トルッカ近郊の森林で火事が発生していることは、マーズの館にいるハッサン、ミレーユ、チャモロのもとにも届いた。
ハッサン「これは大変だ。早く現地に行かなければな。」
チャモロ「でも、まずは役割をしっかりと決めましょう。」
ミレーユ「そうね。水や氷を生みだせる人でなければ消火活動が出来ないから。」
「そうか…。じゃあ俺はリベラと一緒に避難活動になるのか?」
「そうだとは思いますが、私としては町の人がみんな避難してしまうと、嫌なことが起こりそうな気がするんです。」
「嫌なことって?」
「この隙に山賊や盗賊が町に来て空き巣をしていくとか。」
「変なこと言わないでくれ!」
「でも、それは十分にあり得ることよ。さっきバーバラが『油臭いにおいがする』って言っていたから。きっとあちこちで一斉に油をまいて火をつけ、そのどさくさに紛れて盗みをしていくと思うわ。」
「じゃあ、町に行けばたぶん戦闘になりますね。ハッサンは町の見回りをお願いします!」
「おう、分かったぜ。」
「チャモロはテリーにも声をかけてあげて。今、旅人の洞くつにいるわ。彼はヒャダルコを使えるから強力な助っ人になるはずよ。」
「でも、私が出発したらミレーユさんはどうやって移動するんですか?」
「私はこういう時のためにキメラの翼のストックがあるから、その点は大丈夫よ。現地に着いたら私もヒャドで消火活動をするわ。」
「分かりました。ではすぐに出かけます!」
チャモロはグラコスの槍とゲントの杖を持って飛び立っていった。
ミレーユは自分も装備を整えようと、月の扇とみかわしの服を取りに行った。
しかし、それらがあるはずの場所に置いていなかったため、彼女は「えっ?どうして?」と言って、オロオロしていた。
「もしかして、ばあさんが持っていったんじゃねえか?」
「あっ、そうかもしれないわね。でも、それなら装備はどうしようかしら…。」
「ぐずぐずしている暇はねえ。こうなったら装備無しでも行くしかないだろ。」
「そうね…。悔しいけれど、時間は待ってくれないし、早くバーバラのところに行かなければ。」
「ああ。俺達も行くぞ!」
「ええ。」
2人は外に出て扉に鍵をかけると、トルッカに向けて飛び立っていった。
その頃、リベラとエリザは町の人々を安全な場所に避難させていた。
「これでもう逃げ遅れた人はいないはずだ。」
エリザ「でもこのままじゃ家が燃えちゃうよお…。」
「大丈夫。バーバラががんばって消火活動をしているから。」
「でも一人で消せるようなものではなさそうだけれど、本当に大丈夫なの?」
「僕としては今から彼女のところに向かうつもりだけれど…。」
「向かうつもりだけれど?」
「僕では消火活動の術がないし、どうすればいいのか分からなくて。」
「じゃあせめて彼女と交代で消火活動をしてあげて。」
「あっ、そうだね。分かった。じゃあ、行ってくる。みんなを頼んだよ。」
「うん。頑張ってね。」
エリザから声をかけられた後、リベラは避難所を飛び出して行った。
彼が町の中を走っていると、ちょうど家の窓から誰かが出てくるのを目撃した。
「どうしました?逃げ遅れたんですか?」
すると彼らは驚きながら「しまった!見つかった!」「よりによって見回りがいたとは!」と言って、その場から逃げ出そうとした。
そのしゃべり方や行動からして、明らかに空き巣行為をしていた2人組は、一瞬どうしようか迷った。
しかし片一方が「スモック!こうなったらやっちまおうぜ!」と言い出すと、スモックも「おう、ビッグの兄貴!」と言い出してきたため、リベラは戦闘になることを覚悟した。
(くっ!1秒でも早くバーバラのところに行きたいのに…。でも出くわしてしまった以上、戦うしかないのか!)
彼ははやる気持ちを抑え、炎の剣を持って身構えた。
するとビッグは大きく息を吸い込み、気合ためのモーションに入った。
そしてスモックは何とメラミを放ってきた。
以前戦った時、彼らは呪文を使わなかったはずだが、どうやらどこかで炎のツメを手に入れたようだ。
一方のリベラは通常攻撃と追加攻撃でビッグにダメージを与えた。
しかし反撃として、彼から力任せの強力な攻撃を受けてしまった。
リベラはHPをかなり減らしながらも、ビッグをかばったスモックに通常攻撃と追加攻撃をヒットさせた。
(とはいえ、気合ためとメラミは厳しいな。これではHPをどんどん削られてしまう。炎の剣を手に入れて攻撃力は飛躍的に上がったけれど、僕自身は回復方法がホイミしかない。以前の旅を含めてこれまでバーバラと一緒にいた時、彼女に回復を任せていたツケがこんなところで出てしまうなんて…。)
彼は改めて仲間の存在、特に回復役の大きさを認識させられていた。
(でも、一人でもここは何とかしなければ。確かカンダタと戦った時のテリーはライデインを駆使していた。それなら僕も!)
彼はそのことを思い出すと、とっさに後ずさりをして距離をとった。
するとスモックはアモールの水を使ってHPを回復させ、ビッグはどこで手に入れたのか、まふうじの杖を使ってきたため、リベラはマホトーン状態になってしまった。
(し、しまった!よりによって呪文が使えなくなってしまうなんて!)
頼みのライデインだけでなくホイミ、緊急脱出用のルーラまでも封じられ、彼が動揺していると、ビッグとスモックはそれぞれアモールの水と薬草を使ったため、これまで与えたダメージをどんどんリセットされる状況になった。
(まずい!早く決着をつけないと!)
リベラは通常攻撃と追加攻撃をスモックにヒットさせた。
だが、彼をダウンさせるまでには至らず、しかもビッグが大きく息を吸い込み、スモックも炎のツメを構えてきた。
このままではやられる!
一瞬そのことが頭をよぎった時、後方から「リベラ!」という声が聞こえた。
「えっ?ハッサン?」
彼が後ろを振り返ると、ハッサンとミレーユが駆け寄ってきた。
ハッサン「メラミ!」
ミレーユ「イオ!」
2人が攻撃をするとメラミはビッグに、イオは2人にヒットした。
するとビッグの集中が乱れ、気合ためがキャンセルになった。
一方のスモックは助っ人が登場したことに驚き、どうすればいいのか分からない状態になった。
「2人とも、来てくれたんだね!」
「ああ。助けに来たぜ!」
「リベラ、早速傷を回復させてあげるわ。ベホイム!」
ミレーユが初めて実戦でその呪文を唱えると、HPはベホイミとホイミを合わせたくらい回復した。
「ありがとう、助かったよ。」
「じゃあ、俺も協力するぜ。ミレーユは早くバーバラのところへ!」
「ええ、分かったわ。気をつけてね。」
ミレーユは現場に走って向かっていった。
一方のリベラは1対2から2対2の戦いになったことで、状況が一気に好転した。
そして彼とハッサンは通常攻撃と追加攻撃をビッグに叩き込み、ダウンさせることに成功した。
相方を倒され、どうすればいいのか分からなくなったスモックは、とっさに逃げ出そうとした。
リベラ「待て!お前達、何か盗んだだろう!」
ハッサン「降参してそれらを置いていけ!」
怒りの声をぶつけられたスモックは「あわわわ…。奪ったものは置いていきます。命はお助け下さい…。」と言って、降参を宣言した。
そして炎のツメをはじめ、盗んだものをその場に出していった。
しばらく気絶していたビッグも気が付くと、まふうじの杖をはじめ、持っていたものやお金をその場に置いた。
すると心配になって町に戻ってきた町長や、数人の人が通りかかったため、リベラとハッサンは彼らの身柄を引き渡した。
町長「君達、ご苦労様。そしてありがとう。それにひきかえ、お前達は放火に加えて、泥棒までしていたとは。」
ビッグ「ちょっと待ってくれ!俺達は放火なんかしてないぞ!」
「今更何を言っているんだ!」
スモック「本当だ。確かに空き巣は事実だが、火はつけていない。」
「じゃあ、放火したのは別にいるとでも言うのか?」
ビッグ「そうだ。犯人はカンダタとその子分達だ。」
スモック「ああ。嘘ではない。信じてくれ。」
「そして言い方は悪いが、これは空き巣のチャンスと思ってな。」
「それでこの町にやってきたんだ。」
2人はカンダタ達が森のあちこちで油をまいて、一斉に火をつけたことを告げた。
リベラ「つまり、まだ敵がいるということか。」
ハッサン「そうだな。警戒の手を緩めるわけにはいかないな。」
町長「分かった。じゃあ、君達に町の警備をお願いすることにする。我々はこいつらを連れて行くぞ!」
町民一同「分かりました!」
こうしてビッグとスモックは逮捕され、盗まれたものを取り返すことに成功した。
しかし、バーバラのことが心配でたまらないリベラの心は落ち着かなかった。
「僕、彼女のところに早く行きたいのに…。」
「大丈夫だ。ミレーユが向かったし、さらにチャモロとテリーにも応援を頼んでいる。彼らが何とかしてくれるさ。」
「本当に?」
「ああ。だからバーバラのことはみんなに任せて、俺達は見回りをするぞ。」
「分かった。」
ハッサンのおかげで落ち着きを取り戻したリベラは、いつ敵と遭遇してもいいように見回りをしていった。
一方、バーバラはすでに全身汗だくになり、息を切らしながら一人で懸命に消火活動をしていた。
「ええいっ!ヒャダルコ…。ヒャダルコ…。お願い…。早く鎮火して…。リベラ…、誰か…、誰でもいいから…誰か来て…。あついよお。あついよお…。」
まどうしのローブで炎の影響は軽減されているとはいえ、彼女はすでに足取りが重くなり、ヒャダルコの威力も明らかに落ちていた。
「お願い…。リベラ…。」
今にも泣きそうな表情でそうつぶやくと、ふと「バーバラさん、大丈夫ですか?」という声が聞こえた。
「あの声は…。」
彼女がふと後ろを向くと、そこにはチャモロとテリーが駆け足でやってくるのが見えた。
「来てくれたの…?」
助っ人が駆けつけてくれたのを見た彼女は、途端に緊張の糸が切れたのか、体がぐらついていった。
「おっと、危ねえ!」
テリーは今にも倒れそうなバーバラを受け止めた。
「来てくれたのね…。」
チャモロ「はい、ミレーユさんの水晶玉で知りました。」
「リベラは…?」
テリー「あいつはハッサンと一緒に町で見回りをしているはずだ。」
「じゃあ…、ここには来られないんだ…。」
チャモロ「でも、彼の代わりにここは私達が何とかします。後は任せてください。」
「お願い…。」
チャモロはバーバラから氷のやいばを受け取ると、火の近くに行き、ヒャダルコを出し続けた。
「テリー…、あたし…、水ほしい…。」
バーバラは苦しそうな声で訴えた。
「すまねえ。そこまでは用意してなかった。でも今姉さんがこっちに向かっているはずだから、もう少し辛抱してくれ。」
テリーは一言謝るとバーバラを横にした。
するとミレーユが息を切らしながら走ってきた。
「バーバラ!大丈夫?」
「姉さん、俺は消火活動に行くから、彼女を頼む。」
「分かったわ!」
ミレーユはバーバラのところにたどり着くと、急いでアモールの水を取り出した。
「よく頑張ったわね。もう大丈夫よ。」
彼女はビンのふたを開けると、少しずつバーバラの口に水を入れていった。
(どうやら脱水症状を起こしているようね。こんな状態になるまで頑張っていたのね。ごめんね、もっと早く到着していれば…。)
ミレーユは心の中で何度も謝り続けた。
そしてまどうしのローブを外すとヒャドを唱え、出てきた氷のかたまりをぬのきれで包み、バーバラの額やわきの下などに置いていった。
やがて彼女の症状も和らぎ、落ち着きを取り戻したことを確認すると、ミレーユは自身も現場に行き、ヒャドを唱え続けた。
3人で協力して消火活動をした結果、火はだんだんおさまっていった。
チャモロ「ふう…。どうやら鎮火したようですね。」
テリー「ああ、そうだな。これで町はもう大丈夫だ。」
ミレーユ「私とテリーはMPを使い切ってしまったけれど、おおごとになる前に対処出来てよかったわね。」
彼らはほっとしながらバーバラのところに歩いて向かっていった。
するとそこにはまどうしのローブとぬのきれが残されているだけで、本人の姿が無かった。
チャモロ「バーバラさん、どうしたんでしょうか?」
テリー「まさか、リベラのところに向かったのか?」
ミレーユ「まだ安静にしているべきなのに!」
それまでほっとしていた3人の表情は、一瞬にして変わった。
そしてチャモロはローブとぬのきれを拾い上げると、3人一緒にトルッカに向かっていった。
時をさかのぼると、町の見回りをしていたリベラとハッサンはカンダタと4人の子分達に遭遇し、戦闘になっていた。
彼らは事前に守備力を上げていたのか、こちらからの通常攻撃では、なかなかダメージを与えられなかった。
(ズルい、こんな作戦。)
リベラとハッサンが顔をしかめていると、カンダタはリベラに力任せの攻撃を、子分達は数にものを言わせてハッサンに集中攻撃をしてきた。
そんな中、回復手段はリベラのホイミしかなく、受けたダメージには到底追いつかなかった。
リベラ「このままではまずいな。どうすればいいんだ。」
ハッサン「とにかく呪文で決着をつけるしかないようだな。」
「僕はライデインで攻撃になりそうだね。」
「それならよ、炎の剣を貸してくれ。俺はイオで攻撃する。」
「分かった。」
ハッサンが炎の剣を受け取った時、ふと空から「ベホマ!」という声が飛んできた。
するとリベラのHPが最大値にまで回復した。
「この声は?」
リベラが声のした方を向くと、空からバーバラが舞い降りてきて、地面に降り立った。
「よかった、間に合って。」
彼女は次にハッサンにもベホマをかけてくれた。
「バーバラ、来てくれたんだね!」
「お前がいれば百人力だぜ!」
頼もしい回復役が来てくれたことで形勢は一気に好転し、2人の顔に明るさが戻った。
そしてリベラとハッサンはそれぞれライデインとイオで全員を攻撃し、バーバラはベギラゴンを唱えて子分全員をダウンさせた。
「くっ!このままではやられてしまう。かくなる上はこれを使うしかないようだな。」
一人残され、あせったカンダタはとっさに袋を開けて、何かを探し始めた。
そうしている間にもリベラはルカニで守備力を下げ、バーバラはメラミを、ハッサンは通常攻撃と追加攻撃をヒットさせた。
すると彼は袋から取り出したアイテムを使い、何かを召喚するという手に打って出た。
出てきたのは何と2匹の爆弾岩だった。
「それじゃお前達、次はこいつらが相手だ!」
カンダタは持っていたバトルアックスで両方の爆弾岩をザクっと攻撃した後、キックでリベラ達のところまで弾き飛ばした。
「それじゃ、あばよ!」
彼は捨てぜりふを言うとともにキメラの翼を取り出して放り投げ、大けがをしている子分達とともに緊急脱出をしていった。
「こら!逃げるな!」
ハッサンがそう叫ぶとほぼ同時に、爆弾岩は奇妙な声を発しながら激しく振動を始めた。
「まさか、これは!」
「まずいぞ、これは!」
リベラとハッサンが叫んだその直後…。