携帯をいじる。
「ですよね…。誰かにメールッスか?」
「歌川を呼んだ。綾瀬川の
「なるほど。」
どちらも、先の大規模侵攻の際に特級戦功をあげた実力者。
注目されるのは当然の事だった。
「あれ?弾バカセンパイと槍バカセンパイ、駿くんに小人さんじゃん。何してんの?」
そこにやってきたのは諏訪隊銃手、榎沢一華だった。
「「誰が(槍)(弾)バカだ、銃バカ。」」
「アハハ、ハモってるー。おもしろ。」
榎沢は笑う。
「…おい、小人と言うのは俺のことか?」
「?…他に誰がいるの?てか名前知らないし。」
「風間蒼也、21歳だ。口の利き方は覚えておくんだな。」
風間は榎沢を睨みながらそう言った。
「ハイハイ。風間さんね。覚えた覚えた。」
榎沢はそう言って適当に流すと、モニターに視線を向けた。
「!、綾瀬川センパイじゃん!相手は…三輪センパイ?なになに、模擬戦やるの?!」
榎沢は興奮気味に出水に尋ねた。
「…まあな。」
──
転送されたのは市街地A。
そこで、2人のトップ万能手は向かい合う。
「意外だな。お前がこんなにも行動力のある奴だと思わなかった。」
綾瀬川は三輪にそう話しかける。
「とっとと構えろ。先程も言ったが…
…出し惜しみはさせてやれないぞ。」
三輪は弧月を抜く。
「…やらなきゃ駄目か?」
綾瀬川は困ったように尋ねる。
「断るのなら、お前と話すことは何も無い。」
「…わかった。」
──個人ランク戦10本勝負、スタート。
その機械音と共に、三輪は一気に距離を詰めると、ハンドガンを発砲する。
綾瀬川はシールドを展開する。
…しかし、三輪の放った弾はシールドをすり抜けると、綾瀬川の体に重石を植え付ける。
「っ…!」
「真面目にやれ。」
その言葉と共に、動けなくなった綾瀬川のトリオン体は弧月で両断された。
「舐めているのか?俺に負けないとでも思ってるんじゃないだろうな?」
三輪は戻ってきた綾瀬川を睨みつけながらそう言った。
「どうやり過ごすか考えてる暇があるなら、とっとと構えろ。」
「…お見通しって訳か。」
綾瀬川は弧月を抜く。
「真面目にやらないとお前は話を聞いてくれなそうだからな…。それに…」
綾瀬川は諦めたように息を吐くと目を細める。
「…お前との模擬戦は楽しめそうだ。」
──
「おー、秀次が1本取ったな。」
「まあ綾瀬川センパイが勝つけどねー。」
榎沢は余裕そうにそう言った。
「出水はどうよ。やっぱ綾瀬川予想?」
「…いや、三輪の鉛弾は綾瀬川と相性いいと思うぞ。もしかしたら三輪が勝つかもな。」
出水は顎に手を当て、笑みを浮かべながらそう言った。
「ふーん。」
「なんでみんな当たり前のようにあやせ先輩予想なの?」
緑川が2人に尋ねる。
「そうか、お前は争奪戦の現場にいなかったもんな。…そう言う事綾瀬川から聞かねーの?」
米屋が緑川に尋ねた。
「…うーん、あやせ先輩が何か隠してるのは分かるんだけど…前にブラックトリガーの事迅さんに聞いたら、困らせちゃった事あって…あやせ先輩のもそんな感じなのかなって思って聞かないようにしてる。」
「…なるほどね、綾瀬川よりよっぽど人間出来てるわ、お前。」
そう言って出水は緑川の頭をクシャクシャと撫でる。
「ちょ、何ー?」
「2本目が始まるぞ。そこまでにしろ。」
風間はそう言って2人を窘めた。
──
──2本目、スタート。
機械音と共に綾瀬川と三輪は、距離を詰め、弧月を合わせる。
「っ…!」
三輪は鍔迫り合いの末、弧月を弾くと綾瀬川にハンドガンを向ける。
「…弾速自体は遅いみたいだな。」
綾瀬川はヒラヒラと避けながら、トリオンキューブを生成する。
「アステロイド。」
「…」
三輪はシールドで受けながら、隙を見てハンドガン、鉛弾を放った。
綾瀬川は全て弧月で受けると、弧月に重石が付く。
しかし、すぐに新しい弧月を生成する。
「バイパー。」
綾瀬川はトリオンキューブを半歩後ろに生成。
三輪はシールドを広げる。
「…旋空弧月。」
綾瀬川の代名詞、バイパーと旋空による後出しジャンケン。
…しかし、三輪は冷静にサブトリガーでシールドを展開。
「!」
展開されたのは綾瀬川の手元。
柄の部分がシールドで止められ、抜刀を防ぐ。
そのまま、シールドでバイパーを受けると、距離を詰める。
──
「上手い…。」
見ていた、鈴鳴第一の攻撃手、村上鋼は思わず口に出す。
「なるほどな、抜刀させねえって訳か。」
荒船隊隊長、荒船哲次も感心したようにそう言った。
「さすが、A級の隊長だな…。カゲはどう思う?」
「…綾瀬川のヤローはこんなもんじゃねえだろ。」
影浦隊隊長にして、ボーダートップクラスの攻撃手である、影浦雅人はそう見解する。
画面に目を向けると、鉛弾を植え付けられた綾瀬川が両断されていた。
──
──2-0、三輪リード。
「ふざけているのか?綾瀬川。」
三輪は綾瀬川を睨みながらそう言った。
「いつも通りやってるんだけどな。まあ…それじゃ三輪には勝てないって事が分かった。」
綾瀬川は目を細める。
そして3本目、開始の合図。
その瞬間、綾瀬川は三輪との距離を一気に詰める。
「…」
三輪は、冷静に受け太刀し、ハンドガンを向ける。
綾瀬川はそれを見切って避けると、三輪に蹴りを入れる。
腕でそれを受けた三輪は、後退り、鉛弾を撃つ。
それを弧月を振り、全て受けると、そのまま重石の付いた弧月を三輪目掛けて投擲する。
三輪はそれを避けながら、マガジンを変える。
「バイパー。」
シールドを張った綾瀬川を躱すように、三輪のバイパーは弾道を変える。
それを時間差のシールドで受けた綾瀬川は、バッグワームを取り出して、三輪目掛けて投げる。
「!」
それを目眩しに、体勢を低くした綾瀬川から、不可視の一撃が放たれる。
「…旋空弧月。」
そのまま三輪のトリオン体は、切り裂かれた。
──
「おっ、取り返したな。」
「抜刀を隠して生駒旋空か…。えぐい事しやがるな。」
荒船は苦笑いを浮かべる。
「荒船ならどう戦う?」
「ソロなら無理だな。俺じゃ勝てねえ。チーム戦ならやりようはあるだろーけどな。」
「…そうか。」
荒船の言葉に、村上は目を細めてモニターを注視する。
(バイパーの合間にあれだけ鋭い旋空を持ち込まれたら手に負えないぞ…。つまり今まで俺とやり合ってた時は上手く手を抜かれていた事になる。)
「…ホント性格悪いな、アイツ。」
──
「先ずは1本。悪いがこのまま勝たせてもらうぞ。」
「1本取ったからといって調子に乗るな。」
三輪は綾瀬川を睨むと一気に距離を詰める。
「…いや、ここまでだ。癖も分かってきた。」
鉛弾を避けながら、綾瀬川は三輪が抜こうとした弧月の柄を足で抑える。
「!」
そのつま先から、スコーピオンが飛び出す。
「っ?!」
三輪はどうにか飛び退いて避けるが、肩からトリオンが漏れ出す。
それを一瞥して綾瀬川に視線を向ける。
…しかし、そこに綾瀬川の姿はなかった。
「余所見か?随分余裕なんだな。」
視界の右下、綾瀬川の弧月が三輪に迫る。
「くっ…!!」
三輪はハンドガンを綾瀬川に向けるが、左手はハンドガンごと切り落とされた。
──
「…これは開くな。」
「!…東さん。」
二宮に話しかけた東に二宮は視線を向ける。
「小荒井と奥寺に呼ばれてな。珍しくお前がランク戦ブースにいるから声を掛けたんだ。隣いいか?」
「どうぞ。」
「お前はどう思う?このランク戦。」
隣に腰掛けながら、東は二宮に尋ねた。
「秀次が不利ですね。秀次は
「…そうだな。」
そう言ってモニターに移る綾瀬川に視線を向ける。
「お前ならどう攻略するんだ?」
「1対1で戦うのなら射程を取って、火力勝負に持ち込むのが1番でしょう。」
二宮はそう答えた。
「…それをやって前シーズンはどうなった?」
「…」
「今回は俺たちは挑戦する側だからな。まあ色々考えてみるといいさ。」
考え込む二宮に、東はそう言うともう一度モニターに視線を戻した。
──
──三輪ダウン、5-2、綾瀬川リード。
「開いてきたな。」
出水はそう言ってジュースを口に運ぶ。
「まあ、綾瀬川の場合やればやる程勝てなくなるからなー。」
「サイドエフェクトの未来演算による、究極の後の先…ですか。少しの模擬戦で読めるものなんですか?」
歌川が風間に尋ねた。
「いや、あいつ分析得意なんスよ。」
それに答えたのは米屋だった。
「日常生活から俺たちの性格や癖なんかを見抜いて、そこを突いてくるんス。最初は俺の方が勝ってたのに、今なんか勝てる日が珍しいくらいっスからね。」
米屋はそう言うと、頭の後ろで手を組む。
「秀次と綾瀬川は付き合い長いっスから。秀次にとって綾瀬川は1番やりにくい相手じゃないスか?」
──
──ランク戦終了。8-2、勝者、綾瀬川。
「…何故、それ程の実力がありながら…っ…」
言いかけて三輪は俯く。
「ボーダーの実力者は皆そうだ。太刀川さんや当真さん…実力がありながら全員…意欲は無い…。それだけの力があれば近界民を駆逐できるというのに…!」
三輪はどこか乾いた笑みを見せる。
「…お前もそうなんだろう?綾瀬川。実の母を殺されたというのに…目的もない。それだけの力がありながら…お前は…!」
三輪は綾瀬川を睨む。
「…4年前、一次侵攻の時の事だ…。オレはそこで初めてオレがいたのは三門市だと知った。オレは…死ぬまで母親のことを知らなかった。」
「!」
「逆に聞かせてくれ…。どうすればオレは近界民を憎めるんだ?」
綾瀬川は三輪に尋ねた。
「オレには分からない…家族の温もりも、家族を失う辛さも。
…愛も…憎悪も。」
淡々と告げる綾瀬川の声はいつもより冷えきっているような気がした。
「…だが、ここに来て温もりは少し分かった気がする。柿崎隊でのランク戦に向けた作戦会議。勝ったあとの打ち上げ、玉狛で小南のカレーを食べた時もそうだ。
…オレは嬉しかったのかもしれない、柿崎隊、小南の温もりが。」
綾瀬川の独白に三輪は目を剥く。
「お前もだ、三輪。お前はオレにとって初めての友人だ。…オレはお前を失えば近界民を憎めるのか?柿崎隊も…小南もだ。」
「何を…言ってるんだ…お前。」
「ふと思ったんだ。オレは今、こうして仲間や友人の温もりを覚えることが出来た。
…ならそれを近界民によって失えば、オレは憎悪、憎しみを知ることが出来るのかもしれないってな。」
「そんな事…。」
「だが…オレはお前を失うのは御免だ。」
「!」
「柿崎隊も…小南も。…だからお前が教えてくれ…
綾瀬川はそう言って、座り込んだ三輪に手を差し出す。
「お前の言う通りオレには今、目的が無い。だから手伝わせてくれ。お前の近界民を絶滅させるっていう目的を。」
「…そんな事をして…お前になんの得があるんだ?何を企んでる?」
三輪は綾瀬川を怪訝な目で見る。
「何も企んでなんかない。…損得の話でもないさ。
…ただ友人として、お前の手助けをしたいと思った。それだけだ。」
「…だったら先ずはA級に上がってこい、馬鹿め。」
そう言って三輪は綾瀬川の手を取った。
その表情はどこか晴れやかだった。
「…ああ。」
手を取った三輪に、綾瀬川はいつものように無機質な瞳、声でそう答えた。
──
そして大規模侵攻から1週間が経った。
…大規模侵攻の英雄が目を覚ます。
各キャラからの印象&各キャラへの印象
綾瀬川清澄
三輪秀次→仲直り。友人。協力者。
出水公平→馬鹿。上手くやれ。
米屋陽介→マジで勝てん。
緑川駿→兄貴分。なにか隠してるのは知ってる。
風間蒼也→ボーダートップの万能手。
歌川遼→リスペクト。
荒船哲次→勝てない。
村上鋼→性格悪いな。
影浦雅人→ランク戦やりてえ。やろーぜ。
二宮匡貴→ライバル視。
東春秋→天才万能手。
三輪秀次←友人。協力させてくれ。
出水公平←友人。弾バカ。
米屋陽介←友人。槍バカ。
緑川駿←弟分。
風間蒼也←牛乳いります?
歌川遼←良い奴。ほんとに高一?ってくらいしっかりしてる。
荒船哲次←ライバル視やめて。
村上鋼←警戒すべきサイドエフェクト。
影浦雅人←ランク戦仲間。いい人。
二宮匡貴←トリオン富豪。この人も大概弾バカ。
東春秋←戦術の天才。
榎沢一華
米屋陽介→生意気。銃バカ。
出水公平→生意気。銃バカ。綾瀬川となんかあんのか?
緑川駿→友達。強い。
風間蒼也→口の利き方には気を付けろ。
米屋陽介←槍バカ先輩。
出水公平←弾バカ先輩。
緑川駿←友達。いい子。
風間蒼也←小人さん。
次1話やって、ランク戦編にはいると思われます。
皆さん察してるかもしれませんが、かなりオリジナルになると思います。
原作程面白く書けるか分かりませんが、頑張ります。
感想、評価等お待ちしてます!
幕間何読みたいんじゃワレェ!
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誰かの独白。多分榎沢か三輪。
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掲示板形式のやつ。(作者無知)
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日常小話。
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if(綾瀬川VSボーダー)
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住民税高すぎ。