騎士団の雑用係   作:技巧ナイフ。

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はい、バーバラ回です!フラグは立ちません(断言)


似た者姉妹だけど言われなきゃわからん

 風神像。それはこの街のどこからでも見ることができる、モンドの象徴にして名所。

 その足元には、モンドを一望できる高台がある。

 

 彼女と親密になるきっかけはと問われれば、間違いなくこの場所だった。

 

 その日俺は朝焼けに照らされながら風神像の前で酒を飲んでいた。

 理由は簡単。女にモテたいからだ。

 モンド人は男女問わず酒好き。そして酒に合う雰囲気はハードボイルド。

 俺はハードボイルドを演出する為、あたかも風を愛でるように風神像の前で1人、星を眺めながら酒瓶を傾けていた。

 その姿ははたから見れば、ハードボイルドそのものだったことだろう。風に揺れる髪と無精髭。緩めたシャツの襟元から覗く鍛えられた胸板。そして酒精に酔い、細められる目。

 そんな俺を見た女が100人いれば、きっと120人がほんのり陰のある魅力的な姿にオチていたに違いない。

 

 しかしその晩、女は誰一人来なかった。よく考えたら、次の日は平日。それ以前に、こんな夜中に女が1人でホイホイ出歩くわけがない。

 あの晩俺が酔っていたのは、酒ではなく自分自身だったのかもしれない。

 

 そんな簡単なことにも気付かず、俺は酒を呷る。おっと朝日が昇ってきたようだ。

 すると、俺の後ろ———風神像を挟んだ反対側から少女の歌が聴こえてきた。

 誰だか分からないが、ここにはちょっと悪い大人がいる。まだまだお子様が出歩く時間じゃないぜ、子猫ちゃん? 

 しかしここで悪戯心が湧いちまうんだから、やっぱり俺は罪な男だ。

 

 大人の男の色気でからかってやろうと、その子猫ちゃんに振り向いてウインクしようとした時———

 

「おぼろろろろろろろろろろろろッ!」

「きゃあぁぁぁ‼︎風神様の像がぁーーー‼︎」

 

 一晩中酒を飲み続けていた俺は胃の中のキラキラを風神像にぶち撒け、少女の美声が高台に響く。

 

 おっと……さっき言ったことは訂正しないといけないようだ。

 彼女———牧師兼アイドルのバーバラちゃんと親密になった場所は風神像の足元。

 

 きっかけは———吐瀉物だった。

 

 

 

「ノアさん。どうしたの?」

「いや、バーバラちゃんとこうやって仲良くなれたのは風神様の加護のおかげかなって」

「あれをそんな美談でまとめないで欲しいんだけど……」

「水元素って便利なんだよなぁ。触れなくても洗い流せるんだから」

「神の目をあんな使い方したの、最初で最後だよ」

 

 今日の俺の予定は西風大聖堂のお掃除だ。

 いや、なんで騎士団の俺が聖堂の掃除なんかしなきゃならないのか。まぁ、代理団長直々の命令なんだから仕方ない。

 

 1週間ほど前、俺は迷える子羊に救いの手を差し伸べてくださる牧師様のバーバラちゃんにズボンのチャック全開でお金を借りにきた。

 それをどっかで耳にしたらしい我らが代理団長様は、烈火の如くお怒り。

 モンド城を囲む城壁の上から、風元素でシードル湖に叩き落とされたよ。しかもどこかで取っ捕まえて来たのか、炎スライムと一緒に。

 ちなみに、炎スライムが持つ炎元素に風元素を当てると“拡散”という元素反応が起こる。

 俺は炎元素の拡散に巻き込まれ、シードル湖に落ちる頃には服が燃え尽きて全裸になってたよ。その後なんとか死ぬ気で対岸まで泳いだ俺は、そのまま全裸でシードル湖を迂回し、清泉町を通り過ぎ、モンド城まで戻ってきた。門番してた騎士団に公然猥褻で捕まりかけたけど。

 

 ここで考えた。いつもなら誰から金を借りようと面倒くさい小言で済ませる代理団長が、何故バーバラちゃんに借りようとした時に限ってそんなにブチギレたのか。

 聡明叡智な俺は、すぐに答えを導き出した。

 

 ———チャック全開だったからだ! 

 

 なので今度はちゃんとズボンのチャックを閉めてお金を借りに行ったわけだが……何故か炎スライムに加えて雷スライムも付けてシードル湖に叩き落とされた。ちなみに炎元素に雷元素を当てると、“過負荷”という元素反応が起こり超絶痛い。……クソッ、パワハラ上司め。いつかセクハラで対抗してやる。

 

「それで迷惑かけたお詫びとして、今日1日大聖堂のお掃除を命じられたんだよね?」

「そうなんだよ〜。なんで代理団長って俺にあんなに当たり強いのかな? どう思う?」

「どう思うって言われても……」

「たぶんね、俺の気を引きたくて意地悪してると思うんだよ」

「いや、そんな小さな男の子じゃないんだから……」

 

 ちなみに今は聖堂前の階段に座って1時間に1回の休憩タイム。まったく……昼間に働くと体調が悪くなるぜ。

 ていうか1時間に1回休憩くれるとか、もしかして西風教会ってめちゃくちゃホワイトなのか。

 

「それで、ノアさん。何か飲む?」

「酒」

「それ以外で」

 

 しかも、バーバラちゃんは休憩の度に飲み物をくれようとしてくれる。

 牧師兼アイドルなんていう、崇拝する側なのかされる側なのかよく分からない立場の子だけど、こんな心優しい子がいるんだからまだまだモンドも捨てたもんじゃない。

 人の顔見る度に「貸した金返せ」とか訳の分からない事を言う連中とは月とスッポンのクソくらい差があるよ。

 

 と言っても、飲み物は1時間前にもいただいてるのでさほど喉が渇いてるわけでもない。なので何か別のものを頼もうかと顎に手を当てていると、バーバラちゃんがモジモジしだした。

 

「もし良かったらなんだけど……スパイシードリンクはどう?」

「いらない。あれ辛いじゃん」

「でも疲れてるなら香辛料は良い疲労回復になると思うんだけどなぁ…?」

「いらない」

「そっかぁ……」

 

 シュンと肩を落とすバーバラちゃんに、こちらを遠巻きに見ていた民衆が俺を睨みつけてきやがる。なに見とんじゃい。

 バーバラちゃんオススメのスパイシードリンクは、『絶雲の唐辛子』という激辛香辛料とスイートフラワーを混ぜて作った彼女特製のジュースだ。

 アイドルの彼女特製という触れ込みは効果が見込めそうなもんだが、それでも尚流行っていない。理由は簡単で、モンド人の口に合わないほど『絶雲の唐辛子』が辛すぎるためだ。

 あんな困ったら香辛料をぶち込むような璃月料理で使われるものを飲み物にしちまうんだから、この子もモンドの女の例に漏れず変な子なのかもしれない。

 

 それからまたもモジモジし出したバーバラちゃん。一瞬トイレかとも思ったが、ここでそれを指摘するのはレディに対して失礼ということを大剣の一撃と共にエウルアちゃんから教わったので、黙って言葉を待つ。

 それからバーバラちゃんは意を決したように拳を握り、少し遠慮がちな様子で口を開いた。

 

「あのね、ノアさん。少し相談があるんだけどいいかな……?」

「あー! ダメダメ騎士がバーバラお姉ちゃんに付きまとってる〜! やーい! 今日はチャック開いてねぇのかよ〜‼︎チャックナイト〜‼︎」

「上等だクソガキがぁ‼︎てめぇ、今日という今日は許さねぇ! 全裸で風神像に吊るしてモンドの新たな観光名所として華々しくデビューさせてやらぁーーー‼︎」

「ちょっ…えぇ⁉︎やめなよあんな小さな子に!」」

 

 腰にしがみついてクソガキを追いかけようとする俺を止めるバーバラちゃんのせいで、残念ながら取り逃がしちまったよ。クソッ。

 あのガキには、いつかバーバラちゃん特製スパイシードリンクをケツに流し込んで新たな性癖の扉を開けてやろうと心に誓った。

 

 

 

「で、さっき何か言いかけなかった?」

「あ、うん……」

 

 なんかドン引きしてるバーバラちゃんに、クソガキのせいで中断してしまった話の続きを促すことに。

 

「あのね…相談があるんだけど、乗ってくれる?」

「悪いなバーバラちゃん。俺、何度浮気をしても笑顔で許してくれて一生養ってくれるおっとりお姉さんタイプが好みなんだ。あ、もちろんバーバラちゃんがダメってわけじゃないぜ? ただ、もう少し……」

「最近アイドルの活動が行き詰まってるの」

「あ、はい」

 

 俺の言葉ガン無視で相談内容を告げられる。

 

「そういうのって、俺じゃなくてもっとアイドルに詳しい人に聞くものじゃないの?」

「私以上に詳しい人なんていないもん。『アイドル』って言葉自体、アリス様が持ち込んだ雑誌に書いてあったものを私が勝手に解釈してやってることだし」

「じゃあ俺も無理じゃね? てか、相談に乗れる人いないよね」

「ただほら、ノアさんって他の人と違うでしょ? ……色々な意味で」

 

 最後にボソッと何か付け加えられた気がするが、バーバラちゃんのような女の子に『他の人と違う』と言われて喜ばない男はいないだろう。それは俺も例外じゃない。

 

 そして、バーバラちゃんの言いたいことはなんとなく分かった。

 女というものを知り尽くした経験豊富な俺からすれば、彼女の相談事の真意は読み切ったも同然だ。

 女というものは、相談と称して“頼み事”をしてくるもの。さらに、その“頼み事”は直接的な表現を避けてくる。

 

 何故なら、()()()()()()()()

 

 “察してほしい事”を正確に察することができるのか。それが男としての腕の見せ所であり、今回俺は既にバーバラちゃんの言いたいことを完全に理解していた。つまり———

 

「———つまり、俺とアイドルユニットを組みたいってことか」

「違うわよ?」

「任せろって。いつも笑顔で恋愛禁止を守ってればそれはもうアイドルだろ?」

「だから違うってば! ノアさんのアイドルに対する認識ざっくりし過ぎじゃない?」

「安心してくれ。裏では枕営業から賄賂まで全て完璧にこなすから」

「何1つ安心できないから⁉︎ていうか私そんないかがわしい事、バルバトス様に誓ってしてないからね‼︎」

 

 えぇーそういうの無いの〜? ガッカリだわ。

 

「ハァ……じゃあ何が聞きたいの?」

「そんな露骨に残念そうにしないでよ……。私はただ忌憚のない意見がほしいだけ」

「そもそも具体的に何に行き詰まってるのさ」

 

 アイドルとは、歌と踊りを用いてキモいオタク———通称キモオタ共に媚びて金を巻き上げる職業だったはず。

 ならば予想される彼女の悩みは3つ。

 

 歌が上手くならない。

 踊りが上手くならない。

 キモオタ共の金払いが悪い。

 

 あれ? バーバラちゃんって金貰ってるんだっけ? まぁいいや。

 

「なんだかね、最近ライブをしても前より盛り上がらない気がするのよ」

「つまりキモオタ…じゃなくてモンドの連中のノリが悪くなってると」

「ううん。モンドのみんなが悪いわけじゃないの。私がもっと早いペースで新曲を作れれば良いんだけど……やっぱり祈祷牧師のお仕事が忙しくて…あ、でもこれじゃ言い訳になっちゃうかな……?」

 

 確かにバーバラちゃんの曲のレパートリーは然程多いわけじゃない。熱心なファンじゃなくてもモンド人ならある程度は歌えるだろう。

 だったら曲数を増やすってのは1番確実な解決方法かもしれない。

 

 しかし、それだとあまりにもバーバラちゃん自身の負担が大きすぎる。

 

「バーバラちゃん。金額と客の相関関係って知ってる?」

「あっ…へ? いきなりなんの話?」

「金額が高いほど客の民度は高くなって、逆に金額が安いと客の民度も低くなるってやつなんだけど、聞いたことない?」

「なんとなく聞いたことある気がするけど……もしかしてノアさん?」

 

 イエス! 

 

「ライブでは高額な見物料を取ろう!」

「だ、ダメだよそんなの! それだとみんなを癒せない! 応援してくれる人達の中には小さい子だっているんだよ!」

「だからなんじゃい」

「なんじゃいって……と、とにかく! お金取るのはダメ!」

 

 えぇ〜良い考えだと思ったのになぁ。

 

(高い金払ってでもライブを観たいって連中なら、毎回脳内血管がぶった切れるほど盛り上がるだろうし、そうなればバーバラちゃんの悩みは消える。さらに金も儲かる。メリットだらけ。ついでにこの案の使用料としていくらか俺の懐にも入れてくれたら万々歳なんだがなぁ……)

 

 顎に手を当てて我ながら今の案の素晴らしさに感嘆していると、ワタワタとバーバラちゃんが慌て出した。どした? 

 

「あっ! あっ! ご、ごめんなさい! 相談してるのは私なのに、出してもらった提案を頭から否定しちゃって……」

 

 どうやら黙り込んだ俺を見て、アイデアを一蹴されて気を悪くしたと思い込んだみたいだ。どんだけ心狭いと思われてんの。

 

「別に怒ってないさ。これはバーバラちゃんの相談なんだから、君が納得出来ないなら神の天啓だって否定していいんだよ」

「ひゃんっ…」

 

 安心させるため、彼女のツインテールの間に手を置いて撫で撫で。

 その瞬間、遠巻きにこちらを見ている男性陣は血の涙を流しながら殺意が。女性陣からはバーバラちゃんへ同情の視線がそれぞれ送られてくる。女性陣にウインクで神対応したら中指立てられた。解せぬ。

 それはそうと男性陣の予想通りのレスポンスに満足した俺は、勝ち誇った笑みを送り返して本題に戻ろうとした、その時だ。

 

(レスポンス……反応かぁ)

 

 ふと、俺の聡明にして賢者もかくやという頭脳にピコンと光が灯る。

 

「バーバラちゃん。短いフレーズでいいから、少し歌ってみてくれないか?」

「え? わ、わかった!」

 

 バーバラちゃんは立ち上がり、俺の前に立って息を吸う。

 すると、アイドルが歌うと見た周囲の人間が集まってこようとするので一睨み。(たか)ってくんじゃねぇ。逆に俺がモラ集るぞ、という意味を込めて。

 

「ラン♪ ラララーンラーン♪ ラララーンラーン♪ ……キラ⭐︎」

 

 左手を翳すようにしてニッコリ笑顔。それを俺だけが独占しているという状況に優越感を感じながら、自分の案がいけるのではないかと考える。

 

「もう一回お願い。今度はちょっと俺も喋るけど、気にしないでね」

「うん」

 

 この案で重要なのはタイミングだ。大丈夫。俺ならできる。タイミングを測ってカウンターを入れるなんて、騎士団で山ほどやってきたんだ。

 それに比べれば簡単さ。

 はいせーの、と手でキュー出し。バーバラちゃんが歌い出す。

 

「ラン♪」

「はい!」

「ラララーンラーン♪」

「はい!」

「ラララーンラーン♪」

「はい、せーの……!」

「キラ⭐︎」

 

 よし、完璧。

 

「今の……()()()()?」

「そう。これをキモオタ……じゃなくてファンの中に定着させれば、勝手に盛り上がるんじゃないか?」

 

 酒の席ではよくあることだ。さらに場に一体感も生まれるし、タイミングも大事なのでバーバラちゃんの歌に集中するだろう。

 

「これは人生の先輩としての意見だけどさ、バーバラちゃん。人間どんなに頑張っても1人で出来ることなんてたかが知れてるんだよ。だから上手くいかない時、自分だけが頑張れば良いなんて安直に考えちゃダメだぜ?」

 

 ニコッと笑い、もう一度バーバラちゃんの頭に手を置く。ふっ…決まった。

 

「待て待て待て! さっきから見ていれば、誰の許可を得てバーバラ様に気安く触ってるんだ‼︎」

「アルバートさん⁉︎」

「お、出たなモンドのキモオタ代表」

「うるさい! モンドのダメ人間代表!」

 

 突然飛び出して来て俺とバーバラちゃんの間に割って入ってきたのは、見た目は青年、中身はストーカー———つまりただのストーカーであるアルバートだ。

 

「ぼ、僕は認めないからな! そんな下品な合いの手、バーバラ様の洗礼相応しくない! たとえ風神が許しても、バーバラファンクラブ会長たる僕が許さない!」

「ふぅん。じゃあどうするって言うんだ?」

 

 俺は掌に拳をペシペシ。

 

「ひぃ⁉︎な、なんだよ! 騎士団が民に暴力振るうって言うのか!」

「安心しろ。ちゃんと適当な罪状をでっち上げてやる」

「お、汚職だ! そんなの職権濫用じゃないか!」

「うるせぇ! 職権濫用が怖くて騎士団が務まるか!」

 

 容赦無くアルバートの顔面へ掌底を打ち込んでやる。

 騎士が一般人に手を上げるのはご法度だが、まぁ相手がアルバートなら許してくれるだろう。こいつは西風騎士団、西風教会のどちらからもマークされてる危険人物だからな。

 国家権力に逆らったことを死ぬほど後悔させてやるぜ! ヒャッハー! 

 

「ホントに殴った⁉︎……いや待てよ。さっきバーバラ様の頭を撫でていた手の平で殴られたんだから……ハッ! これは実質、僕がバーバラ様の頭に頬ずりしたことになるんじゃないか⁉︎」

「…………」

 

 こいつやべぇ……。

 

 

 

「はぁ……なんでお前は行く先々で問題ばかり起こすのだ?」

「いや、アルバートの件に関してはたぶん俺に正義があると思いますよ? 代理団長」

 

 あれから俺とアルバートは合いの手を入れるかどうかを肉体言語で話し合い、最終的には俺が勝ったことで試しにファンクラブの連中で練習してみるという結末に落ち着いた。

 ただの一般人のクセに、意外な粘りを見せたアルバートには驚かされたよ。流石にモンド人相手に拳を使うわけにはいかないから掌底打ちでシバいたけど、自分から当たりに来てるのが分かった時はだいぶ怖かった……。

 

「それより代理団長。俺1つ気付いたことがあるんだけど、いいすか?」

「なんだ?」

「なんで俺がバーバラちゃんに金借りに行った時、チャック全開であろうとなかろうと、いつもより厳しい処罰をしてきたのか。ずっと考えてて、なんとなく気付いちまったんすよ」

「……そうか」

 

 これに気付いた時、正直聞くかどうかは迷った。

 わざわざ聞く必要なんて無いんじゃないか。静かに何もなかったことにしておくのが部下として正しい選択なんじゃないか、ってな。

 同時に、今まで気付いてやれなかったことに申し訳なさすら感じた。

 それでも、やっぱり気付いたなら確認しておくべきだろう。

 

 だって代理団長は俺の上司で、俺は代理団長の部下で、だけど先輩で———代理団長は俺の後輩なんだから。

 

 だから、どこかバツの悪そうな彼女に俺は問う。

 

()()ちゃ()()。あんたさ……」

「……あぁ」

「———俺のパンツが見たかったんだろ?」

「………………………………………は?」

「いや、(みな)まで言わなくていい。ちゃんと分かってるから」

 

 ずっと不思議だった。バーバラちゃんに金を借りに行った時、ズボンのチャックが開いてても閉まってても代理団長は激怒していた。当初は何がそこまでいけなかったのか分からなかったさ。でもな。

 代理団長は俺のパンツが見たかった。こう考えれば全ての辻褄が合うことに俺は気付いちまったんだ。

 

「いくら清廉潔白を心掛けていても、代理団長だって人間だもんな。()()()()欲求が溜まることだってあるさ。常に溜まってる俺が言うんだから間違いない」

 

 つまりバーバラちゃんだけに俺がパンツ見せたのが気に入らなかった———要は嫉妬だったんだ。

 

「なんだかんだ偉くなっても可愛い奴だな、ジンちゃんは! 別に誰かに言いふらしたりしねぇよ。流石に俺だってそのくらいの分別はあるさ。だから———2人だけのひ・み・つ・だ・ぞ⭐︎」

 

 ちょん。隠してた性癖がバレて恥ずかしいのか、俯きプルプル震えてる代理団長のほっぺを小突いてやったら、ガタン。おもむろに立ち上がった。そして前髪で表情を隠したままバシンと俺の肩に両手を置く。わお! 大胆! 

 だが構わないさ。可愛い後輩のためだ。一肌だろうとズボンだろうといくらでも脱いでやるよ。

 

「……お前は私からとんでもないものを盗んでいった。何か分かるか?」

「初恋とか?」

「私の平常心だ」

 

 すると代理団長は部屋を出て行った。どこ行くんだ? 

 足音に耳を澄ましていると、すぐ隣の部屋の前で止まった。確か団長室の隣は反省室だったはずだが、何か用でもあったのか? 

 

『クレー。入るぞ』

『わわっ! ジン団長! く、クレー、ちゃんと反省してるよ。ばばば爆弾なんて作ってないよ!』

『そうか。偉いな。それはそうと、クレーの爆弾をいくつか貰えないだろうか』

『いいよ! ジン団長もどかーんするの?』

『あぁ。特大のゴミをどかーんしてくる』

 

 ふむ。どうやら代理団長は俺を部屋に招く前に掃除をするのか。そういうところを気にするとは、意外と乙女だな。

 と、上司にして後輩の新たな一面に微笑ましい気持ちでいると団長室に戻ってきた。

 おやおや? 代理団長、緊張で無表情になっちまってるよ。

 

「よし。行くぞ、ノア」

 

 そう言って代理団長が親指で示したのは、モンド城城壁の上だった。

 

 

 

 その後、俺は炎スライムと雷スライムに加えてクレーちゃんの爆弾と一緒に風元素でシードル湖に叩き落とされた。

 もはや元素反応とか関係なしに、ただただ痛かったです。







はい、いかがでしたか? アルバートくんの変態度が少し上がりましたが、耐久度も上げたので問題ないでしょう(?)

ちなみにオリ主はアホなので2人が姉妹だと気付いていませんし、たぶん今後も気付きません。アホなので(2回目)

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