バーバラと夢の世界のターニアが下界に行くための手はずを整えている頃、リベラ、ハッサン、ミレーユ、現実世界のターニアの4人はレイドック城のベランダにおり、水晶玉でその様子を見ていた。
リベラ「彼女達、本当にこの世界に来るんだね。」
ハッサン「無事にたどり着ければいいけれどな。」
ターニア「たどり着いたら、私はもう一人の私と融合することになるのね。」
ミレーユ「そうなったら、あなたにその覚悟はあるかしら。」
「それは…。お兄ちゃんが融合した後、何だか性格が変わったような気がしたから、何だか不安だわ。お兄ちゃんはあの後、どうだったの?」
「確かに、異なる2人が共存する形になったから、気持ちを整理するのに時間がかかったけれどね。でも、今はこうやって幸せに過ごしているから、これで良かったと思っているよ。」
「そう…。私もそうなればいいけれど…。」
「ターニア、一人で悩む必要はないわ。あなたには私達がいるから。」
「そうだぜ。何かあったら、いつでも俺達が相談にのるからよ。」
「うん。何があっても、君は僕の妹だよ。」
3人は優しい表情でターニアを励ました。
その時、バーバラが超・キメラの翼を覆っていた布をほどいた。
するとその翼が光り輝いていき、バーバラとターニアの体を包み込んでいった。
そして2人の体が完全に光に包まれると、光の矢となって下界に向かって降下していった。
(どうか上手くいってくれ!)
リベラは祈るような気持ちで水晶玉を見つめた。
光の矢は凄いスピードで空間を切り裂き、分厚い雲を通り抜けていった。
そしていよいよ海と地上が見えてきた。
リベラ「あっ、良かった。こちらの領域に入ったようだね。」
ターニア「そのようね。でもすごい勢いで落下しているわね。」
ミレーユ「こんなスピードでどうやって着地するのかしらね。」
ハッサン「確かに…。何だか嫌な予感がしてきた。」
その予感は見事に的中していたようで、水晶玉から『あたしだってこんなところで死にたくなーーい!!』というバーバラの悲鳴が聞こえてきた。
(※実際はターニアも叫んでいます。)
そのただならぬ事態を見て、リベラ達の表情も次第に青ざめていった。
『そんな、何とかしてって言われても…!こうなったらイチかバチかよ!どこでもいいからとにかくルーラ!!』
水晶玉から大声が聞こえると、落下スピードは段々遅くなっていき、速度がゼロになったところで光が消え、バーバラの姿だけがはっきりと見えるようになった。
そして彼女(実際は2人)の体は空中に舞い上がっていった。
リベラ「良かった…。地面に叩きつけられなくて…。」
ハッサン「本当に死ぬかと思ってハラハラしたぜ…。」
ミレーユ「よくあそこでルーラという発想にたどり着いたわね。」
ターニア「こんな光景、心臓に悪い…。」
彼らは冷や汗をかきながらも、心からほっとしていた。
バーバラ(とターニア)がたどり着いた場所は、マーズの館だった。
彼女(達)はまず気持ちを落ち着けた後、扉を開けて中に入っていった。
「ミレーユ、俺達も行こうか?」
「確かおばあちゃんがいるはずだから、きちんと対応してくれると思うけれど。」
「彼女達を見たらびっくりするだろうな。」
「おばあちゃんは何でもお見通しだから、それはないと思うわ。でもこのままだと見ているのがバレるから、ここまでにするわね。」
ミレーユは映像を消し、このことは内緒にするように忠告した。
(バーバラとターニア、今頃はグランマーズさんに会って、色々話をしているんだろうな。どんなことを話しているんだろう。僕に会いたいって言ってるのかな?その前に記憶を失っていなければいいけれど…。)
バーバラは最初に出会った時、自分の名前しか思い出せない状態だっただけに、リベラの脳裏にはそのことがフラッシュバックしていた。
しばらくすると、ミレーユが持っている水晶玉が光り出した。
「あっ、おばあちゃんだわ。」
彼女は再び映像を映し出した。
「おばあちゃん、こんにちは。」
『おお、ミレーユ。それにリベラ達もおるのう。元気かの?』
リベラ「みんな元気ですよ。」
『それでな、今わしのところにお客さんがやってきたんじゃが。』
「バーバラとターニアだろ?」
ミレーユ「バカ!ハッサン!」
ターニア「それは秘密でしょ!」
「あっ……。」
つい口を滑らせてしまったハッサンは、はっとして自分の手で口をふさいだ。
『ほう。つまりお前さん達はこの子達がこの世界に来る様子を見ておったんじゃのう。』
「あ、あの…、はい…、見ました…。」
もはや隠すことは不可能と判断したリベラは、正直に白状した。
『そういうことじゃ。リベラ達はお前さん達の運命をかけた行動をミレーユの水晶玉で見ておったぞ。』
バーバラ『ええっ!?あたし達を見ていたの!?』
リベラ達、そしてバーバラ達にとっては感動の対面になるはずが放送事故のような形になり、雰囲気が壊れてしまった。
「のぞいちゃってごめん…。決して悪気があったわけではないんだ。でも、無事にこの世界に来られてほっとしたよ。」
リベラはお辞儀をしながら謝った。
それに続いて、他の3人も頭を下げて謝った。
『まあ、いいわ。あたしのことを忘れずにいてくれたことが分かったんだから。それで、他にあたしのどういう場面を見ていたの?そもそもどうしてこっちの世界を見ていたの?』
リベラ「正直に話した方がいい?」
『うんっ!話してくれたら許してあげる!』
「分かったよ。」
リベラは自分がバーバラを忘れられずにいたことがきっかけで、ミレーユが夢の世界を映し出してくれるようになったこと。
自分はゼニスの城で卵がふ化する様子や、カルベローナでのコンサートの様子を見ていたことを打ち明けた。
「それでよ、お前の投げキッス、リベラがしっかりと受け取っていたぜえっ!」
『ええっ!?本当なの!?リベラ!』
「うん…、本当なんだ。あのリアクションを見たら、ドキドキが止まらなくなって…。」
『うそおっ!やだーーーっっ!!』
バーバラは顔から火が出る程の恥ずかしさに襲われ、両手で顔を覆った。
「そういうわけよ。リベラはあの後もずっとあなたに会いたがっていたの。つまりね、あなた達は今でも両想いの関係なのよ。」
『リベラ、本当?』
「うん…。会いたかったよ…。心の底から会いたかった…。」
『あたしも会いたかったよ。良かった…。こうやって再び顔を見られて、会話も出来て…。』
リベラとバーバラの顔は次第にくしゃくしゃになっていった。
「おおっと、このままじゃ泣き出しちまうな。2人は気持ちが落ち着くまでゆっくりしていてもらおうか。」
「そうね。まだターニアもいるから。」
ハッサンとミレーユはリベラと一緒に、少し距離を置いたところに移動した。
そして、入れ替わるようにターニアが水晶玉の前に来て、もう一人の自分と意見交換をすることになった。
(※夢の世界のターニアは、グランマーズ経由で会話をします。)
2人のターニアはその後どのような日々を送っていたのかを話し、現実世界のターニアは、もう一人の自分がどれだけ悲しい日々を送っていたのかを知ることになった。
『そういうわけで、彼女は実の兄に会うために、夢の世界を捨てる覚悟でこちらに来たわけじゃ。お前さんは彼女の気持ちに応えてあげられそうかの?』
「……。」
『すぐでなくてもよいぞ。彼女はお前さんの決意が固まるまでここで待つと言っておる。もしだめなら、リベラにこの館に来てもらい、兄の姿を見られればそれでいい言っておるぞい。』
「……。」
ターニアはまだ決断出来ないのか、うつむいて黙ったままだった。
他の人達もあえて口出しをせず、彼女の決断を待つことにした。
『ターニア、一人で悩む必要はないわ。あなたには私達がいるから。』
『そうだぜ。何かあったら、いつでも俺達が相談にのるからよ。』
『うん。何があっても、君は僕の妹だよ。』
(お兄ちゃん達を信じよう。たとえ私の意識が無くなったとしても、きっと私を支えてくれる。私は一人じゃない。それに、私はこれまでお兄ちゃんと幸せに過ごすことが出来た。私だけが幸せになって、彼女は会話も出来ずに過ごすなんて…。)
ターニアは懸命に考えた末についに決断を出し、同意をした。
『その言葉に二言はないかの?』
「はい。たとえ私の身に何があったとしても、後悔はしません。危険を冒してまでこの世界に来てくれた彼女のために、融合します。」
『おお、分かった。ではバーバラ、今からターニアを連れてレイドック城に行ってもらえるかの?』
『うん、いいわよ。あたしはもう気持ちも落ち着いたし、今からそっちにまいりまーす!』
すっかり元気を取り戻した彼女は、その前にリベラが立ち直ったかどうかを問いかけてきた。
「バーバラ、僕も立ち直ったよ。いつ来ても大丈夫だからね。」
『OK!じゃあ、ターニア、行くわよーっ!』
『…、…。』(『うん、いいわよ。』)
『それじゃ2人とも、リベラ達のところに行ってらっしゃい。』
『ミレーユのおばあちゃん、行ってきまーす!』
『…、…。』(『おばあちゃん、行ってきます。』)
2人は勢いよく館の外に出ていくと、ルーラで飛び立っていった。
それを見て、ミレーユは水晶玉の映像を消した。
「リベラ!会いたかったよおっ!」
「僕もだよ、バーバラ!」
ついに直接の再会を果たした2人は、喜びながらハグをかわした。
かたわらにいるハッサン、ミレーユ、そして2人のターニアはうれしそうに見守っていた。
しばらくして気持ちが落ち着いてくると、今度はターニアが融合することになり、リベラ達はその様子をやさしく見守った。
融合が終わると、ターニアは「お兄ちゃん、やっと会えたね。」と言いながら、リベラのところに歩み寄ってきた。
そしてリベラとハグをしながら、願いが現実になった喜びを全身で感じ取った。
しかし、しばらくするとターニアは緊張の糸が切れたのか、それとも気持ちが整理出来ないのか、少し休みたいと言い出した。
それを受けて、リベラはみんなを連れて城内に入っていき、以前工事の時にターニアとセリーナが寝泊まりしていた部屋に案内した。
そして布団が用意されると、ターニアはそこで横になった。
「今はゆっくり休んでね。これからはこの世界でずっと一緒にいられるから、気持ちが落ち着いたら色々話をしようね。」
「うん、分かったわ…。」
ターニアは葛藤がおさまらずにいたが、それでもうれしそうな表情で兄を見つめていた。
隣の部屋ではハッサン、ミレーユ、バーバラが会話をしていた。
その中でバーバラは、姿が見える状態でこの世界にやってきたのと引き換えに、自身が背負った代償について話していたため、その表情にはどこか寂しげな雰囲気が漂っていた。
「あなたがここに来られたのはうれしいけれど、まさか最大HPが減っていくなんて…。」
「でも、たとえ減っていってもよ、その度にホイミをかければいいんじゃねえか?」
「ハッサン、勘違いしているわよ!減っていくのはあたしのHP現在値じゃなくて、最大値!」
「えっ?ってことは?」
「あたしはこの世界にいる限り、段々体が弱くなっていくの。そしてHPの現在値が最大値と同じ場合は、現在値も一緒に減っていってしまうの。だからあたしは最大値が0になる前に、上の世界に帰らなければならないの。」
「つまり、あなたはいつまでもこの世界にはいられないのね。」
「そう。もしここにいる間に実体を見つけて融合すれば減少が止まるんだけれど…。」
とはいえ、それがかなう確率はあまりにも低すぎるため、現実としては考えにくかった。
「でもよ、ゼニスのおっさんからは対策として何かもらっていたよな。」
「そうよ。これ。」
バーバラはオーブのような玉を取り出した。
「これは、命の宝玉って言うの。これが光り輝いている間は、最大HPの減少はゆっくりで済むの。だから今は何とか安心していられるけれど、でもゆっくりになるだけで、どんな努力をしても決して止まるわけではないの。」
「それは辛いでしょうね…。せっかく私達に会えたのに…。」
「うん…。そしてね、もし光が消えてしまったら、減少スピードがこれまで以上に早くなるから、そうなったらなるべく早く帰らないと、あたしはこの世界で帰らぬ人になってしまうの…。」
「帰らないと帰らぬ人になるって、言い方はうまいんだけどな…。」
ハッサンがツッコミを入れたところで、3人を取りまく雰囲気は変わらなかった。
その時、隣の部屋にいたリベラがバーバラ達のところにやってきた。
「あのさ、それってHPの最大値を増やすことが出来れば解決するんじゃない?」
ミレーユ「最大値を増やすって…。あっ、命の木の実ね。」
「そう。それをたくさん見つけて食べ続ければ、バーバラはこの世界に居続けられるよね?」
ハッサン「そうだな。じゃあ早速これからみんなで探してみようぜ。」
「ありがとう。でも…。」
リベラ「でも、何?」
「それで一時的に増やしたとしても、HPの減少を止められない以上、あたしはたとえ100個食べたって、いつか帰らなければならない…。気持ちはうれしいけれど…。」
「この世界にいれば、その間に何かいい方法が見つかるかもしれないわ。私とおばあちゃんが水晶玉で色々占ってあげるからね。」
「ミレーユ…。」
「僕も君のために出来ることなら何でもするよ。僕がこうやって幸せな気分でいられるのは、君がいるおかげだから。」
「えっ?あたしが?」
「うん。君がいなくなって、はっきりと分かったんだ。僕の幸せは、誰一人が欠けても無くなってしまうんだって。」
「本当に?そんなにあたしのことを思っていてくれたの?」
「うん、ずっと会いたかった。だから僕は、君のためにこれから命の木の実を見つけに行くことにする。」
「あたしのために、そこまで…。」
「俺も、お前に会いたかったぜ。これまでお前のおてんば発言や、笑顔に何度救われたか。本当にお前がいてくれてうれしかった。お前無しには俺も幸せにはなれねえ。だから、俺も協力するぜ。」
「ハッサン…。」
「じゃあ、私はおばあちゃんと協力して、実の有りかを占うことにするわ。そして他の人達にも呼びかけてみるわね。」
「ありがとう…。」
リベラ「みんな、そうと決まれば早速装備を整えよう。僕は今使っている破邪の剣よりもっと強力な武器を使うことにする。」
「OK。じゃあ、俺は自宅で眠っている炎のツメを使うことにするぜ。」
「私はおばあちゃんが持っている月の扇を使わせてもらうことにするわね。」
こうして彼らは命の木の実を探しに行くことを決意した。