コトブキムラの最強村娘 作:シロの魔道士
どうも初めまして、私はノワール。
カントウ地方のマサラムラからヒスイ地方のコトブキムラへ移住してきた15歳の女性です。
コトブキムラのギンガ団と言う組織が私のような移住者を積極的に受け入れているおかげで、住むところには困りませんでした。
ですが、生きて行くにはお金が必要であり、お金を手に入れるには働くしかありません。
働かざる者食うべからず。
それは何処に行っても同じようです。
と言うことで、私は今日も黒曜の原野でクスリソウの採取に精を出しています。
クスリソウはその名の通り薬の材料となる植物。
薬以外にも、湯船に浮かべて薬草風呂にしたり、料理のあく抜きに使用したり、色々なことに使うことができます。
任務で怪我をする人間が多いギンガ団に重宝されているので、それなりの値段で売れました。
日銭を稼ぐならクスリソウ採取が一番。
けど、野生のポケモンに襲われるリスクがあるので、命懸けかもしれません。
「ふぅ……今日も沢山採れました」
いつも通り野生のポケモンをやり過ごしながら、籠いっぱいにクスリソウを詰め込んだ。
これだけあれば、一二週間は暮らしていると思います。
「オレンのみとモモンのみ……クラボのみも手に入れましたし、今日は良好です」
大量大量。
とても喜ばしいことである。
「さて、戻りますか」
コトブキムラへ帰ろうとした時、後ろから声を掛けられた。
「そこの方」
振り向くと、そこには帽子を被った金髪の男性の姿があった。
ん? 男性だよね?
女性と言われても違和感がない。
「ジブン、イチョウ商会のウォロと申します。よろしければ、クスリソウを分けて貰えないでしょうか? もちろん、タダでとは言いません!」
イチョウ商会は別の地方からやって来たらしい。
ヒスイ地方の各地で調達した物品で商いを営んでいるようです。
「私はノワールと言います。良いですが、どのくら必要ですか?」
「10本で構いません」
「解りました」
私は背負っている籠を地面に置き、そこからクスリソウを10本取り出す。
そして、ウォロさんに手渡した。
「ありがとうございます。それで何かご入用ですか?」
「そうですね……」
さて、どうしましょう?
私は「うーん」と考える。
で、答えを出した。
「じゃあ、モンスターボールをお願いいたします」
「モンスタボール……ですか?」
ウォロさんは首を傾げる。
不思議に思うのも無理はないでしょう。
モンスタボールは野生のポケモンを捕まえる為の道具。
ギンガ団の人間じゃなくてタダの村娘が欲する物ではない。
恐らく、モンスタボールが欲しいと言った村人は初めてかもしれませんね。
「貴女、面白いです!」
何故か上機嫌のウォロさんは、鞄からモンスタボール5個を取り出し、私に手渡して来た。
「モンスタボールの使い方は解りますか?」
「はい。ポケモンに当てればいいんですよね?」
「えぇ、その通りです。ただし、当てたとしても絶対に捕まると言う訳ではありません。レベルの高いほど捕まえ難くなりますし、警戒しているポケモンを捕まえるにはポケモンバトルをする必要があります」
「つまり、まずはレベルの低く尚且つ油断しているポケモンじゃないとダメと言うことですか?」
「はい。そして、ポケモンを捕まえる為の秘技を特別に教えてあげましょう」
十秒間、目を瞑ってください。
そう言われて、私は目を瞑る。
で、十秒後に目を開けると、ウォロさんの姿が何処にもなかった。
「……ウォロさん?」
もしかして帰ってしまったのだろうか?
と思った時である。
「うわぁ!」
いつの間にか後ろに立っていたウォロさんが私を驚かした。
「……えっと?」
な
「あれ? 驚きませんでした?」
「すみません。おどろかすに耐性ができているので……」
マサラムラに住んでいた時、野生のゴーストやゲンガーなどに同じことをされていた。
そのおかげで、心臓が鍛えられたのである。
「でも、全く気づきませんでした」
「はい。これが秘技・背面どり! このようにポケモンの背後に向かってモンスタボールを投げると、より捕まえやすくなるのです」
「なるほど。勉強になりました」
「いえいえ、それでは頑張ってくださいね」
立ち去って行くウォロさん。
いい人でした。
けど、ニコニコしている時にその笑顔が何だか怖いと感じることありました。
商人とはみんなあんな感じなのでしょうか?
「さて、さっそくポケモンを捕まえてみましょう」
私は蹄鉄ヶ原の方へと向かった。
この辺にはオヤブンと呼ばれる個体のポケモンがいるらしい。
通常よりも大きく強いそうだ。
そのオヤブンポケモンが縄張りとしている場所は避け、散策をしてみる。
すると、茶色毛のポケモンを見つけた。
「ブィ?」
「あの子、カントウ地方にもいたな……」
名前は確かイーブイだったと思う。
ポケモンの中には進化する種類がいるが、あの子は多くの進化先があるらしい。
可能性の獣……そう呼ぶ人もいた。
「よし、あの子を捕まえよう」
屈み込みながらゆっくりと近づいて行く。
イーブイに気づかれずことなく、うまく背後を取った。
そして、ポーチからモンスタボールを取り出し、イーブイに向かって投げた。
「ブィ!?」
モンスターボールはイーブイに当たり、中へと閉じ込める。
抵抗しているのか、一度小さく飛び跳ねた。
だが、どうやら無事に捕まえられたらしい。
成功した合図の花火がモンスタボールから打ちあがった。
「これで捕まえたのかな?」
私はイーブイの入ったモンスタボールを拾う。
で、さっそくイーブイを出してみた。
「ブィ!」
「……可愛い」
優しくイーブイに触ってみる。
モフモフだ。
とても触り心地が良い。
そして、物凄く可愛かった。
「イーブイ、これからよろしくね」
「ブィ!」
こうして、私は最初のポケモンであるイーブイを仲間にしました。