騎士団の雑用係   作:技巧ナイフ。

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半年ぶり、気まぐれに原神を開いて単発ガチャを引いたら1発目に雷電将軍が降臨!

ちょっとしたリハビリと思いつきで書いてみました。
楽しんでくれたら幸いです。


騎士団の雑用係

「おぃ〜す。おはようございまーす」

 

 西風騎士団代理団長のジンは、ノックもせず軽い挨拶と共にあくび混じりで入ってきた男を睨みつける。

 

「『おはよう』じゃない、ノア。この時間の挨拶は『こんにちは』が適切だ」

「うっ…あまりデカい声出さんで下さい。こちとら二日酔いなんですから。あ、コーヒー貰いますね」

 

 ノアと呼ばれた男は悪びれる様子もなく、ジンの執務机に置かれた飲みかけのコーヒーを無断で煽った。そして、すぐに思いっきり顔を顰める。

 

「不っ味い……」

 

 ペッペッ、と舌を出すその姿は、人の飲み物を無断で拝借した者とは思えない不遜ぶりである。しかし、男———ノアの反応はもっともだ。

 なにせジンが飲んでいたコーヒーは、日が昇る前に淹れたもの。現時刻はそれから6時間は経っている。

 コーヒーは冷めて酸化し、もはや雑味と酸味の暴力と化していた。

 

 自分のコーヒーを盗られたことには思うところがあるジンだが、ノアの反応に少し溜飲が降りる。

 

「で、なんの用だ。見ての通り私は忙しいんだが?」

「いやね、代理団長? ちょっと報告しておかないとならない事がありまして」

「珍しいな。お前から騎士団の仕事の話が出るとは」

「なんですかぁ。まるで普段は酒と女の話しかしないみたいな言い方は〜」

「そこまで言ってはいないが、自覚があるなら直してほしいところだな。……で、報告したいこととは?」

「あ〜っと、アレです。今日の早朝に、アビス教団がこっそりこのモンドん中に侵入するらしいっすよ」

「はぁ⁉︎」

 

 モンド———風が酒の香りを吹き流し、花を揺らす街。西風騎士団が守護する都市だ。

 

「…………ノア」

「うい?」

「……今の時間を言ってみろ」

「11時45分」

「お前、『早朝』の意味を知っているか?」

「朝早くですね。それが何か?」

「報告遅すぎるだろう‼︎」

 

 ジンの叱責に、ノアは耳を塞いで頭を押さえた。

 

「だいたい、どこでその情報を聞いた?」

「おえ…吐きそう。……酒場ですよ酒場。ちょっと顔に傷があったり脛に傷があったりするお兄さん達が出入りするタイプの」

 

 今度はジンが頭を押さえる番だった。言いたいことは色々ある。

 仮にも騎士がそんな酒場に出入りするな。

 脛に傷がある男はとりあえず捕まえろ。

 ていうか翌日も仕事があるなら二日酔いになるほど呑むな。

 

 なにより———

 

「既にアビス教団がこのモンドの中に侵入しているということだろう!」

「ですね。そしてこちらが、侵入したアビスくんです」

 

 ヒョイ。ドスン。ノアが雑なアンダースローで投げたのは、赤色の3頭身。

 

「酒場の帰りに見つけたのでシバいておきました」

 

 グッ! と締まりの無い顔でサムズアップを決めるノアに、またもジンは頭を抱えた。

 

「はぁ……そいつ以外に侵入したアビス教団の者は?」

「いないそうっす。水責めして聞き出したんで、間違い無いですよ。んで、こいつどうします?」

「何故侵入したのかは聞いたか?」

「なにやら以前『お友達』がモンドに入ったみたいなんですけど、そいつが行方不明になったから探しに来たそうですよ」

「あぁ、たぶんアレかな。『闇夜の英雄』の時の」

「そういえば、前にありましたね。で、こいつどうします? 処します?」

 

 言い方はともかく、騎士団としてアビス教団に対する対処は正しい。

 だが怯えて床に蹲るアビスの魔術師を見ていると、さすがの代理団長も情が湧いてくる。

 

「実害は無かったんだ。2度とモンド城に近付かないように警告してから解放してやればいいだろう」

「え〜、実害はありましたよ? 俺の睡眠時間を削りました。というわけで処しましょう」

「や・め・ろ」

 

 ジンの言葉にノアはつまらなそうに口を尖らせ、呼び出した一般騎士にアビス教団の者を任せた。

 

 ふぅーと、ため息をこぼす。この男が来てから、ドッと疲労が増した。

 とりあえず一息と傍らのコーヒーカップに手を伸ばせば、中身は空だ。この疲労の元凶たるあほんだらが先ほど飲んでしまったので。

 

「あ、代理団長。これあげます」

 

 その言葉と共にノアは空のコーヒーカップをどけ、代わりにどこからともなく取り出したカップを置いた。

 カップからは落ち着いた優しい香りが湯気と共に鼻孔をくすぐってくる。

 

「いつもコーヒーばかりじゃお腹荒れちゃいますからね。“ほうじ茶”ですよ」

「あ、あぁ。ありがとう」

「んじゃ、俺は仕事に……ハァ…仕事に行きますね」

 

 がっくり肩を落として部屋を出て行こうとする姿は騎士としていかがなものか。

 代理団長として一言くれてやろうかと席を立つと、何かを察したらしく素早く部屋を出て行った。

 

 ノアが出て行った扉をぼんやりと眺めながら、ジンはゆっくりと椅子に腰を戻す。

 覇気が無く、毎晩呑んだくれているノアの姿を思い出し、ジンは憂鬱気なため息を1つ。

 

「……昔のアナタは騎士の鑑だったじゃないですか」

 

廃神騎士(はいじんきし)』ノア。それは西風騎士団ならば誰もが目標とすべき、男であった。

 少なくとも、今の『()()騎士』と揶揄される姿とは天地の差がある。

 その事実にジンはもう一度深いため息をこぼして、彼が淹れてくれたほうじ茶に口をつけるのであった。

 

 

 

 お説教が飛んできそうな空気を察して素早く部屋を出ると、俺の目の前に小さな赤色が飛び出して来た。

 

「あっ、ノアおじちゃん!」

「お、クレーちゃん。おじちゃんじゃなくて…?」

「お兄ちゃん!」

「はい、よくできました」

 

 ポケットから出した飴玉を持って屈むと、嬉しそうにクレーちゃんが口を開けた。その中にポイっと飴玉を放り込む。おぉ! 幸せそう。

 

 この天使のように可愛い女の子はクレー。幼いながらも俺と同じく西風騎士団に所属する騎士さん。確か称号は『火花騎士』だったかな。

 趣味は爆弾でお魚をどかーんすること。天使のような笑顔で悪魔のような所業を平然と行い、よく反省室にぶち込まれてる。別名『反省室の主』。

 

 そんな彼女と俺は結構仲良しさんだ。よく反省室でご一緒するため。

 

「ノアおじちゃんはジン団長の部屋で何してたの?」

「ちょっとしたおしゃべりだよ」

「そうなの? クレー、さっきおじちゃんと同じ隊の人がおじちゃん探してるの見たよ?」

「……休憩が長くなっちゃったからかな」

 

 クレーちゃんから目を逸らし、なんとかそれだけ捻り出しておいた。

 すると、彼女の目がじと〜と細められる。

 

「もしかして、おサボり?」

「違う違う。俺の隊のみんなは俺の分までお仕事頑張ってくれたから、俺もみんなの分まで休憩してただけなんだよ」

「そっか! おじさんえらい!」

「でしょ? クレーちゃんも俺みたいに助け合える同僚を見つけられるといいね」

「うん!」

 

 よし。なんとか名誉守れた(丸め込めた)

 

「それはそうとさ、クレーちゃん。ちょ〜っと頼み事があるんだけどぉ〜」

 

 ヘラヘラ笑いを浮かべてクレーちゃんの視線に合わせるように屈み、彼女の特徴的なエルフ耳に口を寄せる俺。

 くすぐったそうに「うひっ」と愛らしい声が漏れた。

 

「ノアお兄ちゃん、ちょっと今困っててさぁ。助けてほしいんだわ?」

「いいよ! クレーにできることならなんでもする!」

「やっぱり君はいい子だねぇ。頭の硬い他の連中とは違うよ」

 

 おまけで彼女の口にもう一個飴玉をポイ。

 

 まったく…この子の優しさには涙がちょちょぎれそうになる。騎士団の奴らはみんな、誇りだの名誉だのを笠に立てて正論でぶん殴ってくるんだからロクでもない。

 ぜひともクレーちゃんには余計な知恵を付けず、このまま純粋に育ってほしいものだ。

 

 俺は小さな爆弾天使の前に、親指と人差し指で作った丸を見せつけた。

 

「お兄さんね、お仕事頑張ったせいで朝から何も食べてないんだよ。でね、いざお財布を開いたら、あら大変! モラが20枚しか無いじゃありませんか! もうお腹ペコペコでねぇ……」

「かわいそう……」

 

 と、わざとらしくひもじい表情を作ってお腹を押さえてみると、ナデナデ。俺の頭を背伸びしたクレーちゃんが撫でてくれた。

 

「つきましては、太陽のような情熱と包容力を持った『火花騎士』クレー殿にお昼ごはんを奢っていただきたいな〜と。ついでにモラを少し分けていただきたいな〜と。へへへ……」

 

 女に金を(たか)る時の心得その1。ちょっと甘える。

 

 その辺の女をよく知らないお坊ちゃん達は、男の強いところを見せれば女を惹きつけられるとタカを括っている。確かにそれもアリだが、それだけだと思っているなら30点だ。

 

 ここでワンステップ上に行くために必要なのは、強さだけで無く弱さも見せることだ。

『この人は私がいないとダメなんだ』『この人を支えてあげたい』。そう思わせることで、愛想尽かされるのを先延ばしにできる。あくまで先延ばしにできるだけで、いつかは尽かされるけどね。

 

 さてさて。どれくらい貰えるかな、と腹の中で舌なめずりをしていると……ガチャ。

 俺の後方———つまり団長室の扉がゆっくりと開かれた。

 

「…………」

 

 扉側に視線を向けると、わお! 侮蔑と軽蔑とその他諸々のネガティブな感情をごった煮にしたような目をする我らが代理団長様が。

 

「お前……こんな小さな子にまで借金しようとしてるのか?」

「お言葉ですが代理団長。借金じゃありません。貰おうとしてるんです」

「なお悪い‼︎」

 

 うひぃ……代理団長の声が二日酔いの頭に響くぅ……。

 

「はぁ……わかりましたよ。貰うんじゃなくて、借金にすればいいんでしょう?」

「何も分かってないだろう! そもそも騎士ともあろう者がそんな安易に金を借りようとするな!」

「ジン団長! あんまりおじちゃんを怒らないであげて!」

「そうだそうだ! あんまり俺を怒らないであげて!」

「クレーは黙っていなさい! あとお前は便乗するな! 恥ずかしくないのか⁉︎」

「俺の羞恥心なら、とうの昔に殉職しましたさ!」

 

 おっ、我ながら今良いことを言った気がする。

 お亡くなりになった俺の羞恥心の為に、これから弔い酒でも買いに行こうかな。

 

「いやまぁ、聞いてくださいよ。別に俺だって意味も無く金を借りようってわけじゃないんですよ? これはクレーちゃんの為のお勉強です」

「勉強?」

「イエス! お金の貸し借りに関するお勉強。人に金を貸すとどうなるか。そんな相手がダメ人間なら? 積極的に踏み倒そうとするようなクズなら? そういった勉強ですよ」

「語るに落ちたな。今はっきりと踏み倒すって宣言しただろ」

「だ・か・ら、便宜上“貰う”って言ったんじゃないですか」

「屁理屈を……っ!」

 

 ビキッ。麗しの代理団長の額に青筋が浮かぶ。あらやだ、そんなにイライラしちゃって。きっと寝不足なんだね。

 とはいえ超絶怖いので、俺は小さく屈んでクレーちゃんの背中に隠れることに。

 その意図を察したらしく、クレーちゃんも両手を広げて俺を守るように立ち塞がってくれた。いい子すぎて泣けてきた。涙出ないけど。

 

「どきなさい、クレー。今日という今日はそいつにお灸を据えなくては気が済まない」

「ど、どかないもん! おじちゃんはクレーが守る!」

「そして俺はクレーちゃんに守られる!」

「……おい」

「「 ひぃ⁉︎ 」」

 

 あまりの形相にクレー要塞陥落。か弱い俺はクレーちゃんと抱き合い恐怖に震えるしかない。やっべ超怖ぇ! 

 

 これは反省室送りかな。なんか暇つぶしの道具あったっけ、と心配しながら怯えるクレーちゃんを盾にしていると———ズイ。なにやら封筒を差し出された。

 

「ハァ……。これをやるから、クレーに集るのはやめなさい」

 

 封筒を受け取ろうとした瞬間捕縛されるのではと警戒していると、代理団長は封筒をフリフリ。すると中からはチャリンチャリンと金属音が! 

 

 この音は、みんな大好き、モラの音。

 

「先ほどのアビスの件に対する時間外手当だ。これをやるから、そんな小さな女の子に小遣いを貰おうとするな。みっともない」

「へっへっへ〜そういうことなら先に言ってくださいよ〜。ビビっちまったじゃないですか、マイ、フェア、代理団長様〜」

 

 やったぜ! こんなことなら、今度は適当にヒルチャール拉致って来て同じこと言ってみようかな。

 

「よし、クレーちゃん! 今回は年上としてお兄ちゃんがお昼ごはんを奢ってあげよう。何が食べたい?」

「お魚! 湖でどかーんしたお魚食べたい!」

「なるほど! それならお金使わなくて済むね! クレーちゃんは経済管理のできる良いお嫁さんになるよ。魚に合うとなると白ワインだね!」

「えへへ〜! じゃあ早く行こ!」

「行くな! そして良識のある大人なら、まずクレーのやることを止めろ! そしてサラッと勤務中に酒を呑もうとするな!」

 

 なんか代理団長が言ってる。きっと仲間に入りたいのだろう。

 

 なんとなくブチギレてる彼女の姿を尻目に、俺はクレーちゃんを肩車して走り出した。

 向かうはモンド城前に広がる湖、シードル湖。そこでクレーちゃんが作る魚料理をつまみに白ワインを呑む! 

 くぅ〜! 考えただけでヨダレが止まらん! 明るいうちから呑む酒は最高だぜ‼︎







はい、いかがでしたか?ダメ人間系主人公は書いてて楽しいです。

見切り発車で書き始めたので、キャラの口調に違和感があったり、物語に矛盾があったらごめんなさい。
一応キャラストーリーなど読みながら書いてるのでその辺りは気を付けていますが、何かあれば教えてくれると助かります。
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