バーバラが自分の武器を手放した後、彼女に加えてリベラ、ハッサン、ミレーユの4人はマーズの館に集まって、これから武器をどうするのかについて話し合いを始めた。
まずリベラは炎の剣で決定済み。そして彼はハッサンがグラコスの槍、ミレーユは炎のツメ、バーバラは氷のやいばを使うことを提案した。
「とりあえずこれが一番ノーマルな感じだと思うんだけれど、どうかな?」
ハッサン「悪くはねえんだが、俺としては追加効果のある武器を装備したいんだ。この味を覚えちまうと他のやつを使いにくくなってな。」
「ああ、なるほど。確かに攻撃力の高いハッサンだったら、追加効果も強力になるからね。」
「そうなんだ。だから、俺は氷のやいばか、炎のツメにさせてくれないか?」
「そうか…。じゃあ、ハッサンは攻撃力の一番高い氷のやいばで、バーバラにグラコスの槍を渡そうかな。」
「あたしが?」
「うん。炎のツメをミレーユに持たせれば、メラミをダブルで打てるから、かなりの火力になると思っているんだ。だから、君に渡そうと思っているんだけれど。」
「でもあたし、今まで槍を使ったことがないんだけれど…。」
「試しに素振りをしてみれば、使いこなせるかどうかが分かるわ。外に出て、練習してみる?」
「そうね。とにかくやってみる。」
4人が外に出ると、バーバラは早速グラコスの槍で素振りをしてみた。
しかしいまいちスイング速度が遅く、ハッサンの見る目は厳しかった。
「うーーん…、正直、隙だらけだな。何だか片手の力だけで振っているような…。これじゃいざ実戦となった時に、攻撃が当たりにくいだろうな。」
「あたしだって真面目に振っているんだけれど…。」
「そうか…。当たれば会心の一撃ってなるんだったら少し譲ってOKを出せるんだが、これじゃメラミ唱える方が圧倒的に良さそうだな。」
「結局あたしじゃ使いこなせないと考えた方が良さそうね。」
バーバラは悔しそうな表情を浮かべていた。
リベラ「でも、ハッサンは君を責めているわけじゃないんだ。それは分かってくれ。」
「それはあたしだって分かっているわ。正直、ベギラゴンが使えるようになった以上、攻撃はこれかメラミが主体になりそうだし、この槍は相手の攻撃を受け止める時に使うことになりそうね。」
ミレーユ「受け止めるって?」
「あたし、過去に、ひのきの棒を持って映画で共演したエリーゼと打ち合いの練習をしたことがあるの。それを応用すれば何とか防御用には使えるかなって思って。」
リベラ「それだと、バーバラは呪文専門で攻撃をすることになるね。」
ミレーユ「でも攻撃の度に呪文ばかりを唱えていては、MPがどんどん減っていってしまうわね。」
ハッサン「それにこの中でベホマを使えるのはお前しかいないから、回復役としてのMPは必要だよな。」
「そうねえ…。じゃあ、あたしがMPを節約したい時にはハッサンと武器を交換してもいい?」
「氷のやいばとか?」
「うんっ!それだったら何とか使いこなせそうだし、ヒャダルコ唱え放題になるから。」
「俺としては追加効果は是非ともほしいんだけどな。」
リベラ「そこは状況次第で臨機応変に対応しようよ。それにハッサンには色々な特技もあるから、通常攻撃だけが全てじゃないし。」
「あっ、そうだな。俺にはせいけん突きや気合ためなどがあったな。忘れていたぜ。それにこの槍があれば自分にスカラをかけた上で身代わりや仁王立ちというやり方もあるからな。」
ミレーユ「それに、私は新しい武器を手に入れるまでの間、おばあちゃんから月の扇を借りるという手もあるから、炎のツメをバーバラに手渡すのも悪くないわね。こうすればあなたは消費MP無しでメラミを唱えられるわよ。」
「そうなればあたしはMPを回復や補助に回せるわね。結局色々なやり方があるってわけね。あたしとしては楽しみだわ。」
笑っているバーバラに対し、リベラは複雑な表情を浮かべていた。
(バーバラ…、僕が炎の剣を手に入れられたのと引き換えに、君をこんな目に合わせて、本当にごめんね。この恩は絶対に忘れないよ。大事に使っていくからね。)
この日の話し合いの結果、ひとまず武器はミレーユが月の扇を借りることになり、氷のやいばと炎のツメはハッサンとバーバラがどちらを持つかをじゃんけんで決めることにした。
2人「せーの、じゃんけんぽん!」
結果はハッサンがグー、バーバラがパーだった。
「わーい、勝った勝った!じゃあ、あたし、氷のやいばにするっ!」
その結果、ハッサンは炎のツメとグラコスの槍を掛け持ちすることになり、状況に応じて持ち替えていくことになった。
その後、4人が会話を楽しんでいると、グランマーズがミレーユのところにやってきて、ベホイミの威力を上げる練習を始めようかと言い出した。
それからミレーユはグランマーズの監修のもとで自分にベホイミを唱え続けた。
彼女のHPはとっくに最大値になっていたため、一見すると無駄打ちになっていたが、グランマーズは実際に何ポイント回復したのかについてはお見通しだったため、いちいち誰かのHPを減らすことなく唱えることが出来た。
その甲斐あって、ミレーユは試行錯誤をしながらMPが尽きるまでベホイミを唱え続けた。
「おばあちゃん、どうかしら?」
「まあ、平均の回復量は通常よりも少し上がった程度じゃろうが、最大回復量ならばすでに110と見て良さそうじゃ。もう少ししたらベホイミを超えた新呪文と解釈してよくなるじゃろう。」
「本当に?じゃあ、私もバーバラのように新しい呪文を身に付けられそうね。そうなったらベホマって解釈してもいいかしら?」
「ベホマはあくまでもHP完全回復じゃから、それは違うのう。」
「でもベホイミとベホマの間って(DQ6の世界では)該当する呪文が無いわよね。」
「そうなるのう。それならお前さんがその呪文に名前をつけてみるかのう。」
「えっ?自分で命名するの?」
「そうじゃ。悪くはなかろう。」
「…考えたことなかったわねえ。どうしようかしら?」
「自分でいい名前が浮かばんのじゃったら、みんなに相談してみるかの?」
「うーーん…。そうしてみようかしらね。」
ミレーユはリベラ達に名前を募集してみることにし、一人ずつ名前を聞いてみた。
リベラ「ベホイミとベホマの間だから、僕としては『ベホイマ』でどうかなと思っているんだけれど。」
「うーん…。」
「変な名前だったかな?」
「そういうわけではないんだけれど、ベホマと似ている気がするから、名前を間違えるかもしれないのよね。」
「あっ、そうか。もし噛んだら違う呪文になったり、呪文が発動しなくなったりするかもしれないね。」
「そうなのよ。」
「じゃあ、ベホイムかベホイメかベホイモ。」
「それって、マミムメモを順番に並べていったような感じね。」
「バレた?単純過ぎたかな?」
「大丈夫。立派な名前よ。じゃあ、ベホイミの『ミ』の次に来る文字を取って『ベホイム』でいい?」
「うん、いいよ。」
というわけで、リベラのアイデアはベホイムに決まった。
次にハッサンが考えたアイデアは「ベホーマ」だった。
「ベホマとかなり似ているわね。」
「そうか?そこはちゃんと区別出来ると思うけれどな。」
「でもいざと言うとき、間違えたら嫌なのよね。」
「分かった。ベホイーマでどうだ?」
「それで決まりにしていい?」
「おお、いいぜ。」
というわけで、ハッサンとの会話は15秒で終了した。
ミレーユは次にバーバラに意見を聞いてみることにした。
「あたしはすぐに思いついたよ。」
「どんな名前なの?」
「ベホイムーチョ!」
「……。」
「あら、引いちゃった?あたしとしてはいい名前だと思ったんだけれど。」
「…名前、長いわね。7文字?」
「うんっ!マジックバリアも7文字だから!」
「……。」
(ま、まあ、ムーチョという言葉自体はまじめな意味(※muchoはスペイン語で「たくさん」と言う意味です。)だけれど、こうやって聞くと、微妙な感じね。)
バーバラのセンスのビミョーさに、ミレーユは黙り込んでしまった。
「というわけで、あたしのアイデアはベホイムーチョで決まりっ!」
館の自分の部屋に戻ったミレーユは「ベホイム」と「ベホイーマ」の2つを心の中で何度も連呼し、どちらがしっくり来るかシミュレーションを繰り返した。
そして最終的にリベラが提案したベホイムを正式名として採用することにし、3人に打ち明けた。
「何だか恐れ多いんだけれど、どうもありがとう。」
「あたしのアイデアは最終候補にも残らなかったのね。」
「バーバラ、せっかく聞いたのにごめんね。でも『ム』の部分が採用されたから、これで許してね。」
「あっ、そうか。それなら納得!」
こうして、仲間達の了解を得た上で、ミレーユの新呪文の名前が決まった。
そんな彼女を見て、リベラは自分も何か殻をぶち破って、何か新しい能力を身に付けたいと言い出した。
ハッサン「お前は何をするつもりなんだ?」
「そうだなあ…。一つ挙げるとすれば、この剣は道具として使うとイオの効果があるんだけれど、これをイオラにするとか。」
「ほう…。確かにイオラになれば道具使用としての価値も飛躍的に上がるな。」
「そうなんだ。でも…。」
「でも、何だ?」
「この剣で確かに攻撃力は上がったんだけれど、相手を攻撃することが本当にバーバラを守るということにつながるのか気になっているんだ。だから、少し迷っているんだよね。」
ミレーユ「確かに敵を倒すことばかりが必ずしも正しいことではないのは、テリーを見ていて感じたことだから、一理あるわね。」
バーバラ「テリーを見ていてって、水晶玉で?」
「そうよ。」
「ミレーユはテリーのどのような場面を見ていたの?」
「実はね…。」
ミレーユはテリーがデュランの子供達に出会って仲良くなったこと、彼ら2人が旅人の洞くつでドランゴと一緒に過ごしていること、そしてデュランにも家族がいたということを思い知らされ、彼を倒してしまったことに罪悪感を抱いていたことを打ち明けた。
リベラ「そうか…。あの時は倒さなければならない戦いだったから、倒してしまったけれど…。」
ハッサン「何だかその子供達に悪いことをしてしまったな…。」
バーバラ「もしデュランが改心して戻ってきてくれたらいいんだけれどな…。」
ミレーユ「私もそう思ったわ。だからこそ、私は攻撃呪文ではなく、回復呪文であるベホイミの威力を上げることにしたの。彼らへのせめてもの償いとしてね。そして、いざという時にはたとえ敵対する立場であっても私はベホイミやベホイムを唱えてあげたいと思っているわ。」
彼女の話を聞いて、他の3人も心を動かされた。
ハッサン「テリーって、普段はあんなにぶっきらぼうだけれど、そんな優しさもあったんだな。改めて彼を見直したぜ。」
「何だか、あたしがベギラゴン覚えたのが恥ずかしくなってきちゃった…。」
「バーバラ、そんなふうに考えなくていいよ。だって、君がいなかったらミレーユのベホイムが誕生することはなかったし、僕も新しい能力について考えることもなかったから。」
「ありがとう…。そう言われて、何だか救われた気がしたわ。」
リベラはバーバラを励ました後、ミレーユの話してくれたことを踏まえて、みんなを守る方法について考え始めた。
(スカラやスクルトはミレーユとバーバラがすでに使えるし、出来ることなら2人にはない能力を身に付けたいな。もし好きな能力を身に付けられるのであれば、マジックバリアかいてつく波動がいいな。)
彼の心の中には、新たな目標が生まれていた。