残火の章   作:風梨

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約13000字
大変長らくお待たせして申し訳ありませんでした。

前回:ウヅキ転生>ダンゾウを断罪>お祭り開催成功>うちはフガクの裏側就任決定>大蛇丸侵入するも自来也単騎で挑み撃退失敗>五影会談が『雨隠れ』で開催決定。


五影会談

 

 

『木ノ葉の里』

 

 言わずと知れた五大国の内の一国である『火の国』に属する隠れ里であり、大陸有数の戦力を抱える里である。

 しかし、この大陸では未だ終戦しておらず、戦禍の傷跡も残ることもあって割ける人員に対する影響は大きい。

 それでもウヅキという『鬼札』を用いた停戦中であるという事もあって、人員は多めに用意することが可能だった。

 

 

『あ』と『ん』の描かれた門の前に、『五影会談』に参加することを目的とした集団が集まっていた。

 総勢20名の忍達。いずれも名のある忍である。

 

 通常の『五影会談』では影と随伴者2名という縛りはあるが、今回は停戦して間も無くという事もあり、各国が暗殺を警戒した故の人員増加であった。

 それは立場を同じくする他の五大国への警戒でもあるが、それ以上の警戒対象は『抜け忍』や五大国以外の忍である。

 

 恨みというものはどこで燻っているか、察知する事が難しい。

 戦争中であれば尚のことだ。

 また、いずれかの大国が表向きは素知らぬ顔をして『傭兵』に依頼する事もないと言い切れない。

 停戦会談が必定。しかし、万が一の場合のリスクが高すぎる。

 

 それ故の特例であった。

 

『木ノ葉』に限って言えば、前回大戦で二代目火影である『千手扉間』が会談に赴き、暗殺されている事実もある。慎重を期して万全の体制を整えるのは当然とも言えた。

 

 主なメンバーは──。

 

『火影』ヒルゼン

『瞬身』シスイ

『黄色い閃光』ミナト

『双極』ヒアシ

『三忍』自来也

『三忍』綱手

 

 錚々たる面々。

 小国程度なら一日足らずで落とせる戦力が集結していた。

 

 そしてここに『灼道』ウヅキが参加する。

 戦力に換算すれば、単騎で一国どころか、五大国以上という規格外。

 

 いずれの国から見ても、例えそれが会談に赴くための通過のみであれ、緊張感を伴う事が必定の戦闘集団が自里の者に見送られて、万全の体制を整えて出発した。

 

 

 

 

 木ノ葉を発った集団は森を駆け抜けていた。

 鬱蒼としげる木々は戦禍から辛うじて逃れたのか、その生を謳歌している。

 その丈夫な幹や枝を踏み『忍』らしく高速で木々を駆け抜ける。『木ノ葉の里』から出発して少し進んだ辺りのことだった。綱手が自来也に横に来ると、ふと思い出したかのように問いかけた。

 

「──ところで、自来也。確かお前の弟子が雨隠れにいたと思うが、連絡は取っているのか?」

 

 同じように移動する自来也が、少し思い悩むように顎に手を当てる。

 記憶を探るまでもないほど、近頃はそのことばかりを考えていた。

 だから、その沈黙は記憶を探る目的ではなく、どう説明すべきか少し迷ったからだった。

 あるいは、気になる事を話しておくべきかという逡巡があった。

 チラリと背後を見れば、火影の笠を乗せる『先生』が集団の後方を走っている。

 集団の最後尾はもっとも技量に優れる者が走るからこその配置だった。その横には、安全性に万全を期すようにウヅキも駆けていた。

 

 ──それを見て、言うべきであると自来也は判断した。

 まずは綱手の言葉に答えるべく口を開いた。

 

「……いや。連絡は取っておらんのォ。ただ風の噂で、幾つか名を売ったと聞いたが、あの国は今どうなっているのやら。何せ情報が外部に全くと言っていいほど出てこん国柄だからのォ。ワシも情報集めには難儀して、正確なところはわからんというのが正直なところだ」

 

 綱手への回答としては、ここまでだった。

 自来也は視線を意識的に背後に向ける。

 

「……そして『その点』を加味するとまた違った見え方になる。そもそもが、閉鎖主義で知られている『雨隠れ』が五影会談を受け入れたという時点で何やらキナ臭いのォ。そうは思いませんか、猿飛先生」

 

 声を掛けられて、後方を進んでいたヒルゼンが僅かばかり速度を上げて自来也と並走する。最後尾にはそのままウヅキが付いた。

 そして周囲にも聞こえるように声量を上げてヒルゼンが答える。不要な疑念は相手への警戒心を生み、またこちらの士気を下げかねないと言う判断だった。

 そんな話題を話し出した自来也には少し厳しい視線を向けながら。

 

「それに関しては問題あるまい。もし何か問題が起これば、すぐさま『雨隠れ』が戦場と成りかねん。何せ各国が手練を20名も率いておる。脱出は容易だろう。ただでさえ勝率が低いと言うのに、失敗に終われば早晩に『雨隠れ』は崩れる。何故なら、あの国は『岩』『木ノ葉』『砂』に囲まれておる。下手な動きをすれば、必ず三国が本腰を入れる。ならば自明じゃ、簡単に『雨隠れ』が潰れる。これは確定事項。あの『山椒魚の半蔵』がそのような簡単な読みが出来ず、愚かな判断をするとは思えん。それ故、お前の心配は杞憂でしかあるまい」

 

 一理ある。いや、理しかない、と言うべきか。

 自来也は己の中で整合性が取れない。薄ぼんやりとした懸念が拭えなかった。

 

「それは、そうなんですが……。何となく違和感がありまして」

 

 ヒルゼンの説明は何故『出来ないのか』という根拠を述べたに過ぎない。

 何故『受け入れたのか』に関しての言葉ではない事もあって、自来也は心配を払拭できないでいた。

 

 そんな自来也に向けて、ウヅキが後方から薄い笑みを浮かべて言葉を投げてきた。

 尊大とも言えるが、絶大な安心感を齎す言葉を。

 

「案ずるな。もし罠があろうが、このオレが食い破る。故に忠告しておくが、まぁ本当に最悪の場合だが。もしオレが『本気』を出したなら、オレからすぐさま離れることだ。手加減の出来ん術である故、不用意に近寄れば溶けて死ぬぞ」

 

「……いや、まっこと恐ろしい」

 

『たはは』とウヅキのみんなを安心させるための冗談を笑う自来也だったが、それを一緒に聞いていたヒルゼンは真顔だった。

 その顔を自来也は横目で見て言葉の本質を察する。

 これ、冗談じゃねぇと。

「マジですか」と視線だけでヒルゼンに問いかければ、真顔のまま頷かれた。

 

 絶対怒らせないように、『本気』を出させないようにしよう。

 

 物凄い冷や汗を流しながら心に決めた自来也と『木ノ葉』の一行は『雨隠れの里』を目指して進み続けた。

 そんな会話で、自来也は己の懸念をひとまず胸の内に収めながら。

 

 

 

 

 

 

「──ほぅお前さんが三代目風影か。『磁遁』を使うと聞いとるぜ」

 

 会話の切口を作ったのは、初老の老人だった。

 小さな身なりで腰掛けているが、彼の前には『土』と書かれた笠が置いてある。大国である土の国に属する忍里。『岩隠れの里』を率いる証だった。

 

 そんな『土影』の言葉に答えるのは『風』と書かれた笠を目の前に置き、腰掛ける男。同じく大国である風の国に属する『砂隠れの里』の長である。

 重々しく、やはり聞かれるかと思いながら風影──羅砂は言葉を吐いた。

 

「……いや、違う。オレは四代目風影だ」

 

「はぁ? 代替わりしたとは聞いとらんぜ。風影はいつの間にそんなに軽くなった?」

 

「……風影が変わったのは事実。それを知らないとは、随分とお粗末な情報網をお持ちのようだな。土影殿」

 

「くかか、若造がいいよるぜ。口だけじゃないといいが。頼りない影が居るなら、ワシらが戦争を続ける理由にはなっても、止める理由にならんぜ」

 

 喧嘩腰でいびる『土影』を止めたのは、『影』ですらない『とある国』の護衛の一人だった。

 この場には『影』とその背後に二名までの随員が許されている。『火影』の背後に立った男。言わずと知れた『戦国三強の一角』が会話を遮断した。

 

「──オオノキの小僧か。歳を食って身体に脂が乗ったようには見えんが、舌には随分と脂が乗っているように見受ける」

 

「……身体に、脂が乗っとるように見えんのか? そりゃ、とんだ節穴じゃぜ。ワシは今が最盛期だっての。──そういうお前さんは、昔と姿が変わっとらんじゃねーの。若作りの秘訣でも教えてもらいてーもんじゃぜ。なぁ『灼道』ウヅキよ」

 

 その場の全員の視線が、ウヅキに集まる。

 それを受けて微笑みを浮かべるウヅキに圧されたように無言の間が広がった。

 

 五影会談。

 舞台は既に整っていた。

 

 火影。土影。水影。風影。雷影。

 それぞれの傘を円卓に置き、その背後にズラリと護衛が二名ずつ付いている。

 

 その中にあって最も注目を集めているのが、『影』ではなくその背後に数多居る護衛の内の()()だった。

 

 火影の背後に立つ二人の内一人。

 注目度の高さに苦笑いする『波風ミナト』の横に堂々と立つ男。

 

 ──『灼道』の異名を持つウヅキだった。

 

 

 ウヅキが会話を遮断し、反撃するようにオオノキがその名を呼んだ瞬間、場の緊張感が否応なく高まった。

 張り詰めるような緊迫感の中で、ほぼ全員の視線がたった一人に集中している。

 

 各国の『影』並びに護衛たちの視線を意に介さず、自然体のウヅキが『若造り』というオオノキの言葉を受けてキョトンとして、思い出すように上を眺めた。

 

 探る思考は死ぬ前の光景。かなり前のことだが、それしか比較対象がないのだから仕方がない。

 その結果として、今のウヅキの顔立ちから年齢を過去と比較すれば、生前よりも多少若々しい程だった。

 

「若作りか。確かに、オレの見た目はそう言われても不思議ないな……。しかし、お前は年相応に老け込んだな、幾つになった?」

 

「次で64になる。──ってそんなことはどうでもいい! これが普通じゃぜ!? お前がおかしすぎるんじゃぜ!?」

 

「……柱間も扉間も同じく相当老けにくかった。マダラもそうだったか……? そう言われれば、あまり実感がないような……? いや、なかったが、やはりそうなのか?」

 

「お前らが異常なんじゃぜ!」

 

 血を吐くように『ぎゃんぎゃん』と吠える土影と、記憶を手繰りながら平然と返答を返すウヅキの姿。

 そのあんまりの落差に場の空気が弛緩し掛けるが、次の瞬間。

 

 ──砕けるような轟音が鳴り響いた。

 殴打されたのはテーブル。

 

 あくまでも注目を集めることが目的であったのか、煙が立って多少の凹みはあるものの、テーブル自体は粉砕されていない。

 

 場の視線が音の鳴った方向へと移動する。

 そこには『雷』の笠が宙に舞い、それを片手で掴んで再びテーブルに乗せた四代目雷影エーの姿があった。

 

 その背後で護衛の二人が『あちゃー』とでも言いたそうに頭を押さえていた。

 

「いつから『五影会談』は老人の憩いの集まりになった? そんな下らない話をするために集まったのなら、帰れ。邪魔だ」

 

 雷影の意見に同調して、子供のような姿の四代目水影が腕を組みながら頷き、言葉を続けた。

 

「……同意見だな。端的に、必要なことだけ話せばいい。オレも老人同士のやり取りを見せられるのはうんざりしてたところだ。あくまでオレたちは国からの指示で停戦しているだけ。どこぞの意向だか知らないが、過去の幻影に怯えるばかりで話にならない」

 

 言葉を切った『水影』が、その瞳をウヅキに向けた。

 深い深い得体の知れない目だった。

 

「実際のところを確かめなきゃな。お前のことだよ『灼道』。……お前、本当に今も強いのか?」

 

 この場の、火影陣営以外の全員が聞きたかった事。

 しかし、その後の流れを考えれば誰も切り出せなかった話題だった。

 当然である。その話題を出せば、『お前自身が確かめろ』と生贄にされかねないのだから。

 

 それを四代目水影は何の遠慮もなく切り出した。

 小さな身体に鋭い視線を含ませて、ウヅキをしっかりと睨んでいた。

 その言葉を聞いて、いや。

 

『その目』を向けられて。

 何故か言いようのない『苛立ち』がウヅキの内心に浮かび上がった。理由はわからない。だが、ゾワリと背筋が震える。

 かつてのように。

 ()()()()()()()()()()、ウヅキは売り言葉に買い言葉を発した。

 

「──強さ、か。そうだな、端的に話す事を望んでいるのなら、教えてやろう。オレ一人でこの場の全員を相手取っても負ける気はせぬ。……誰からやる? それとも、全員で掛かってくるか?」

 

 

 会談場が、物理的に軋んだ。

 

 圧倒的な武威が、周囲に対して放たれた。

 猛虎を前にするが如く。

 この場、総勢の背筋にゾクゾクとした痺れが駆け抜ける。

 

 少し前に、『うちはフガク』に対して見せたチャクラ放出による威圧。

 それは本来の実力の十分の一以下だった。

 だが、現在のウヅキのチャクラはその本来の実力よりも()()()()()()()()()()()()

 

 その結果として訪れたのは、かつてあの千手柱間が『オレと同等かそれ以上』と称したチャクラの圧は、容易に周囲から言葉を発する機会を奪った。

 

 極寒の帳が降りたように総勢の身が固まる。

 それ即ち、たかがチャクラの放出だけで、『灼道』が健在であると各国に示した事に他ならない。

 

 

 その中にあっても最も早く立ち直ったのは、やはりと言うべきか『火影』だった。

 ──戦国時代。

 その価値観をそのまま現代に持ち込むのは非常に危険極まりない。

 ヒルゼンがその懸念に思い至って、武威を感じながら身体の内に焦りを滲ませた。

 

 あの時代ならば、食うか食われるかである。口だけの交渉など意味がない。舐められれば、それは一族の進退に関わる。弱気は損気。即ち弱気を見た時は『攻め時』。弱者は食い物になる時代であった故に。

 当時は緊迫感が極限にまで高まっていた故に、基本的な外交姿勢としてこのようなウヅキの言動や行動はむしろ緩い部類で、交渉前に一戦行うこともままあったため受け入れる土壌が出来上がっていたが、この現代では明らかな挑発、恐喝行為に他ならない。

 

 

 故に。

 ウヅキの軽くひと当てしておくか、という程度のただ一度の武威で、会談場の空気は氷点下の極限にまで冷えた。

 よもやこの場で『伝説』との開戦となるかもしれない、という焦りと緊張感の滲んだ静寂だった。それはウヅキの意図を超えて腕試しなどという規模ではなく、第三次忍界大戦を、規模を拡大した上で継続するという意味での開戦である。それを各国の影たちは連想していた。恐らくは火の国vs四大国という、それでも『火の国』が有利という、桁外れの規模の。矛は、ただ一人(ウヅキ)で十分であるのだから。

 

 

 戦国時代なら、まず初めに力を見せるつけるのは当然であった。

 力無き者の言葉に価値はない。

 殺さぬ程度に殴り合ってから、あるいは戦争でボコボコにした後から、ようやく交渉を始めるなどザラだった。

 それ故の、ウヅキとしては軽いつもりの武威もこの場においては危険な行動として受け止められた。

 

 ウヅキもバカではない。

 あまり宜しくない、その気配を感じ取る事は出来た。

 しかし、戦国の常識が邪魔をして、その思考は正解には辿り着けない。

 とはいえ、吐いた言葉は元に戻せないために堂々と言葉を切っていた。本心では、半ば遠い目をしていたが。

 

 ──数秒が無限にも感じられる時の中で、ヒルゼンは口を挟む決死の覚悟を決めた。

 何も言わずにいれば、再び開戦と成りかねない。その主導権を座視して逃すのは些か愚かすぎる。

 だが、理性で理解していても、その一言があまりに重い。

 

 選び取る次の発言によっては終戦はできても、ウヅキとの間に禍根が残りかねないからだ。自国の英雄であるウヅキに反感を抱かれるという、最悪の事態を招きかねない。その想像は歴戦を潜り抜けてきた人並み以上の人生経験を持つヒルゼンですら恐怖心を抱くに余りある。

 だが、それでも。

 ヒルゼンは場合によってはウヅキからの不興を買ってでも止めるべきと判断した。

 

 平和を求める心に嘘偽りなし。

 その信念だけがヒルゼンの口を開かせる。

 

 ──だが、ヒルゼンはそんな覚悟こそしているが、実は口を挟んでも何の問題もなかった。

 

 ウヅキの先ほどの発言。

 ひいては戦国時代における強気の姿勢は言ってしまえば全てポーズである。

 ウヅキは元々前世の価値観で動いていた人間である。

 そんな彼は戦国時代に慣れて適応してはいたが、元来穏やかな交渉、外交の方が性に合っている。戦争などもっての他である。

 怒り狂った場合はその限りではないが、今回は冷静な計算に基づいての行動だった。

 

 戦国時代に弱腰の外交姿勢では舐められて嫌な思いをすることが多かったので、強気な姿勢をデフォルトに変更したに過ぎない。

 現状の急激に冷えた空気にまたもやらかしたかと、真面目な顔の奥で冷や汗を流しているくらいである。

 

 故に、この場における火影の最適解とは口を挟む事だった。

 そうとは知らず、緊張感と覇気を込めたまま、ヒルゼンは厳然(げんぜん)と口を開いた。

 

「ウヅキ。誤解を招く発言は慎め」

 

 あまりにも勇気ある行動だった。

 口を挟むだけでも相当の覚悟が必要であるのに、あえての呼び捨てであった。

 創始者が相手であれば、現『火影』であれ、敬称を付けても何ら問題はない。むしろ推奨されるだろう。

 だというのに、あえてそう呼んだ。

 それだけヒルゼンが怒っている、と周囲とウヅキに示すための言動である。

 

 ウヅキも愚かではない。

 理由までは察せなくとも、周囲が何かしらの誤解をした、という点までは理解できる。

 呼び捨てにした理由までは正確に察することは出来なかったが、それ故にそれだけマズい事態であると察した。

 

 加えて空気が冷え切っていることも理解している。

 火影がこの先の対処の方向性を決めてくれたのだから、後は乗っかるだけだ。

 ウヅキは思考を急速に回す。

 ここで自分が取るべき行動を考える。戦国時代の価値観で動いてダメだった。ならば、次に参考とすべき価値観は前世である。

 泥を被る事になるか、と一瞬過ぎったが、己の発言の責任程度取れなくてどうするとも思考する。

 

 色々と混乱しながら、扉間や卑弥呼には数段劣るが、執政者として無能ではない(と思いたい)頭脳で考えて、ふと己の立場を思い出した。

 そう。

 今の己は『木ノ葉の里』に所属する、かぐや一族の頭領である。

 

 そこで不祥不承ながら引き下がる、火影を立てる、程度の行動ならば比較的周囲に対する衝撃は少なくて済んだのだが。

 

 幸か不幸か、前世の社会人生活の記憶が繋がった。

 ヒルゼン。つまりは上司。

 自分。つまりは部下。

 

 事の始まりは部下である自分の発言。それを上司が咎めている。

 そう認識すれば取るべき行動は自然に選択出来た。

 

 ただし、それはヒルゼンが目をひん剥くほどに驚愕する行動だった。

 

 

「はっ、火影様。このウヅキ、愚かしくも発言を致しました。申し訳ございません」

 

 ──周囲の目を憚る事のない、謝罪だった。

 まさかの平身低頭の、深々としたお辞儀付きの謝罪である。

 

 それでも普通はプライドが邪魔をして謝罪など出来ないが、ウヅキに関して言えば少し異なる。

 前世の価値観を引っ張ってきた事もあるが、それ以外にも要因がある。ウヅキは信頼した相手に対しては思いの外、素直なのだ。

 それは過去に嫁であるヒミコに従っていた事からも明らかではあるが、そんなことはこの場のヒルゼンを除いて誰も知らない。

 

 その結果として、周囲が逆の意味で再び凍りつくほどの急展開が起きたのだった。

 

 あの『灼道』が敬語で、頭を下げている。

 オオノキなんて、顎が外れるのではないかというくらい大口を開けて、凄まじい腰痛が走ったときのような顔で驚愕を貼り付けていた。思わず立ち上がってすらいた。

 それほどではないが、風影も、雷影も、そしてウヅキを疑って掛かっていた水影ですら目を見開いて、頬を引き攣らせて驚いた。

 

 

 期せずして、暴走列車のような怪物を『火影』が完全に御しているという印象を各国に与える事となったが、当人の火影は驚愕の表情を表に出さないよう、必死に抑えることだけで精一杯だった。

 そのために懸命の努力をする必要があった。

 

 誰よりもウヅキの凄まじさを知るからこそ、つい先日にダンゾウを処断した際にも見た覇王の如き苛烈な人柄を知っているからこそ、その驚きはこの場の誰よりも上だった。

 

 あの初代火影千手柱間に勝ち越しており、柱間当人に最も戦いたくない人物だったと言わしめる程の怪物。

 戦国三英傑の一人であり、『木ノ葉の里』の創設者の一人。生ける伝説。

 そんな偉人が、ヒルゼンに、衆目の中で。

 

 それも各国の影の目の前で、頭を下げている。いや、ヒルゼンが下げさせている。

 

 そう改めて認識した瞬間、ヒルゼンは自意識がフッ飛びそうだった。

 どう考えても凄まじくヤバイ。

 ふとヒルゼンの脳裏に過ぎったのは、この事実を後程知るであろう、ウヅキ大好きの前当主であるヒヨリの凄まじい怒気を帯びた笑顔だったがそれを掻き消す。

 

 ヒルゼンの予想では、不祥不承ながら引き下がってくれたら最良くらいの認識であったから、その予想が斜め上の方向に外れた衝撃も凄まじかった。

 

 

 ウヅキとしては、全く困らせるつもりがないのが厄介である。

 何せ一族を背負ってきた自負はあるが、偉人である自覚がない。

 

 カリスマでは柱間に劣り、知性では扉間に劣る。

 マダラには勝ち越す事が出来ず、友を引き戻す事も出来ず、道半ばで倒れた。

 ウヅキは自らをそう認識している。

 

 ウヅキはそう考えている、とヒルゼンも思い立ったからこそ、ヒルゼンはこの場の空気に耐えられた。

 もしこれが嫌がらせだったら凄まじく性格が悪すぎるので、そう思うしかないのだが。

 

 ただヒルゼンはこうも思う。

 いや、それ基準がバグっとる、と。

 

 それでも火影の名を長年背負った老骨である。

 表情を取り繕い、厳しく顔を作ってウヅキの謝罪に対して頷いた。

 

「……うむ、次から気をつけるように。皆様方もそれでよろしいですな?」

 

 文句など、あろうはずがない。

 先ほどの圧倒的な武威で、最も好戦的であった雷影ですらあまりの格の違いに沈黙した。

 その圧を浴びただけで勝てないと思わされた故に、彼の誇りはズタズタであったから。

 

 議場から沈黙が返ってくる事をしっかりと時間を掛けて確認をし終えて、ヒルゼンは頷いた。

 

「……よろしい。では、水影殿。無遠慮な発言はお互いに不幸を招くかと思われるが、いかがかな?」

 

 ヒルゼンの口は幸いにしていつも通りに回った。

 水を向けられた水影は、ウヅキの武威を経て尚も、『一人だけ』強気な笑みを浮かべていた。

 

「ほぉ、あの『ウヅキ』をそこまで御するか。中々の器量だな、火影」

 

 少し水影の口調が変わったことが気になったが、指摘する程の事でもないのでそのままヒルゼンは答える。

 

「それはどうも。して、いかがしますかな? もしまだ何かあるというのなら、この会談の後にお聞かせ願いたいものですな」

 

「ああ、オレはそれでいい。さっさと話を進めよう」

 

 自分から仕掛けておいて、随分とあっさりと引き下がる水影に怪訝な目を向けながらも、藪蛇になれば面倒である。

 武威を感じ取って引いたと思えば不思議はない。

 ヒルゼンがそれ以上の追求をすることはなかった。

 

 

 

 その後、一連の行動に関する相談のために時間が取られた。

 まだ始まってもいない『五影会談』ではあるが、空気があれほどに張り詰めれば、肩の力も抜きたくなる。

 いわゆる休憩時間だが、そこそこの時間を取ったおかげで二度も凍りついた場の空気はだいぶ温まってきた。

 

 それを見とって、この場における中立的な立場である男が口を開いた。

 

「──さて、そろそろよろしいかな? ……では、今更ではあるが、ここに五影会談の開催を宣言させて頂く。この場を預かるのはこのワシ、『山椒魚の半蔵』である。よしなに頼む」

 

 その一声に場の騒然さは自然と治まった。

『山椒魚の半蔵』

 忍界においても一目置かれる存在である。

 そして何より、この場における中立的な存在でもある。

 そんな者の不興をわざわざ買うのは愚かしい行動だ。

 この場に集まる影たちは当然、そこまで思慮できる者たちである故の静寂だった。

 

「では、水影殿、雷影殿の言もあったことだ。この半蔵の与太話に付き合わせるのも悪い。さっそくではあるが、本題に入らせてもらおう。──第三次忍界大戦。終戦するや否や? まずはそれぞれの影達から話を聞かせて頂こう。順序は右回りでよかろう、雷影殿から、よしなに頼む」

 

「ふん、雲隠れは継戦の意思がある。準備もな。だが、お前達が譲るのなら終戦に応じてやらんこともない。以上だ」

 

 彼は誇りを傷つけられた。

 だが、それと里の方針は別である。

 事前の情報収集で火影が終戦したがっているという情報を掴んでいる雷影に、規格外の武威を見せられただけで引くという選択肢はない。

 国と国の交渉事なら、まだ勝負の芽があると思いたい願望も含まれていたが、何よりここで火影の一声による終戦は今後の里同士のパワーバランスを考えて何としても避けたい事である故に。

 

「岩隠れも同様じゃぜ。もっとも、継戦の意思のない里があるとは思えんが」

 

 老練な土影も、雷影同様の判断だった。

 ウヅキの事は心底恐ろしいと思う。

 威圧を感じる限り、全盛期と変わりない。

 そんな化物と戦うなど言語道断である。

 しかし、ハッタリというモノはいつの時代も有効だ。

 あくまでも強気の姿勢を崩さない老骨は、影の椅子に座り続けて来た強かさを感じさせた。

 

「木ノ葉隠れは終戦を希望する」

 

 この一声に注目が集まるが、ヒルゼンは無関心を貫いた。

 言葉を切ったと、その仕草から判断した半蔵が次の影に視線で発言を促す。

 

「……砂隠れは継戦の意思がある。以上だ」

 

 他の二つの影が継戦の意を示している以上、風影もそれに倣う選択肢が有用である。

 国力として、どうしても土地柄故に他国に劣る『砂隠れ』を預かる者として失敗は出来ない。

 前三代目風影が失踪したばかりという不安材料も内部に抱える四代目風影の判断としては、その火影から譲歩を引き出すための意図も理解できる故に、影としての経験不足も相まって先人に倣うより他なかった。

 

「……はっ、くだらねー」

 

 水影はそう言って、口を閉ざして瞳も閉じる。

 侮蔑の含まれた口調から、半蔵は『火影』に対して向けられたものと判断した。

 

「なるほど。どうやら皆が戦意旺盛のようだ。我らのような小国からすれば歓迎したくない事態ではあるが、その点は何も言うまい。唯一の例外は火影殿であるが、何か発案はありますかな?」

 

「……発案、と呼べるものではないが。皆に聞きたいことがある。各国の影として選ばれた代表者諸君に、問わせて頂きたい」

 

 火影は円卓の真ん中に位置する。

 そのため周囲を見渡すのなら、右にぐるりと見渡した後に、左にぐるりと見渡すという2つの動作が必要になる。

 

 その間、周囲の影達は沈黙で応えた。

 唯一違う意見を述べた影に発言の機会を与えるという意思だった。

 その空気感を感じ取って、火影──ヒルゼンは一つ頷いた。

 

「何人、子供が死んだ? 何人、母親が死んだ? 何人の、戦う意志のない人々が死んだか。我ら大国に属する隠れ里の戦禍は戦地の民間人から、無関係な無垢な人々から、生活を奪い、親や夫、肉親を奪い、その果てに日々の糧すら得られず住処を追われ、路頭に迷う人々を何人生み出した? ……各国の代表者に問わせてもらおう。如何にしてその責任を取る? 何を大義として、これ以上の命を奪うと言うのか。……ワシは、もうそんな人々を見たくはない。故に、終戦を希望する」

 

 世迷言だ、と切り捨てるのは容易な発言である。

 幻想的ですらある。

 まるで現実感のない発言でもある。

 

 今の今まで戦争に加担してきた影の一人が何を言う。

 被害者からすれば、それ以外の意見などないだろう。

 

 加害者でもあり、被害者でもある各国の代表達はそれぞれの思惑を胸に秘めながらも、その問いに対して答える。

 先ほどと同じく雷影エーの発言から始まった。

 

「くだらん。我らが求めるのは雲隠れの、ひいては雷の国の利益のみ。戦争とはそういうものだ。力無き者が悪い、文句があるなら力を付ければいいだけの話だ」

 

「ま、雷影ほど極端な事を言うつもりはないがな、話の中身はそう外れてはおらんぜ。人様のことよりも自分のことを考えるのが当然。自分の事とは、つまり里の利益。情けを掛けては食われるだけじゃぜ。木の葉隠れにはまだまだ人様を気にする余裕があるって言いてえなら、勝手にしろと答えるしかねーぜ」

 

「砂隠れは、風の国は知っての通り、作物の育たぬ土地の多い国だ。各国の経済を見れば一目瞭然として、その差が明らかになる。故に戦って勝ち取らねばならない物が多くある。……砂隠れは引くつもりはない。他者を気遣う余裕など我が里にはない」

 

「……」

 

 その中で、唯一水影だけが沈黙した。

 怪訝な顔をしたのは半蔵だけではなかったが、場を仕切るのは半蔵である。

 周囲を代表して問いかけた。

 

「水影殿は、特に言うべき意見などはないのか? ないのなら、次に進めるが」

 

「くだらねーよ。本当にな」

 

 先を促されて、面倒臭そうに水影の口から出てきたのは、侮蔑の滲んだ言葉だった。

 しかしそれは火影に対してではなく。

 火影以外の三人の影達に向けられていた。

 

「まるで分かっていない。理解力が乏しすぎる。ここに『灼道』がいる時点で、この話し合いなど机上の空論にしか過ぎねーだろ。オオノキ、なんでお前までくだらねー茶番に乗ってる? 『灼道』の恐ろしさを骨の髄まで理解しているお前が、何故そんな発言がこの場で出来る? ありえねーとは思うが、さっきの火影の対応で気が抜けたか? だとしたら、あまりにも愚かしい老害だぜ」

 

「言ってくれるじゃねーのよ。そういうお前こそ、ウヅキの実力を疑っていたと思うが、ありゃワシの記憶違いか?」

 

「はっ、あんな質問なんざ裏の裏を読むまでもねぇよ。オレが聞いたのは、『今も』強いのかって質問だぞ。今までが弱いとは一言も言ってねぇ。……そして『灼道』は答えたじゃねーか。この場の全員同時に相手取れるって、圧倒的な武威でな。その時点でオレに戦意はねーよ。勝てない敵に挑むほど馬鹿じゃねーんでな」

 

 それは、後の国家間のバランスに対する影響力を考慮しなければ、それぞれの隠れ里の上位に位置する五大国の意向がなければ、各里が真っ先に選択する選択肢だった。

 

 多少でも譲歩を引き出すために、そして不利な条件を飲まされないようにあえてまだまだ戦意がある、と意思表示したがそれはポーズに過ぎない。

 本当ならすぐにでも降参するべき、というのが堅実な判断である。

 それだけ『灼道』の異名は重い。重すぎる。

 

 もし本当に、侵攻されれば。

 その恐怖は骨の髄まで各国に刻まれている。

 

 だがそれでも、4つの里が戦意を見せれば木ノ葉が譲歩するしかない事も計算に入れた上での提示だった。

 ヒルゼンがすぐにでも終戦したいのは少し情報を集めれば容易に判断できる。

 それ故の『雲』『岩』『砂』の判断と行動だったが、水影のあまりにも予想外な突然の戦意放棄に、場の流れは一気に傾いた。

 

 五大国の内、仮に2国が同盟を結び3国と争った場合。

 もっと具体的に述べるのなら『火』と『水』が結び、その他三国が合力して争った場合。

 その結末は考えるまでもなく『火』と『水』の勝利である。

 

『灼道』がいる時点で戦略も戦術も意味をなさない。

 開戦した時点でもはや敗北は必定。

 何せ単騎で首都を攻められた場合の防衛策が皆無だ。

 なのに勝てると考えられるのなら、その者は流血を心の底から望んでいるか、あるいは痴呆よりもタチが悪い愚者である。

 

 開戦は絶対に避けねばならない。

 それは表向きなんと言おうが、火の国以外の五大国の総意だった。

 

 それが、水影の一言で浮き彫りとなった。

 故の詰みである。

 水以外の三国は前提を覆した裏切り者へと強い反感を持つだろう。

 水影の、周囲の敵意にまるで意を解さない振る舞いは愚者の其れであったが、火影に恩を売るという意味では最上である。

 

 火影はそれに気がつかない程の暗君ではない。

 周囲を気にしながらも、火影は静かに水影に対して目礼した。

 

 火影が先制して、水影の発言に類する言葉を繋げることもできた。

 しかしそれはどう言い繕おうとも、力による高圧的な恐喝になってしまう。

 平和は維持できても、仮にウヅキがまた眠りにつく事になれば一気に事態は最悪へと傾れ込む。

 里を預かる者として、その選択は出来なかった。

 

 誰が始めに言及するか。

 政治においてそれは重要な意味合いを持つ故に。

 

「──では、改めて議題を提案しよう。詳細は後ほど詰めるが、終戦に同意する里は挙手をして頂くよう、この半蔵がお頼み申す」

 

 そして、満場一致での終戦が決定した。

 

 

 

 

 

「──いや、ウヅキ様が挑発した時はどうなるかと思いましたが、何とかなりましたね」

 

 カラッとした笑みを浮かべた金髪の男。

 ミナトがそう切り出して、火影であるヒルゼンが安堵を吐き出すように答えた。

 

「肝が冷えたわ。……して、ウヅキ様。本当によろしかったのですかな? あの後に弁明することもできましたが……」

 

「いや、構わん。オレの名声を下げる程度で納まるなら安いものだ。どうにも、こういう政治の話は好かんのでな、早く帰れるのなら帰りたいというのが本音だ。──世話をかけたな、すまん」

 

 ヘニャリと麻呂眉を下げる姿は苦手な政治に向き合うために精一杯脳みそを活発化させた故だったが、先ほど武威で威圧したとは思えないほどの覇気のなさだった。

 

「わはは、いやぁそれには全くもって同意見! この自来也も既に木ノ葉が恋しくなってのォ……」

 

「珍しく気が合うな、自来也。私も、どうにもこの里の気配は好かん。雨ばかり降るからか、湿気がな……」

 

「あー、谷間が蒸れ──ぐはァっ!!」

 

「黙れこのバカ!!」

 

 頬を羞恥心で赤らめた綱手と、張り手で紅葉を頬に刻んだ自来也との夫婦漫才で木ノ葉隠れの終戦遠征は幕を閉じたのだった。

 

 

「あのー、ウヅキ様。ちょっといいですか」

 

 夫婦漫才を始めた二人を置いて、シスイが近づいてくる。

 それを見て、ウヅキは疑問符を浮かべながらも頷いた。

 

「ん? シスイか、何かあったか」

 

「いえ、妙な気配を感じるといいますか……。雨隠れの中ですから、忍が居るのは当然なんですが、どうにも違和感があって」

 

「……違和感か」

 

「……はい。写輪眼なら、見抜けると思います」

 

 ここは敵地である。探るような真似をすれば、如何なる勘ぐりを受けるかわからない。

 写輪眼など最たる代物だ。幻術を掛けることができる特性もあって、仕掛けたと捉えられても弁明は難しい。

 シスイが違和感と呼ぶほどの存在も気になるが、問題を起こさない方が先決。

 何せ終戦が決まったのだ。ここからひっくり返すような真似は絶対に避けたい。

 

「……うぅむ。──気になるがやめておく」

 

「了解です」

 

 そうして、一行はそこから幾日かの交渉を経て『木ノ葉の里』に帰還する。

 無事に終戦という手土産を抱えての凱旋だった。

 

 

 

『──ペイン。会わなくてよかったの』

 

『ああ。気にはなるが、こちらから接触するのは、な。違和感の元に来るなら、話は別だったんだが……。まぁいい。いくぞ、小南。()()()が呼んでいる』

 

『……ええ。わかったわ』

 

 人知れず、影は消える。

 その身に革命の意思を秘めながら、静かに胎動するために。

 

『終戦、か。そんなものはまやかしだ。俺が、本当の痛みを世界に教えてやろう』

 

 五大国の終戦。

 その影響は計り知れないだろう。だが、それだけで全ての戦争が止まる訳ではない。小国同士の小競り合いは続き、大国間での代理戦争も続けられるだろう。

 血は流れ続ける。だからこそ、歩まねばならない。誰よりも痛みを知りながら、確固たる意思を持って。

 

『かぐや一族のウヅキ。今はお前が最強だろう。だが、いずれ世界が俺の名を知る時が来る……。このペインの名をな』

 

 この男が道化となるか。救世主となるか。はたまた正義を背負うか。

 それはまだ、誰にも分からない事だった。

 

 

 


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