この日、ミレーユとバーバラはミミックを倒しに、とある洞くつに行くことにした。
それを知ったテリーは、2人だけでは不安ということで、姉のためにきせきの剣を貸してくれた。
「ありがとうテリー!強力な武器が手に入ってうれしいわ!」
「フン!俺が行けばミミックなどイチコロだが、それじゃつまらんからな。」
彼の態度は相変わらずぶっきらぼうだったが、ミレーユは喜んで剣を受け取った。
さらに彼女はグランマーズからみかわしの服を、バーバラは星降る腕輪を借り、万全を期して洞くつに向かっていった。
箱の前にやってきた2人は、まずバーバラがマホトラを唱えてみた。
「あっ、MPが増えたわ。これでこの箱がミミックで確定したわね。」
「じゃあ、早速装備を整えましょう。」
「OK。ミレーユはスクルトお願いね。」
バーバラはそう言うと、まどうしのローブと星降る腕輪を身に付けた。
(※まどうしのローブは以前ミミックに食いちぎられましたが、ターニアに縫い直してもらいました。)
一方、ミレーユはみかわしの服を身に付けると、早速スクルトを唱えた。
その直後、箱がパカッと開いて戦闘モードになった。
バーバラ「ルカニ!」
ミレーユ「メラミ!」
2人が行動をした後、今度はミミックがミレーユに通常攻撃をしてきて、1回目はヒット、2回目は失敗だった。
次のターンでバーバラは通常攻撃をしてヒット、ミレーユも通常攻撃をしたが、こちらはかわされてしまった。
一方、ミミックはバーバラにマホトラを唱えてきた。
「よくもあたしのMPを!こうなったらお返しよ!くらえ、ベギラゴン!!」
彼女が戦闘で初めてこの呪文の名前を叫ぶと、本当にベギラゴンレベルの炎がヒットした。
次にミレーユが通常攻撃をするとミミックを真っ二つにして倒し、さらに自身のダメージも回復した。
「この剣、ものすごい切れ味ね。ルカニの効果もあったとはいえ、こんな威力だったなんて。」
ミレーユはミミックを倒したことを喜びながらも、もし下手に人間に使ったら大変なことになってしまうことを自覚した。
一方、バーバラは大喜びしながら命の木の実を取り出した。
「あなた、本当にベギラゴンをマスターしたのね。」
「うんっ!やっと今までの努力が実ったわ。」
バーバラは満面の笑みを浮かべながら実を食べた。
洞くつを出てきた後、ミレーユはバーバラのベギラゴンを自分も応用しようと、彼女に質問をした。
「そう言われてもねえ…。出来たとはいえ、ベギラマだけだし…。」
「でも、せめてあなたの体験談を教えて。私は炎のツメを考慮しても攻撃呪文がメラミ、ヒャド、イオだけだし、回復もベホイミ止まりだから、どちらの面でもあなたに遅れを取っているの。だから少しでも今の呪文の威力を上げてみたいのよ。」
「大変な道のりになると思うわよ。」
バーバラは難色を示したが、ミレーユはそれでも引き下がらなかった。
「お願い。どんな小さなことでもいいから。」
「分かったわ。参考になるのかは分からないけれど…。」
とうとう折れたバーバラは、役作りのためにベギラマの威力を弱めるように言われてからのことについて話し始めた。
呪文の威力を変えるというのは、彼女にとってこれまで聞いたことがなく、ノーヒントでのスタートだった。
しかし撮影のスタートは待ってくれないため、とにかく周りに燃えるものがないところに来ては毎日唱え続け、撮影直前になってようやく下限を元の威力の3分の2にすることが出来た。
とはいえ、実際はブレ幅が大きくなった結果だったため、上限も上がってしまった。
そのために火力が強過ぎてNGを出してしまい、女勇者役のエリーゼからは「だいまどうにマホトーンが100%効くようにしてほしい。」という要望を出されてしまった。
一方のバーバラも「ベギラマを唱えるのが怖い。まふうじの杖を持っているので、マホトーンを使わせてほしい。」と言いだした。
しかし、スタッフからはそれではつまらないという理由で却下されたため、役作りに悩んだバーバラは一時期、降板まで考えたこともあった。
幸いエリーゼがその対策として、廃墟で「あくまのきし」を倒すシーンを当初より繰り上げ、ベギラマを軽減するよろいを早めに手に入れてくれた。
さらに本人が「怖くないと言えばうそになりますが、多少のダメージは覚悟します。」と言ってくれたおかげで、バーバラの精神的負担が減り、降板を免れることが出来た。
それからは多少威力が狙いと違ってもNGにならなくなり、結果的に役割を全うすることが出来た。
撮影後、彼女はベギラマの上限がベギラゴン級の威力になるようにしたいという思いを持つようになった。
そして、MP消費を引き上げながら繰り返し唱え続け、ようやくベギラゴンにたどり着いたということだった。
「つまり、バーバラはベギラゴンそのものを覚えたというよりも、幅を大きくして常に上限近くで打てるようにしたわけね。」
「うん。でもこれまで単体相手でもベギラマだったから、メラミと同じダメージの場合、消費MPで勿体ないことをしてきたの。」
「でも、ベギラゴンを使えるようになって良かったわね。私はベホイミで応用してみるわ。」
「ミレーユは回復呪文で実践するわけね。」
「そう。仮にベホマには及ばなくても、ベホイミの回復量を10ポイントでも上げてみたいと思っているから。」
「少しでもそうなれば、いざという時には助かるでしょうね。頑張ってね。あたしも応援しているから。」
「ありがとう。あなたがこの世界に来てくれて良かったわ。頑張るわね。」
ミレーユは笑顔でお礼を言った。
彼女と同じ気持ちを持っているのはリベラも同じだった。
彼はバーバラがミミック相手に強力なベギラマを放った姿が忘れられずにいた。
(このままではいけない。ハッサンも新技を編み出している中で、僕が置いていかれるわけにはいかない。何か新しいものを身に付けなければ…。)
そう思った彼は以前のミミックとの戦闘後、ミレーユに先だってバーバラに体験談を聞いてみた。
しかし、そのために試行錯誤を続け、長い道のりの末にようやく身に付けたことを聞いて、そんなに待てないと思い、ライデインでの応用を断念した。
新しい特技を身に付けようにも、ハッサンのようにはうまくいかず、バーバラのために身代わりを覚えただけだった。
(こうなったら、武器をもっと強力なものにするしかない。)
そう考えた彼は、両親にもう一度ラミアスの剣を使わせてほしいとお願いをした。
しかし、待っていた返事はやはり反対だった。
レイドック「あの剣は確かに強力だ。強敵をただ倒すだけならそれも良かろう。だが、相手にも人生がある。家族がいる。倒してしまえば悲しむ者が出てくる。それを忘れないでほしい。」
シェーラ「あなたは大切な人であるバーバラさんを守るために戦うのでしょう。それが目的なら許可を出すわけにはいきません。真の敵が出現するまでは封印しておくことにします。」
だが、新しい武器を買うための資金であれば多少は出せると言われたため、リベラは2000ゴールドを受け取ることが出来た。
(とはいえ、現実の世界で販売されており、僕が使いこなすことが出来、攻撃力の最も高い武器である炎の剣は22500ゴールドもする。僕の貯金をはたいても到底届かない。何とかお金を稼ぎたい。)
そう考えた彼はまずテリーに会いに行き、何か高額なアイテムを手に入れたか聞いてみた。
「フン!そんな目的のために俺のところに来たのか!」
「でも、僕としては新しい武器を買うために、どうにかしてお金を貯めたいんだ。」
「だったらお前も戦ったらどうだ。ゴールドを稼げばそのうち手に入る。ただそれだけのことだ。俺に出来るのならお前にも出来るだろ。」
テリーは以前、チャモロのためにそうやって大金を手にしてきただけに、リベラに対して挑戦状を突きつけるような言い方をしてきた。
彼はらいめいの剣ときせきの剣を装備して二刀流をこなし、豊富な数の呪文や特技を持っている。
一方、自分は武器がグラコスの槍で、呪文はスカラを入れてもたったの6つ、回復はホイミ止まりという有り様だった。
そのため、テリーの姿が眩しくてたまらず、返す言葉もなかった。
「まあいい。俺の持ち物の中で、いらない物があるからお前にやるよ。」
「本当に?」
「ああ、売れば多少は足しになるはずだ。」
テリーは持っているアイテムを見せてくれた。
その中にはやいばのブーメランやはがねのキバがあった。
「これらは?」
「先日倒したモンスターのアジトで手に入れたものだ。とはいえ使い道もないからこれでも売りな。」
「いいのか?」
「ああ。チャモロのために力になったのに、お前には無視じゃ不公平だからな。それに、新しい剣でバーバラを守ってやれるのなら、俺は間接的に彼女のために役に立てるからな。」
「ありがとう。助かったよ。」
「礼はいい。後は自分で何とかしろ。」
テリーは相変わらずぶっきらぼうだったが、仲間を思う気持ちはしっかりと持っていた。
その後、道具屋でそれらを売ってお金にした後、彼はハッサンに会いにサンマリーノにやってきた。
「ハッサン、今何か大工の仕事ってある?」
「おおっ!仕事か!ちょうどいいや。今古い民家の改装中なんだ。手伝ってくれるか?」
「日当を払ってくれるのなら喜んで手伝うけれど。」
「うーん、あんまりは支払えねえな。小遣い程度でも我慢してくれるか?」
「それでもいいよ。今の僕には少しでもたくさんお金が欲しいから。」
「お金って、何を買うつもりなんだ?」
「それは…。」
リベラは顔を赤らめながら事情を話した。
「そうか!その剣で愛する人を守りたいのか!」
「ハッサン!声が大きいよ!」
「いいじゃねえか。今さら隠すこともねえだろ。そのためなら俺も協力するぜ。お金はちゃんと払うから、頑張って仕事をしてくれよ。」
「ありがとう…、ハッサン…。」
こうして彼に雇ってもらえることになったリベラは、一生懸命仕事を手伝った。
そして2日間働いた結果、家の改装が無事に終了した。
「リベラ、ご苦労だったな。それじゃ、お小遣いだ。さらにはおまけとしてこん棒に皮のこしまき、おしゃれなバンダナをやるぜ。」
「ありがとう、ハッサン。少しでも助かるよ。これで炎の剣まであと10000ゴールドだ。まだ先は長いけれど、頑張って稼ぐよ。」
「頑張れよ。じゃあ、俺はこれからマーズの館に遊びに行って、ミレーユとお前の愛するバーバラにそのことを伝えておくぜ。」
「だから声が大きいってば!」
ハッサンにイジられて、リベラの顔は真っ赤になった。
その後、彼はもらったものを売ってお金を手に入れた。
その際、グラコスの槍も売ろうとしたが、店員からこれは値段がつけられないと言われたため、断念した。
レイドック城に戻った後、リベラはそれまでに貯めたお金を見ながら、しきりに考え事をしていた。
(22500ゴールドの炎の剣を買うために、残りをどうやってためようかな…。18000ゴールドのゾンビキラーで我慢するか…。でも炎の剣には追加攻撃もあるから、それも捨てがたいし…。)
とはいえ、現在の所持金では、それらのどちらも買うことが出来ない。
色々考えた彼だったが、結局寝る頃には考えることをやめることにし、お金をしまい込んだ。
翌日、リベラはバーバラが寝泊まりしているライフコッドにやってきた。
ターニアの家の前では彼女が破邪の剣を振りながら稽古をしており、道具としてギラも放っていた。
「ターニア、おはよう。」
「あっ、お兄ちゃん、おはよう。今日はどんな用事で来たの?」
「ちょっとバーバラに会いたくて。」
「バーバラお姉ちゃんならガンディーノに向かっていったわよ。」
「ガンディーノ?珍しいな。」
「そう。昨日、マーズの館でミレーユさんの修業のアドバイスをしていた時、ハッサンがやってきたの。その時、彼と色々話をして、何か引っかかるものがあったのか、帰ってきてから色々考え事をしていたわ。そして今日になって『ターニア、あたし今から出かけてくるね。』と言って、家を後にしたの。」
「何の用事だろう?」
「私も詳しくは分からないけれど、お姉ちゃん、武器として普段は持ち歩かないまふうじの杖も持って出かけたから、何かあるかもしれないわ。」
「まふうじの杖も?ますます不思議だ。何を考えているんだろう。」
「さあ…。でも、出かけてそんなに時間はたっていないから、きっとまだガンディーノにいるはずよ。」
「分かった。今から行ってみる。」
リベラは真相を確かめるべく、ルーラを唱えて飛び立っていった。
ガンディーノに到着すると、彼は駆け足で辺りを探し回った。
すると、武器と防具の店の近くでバーバラと遭遇した。
「あら、リベラ。こんなところでどうしたの?」
「どうしたのって、ターニアから君がここに来ていることを聞いたから、それで…。」
「ターニア、あっさりとしゃべっちゃったのね。まあいいわ。ちょうど今10000ゴールドが手に入ったから、レイドック城に行って、リベラに届けようとしていたところだったの。これで欲しかった炎の剣が買えるわよ。」
「そんな大金をどうやって手に入れたの?」
「ええっとねえ…。ナイショ。でも、ここじゃ目立つから、別の場所に移動しましょ。」
バーバラははぐらかすように笑いながらルーラを唱え、リベラと一緒にレイドックへと移動した。
城の近くに降り立つと、人の気配のない場所にやってきた。
バーバラは笑顔でリベラにお金を渡そうとしたが、その表情には何か動揺しているような雰囲気が漂っていた。
しかも出かける時には持っていたはずのまふうじの杖がない。
確かターニアは『武器として普段は持ち歩かないまふうじの杖「も」持って出かけた』と言っていた。
つまり、はがねのムチも持って出かけたはずだ。
しかし、今は武器を持っている様子がない。ということは…。
「バーバラ、まさかとは思うけれど、そのお金って…。」
「うーーん、鋭いわね。まあ、ちょっと打ち明けちゃうと、はがねのムチは買うと7400ゴールド、まふうじの杖は6000ゴールドなのよね…。」
買うと13400ゴールドと言うことは、売ればほぼ10000ゴールドが手に入ることになる。
「君はそのお金を用意するために…。」
「大丈夫よ。だってあたしはここに来てからベギラマ中心で、あまり通常攻撃をしていなかったし、それにベギラゴンを覚えたからには、火力には困らないわよ。」
それを聞いて、リベラはガツンと頭を打たれたほどの衝撃を受けた。
(そうだったのか…。バーバラ…。僕のために自分の武器を手放してまで…。)
彼の手は次第にわなわなと震えていき、目は次第に潤んでいった。
「やあねえ、泣いてるの?あたしは笑っているのに。」
「バーバラ、君は…、そこまで僕のことを…。」
「だって、リベラに守ってもらってばかりじゃ嫌だったから。あたしだってリベラを守りたい。それで、思い切ってこうしてみたの。」
「ありがとう…。そして、ごめん…。君にこんな負担をかけてしまって…、本当に…ごめんっ!」
リベラは涙をボロボロ流しながらバーバラに歩み寄っていき、彼女を抱きしめた。
「キャッ!どうしたのよ!今日はずいぶん積極的じゃない!」
「バーバラ!僕、約束する!」
「何を?」
「炎の剣を手に入れたら、必ずその剣で君を守る!君がダメージを受けるなら、君のダメージになってやる!」
「……。」
バーバラは思わぬ告白に、思わず顔を赤らめた。
(ここまで僕のことを思ってくれる人は、バーバラしかいない。世界中を探し回ってもバーバラしかいない。だからこそ、僕は君を幸せにする!代償からも解放させてやる!そのために出来ることがあるなら、何だってやる!どんな強敵とだって戦ってやる!)
リベラは目の前にいる大切な人を包み込みながら、そう心に誓った。
君がダメージを受けるなら、君のダメージになってやる!