夢のまた夢と言われても   作:地球の星

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Quest.25 ハッサン復帰

 あと12時間で幸せのくつを返却する状況になったある日の深夜、リベラはハッサンにくつを渡すと、ルーラでレイドックに戻り、眠い目をこすりながら城に入っていった。

 そして軽食を取り、シャワーを浴びた後、ベッドに横になった。

(はあ…。やっと経験値稼ぎが終わった…。思えば少しでも多くの経験値を稼ごうとたくさん歩いたから肉体的にしんどい日々だったし、戦闘に参加した時にはテリー達に本当に我慢をさせてきたな…。でもこれで一度戦闘を経験すればレベルが十分に上がるし、パーティーメンバーに本格的に復帰出来る。炎の剣のイオをしっかりと伸ばすための時間も確保出来るし、バーバラに会ってゆっくりと会話も出来る。早く会いたいな…。)

 すでに疲れ切っていた彼は、彼女の顔を思い浮かべながら眠りに落ちていった。

 

 リベラからくつを受け取り、12時間歩き続けたハッサンは、最終的にマーズの館に戻ってきた。

「ばあさん、帰ったぜ。」

「お帰り、ハッサン。時間ギリギリになってしまったが、よく頑張ったのう。」

「ああ。少しでもたくさん経験値を稼ぎたかったからな。おかげで疲労はピークだし、眠いし、足がバッキバキだぜ。」

「よかろう。それだけ頑張ってきた証拠じゃ。今はゆっくりと休むがよい。」

「そうするぜ。じゃあ、俺は食事を取って、シャワーを浴びて寝る。あばよ。」

 ハッサンはくつを返却すると、足早にサンマリーノに戻っていった。

(やれやれ。もう少しちゃんと感謝をしてほしかったが、まあよかろう。)

 グランマーズはハッサンを見送ると異世界に行き、持ち主のもとに向かっていった。

 

 その頃、ミレーユは命の木の実と不思議な木の実を持ってライフコッドに行き、バーバラとターニアに手渡した。

「どうもありがとう。じゃあ、あたしは命の木の実を頂くわ。」

「私は不思議な木の実をもらうことにします。」

 2人は早速その場でおいしそうに食べた。

 その後、ミレーユはバーバラにベホイムだけでなく、攻撃面でも何か長所を身に付けたいという希望を打ち明けた。

「そうねえ…。炎のツメをもらったとはいえ、攻撃がメラミ専門になるからねえ…。」

「そうなのよ、バーバラ。相手が耐性を持っていたら不利になるし、私にもちゃんと装備出来る武器があればいいんだけれど…。」

「あっ、それならターニアが稽古の時に使っていた破邪の剣はどう?」

「あの剣?確かに私が過去に一時期使っていたことはあるけれど、ターニアの武器をもらってもいいのかしら?」

「それなら気にしないでください。私よりもミレーユさんの方がきっと役に立つと思います。私は氷のやいばで稽古をしていますので。」

「でも、攻撃力が物足りない気がするのよね。せめてもう少し高くすることが出来れば…。」

 バーバラの発言を聞いて、ターニアはいいアイデアを思いつき、手をポンと叩いた。

「あの、それをサリイさんのところに持っていくのはどうでしょうか?」

「あっ、その手があったわね。それで叩き直してもらえば、攻撃力も上がりそうね。」

「では、ミレーユさん。今からその剣を持ってきます。」

 ターニアは家の中に入っていき、破邪の剣を持って戻ってきた。

「どうぞ、ミレーユさん。」

「ありがとう、ターニア。大事に使うからね。」

 ミレーユは剣を受け取ると、キメラの翼でロンガデセオに向かって飛び立っていった。

 

 現地ではサリイとコブレがいた。

 早速ミレーユは破邪の剣を叩き直して強化して欲しいというお願いをした。

「おおっ!ちょうどいいところに依頼が来たぜ。良かったな、親父。」

「そうですね。私達としても助かります。」

 コブレは早速大体の見積もり表を作り、金額を提示した。

「その金額なら十分に支払えます。では、作業の依頼、よろしくお願いします。」

「分かったぜ。多少時間はかかるけれど、強い敵にも太刀打ち出来る武器にしてやるからな。」

「私としても腕がなります。今から作業に向けて頑張っていきます。」

「サリイさん、コブレさん、ありがとうございます。」

 ミレーユはお礼を言うと剣をサリイに渡し、鍛冶屋を後にしていった。

 ちょうどその支払金額を差し引いても身かわしの服が買えるだけのお金が残ったため、彼女は早速それが販売されている武器屋に向かっていった。

 

 ハッサンは十分に休養を取って体力を回復させた後、リベラと一緒にセリーナのところに向かっていった。

「というわけでセリーナ。俺は幸せのくつで貯めた経験値をレベル上げに繋げるために、再び勝負に来た。お願いしてもいいか?」

「そうか。いいだろう。私もあんたと本気の勝負をしてみたかったんだ。」

「いいのか?」

「ああ。ただ、以前にも言ったが、私の持っている特技は惜しまずに使うつもりだ。簡単に勝てると思うなよ。」

「俺も全力で行くぜ。勝たないとレベルアップ出来ないからな。」

「じゃあ、今から1対1でガチ勝負を開始しよう。」

「OK。リベラ、審判を頼んだぜ。」

「うん、いいよ。じゃあ2人とも向かい合ってください。」

 彼の指示を受けて、ハッサンとセリーナは「お願いします。」と言ってお辞儀をした。

 

 試合が始まると、まずセリーナは素手でのはやぶさぎりで連続攻撃を仕掛けてきた。

 ハッサンは攻撃を受けながら素手での通常攻撃で反撃をした。

 次にセリーナは大きく息を吸い込み、気合ためのモーションに入った。

 一方のハッサンも気合ためを駆使し、次のターンではお互い同じ技で攻撃をした。

 するとお互いの威力を打ち消す形になったため、ダメージはそれほど受けなかった。

 次にハッサンは飛びひざ蹴りで向かっていったが、セリーナは攻撃をうまくかわし、まわし蹴りを叩き込んだ。

 ハッサンは体勢を崩して倒れ込んでしまい、リベラからカウントが入ったが、立ち上がってファイティングポーズを見せたため、勝負はそのまま続行となった。

 次のターンでハッサンがせいけん突きのモーションを起こすと、セリーナもいつの間に身に付けたのか、同じ技を繰り出してきた。

 2人はお互いうまく攻撃をかわし、ノーダメージだった。

(そっちが俺の技を盗むなら、俺もお前の技を使わせてもらうぜ!)

 ハッサンはぶっつけ本番ではやぶさぎりを使い、ヒットさせた。

 するとセリーナもはやぶさぎりで反撃して、こちらもヒットさせた。

 ハッサンはまたもダウンをしてしまい、リベラからカウントを受けてしまった。

(こいつ、本気を出したらこんなにも強いのか。ミレーユやバーバラと全くタイプは違うが、ぜひパーティーメンバーに加わって欲しい逸材だな。)

 彼はそう考えながら立ち上がり、ファイティングポーズを見せた。

 そして捨て身で向かっていき、セリーナに大きなダメージを与えた。

 彼女は突き飛ばされた勢いでダウンしてしまい、リベラからカウントが入ったが、こちらもポーズを見せて試合が続行となった。

 

 ターンが経過するにつれて、お互いのダメージはすでにかなり蓄積していった。

(もう少し俺のレベルが高ければ十分に勝てる相手なのに…。だが、そんなことは言っていられない。とにかく早く決着をつけなければ。)

 ハッサンは大きく息を吸い込み、気合ためを使うことにした。

(これを食らったらダウンするだろうな。だったらその前にこの技にかけてみよう。)

 セリーナは「くらえええっ!」と叫びながらまじんぎりに打って出た。

 決まれば自分の勝ち、外せば負けという一か八かの賭けだったが、ハッサンは攻撃を冷静に見極め、うまく攻撃をかわした。

(悪いな。俺のレベルアップのためだ。この勝負、もらったぜ!)

 彼が勝利を確信しながらセリーナに向かっていくと、何とリベラが試合を止めようと、間に入り込んできた。

「わああっ!」

 すでに勢いがついていたハッサンは攻撃を止めることが出来ず、リベラに気合ためを叩き込んでしまった。

「痛ーーーっ!!」

 受け身も取れないままダメージを受けた彼はその場にバタリと倒れ込んでしまった。

 すると皮肉にもハッサンのレベルが上がっていき、バーバラを助ける以前に匹敵するほどの能力になった。

「おい、大丈夫か!?」

「止めに入ったタイミングが悪すぎたな。」

 ハッサンとセリーナが心配そうに声をかけると、リベラは「だ、大丈夫です…。」と言いながらゆっくりと立ち上がった。

「結果的にはこの勝負、私の負けだが、いい経験になったぜ。これからあんたと勝負しても私はもう勝てないだろうが、言い換えれば、あんたは十分にパーティーメンバーに復帰出来るようになったということになるからな。」

「ああ、それは間違いないぜ。ありがとうな。それにあんたの見せてくれた特技をこれから参考にさせてもらうぜ。」

「頑張れよ。私も応援しているからな。私もせいけん突きを覚えたし、これからチャモロとモンスター討伐に出かける時に早速使うことにする。」

「そうか。お互い頑張ろうぜ。」

 2人はお辞儀をすると、握手をしてお互いの健闘を称えあった。

 その後、リベラは2人にホイミをかけてHPを回復させ、彼らをルーラで送り届けた。

 そして彼は力の盾の道具使用でバーバラから間接的に自身のHPを回復させていった。

 

 ミレーユが破邪の剣をサリイ達に預けた後、彼女は月の扇をグランマーズから借りることになった。

 その際、彼女がとある町でいどまねきが出現し、町民が避難するという事態になったという情報をつかんだため、ミレーユに討伐を依頼した。

 一人では無理と判断した彼女は助っ人を呼ぶために、再びライフコッドに向かっていった。

 現地ではリベラ、バーバラ、ターニアがおり、相談の結果、バーバラを除く3人で討伐に向かった。

 

 現地ではいどまねき2匹が町を我が物顔で歩き回っており、通りかかったリベラ達を見るなり、いきなり戦闘になった。

 リベラはルカニで一匹ずつ守備力を下げ、ミレーユはスクルトを2回かけてこちらの守備力を上げた。

 ターニアは持っていた氷のやいばでヒャダルコを2回発動させたが、相手が強耐性を持っていたため、思うようにダメージを与えられずにいた。

 その間に相手はいしつぶてや、おたけび(失敗)、気合ためからの通常攻撃(リベラにヒット)を仕掛けてきた。

 次のターンではミレーユとリベラが通常攻撃し、ターニアはミレーユから渡してもらった炎のツメでメラミを発動させ、片一方を集中攻撃した。

 一方、集中攻撃されている方のいどまねきはおたけびを使い、ターニアがひるんでしまった。

 もう一方は気合ためをしてきたため、このターンはノーダメージで済んだが、このままではターニアが危ないことを察知したリベラは次のターンでとっさに彼女をかばった。

 ミレーユは集中攻撃されているいどまねきに通常攻撃を叩き込み、ダウンさせた。

 その後は通常攻撃とメラミで残った一匹を総攻撃し、どうにかいどまねきを討伐することに成功した。

 戦闘後、3人はそれぞれ回復呪文でHPを回復させた。

 

 この戦闘でリベラとターニアのレベルがアップし、ターニアはルーラが使えるようになった。

 しかし、いまいち戦力になれなかった彼女に笑顔はなかった。

「ターニア、気にしなくていいよ。バーバラにだってそういう時があったんだから。」

「そうよ。彼女は仲間になってすぐの頃は今のあなたのように悔しい思いをしていたわ。」

 リベラとミレーユはどうにかしてターニアを励まそうとした。

 しかし、彼女の気持ちは好転せず、結局バーバラの穴を埋められるほどの存在にはなれなかった。

「私じゃ戦力にはなれないのかな…。これじゃ種泥棒なんて言われてしまいそう…。」

 それを聞いたリベラとミレーユもどういう言葉をかけてあげたらいいのか分からず、何も言えなかった。

 

 3人がマーズの館に行くと、グランマーズにその悩みを打ち明けた。

 すると彼女は水晶玉でレイドック城を映し出した。

 そこではバーバラが傷ついた兵士の人達に足でホイミやベホイミをかけていた。

「お姉ちゃん、いつの間に?」

「彼女はシェーラに手当をしてもらうために、自力でルーラを唱えてその場所に来たわけじゃ。そうしたら、時を同じくして、兵士達が何人も傷ついて帰ってきてのう。それでこうしているんじゃ。」

 バーバラはただ傷を回復させるだけでなく、兵士達におてんば発言をしたり、持ち歌を歌ったりして、精神面でも彼らの役に立っていた。

 両腕があまり自由に使えないハンデを抱えながらも、まるで看護師のように、そしてアイドルのように行動するその姿はターニアにとっても励みになった。

 するとその時、たまたまレイドック城に来ていたブラストが、彼女にアークボルトに来てもらい、そちらでも兵士達にホイミをかけてほしいという依頼をした。

『うーーん、あたしを頼ってくれるのはうれしいけれど、この後シェーラさんに治療してもらう予定になっているし、MPも残り少ないのよね。代わりにターニアにお願いしたいけれど、彼女はいどまねきの討伐に出かけているし…。』

 バーバラの何気ない発言を聞いて、ターニアの表情が変わった。

(これよ!こういう形で人の役に立てるわね。)

 それを見て、彼女は早速アークボルトに行くことを決め、覚えたばかりのルーラでリベラと一緒にレイドック城に飛んでいった。

 

 城に到着するとターニアはブラストに会い、要件を話した。

 そしてバーバラの代役として彼と一緒にアークボルトに向かっていった。

 城にとどまったリベラはレイドックに会い、ハッサンのために用意してくれたプラチナシールドを受け取った。

 その際、彼は話し合いの中でラミアスの剣を使わせてほしいとお願いした。

「うーーむ…。」

「父さん、お願いします。たとえ武器として使うことが出来なくても、せめてバイキルト用として使わせてください!」

「……。」

 レイドックはしばらく考え続けたが、最終的に「いいだろう。最近手ごわいモンスターも出るようになってきたことだし、まずは道具としての使用を許可する。」と言って、OKを出してくれた。

「父さん、ありがとうございます!じゃあ、早速使わせていただきます!」

 リベラは嬉しそうに返事をすると、その剣が封印されている場所に向かっていった。

(これで僕の呪文にバイキルトが加わった。これから厳しい戦いが待っているかもしれないけれど、絶対にこの平和を維持してみせる。)

 彼はむやみに生き物をあやめないことを心に誓いながらも、素直に最強の剣を使えるようになったことを喜んだ。

 

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