夢のまた夢と言われても   作:地球の星

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 この作品の主人公の名前は「リベラ」になっています。
 由来は僕自身が大ファンだったニューヨーク・ヤンキースの「マリアノ・リベラ(Mariano・Rivera)」投手です。
 でも、僕は読者がゲームなどでつけた名前を尊重したいと考えているため、好きな名前に置き換えて読んでいただいても結構です。
 また、マンガ版や僕自身の気持ちも踏まえて、主人公のリベラとバーバラがはっきりと両想いの関係になっていますが、ストーリー自体はゲームのエンディングをもとにしています。



Quest.1 Smile and Tear

 勇者リベラは、仲間であるハッサン、ミレーユ、バーバラ、チャモロ、アモス、テリー、そしてドランゴと力を合わせ、大魔王デスタムーアを倒すことに成功した。

(ドランゴ以外の仲間モンスターについては割愛させていただきます。あしからず。)

 その後、彼ら8人は色々な地域をまわっていた。

 そこでは、世界に真の平和が訪れたことを知った人々から、次々と祝福の言葉をかけてもらった。

 彼らはその度に自分達のやったことの偉大さを感じ取り、この世界の人達の役に立てたことを喜んでいた。

 しかしそんな中、バーバラだけは心の中に不安を抱えており、素直に喜べずにいた。

 それは、大魔王を倒すということは、かけがえのない仲間達との別れを意味していたからだ。

 特に、ボーイフレンドとして見ていたリベラと別れなければならないことへの不安は大きかった。

 でも彼女はそれを決して表に出そうとはせず、これまでと変わらずに笑顔を絶やさずにいた。

 

 レイドック城に戻ってきたリベラは、うたげの中で幸せな雰囲気に浸っていた。

 そして、今は離れ離れになったとしても、時には大切な仲間達のところに行き、これからも楽しく会話をしながら一緒に過ごすことが出来ればと思っていた。

(あっ、そう言えばバーバラはどうしたんだろう?)

 ふとそう思った彼は、「ちょっと失礼します。」と言ってその場から出ていき、バーバラのいるはずの部屋へと向かっていた。

 この時点で彼はまだはっきりと言葉にして伝えたことがないものの、すでに彼女に対しては仲間以上の特別な感情を抱いていた。

 それは彼女も自分に対してそんな仕草を見せる時があっただけに、思い切ってここで告白をしようと考えていた。

 そして、彼女にどんな言葉をかけようかと考えながら、部屋に足を踏み入れた。

 すると、そこにいたのはすでに思いもよらない彼女の姿だった。

(えっ?バーバラが半透明に!?)

 それは全く予想もしていなかった光景だけに、すぐには現実を受け入れることが出来なかった。

 そして、少し間をおいてやっとその理由を理解した。

(忘れていた…。バーバラは夢の世界の人だった。そして未だに実体が無いままだった…。だから大魔王が倒されたとなれば…。)

 やっと現実を理解出来たとはいえ、リベラはそれまでの喜びから一気に現実に引き戻されてしまった。

「バーバラ、そんな…。」

「リベラ、見てしまったのね。出来れば一人でひっそりとカルベローナに帰りたかったけれど…。」

「そんなこと言わないでよ。僕は君が、その…。」

「あたしが…、何?」

「そ、その…、えっと…、一緒にいたいんだ。大切な仲間として、少しでも長く、出来ることなら、いつまでも…。」

「ありがとう。でも…。」

「でも、何?」

「寂しいけれど、そろそろお別れの時が来たみたいね…。」

「……。」

 あまりにも受け入れがたい現実を前に、リベラはそれっきり言葉を失ってしまった。

 バーバラは涙をこらえながら、言葉を続けた。

「さようなら、リベラ…。」

「みんなにもよろしくね…。あたしはみんなのこと、絶対に忘れないよって…。」

 そしてその直後、彼女の姿は完全に見えなくなってしまった。

(バーバラ…。嘘だろ。嘘であってくれ。夢であってくれ。こんなに突然、お別れをしなければならないなんて…。お願いだ。戻ってきてくれ。もう一度会わせてくれ。もっと一緒にいたかった。もっと君の顔を見つめたかった。もっと手をつなぎたかった。そして…、君が好きだということを直接伝えたかった…。ずっと一緒にいたかった…。)

 何という皮肉だろう。心の中では彼女をガールフレンドとして見ていたけれど、今までその気持ちを抑え込んでいた。

 現にバーバラを真っすぐ見つめられるほど、自分はまだ胸をはれる男じゃないと心の中で思っていた。

 今はまだ早い。きっと素直に言える時が来る。その時に本当の気持ちを伝えよう。

 そう思っていた。

 しかし、運命はそこまで長い間チャンスを与えてはくれなかった。

 

 …遅すぎた…。

 …もう、その機会は巡ってこない…。

 …2度と…。

 

 とはいえ、もし仮に想いをすでに伝えていたとしても、いずれ大魔王を倒せば別れの時は来てしまっただろう。

 だったら、言わずに別れてしまった方が良かったのかもしれない。

 だけど、最後まで言わずに、いや、言えずにいたことが、今は耐え切れない程の後悔の念として込み上げてきた。

「バーバラ…、ごめん…。」

 いつしかリベラの目には大粒の涙があふれていた。

 そして彼は崩れるように床に両膝をつき、両手を床に押しあてた。

 まさか、人生で最高の思い出になるはずの日が、こんなことになるなんて…。

 

 その後、リベラが一向に戻ってこないことを気にした父・レイドックと母・シェーラがやってきた。

 彼らは息子が照れ屋だからてっきり戻ってこないのだろうと思っていただけに、仲間を失った悲しみに打ちひしがれている姿はすぐには理解出来ないものだった。

 しかし、リベラから話を聞くうちに少しずつ気持ちを理解し、彼のそばに寄り添い続けた。

「もし自分の思いをはっきりと伝えていたとしたら、別れはもっと辛い、耐えられない程辛いものになっていただろう。そう考えれば、それで良かったのかもしれん。」

「私としては、息子にまだどのような言葉をかければいいのかは分かりませんが、きっとこの悲しみを乗り越えていけますよ。あなたには他にも大切な仲間がいますから。」

 と、せめてもの慰めの言葉をかけた。

 彼らもそれだけで癒すことが出来るような悲しみではないことは十分に承知していた。

 でも、出来ることといえば、それしかなかった。

 

 両親のあたたかい励ましの言葉をもらいながらも、リベラの悲しみの気持ちは一晩中消えることはなく、結局朝まで寝付けないままだった。

 この気持ちをハッサンやミレーユ達に話そうにも、彼らまで悲しませるわけにはいかないという思いが働き、結局行く気にはなれなかった。

 そうなると、この気持ちを話せる人は妹であるターニアしかいない。

 彼はそう考えると、悲しみを懸命にこらえながら朝食を取り終えた後、両親にそのことを伝えた。

「そうか。まあ、一人で抱え込むのもよろしくないだろうからな。」

「あなたがそうしたいのなら、私達は止めません。行ってきなさい。」

 彼らも息子が悲しんでばかりではいけないと思っていただけに、今日中に帰ってくるようにという条件を付けた上でOKを出してくれた。

 

 ライフコッドの村にやってきたリベラは、早速ターニアの住む家にやってきた。

 彼女はリベラが前日、満面の笑みでやってきただけに、その時とはあまりにも表情が違い過ぎることに驚いていた。

 しかし、いつの間にか特別な存在となっていた仲間と離れ離れになってしまったことを打ち明けられると、ようやく気持ちを理解することが出来た。

「そう…。お兄ちゃんはそんな別れを経験したのね。」

「そうなんだ。いつでも会いに行ける別れならともかく、バーバラは夢の世界に帰ってしまった。その世界にはもう行くことが出来ないから、彼女には2度と…。」

「そう…。大切な仲間ともう会えないなんてことになったら、それは悲しいでしょうね。」

「うん…。」

「私がお兄ちゃんのために何か出来ればいいんだけれど…。」

「……。」

 リベラはそれ以上何を言えばいいのか分からず、黙り込んでしまった。

「……。」

 ターニアもそれ以上は何も言わず、ただ兄のそばに寄り添い続けた。

(お兄ちゃん、私じゃダメ?私じゃ、バーバラさんの代わりにはなれないの?)

 彼女は心の中ではそう言いたかった。

 しかし、リベラをますます動揺させてしまうことを気にしたため、言うことは出来なかった。

 2人は重苦しい雰囲気の中にいながらも、兄妹が一緒にいられる時を噛みしめるように過ごした。

 そして気持ちが落ち着いてくると、外に出て散歩をしながらランドをはじめ、色々な村人達と会話をした。

 ランドからは少しギロッとした目で見られたりもしたが、それでもしばらくの間、離れ離れになっていた2人が再会し、並んで仲良く歩いている姿は喜ばしいものだった。

 リベラにとっては、自身がレイドック王子ということもあって、果たしてここになじめるのだろうか、村人達が自分を素直に迎え入れてくれるのだろうかという懸念もあった。

 しかし、ターニアが仲介役になってくれたおかげで、それは杞憂(きゆう)だった。

 

 その日の夕方、ターニアの家に戻ってきたリベラは、その日のうちにレイドック城に帰ることを伝えた。

「お兄ちゃん、もう帰っちゃうの?もっと一緒にいたかったよ。」

「今回は両親から今日中に帰ってくるように言われていたからね。でも、また来るよ。たとえいつも一緒にいることが出来なくても、いつでも会いに来られるんだから。それがどれ程幸せなことかということをバーバラが教えてくれた。だから、彼女への感謝の意味も込めて、また会いに来るよ。」

「分かったわ。じゃあ、私はいつお兄ちゃんが来て、ここに泊ってもいいように家の中をきれいにしておくわね。」

「ありがとう、ターニア。また会おうね。そして僕の気持ちを前向きにしてくれてありがとう。」

「ううん、私はただお兄ちゃんと一緒にいただけよ。それでお兄ちゃんが元気になってくれたのなら、うれしいわ。」

「じゃあ、僕はこれで。今日はありがとう。」

「お兄ちゃん、また会いに来てね。私も機会があればレイドック城に行くから。」

「分かった。その時は城に入れてもらえるように、両親に伝えておくからね。じゃあ、ターニア。」

「バイバイ、お兄ちゃん。」

 ターニアはそう言うと、笑顔を取り戻したリベラがルーラを使って帰っていく姿を見届けた。

(お兄ちゃん、私とはやっぱり兄妹の関係なのかな?それ以上の関係にはならないのかな?もう会えないバーバラさんのことをこれからも思い続けるのかな?)

 兄の姿が見えなくなった後、彼女の心の中にはそんな気持ちがあった。

 しかしその一方で、リベラとバーバラがいつか再会し、いつまでも仲良く過ごすことが出来たらいいねとも願っていた。

 




 この作品ではレイドック王の名前を「レイドック」にしています。
 僕は本名無しがあまり好きではなく、この人物の正式な名前をつけたいとずっと思っていました。
 そうしたら、シェーラが「レイドックが」と言う場面があることを知ったため、これを本名にしてみました。

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