ゲントの村でバーバラに再会した後、テリーは以前やってきたことのある、命の木の場所にやってきた。
幸い実りの時期を迎えていたこともあるのだろう、木には熟したものがいくつもあった。
「これならここに来た価値がある。バーバラのためにたくさん取っていくことにしよう。」
彼は早速木によじ登っていき、まず低いところにある実をいくつか取った。
そしてどんどん高いところに登っていき、実を取っては袋に入れていった。
すると、近くの木に止まっていた何羽もの鳥がテリーのいるところにやって来た。
「ん?何だ?まさか俺に襲いかかって来たわけじゃ…。」
彼の悪い予感は見事に当たってしまい、何羽もの鳥につつかれる羽目になってしまった。
見たところ、特にモンスターというわけではないようで、単に自分達の食料を取られてなるものかという感じだった。
鳥達に悪気はないとはいえ、テリーにとっては戦闘に巻き込まれる形になってしまった。
しかも彼は木の上にいるため、攻撃を全然かわすことが出来ず、少しずつだがダメージを受けた。
「こうなっては仕方ねえ。まずは守備力を上げることにしよう。」
彼はスカラを重ねて唱え、守備力を大幅に上げた。
そのため、ダメージ自体はほとんど受けなくなった。
テリーはそれからしばらく、つつかれながらも実を取り続けた。
だが鳥達も必死に抵抗したため、次第にうっとうしさがつのっていき、今度はマヌーサを唱えた。
結果、攻撃がヒットする回数こそ少なくなったが、それでもまだうっとうしさを感じていた。
「俺を倒すわけじゃない以上、ぶっ倒したくはないが、仕方ない。ちょっと眠っていてもらうぜ!ラリホー!」
テリーが呪文を唱えると、鳥達の動きがどんどん鈍っていき、太い枝の上や地上で眠ってしまった。
「悪く思うなよ。これも大切な仲間のためだ。」
彼はこの隙にあちこちに移動し、実を取れるだけ取っていった。
ちょうど取り終わった頃に鳥達が目を覚ましたため、彼はルーラを唱えてその場を離れ、マーズの館に向かっていった。
その時、たまたまバーバラが居合わせたため、彼女は目が飛び出そうなほど驚いていた。
そして、リベラはその数を見て喜びながらも、心の中ではがく然としていた。
その後、彼はすでに集めていた他のアイテムを持って今度は旅人の洞くつに向かった。
入り口近くではドランゴがおり、幼いドラゴンが母親のそばでぐっすりと眠っていた。
「そうか。ついに卵からふ化したんだな。」
「そう…。テリー…会えてうれしい…、ギルルルン…。」
「デュナンとデュアナはどうしているんだ?」
「2人…アークボルトで…人間の…子供達と…遊ぶ…している…。」
「ということは、あの杖を使っているのか?」
「いや、ここ…ある…。今は…、人間達も…彼らは…モンスターと…知ってる…ギルル…ン。」
「じゃあ、モンスターの姿のままなのか?大丈夫なのか?」
「問題ない…。」
ドランゴの話では、彼らは最初こそモシャスの杖で人間で化けることで人間社会に入っていたが、ある日、人間がこの洞くつに入ってきた時に、彼らがモンスターの姿のままのデュナンとデュアナを見つけてしまった。
最初、人間達とその子達の間に険悪な雰囲気が漂ったが、ドランゴは一緒に住むことになった経緯を説明し、どうか仲良くしてほしいとお願いをした。
最初は難色を示されたが、それでも辛抱強く説得を続けた結果、ついに杖で変身しなくても人間と仲良くしてもらえるようになったということだった。
「そうか。そこまで分かりあえる関係になったのか。良かったな。」
「私も…うれしい…、ギルルル…ン。」
「俺の望んでいたことが現実になったんだな。」
テリーは彼らのいるアークボルトの方向を見つめながら、彼らが人間の子供達と仲良く遊んでいる姿を想像した。
しばらくして、ドランゴはテリーにどのような目的でここに来たのかを問いかけた。
「実は、これまでに手に入れた実や種を持ってきたんだ。彼らに食べてもらって、少しでも強く成長してもらおうと思ってな。」
「どのような実…、そして…種…?」
「不思議な木の実を3個、力の種を2個、守りの種を5個、素早さの種を4個持ってきたんだ。全部均等に分けられるわけではないが、それでも喜んでくれれば幸いだ。」
「きっと…喜ぶ…、ギルルルン…。」
「分かった。そう言うのなら間違いないだろう。じゃあ、これらをお前に渡す。彼らが帰ってきたら食べさせてやってくれ。」
「分かった…。」
ドランゴはテリーが差し出した実や種を受け取った。
そして彼女はガルシアやブラストがここにやってきた時に言っていたことを教えてくれた。
彼らの話によると、大魔王がいなくなった後でも不穏な動きを見せるモンスターは存在し、着々と実力をつけていること。その一方で犯罪や悪事に手を染める人間もおり、ブラスト達は度々討伐に出かけているということだった。
「なるほど。世の中が平和になっても、幸せになれない奴らはいるもんだな。」
「そう…。悪いこと…悲しいこと…無くならない…。それ…悲しい…ギルルルン…。」
「まあ、だからこそ、俺がこうやって旅をしながら今でも戦うことが出来るんだけれどな。」
「テリー…今でも…戦う…。でも…私…もう…戦う…しない…。引退…する…。」
「引退?」
「そう…。実の子…生まれた…。デュナン…デュアナ…いる…。私…、みんなの…成長…見守りたい…。」
「そうか。これからは子育てに専念するわけか。」
「ごめん…なさい…。ギルルン…。」
「まあ、いい。チャモロも慈善活動に専念しているし、それも立派な決断だ。だが俺は戦う。この世界の平和を維持するためにな。」
「テリー…。私…応援…する…。他に…何も…出来ること…ない…。でも…応援だけ…する…、ギルルルン…。」
「それでもいい。お前にはモンスターと人間が敵意をあらわにせず、仲良く暮らせるように協力をお願いしたい。それで十分だ。」
「ありがとう…。」
テリーとドランゴが会話をしていると、デュナン、デュアナがアークボルトから戻ってきた。
彼らは「あっ、お兄ちゃん、お帰りなさい!」「あたし達にまた会いに来てくれたのね!」と言いながら、笑顔で駆け寄ってきた。
テリーとドランゴは笑顔で子供達を迎えると、集めてきた実と種を彼らに与えることにした。
そして目を覚ましたドランゴの子と一緒に、洞くつの中で一晩を過ごすことにした。
翌日、洞くつを後にしたテリーはアークボルトでアモスと遭遇した。
「アモっさん、久しぶりだな。」
「こちらこそ、久しぶりです。今日はどのような用事でここに?」
「命の木の実を集めているんだ。バーバラが必要としているからな。」
「バーバラさん?あのバーバラさんですか?」
「ああ、そうだ。別世界に閉じ込められるかのしれない危険を冒しながら、それでもリベラ達に会いにこの世界に来てくれたんだ。」
「うれしいことじゃないですか!」
「確かにそうなんだが、喜んでばかりもいられないんだ。」
「どういうことですか?」
テリーはバーバラに関する経緯を話した。
「そんな…。せっかくこの世界に来られたのに、そんな悲しい代償を背負ってしまうなんて…。」
「ああ。だが、彼女はそれを覚悟した上でやって来たわけだ。俺はそんな彼女のために役に立ちたい。そのために俺は実を持っている敵と戦う。盗賊気分になった上でな。」
「じゃあ、それに私も協力させてください。私もかつて旅をしていた時には盗賊だった期間が長かったですし、アイテムを手に入れたい時には結構頼りにされましたから。」
「そうか。それは助かるな。ところでアモっさんは仕事の方は大丈夫なのか?」
「鍛冶屋の仕事はしばらく私がいなくても大丈夫そうですし、旅する時間も確保出来ました。それにロンガデセオのカジノが倒産してしまった時に、はやぶさの剣を投げ売りしていたので、そのどさくさにまぎれて、格安で購入したんです。」
「以前言っていた強力な武器って、それだったのか。まさかそれを格安で手に入れるなんて。」
「サリイさんのおかげです。彼女が教えてくれなかったら、間違いなく気が付かなかったでしょうし、しかも最後の一本でしたから、彼女に感謝感謝です。」
「ということは、アモっさんはまどろみの剣を上回る武器を手に入れたわけだな。」
「そうです。私はこれからテリーさんのように二刀流を目指そうと思います。」
「あのな、はやぶさの剣を装備すればその時点で二刀流同然だろ。」
「まあ、そうですけれどね。でも、テリーさんがらいめいの剣ときせきの剣の二刀流で、2度攻撃を行う姿はすごかったです。だから私も2本の武器でやってみたくなりまして。」
「フン!簡単に出来るもんじゃないぞ。だが、アモっさんもかなりの戦力として期待出来そうだな。一緒に戦うのであれば心強いな。」
「そう言っていただければ光栄です。では、バーバラさんのために、命の木の実集めに行きましょう。」
「ああ。行こうぜ。」
2人は早速その実を持っている敵が未だにくすぶっているマウントスノーに向かい、まずホーンテッドミラーと戦った。
この敵はモシャスを使うため、彼らはまず2度攻撃による速攻でダメージを与えていき、早めに倒すことにした。
それでも守備力が高いために、二刀流のテリーと2度攻撃のアモスをもってしても、1ターンでは倒し切れず、相手からメラミを受けてしまうことがあった。
また、いきなり最初のターンで変身してくるケースもあったため、その時はさすがの彼らにも焦りの表情がにじみ出た。
(まずい!俺もどきになったら相当危険な戦闘になってしまう!こうなったら、奥の手だ!)
テリーはぶっつけ本番で、二刀流でのはやぶさ切りを実践した。
すると何と4回も通常攻撃をすることが出来、相手が攻撃してくるよりも先に倒すことに成功した。
「全く手こずらせやがって!だが、これで安心してアイテムを探すことが出来るな。」
テリーは剣をしまうと、アイテムを持っていないか調べた。
その時は何も見つけることが出来なかったが、その後の戦闘でようやく一つ手に入れた。
「フン!これだけ頑張ってたった一つとは、不毛な戦いだったな。」
「テリーさん、ホーンテッドミラーではちょっと強過ぎますね。リビングデッドにターゲットを変えましょうか?」
「まあ、そうするか。確か近くにいるだろうから、少し移動して、そいつらと戦うことにするか。」
2人は場所を移動し、リビングデッドの一族が住んでいるアジトに向かった。
アジトの中ではリビングデッドや地獄の門番をはじめとする、いくつものモンスター達が話し合いをしていた。
その中で彼らは人間世界に攻めていこうというプランを立てており、これからさらにモンスター達を集めようとしていた。
「それではいよいよ出陣だ。者ども、準備はいいか!?」
大将的存在の地獄の門番は他のモンスター達に声をかけた。
「腕が鳴るぜ。人間達に絶望を見せてやる!」
「明日になればマウントスノーは廃墟だな。」
部下達は気合満々だった。
するとそのタイミングでテリーとアモスが姿を現した。
「お前達、話は聞いていたぞ。人間達に絶望を見せるだと?」
「駄目ですよ。大魔王が討伐されたのに、未だに人間の世界を侵略しようだなんて。」
2人の姿を見て、モンスター達は一瞬驚いたが、地獄の門番が
「やっちまえ!みんなでそいつを殺せ!」
と叫んだことで、戦闘が始まった。
テリーはらいめいの剣を使ってライデインを発動させ、アモスははやぶさの剣で2度攻撃をした。
しかし相手はかなりの数で、地獄の門番は猛毒の霧を吐いてきたため、テリーは猛毒に犯されてしまった。
(ちっ!猛毒はまずいな。こうなったら攻撃は1回お休みだ。)
そう思った彼はキアリーを唱え、とっさに毒を消した。
一方、特技が少ないアモスは攻撃力にまかせて、ひたすら2度攻撃を繰り返した。
だが、相手は数が多いため、攻撃される回数もバカにはならなかった。
次のターンでテリーは再びライデインを発動させ、リビングデッドをはじめ、HPがあまり多くないモンスターを何匹もダウンさせた。
(よし、これで数が減った。少しは余裕が出来たな。)
彼がそう思ったのもつかの間で、またも地獄の門番が猛毒の霧を吐いてきて、今度は2人とも猛毒に犯されてしまった。
(まずい。アモっさんがかなりダメージを受けているタイミングで猛毒はきついな。悔しいがまた攻撃が1回お休みだ。)
テリーはアモスにベホマを唱え、一旦HPを最大まで回復させた。
「ゲホゲホッ!まだ猛毒は治っていませんが、それでもベホマはありがたいです。私は地獄の門番を倒しますので、テリーさんは他の敵を早く!」
「ああ、分かった。ゲホッ!」
現時点ではキアリーをかけている余裕がないため、せきこむ2人はHPを減らしながら戦闘を続けた。
次のターンでテリーは自分にベホマをかけ、ひとまずHPを完全回復させた。
しかし、残っている敵達から次々と攻撃を受け、さらには猛毒のためにHPをどんどん削られてしまった。
一方のアモスは渾身の2度攻撃を叩きこみ、地獄の門番を倒すことに成功した。
「よし、後は俺がこいつらを倒すだけだ。もう一発ライデインをくらえ!」
テリーは猛毒による気持ち悪さに耐えながらリビングデッド達に一撃を叩き込んだ。
一同「ぎゃああっ!」
残っていたモンスター達は一匹残らずダウンしてしまい、ようやく戦闘が終了した。
「厄介な連中でしたね…。ゲホゲホッ!」
「ああ、そうだな…。ゴホッ!だが、まずは猛毒を消さなければな。」
テリーは即座に自分とアモスにキアリーをかけた。
そして自分にベホマをかけ、アモスも自分にホイミを重ねがけすることで、減っていたHPを回復させた。
「フンっ!さんざん手こずらせやがって!だが、これで少しは平和のために役立てたな。」
「そうですね、テリーさん。後は命の木の実を手に入れていきましょう。」
「ああ、遠慮なく頂いていくぜ。」
2人は倒されたモンスター達を調べたり、アジトの中を探索してまわった。
結果、彼らは命の木の実を8個手に入れ、それ以外にも不思議な木の実を3個、力の種を2個、まもりの種を1個、他にも薬草や毒消し草、やいばのブーメラン、はがねのキバなどのアイテムとお金を手に入れた。
「もうアイテムはなさそうだな。」
「じゃあ、ここはもう用無しですね。」
テリーとアモスは足早にアジトを後にしていった。
アジトから出てくると、テリーは命の木の実とやいばのブーメラン、はがねのキバを持っていくことにし、それ以外はお金も含めてアモスに渡すことにした。
「これでバーバラさんのために少しは貢献出来ましたね。彼女はきっと喜ぶでしょう。」
「だろうな。俺としても1日でも長くいてほしい、大切な仲間だからな。それに平和のためにも貢献出来たわけだから、その点でも意味のあることだったな。」
「とはいえ、まだまだ不穏な動きを見せる連中っているんですね。たとえ平和になったとしても、戦いそのものは無くなりそうにないですね。」
「そうかもな。だからこそ、俺は戦い続けるんだがな。」
「つまり、私達は世の中の平和を陰で支える隠密剣士ってわけですね。」
「そういうことになるな。」
2人はこれからも戦闘でダメージを受けるケースがありうることを覚悟しながら、マウントスノーを後にしていった。