不死人、アルザーノ帝国魔術学院へ   作:ナガレッ伽

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評価と感想ありがとうございます。励みになります。

ダークソウルの魔術は独自設定(発動速度や威力を強化)が含まれます。あと本作はダークソウル特有の重い暗いどんよりな展開にならないと思うので、そこもご注意を。


3話

 

 学院に続く道中の十字路に、大勢の人だかりが出来ていた。

 

 「……ひどいな。おい、警備官はまだ来ないのか!?」

 「どうなってんだよ。というか生きているのか?」

 「わかんねぇ…。だが、この様じゃ死んでいた方が当人にしちゃあマシだったかもな」「酷すぎるッ。コレが人間のやることかよおおッ〜!」「悪魔だ…悪魔の仕業だ…」

 

 民衆は一人の男を囲んでいた。その目には同情と憐憫が浮かんでいる。

 

 その男、全員をボコボコに殴られた挙げ句、裸に剥かれ亀甲縛り(卑猥な拘束)にされ下品な落書きが体を埋め尽くし、尻の穴に薔薇がぶち込まれている。股間には『極小』という貼り紙までされ気絶していた。 

 

 

 なお、犯人の名はグレン=レーダス。本人は「正当防衛です」と言い張るだろうが…邪悪な笑みを浮かべていたことは、間違いない。

 

 

 「何がどうなってやがるクソッタレが!」

 

 そのグレンは現在、本来侵入者を防ぐための結界に阻まれ学院に入ることが出来なかった。それに加えて先程の襲撃者の腕には《天の智慧研究会》─アタマのオカシイ魔術狂いのテロリスト集団─の紋章が。

 所持していた結界侵入用の割り符。セリカは通話に応じない。

 学院内で放たれた軍用呪文【ライトニング・ピアス】

 守衛の遺体

 

 妙に、とある二人組の少女の姿がチラつく。もしも二人が先ほどの呪文の餌食になっていたら、そこの遺体のように打ち捨てられていたら。動悸に襲われ、脂汗は止まらない。

 

 「……上に連絡をつけて、助けを呼ぶ。それが最善策の筈だ」

 

 学院に背を向けて走り始める。目指す先は警備官の詰所で、迷いなんて、あるわけがない。

 

 

 

 ◇◇

 

 【悲報】グレン先生、死亡。

 

 「あー、そのグレンとか言う教師は俺の仲間がぶっ殺したぜ。アイツは錬金改【酸毒刺雨】っつーえげつない魔術の使い手でなぁ?酸も毒も決まれば確殺なのに合わせて使う変態なんだよ。今頃そのグレン?先生はドロドロのグロ死体だろうな!」

 

 いやー、キツイっす。適当に吐いた心を折るためにブラフの可能性もあるが…かなり準備周到で計画的犯行。ジンとか言うチンピラは愉悦犯な雰囲気があるけどもう一人のレイクはそんな感じでもないし。

 

 さっさと殺すか逃げるかしておけば良かったと今更後悔。やっぱり鈍ってるなぁ。

 

 体は黒魔【マジック・ロープ】で拘束、(こっちの世界の)魔術は【スペル・シール】で封じられた。男たちは教室を去ったが間違いなく監視用の使い魔が配置されてる。

 ルミアちゃんはレイクに、システィーナさんはジンに連れ去られた。どちらも殺されはしない?ルミアちゃんは明確に理由があっての誘拐だから利用価値があるんだろうけど。ジンの方は普通に殺しそうだな。

 

 このまま助けを待てば無事に解放されるか?

──そんな訳ないだろうなぁ。向こうは顔も隠さずにベラベラ内情も話していた。理由は、どうせ殺すからとかそんなんだろう。

 

 「はぁ……」

 

 『寵愛と加護の指輪』は外せない。『犠牲の指輪』は、保険に必要。

 となると…ソウルの魔術を使うしかない。

 

 「ん?おいファイ、なんだよその杖。どこからだs「おっと手が滑った」

 

 『ローガンの杖』で口を開いたカッシュを黙らせる。筋力補正は低いので脳震盪くらいで済むだろう。

 ソウルの魔術に詠唱は不要。必要なのは触媒となる杖、鍛えた理力がものを言う。ソウルの業の応用によって魔術の習得は容易だ。その分制限も多いが…。

 

 「《見えない体》」

 

 ウーラシールの魔術が一つ。効果は名の通り自身を他人から不可視にすること。自分から攻撃したり大きい物音を立てなけば、殆ど見つかることはない。

 

 「《月光の大剣》」

 

 その大剣の刀身は魔力の結晶で構成され、刺すように強烈な魔力を纏っている。当然だ。この剣は白竜シースの尾から生まれたドラゴン・ウェポンなのだから。

 

 揺らぐことの少なくなった感情が、沸き立っている。

 ああ、ローガンもそうだった。あの大きな帽子に特別な能力は無く、ただ静寂を求め没頭する。そして研究を阻もうものなら、研鑽された魔術が牙を剥く。

 

 

──我が学びを阻む者たちよ

── 月光の輝きを知れ。ソウルの業にて滅ぶがいい。

 

 

 ◇◇

 

 「あ、あの……お願いします…それだけは…それだけはやめて下さい……」

 「ぎゃははははッ!お前落ちるの早過ぎだろ!ひゃははははッ!いやー悪いがそりゃ出来ねぇなぁ〜ここまで来たら収まりつかねぇんだよ!」

 

 組み伏せられたシスティーナは服も破かれ下着まで露わになっていた。普段は強気だがそれは弱さの裏返し、やはり乙女であることに変わりは無く。

 ジンの手が必死に抵抗するシスティーナの肌に伸びていったその時。

 

  「あーっと、すまん。邪魔したな。ごゆっくり…?」

 

  扉を開けた男、グレン=レーダスは気まずそうな表情だった。

 

 「行くな閉めるなッ!見たらわかるでしょ助けなさいよ!?」

 「やっぱりそういう感じだったの?バカップル爆発しろ案件じゃあなく、胸糞悪いウス=異本的な展開なワケね……」

 

 「何者だテメェッ!?」「あ、一応この学院に勤めてる講師です。先生として忠告させて貰うが、そーいうの犯罪だからな?いくらモテないからって……」

 

 まるで不良生徒への説教だった。このギャグなやりとりに気を取られたが、この状況は危機的であるとシスティーナは思い出す。

 グレンの力量は自分に敗北する程度であり、対してジンという男は超絶技巧を持つ、イかれた魔術師であると。

 

 「先生、逃げてッ!」「もう遅ぇよッ──《ズドン》!」

 

 ジンの呪文が完成し、指先から放たれた一閃はグレンの心臓を──

 

──穿たない。それどころか、【ライトニング・ピアス】は発動しない。

 

 「くそッ…《ズドン》!《ズドン》ッ!」

 「無駄だ、お前もう俺の固有魔術(オリジナル)─【愚者の世界】の範囲内。愚者の世界の効果範囲内ではあらゆる魔術を起動する事はできない。」

 

 ジンに戦慄が走る。魔術戦において、相手の魔術を一方的に封殺できるのなら、それは無敵の力。そしてその域の固有魔術を作成するレベルの魔術師が相手─!

 

 「ま、俺も魔術起動出来ないけどな。だって俺も効果領域内にいるワケだし?俺を中心に展開する魔術なんだから、当然だろ」

 

 沈黙が支配し、その後ジンは大笑いした。だって意味がない!もはやそこにいるのは魔術について詳しいだけのオジサン二人しか残らない!

 

 「別に魔術なんてなくても拳があるだろ?」「はぁ?拳?」「うん。拳」

 

 爆ぜるような踏み込みと共に、グレンは距離を詰める。放たれた左ジャブはジンの顔面を捉える。続く右ストレートによってジンは壁まで吹き飛んだ。

 そこからは酷いものである。結果だけ述べると、グレンは【魔法の鉄拳マジカル★パンチ】という伝説の超魔術(別名:キック)によってジンをたおす。気絶したらグレン先生にお任せ!【マジック・ロープ】【スペル・シール】【スリープ・サウンド】による拘束。裸にひん剥いて亀甲縛り、股間には『ロリコン』という貼り紙。

 

 完全に無力化したことを確認した所で、ようやく頼みの綱セリカから応答が入る。もっとも、助けは呼べそうにないという情報しか得られなかったが。

 

 それから乙女システィーナが泣き出したので慰める主人公ムーブをかますグレン。過去になんかあったことを仄めかす主人公ムーブも決める。

 

 「敵の残りは二人だと決めつけて……両方、()()する。もうそれしかない」

 「断言してやる、そいつは絶対ロクな奴じゃねえ。何人も殺してきた、オレたちと同じ外道の目をしてやがる」

 

 グレンは沈黙する。それは、暗に肯定しているのだ。

 システィーナは違うと否定して欲しかった。あなたの事を深く知らない。けど、信じたいから。

  

 

 突然、魔力の共鳴音が響く。それ続いてグレンたちを取り囲むように空間が揺らいだ。

 その揺らぎから武装した骸骨が数十体出現し、あっという間にグレンたちは包囲された。

 

 骸骨の正体はボーン・ゴーレム。加えて竜の牙によって錬成され、その全ての個体は膂力、運動能力、耐久性が非常に高く、物理耐性はもちろん炎熱・冷気・雷撃の三属性に耐性を持つ。

 それらを遠隔連続召喚(リモート・シリアル・サモン)。人間業ではない。

 

 三節詠唱では間に合わない。グレンは──

 

 

 ◇◇

 

 ダークコートの男、レイク。男の周りには魔導器である五本の剣が浮かんでいる。その内三本は手練れの剣士の技を記憶し、自動で襲い掛かり、残る二本がレイクの手動操作で隙を突き殺害する。凶悪な戦法だ。

 

 奇しくも対する男子生徒、ファイ=ウードの周りも浮遊する五つの結晶塊。右手には《月光の大剣》、左手には《ローガンの杖》を携えていた。

 

 「ゆけッ!」

 

 レイクが手を振りかざし、剣が一斉に放たれる。剣の軌道を見切りファイは《追尾する魔力の結晶塊》を起動し迎撃した。

 剣と結晶塊が衝突。剣は停止し、落下。結晶塊は霧散する。

 

 同時に駆け出していたファイは《強いソウルの太矢》を放って牽制し距離を詰める。詠唱なしに発動した正体不明の魔術を目にしたレイクは多少の動揺こそあれど、その精神は乱れない。

 

 「《炎獅子》!」「《強いソウルの太矢》」

 

 一節で詠唱される黒魔【ブレイズ・バースト】。放たれた炎の球体が着弾すると爆炎を上げ、爆圧によって薙ぎ払う軍用の攻性呪文。人間が如き爆炎に巻き込まれれば消し炭だ。

 だが見た目こそ地味な《強いソウルの太矢》だがファイの理力に加え理力補正Sの《ローガンの杖》で放たれることによりその威力は【ブレイズ・バースト】にも劣らない。

 

 「その大剣を使い熟す技量に観察眼、そして何よりその魔術。貴様…一体何者だ」

 「………」

 「フッ、応えずか。では、ここからが本番だ」

 

 戦闘は激しさを増す。

 

 再起動した剣による絶妙な時間差とディレイ(ズラし)の効いた剣技。それに惑わず舞うよう《月光の大剣》を振るい全てを弾き落とす。

 一呼吸のタイミングでレイクが放った【ライトニング・ピアス】がファイを捉える。が、それも大剣の刀身で防ぎきる。

 

 両者の実力は現状、拮抗している。

 

 第二団地位(アデプタス・オーダー)、竜帝のレイク。極まった魔術の腕と、一流の剣技。五本の剣の魔導器によって数多くの騎士や魔術師の暗殺を成し遂げてきた。

 

 だが、不死人(ファイ=ウード)はあのロードランを生き抜いた。ガーゴイルを混沌の娘を、竜狩りを処刑者を大狼に深淵歩きから白竜、混沌の苗床、公王。そして深淵の主マヌス。薪の王グウィンさえ斃した。

 

 数え切れない死を積み重ねて。何度も心折れ、その度に立ち上がる不屈。その身に秘めたソウルは世界一つ分の熱量。

 

 「ファイ=ウード」

 「…レイク=フォーエンハイムだ」

 

 両者、構える。

 

 「──《炎獅子》ぃッ!」

 「──《白竜の息》」

 

 

 剣も、炎も、レイクさえも。

 結晶は、全てを閉じ込めた。

 

 最後に《月光の大剣》が振るわれ、月光の斬撃が結晶ごと斬り裂いた。

 

 

 

 

 




矛盾点、問題点があったらごめんなさい。
指摘して貰えるとありがたいです。

頑張ってグレンと主人公を絡ませたい。次話で学院テロ編終わります。
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