夢のまた夢と言われても   作:地球の星

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Quest.23 僕のホイミタンク

 リベラはボロボロの体になって打ちひしがれていたバーバラを元気づけた後、ルーラで彼女と一緒に大空へと飛び立っていった。

 2人はお互いの顔を見つめ合いながら空の旅を楽しんだ後、まずトルッカに降り立った。

 前日は自分の姿を見せることを嫌がっていたバーバラだったが、今度は直接エリザと町長に会うことにした。

 彼らは包帯だらけのバーバラを見て一旦は驚きながらも、彼女が立ち直ってくれたことを素直に喜んでくれた。

 そしてまた痛み止めの薬が欲しくなったらいつでも立ち寄って欲しいと告げた後、飛び立っていく2人の姿を見守った。

 

 彼らが次に降り立ったのはレイドック城だった。

「それじゃ僕は両親から力の盾をもらってくるから、ちょっと待ってて。」

 リベラが一人で城の中に入っていこうとすると、バーバラは「待って。」と彼を呼び止めた。

「何?」

「あたしも一緒に行きたい。」

「えっ?でも…。」

「あたしは平気よ。リベラがあたしのことをきれいって言ってくれたから。」

「そうだったね。分かった。じゃあ、一緒に行こう。」

「うんっ!」

 彼らは手をつなぐことは出来ないものの、横に並んで幸せそうに微笑みながら城の中に入っていった。

 

 力の盾を用意していたレイドックとシェーラは、事前にリベラからバーバラの身に起きたことについて聞いてはいたが、いざ彼女の両腕を見るなりビックリした。

 それを見てリベラはどうしようかあたふたしてしまったが、当のバーバラは我慢しながら冷静を保ち続けた。

「あたしは大丈夫。もう立ち直りました。」

「とはいえ、これは見るからに大変なけがですね。もしよかったら、私がマッサージをしたり、薬草で作った塗り薬を塗るなどして、世話をしてあげましょうか?」

「えっ?シェーラさん、いいの?」

「はい。息子があなたのことを話してくれた時『どうしてバーバラばかりがこんな目に…。』と言いながら、打ちひしがれていた時の表情は忘れられません。それを見て、私としてもあなたに何かをしてあげたいと思っていましたから。」

「じゃあ、ぜひお願いします。これまでターニアが一人であたしの世話をしていたから、彼女も精神的に疲れちゃっていたのよ。その負担を少しでも減らすためにも、よろしくお願いします!」

「分かりました。いつでもお待ちしていますよ。」

「ありがとうございます!」

 彼女達の会話が終わると、今度はレイドックが力の盾を用意して、リベラに差し出してきた。

「それではお前にこれを渡すことにする。防具としてだけでなく、自分で回復役になれるように頑張るのだぞ。」

「はい、父さん。大事に使わせていただきます。」

 リベラは深々とお辞儀をしながら盾を受け取った。

「それからこれは兵士から聞いた話だが、最近元々この世界にいなかったモンスターが頻繁に出現するようになってきたということだ。このままではこの世界の平和が脅かされるだろうし、戦闘の機会も増えるだろう。くれぐれも気をつけるのだぞ。」

「はい、少しでも平和を維持出来るように、頑張ります。」

「うむ。兵士達も頑張っておるし、こちらとしても彼らや息子達のためにも出来るだけの支援はするつもりだ。」

「はいっ!」

 リベラは威勢よく言うと、バーバラに「じゃあ、行こうか。」と声をかけ、城の外へ向かっていった。

 

 近くに燃えるもののないところにやってくると、リベラは早速炎の剣を振りかざしてイオを発動させてみた。

 しかし何回やってもその威力は上がらなかった。

「僕、何とかしてこれをイオラにしてみたいんだけれど、ずっとこんな状況なんだ。どうすればいいんだろう?やっぱり道具使用では効果を変えられないのかな?」

「ねえ、リベラはそれを本当にイオラのつもりで放ったの?」

「うーーん…、どちらかと言えば、イオより少しでも強くという感じだったんだけれど。」

「あたしとしては、はっきりとイオラをイメージして欲しいのよね。『少しでも強く』では、何か漠然としている感じがするから。」

「あっ、そうか。じゃあ、バーバラはベギラゴンを覚えようとしていた時は、そんな感じだったの?」

「うん。映画撮影の時は3分の2のベギラマをイメージしていたし、その後は言葉ではベギラマって言っていたけれど、頭の中ではベギラゴンを思い描きながら唱えていたの。」

「目標がしっかりしていたんだね。」

「そうよ。だってそれがあいまいではたどり着けないでしょ?」

「確かにそうだね。でも、そのためにはイオラの威力を前もって見ておいた方がいいよね。確か、イオラを唱えられる人と言えば…。」

「テリーがいるわよ。今度彼に見せてもらったら?」

「分かった。レベルアップのための戦闘を経験する時に、彼にお願いするよ。」

「OK。じゃあ、次は力の盾ね。」

「えっ?そっちも?」

「うんっ!あたしは厳しいわよーっ。」

 バーバラはニヤリと笑った。

「うわーー、先生こわっ。でも、自分で望んだことだから素直に従うよ。」

 リベラは力の盾を両手に持ち、その場で天にかざした。

 しかし結果は何も起きなかった。

「あれ?炎の剣のイオは戦闘中じゃなくても発動したけれど、この盾はダメなのかな?」

 リベラは首をかしげながらもう一度道具使用してみたが、やはり何も起きなかった。

「まいったな。移動中に使えないとなると、どうやってベホイミを伸ばしていこう…。」

「そうねえ…。じゃあ、こんなことしてみようかしらね。」

「何かアイデアでもあるの?」

「うん。ちょっとそれをあたしの足元に置いてくれる?」

「分かった。」

 リベラは言われたとおりに、力の盾をバーバラの足元に置いた。

 彼が何をするんだろうと思っていると、彼女は左足をその上にのせて、「いくわよーーっ!」と言った後、ホイミを唱えた。

「えっ?何、今の!?」

 リベラは思いもよらないものを見て、思わずビックリした。

「あっ、呪文を受け入れてくれたようね。これで移動中でも回復効果が期待出来そうね。」

「バーバラ!足で呪文!?」

「あのね、そっち?」

「う、うん。だってこんなの初めて見たから。どうやって唱えられるようになったの?」

「まあ、あたしとしては、手で唱えられるのなら、足でもって思ったのよね。」

「でも、そんなの僕じゃ全く考えつかなかったよ。」

「あたしだって以前は考えもしなかったわよ。まあ手はこんな状態だけれど、足は無傷だから、それで今回ぶっつけ本番で実践してみたの。でも今回のホイミは通常よりも弱いわね。」

 彼女はその後、足でベホイミとベホマを唱えてみた。

 しかし結果はそのベホイミが通常のホイミ程度で、ベホマに至っては発動すらしなかった。

「うーーん、これから練習を重ねていかないと…。」

 バーバラが不満げな表情を浮かべている一方、リベラにはその姿がまるで奈落の底からはい上がってくるかのようにまぶしく映った。

 すると彼女は力の盾に唱えたホイミとベホイミが役に立つかどうかを確かめるために、歩きながら道具使用してみることを勧めた。

「といっても、少しHPを減らす必要があるんだけれど…。」

「あらそう。じゃあ…。」

 バーバラはそう言うと、自分のスカートをヒラヒラさせた。

「ちょ、ちょっと!」

「ほおら、リベラ。少しだけよ~。」

「やばいって、それ!」

 リベラは慌てながら彼女のところに向かっていった。

 するとバーバラは突如まわし蹴りを披露してヒットさせた。

「痛っっ!!いきなり何するんだよ!」

「きゃははは…、ごめんねえ。まあ、あたしとしては僧侶を極めたら次は武闘家に転職しようと思っていたから、その予行演習にと思ったのよ。」

「とはいえ、そこは手加減してよ!」

「ごめんねえ。でもHPが少しは減ったんだから、その盾を使って歩いてみてくれる?」

「分かったよ。」

 リベラは少しぶぜんとしながらも、力の盾を天にかざして歩き出した。

 するとゆっくりとではあるがHPが回復するのを実感した。

「すごい!本当に移動中に役に立ったよ!」

「よかったわね。じゃあ、これからはあらかじめホイミやベホイミをかけておけば戦闘の合間に回復出来るわね。」

「そうだね。それじゃ僕は力の盾のホイミ効果が無くなったら、君のところにやってきてもいいかな?」

「えっ?わざわざあたしのところに来なくても、寝る前に自分でかけておけばいいのに。」

「確かにそうだけれど、君の呪文で移動中の回復をしたいんだ。そうすれば、君は僕のホイミタンクとして一緒にいられるから。」

「リベラ…。」

 バーバラは告白めいたようなことを言われて、思わず顔を赤らめた。

 そして、自分がリベラの役に立てることを素直に喜び、ホイミとベホイミを繰り返し唱えて、回復量を満タンにしてくれた。

 リベラはそんな彼女の笑顔を見つめていると、ふと大事なことを思い出した。

「あっ、そうだ。僕はあと30分でハッサンと交代で幸せのくつを履くことになっていた…。」

「あら、今休憩時間だったの?」

「そう。僕は昼から深夜まで、ハッサンは深夜から昼までの間に履くことになっているんだ。だから本来、僕は午前中に休んでおくべきなんだけれど、バーバラにどうしても会いたくて、それで寝る間も惜しんでやってきたんだ。ごめんね。」

 リベラは両手を合わせて謝った。

「大丈夫よ。あたしに会いに来て、笑顔にしてくれてありがとう。じゃあ、今度はあたしがリベラを笑顔にしてもいい?」

「ん?何をするの?」

「さっきあたしがスカートヒラヒラとまわし蹴りをした時、見た?」

 バーバラの質問に対し、リベラは一瞬なんのことだろうと思ったが、すぐにその言葉の意味を理解した。

「わーーーーっっ!!!」

 彼はすっかり慌てながら顔をぶんぶんと横に振り、右手で「ない!ない!」のジェスチャーをした。

「あっ、笑った。あたしの思惑通りだったわ。」

「あのね…(汗)。」

「きゃははは、冗談よ。それじゃリベラ、行ってらっしゃい。でも、その前にあたしをライフコッドに送り届けてくれる?」

「バーバラはまだルーラを唱えられないの?」

「今は痛み止めが効いているから頑張れば唱えられるけれど、後でぶり返したら嫌なのよ。それに…。」

「それに?」

「リベラにもう一度お姫様だっこしてほしいな。」

 バーバラは少しもじもじしながら言った。

「分かった。じゃあ、だっこしてあげるよ。」

「うん、お願いね。」

 リベラはバーバラを抱え上げ、ルーラを唱えて飛び立っていった。

 そして彼女が「ターニア、ただいま。」と言いながら家の中に入っていくのを見届けた。

(それじゃ、僕は幸せのくつを履いたらテリーのところに行こう。そして彼にお願いしてイオラを唱えてもらって、しっかりとその威力を焼きつけておこう。)

 リベラはそのアイデアを思いつくと、ハッサンと約束した場所に行く前に、マーズの館に向かった。

 

 そこではミレーユがおり、彼女はリベラを見るなり要件について聞いてきた。

 そして彼は60ゴールドを払ってテリーの居場所を占ってもらうことにした。

 彼はスミスとホイミンと一緒にモンスターと戦っていた。

 

『くらえお前ら!イオラ!』

 リベラの願いが届いていたのか、テリーはその呪文を唱えた。

(そうか、これがイオラの威力か。しっかりと覚えておこう。)

 彼がそう思っていると、スミスもテリーの姿になってイオラを唱えた。

 最終的に彼らは敵を倒し、経験値とお金、そしてアイテムとして毒蛾のナイフを手に入れ、ホイミンが早速それを装備した。

テリー『それにしてもこいつら、今まで見たこともないモンスターだな。』

スミス『やっぱり誰かが異世界からモンスターを召喚しているという噂は本当みたいだな。』

ホイミン『これではこれからますます戦闘の機会が増えそうですね。』

テリー『ああ、そうだな。だが、すでにこの世界に出回っている奴らを倒すだけでは戦闘が終わらねえな。』

スミス『そうだな。召喚している大もとを倒さなければな。それまで戦いは続くだろうから、いちいち変身しなくて済むように、俺にも何か武器が欲しいぜ。』

『だったらアモスにお願いして、彼が持っているまどろみの剣を譲ってもらおうか。』

『おおっ、武器をもらえるのか?』

『ああ、言えば多分譲ってくれるはずだ。』

『じゃあ、彼に会ったら交渉してみるぜ。』

 彼らはルーラでモンストルの町へと飛び立っていった。

 

 ミレーユはそこで映像を消したため、リベラは彼女にお礼を言うと館を後にし、ルーラを唱えてハッサンと約束した場所に向かっていった。

 

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