夢のまた夢と言われても   作:地球の星

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Quest.27 精霊との勝負(後編)

 異世界からやってきた風の精霊と戦ったハッサンは、持久戦の末に勝負に負けてしまった。

 そして次はリベラと水の精霊が勝負をすることになった。

「リベラさん、よろしくお願いします。」

 彼女は風の精霊とは打って変わって、非常にしっかりとした性格で、礼儀正しくおじきをしてきた。

「こちらこそ、よろしくお願いします。」

 リベラもつられるようにおじきをすると、勝負がいよいよ始まった。

 

 最初に攻撃してきたのは水の精霊で、彼女の通常攻撃をリベラは力の盾で防いだ。

 次にリベラは炎の剣を道具使用して、彼女にダメージを与えた。

(よし、イオラの威力まであと少しだ。)

 確かな手ごたえを感じた彼は、今度はラミアスの剣を道具使用し、バイキルトを発動させた。

 するとそれを見るなり、水の精霊は凍てつく波動を発動させてきたため、せっかく上げた攻撃力が元に戻ってしまった。

「これは計算外だった。どうしよう…。」

 リベラはとっさに作戦を変更することにした。

 すると今度は水の精霊がマヒャドを唱えてきた。

「わあああっ!」

 強烈な吹雪を目の当たりにした彼は、とっさに炎の剣を道具使用した。

 今度はイオラそのものが発動し、マヒャドの威力をある程度打ち消してくれたが、それでもある程度のダメージを受けてしまった。

(マヒャドとイオラではこっちが不利だな。こうなったらハッサンのように力の盾で回復をしながら、隙を見て攻撃になりそうだな。でも、その前に…。)

 リベラはもう一度ラミアスの剣を道具使用してバイキルトをかけてみた。

 しかしやはり即座に凍てつく波動を使用されてしまい、また攻撃力を元に戻されてしまった。

 もはやバイキルトが役に立たないことを悟った彼は、試しにルカニを唱えてみたが、効果は全くなかった。

 すると水の精霊は隙ありと言わんばかりに特技を駆使してきた。

 先程のマヒャドに加えてダメージがさらに蓄積してきたリベラは、力の盾でHPを回復させた。

 一方の彼女もお付き合いとばかりに安らぎの歌を歌い、HPを回復させた。

 

 両者の勝負は通常攻撃での応戦、特技vs.ライデイン、マヒャドvs.イオラ、安らぎの歌vs.ベホイミという形になった。

 お互いダメージを受けるたびに回復という形だったために、どちらも決定打に欠けてしまい、先程と同様に持久戦になりつつあった。

(しかし、力の盾のベホイミでは回復が足りないな。せめてベホマを使えたら…。)

 彼が厳しい表情を浮かべていると、水の精霊はマヒャドを唱えてきた。

 すかさずイオラを発動させて威力を打ち消そうとしたが、判断が一瞬遅かったため、攻撃をまともに受けてしまった。

(ぐわっ!しまった!)

 刺すような痛みに襲われたリベラはとっさに力の盾を使い、HPを回復させた。

 だが、水の精霊はベホイミを上回るダメージを与えてきた。

(まずい!このままでは押し切られてしまう!また回復だ。でもベホイミじゃ物足りない。こうなったらバーバラ!僕に力を貸してくれ!)

 リベラは足でホイミやベホイミを吹き込んでくれた時の彼女を思い浮かべながら、祈るような気持ちで力の盾を天にかざした。

 するとその願いが通じたのか、HPが一気に最大値にまで回復した。

(えっ!?どうして!?)

 思いもよらないことが起こり、彼は思わずビックリだった。

「何と!あなたは力の盾でベホマを使えるのですか?」

 この光景は水の精霊にとっても意外だったようで、彼女も驚いていた。

(そうか。バーバラ、君なんだね。君が僕に力を貸してくれたんだね。ありがとう。)

 彼女に助けてもらう形になったリベラは気持ちの面でも勢いがつき、次のターンで会心の一撃と追加攻撃を叩き込んだ。

「くっ!あなたがベホマを使う以上、形勢は逆転したようですね。」

 一旦は優勢に立っていた水の精霊の表情は、一気に険しいものに変わった。

 彼女は間合いを取ると、切り札とばかりにマヒャドを唱えてきた。

 リベラはとっさに力の盾で身を守り、受けるダメージを軽減した。

 そしてお返しとばかりにライデインを唱えてヒットさせた。

 段々不利な状況になってきた水の精霊は、安らぎの歌でHPを回復させた。

 すると、リベラがその隙をついてバイキルトを発動させたため、水の精霊はすかさず凍てつく波動を使用した。

 だが、リベラは攻撃力が元に戻るよりも一瞬早く、彼女に強烈な通常攻撃と追加攻撃を叩き込んだ。

 かなりのダメージを受けた水の精霊だったが、未だダウンには至らなかった。

 しかもリベラの攻撃力が元に戻ってしまったため、せっかくの切り札がご破算になってしまった。

(この精霊、HPはかなりあるんだな。一体どれだけダメージを与えれば勝てるんだ?)

 彼は果たして勝てるのだろうかという気持ちを抱えながら、通常攻撃と追加攻撃を叩き込んだ。

 だが、彼女はHPが十分残っているようで、まだまだピンピンしていた。

(これじゃラチが開かない。かくなる上は父さん、母さん。どうかラミアスの剣を武器として使わせてください!)

 覚悟を決めたリベラは鞘を外し、剣を構えた。

「なるほど。あなたはついに本気を出したわけですね。」

「はい。両親からの忠告を破ってしまうことになりますが、勝負である以上、勝たなければいけませんから。」

「そうですか。ではその実力を見せてもらいましょう。」

 2人は短い会話を交わした後、勝負を再開した。

 すると、攻撃力が大幅に上がったリベラの与えるダメージが上昇し、水の精霊をどんどん追い詰めていった。

 彼女は安らぎの歌でHPを回復させたが、それでも受けるダメージは到底追い付かなかった。

 そしてマヒャドを唱えてもリベラは事前にバーバラが唱えてくれた呪文をつぎ込む形で力の盾を使い、ダメージを完全にリセット出来るようになったため、もはや水の精霊に打つ手はなかった。

「どうやらこの勝負、私の負けですね。降参します。」

 それまで戦う姿勢を見せていた彼女の表情は、一転して穏やかなものになった。

「じゃあ、僕の勝ちということでいいんですね?」

「はい。私が人間に負けるなんて思いもしませんでしたが、あなたは強いですね。力の盾でベホマを使えるなんて、初めて見ました。」

「いえ。僕はただ、バーバラに力を貸してくれってお願いをしながら使ったら、結果的にこういう形になったんです。それに、彼女の呪文も使い切ってしまいましたから、これ以上のベホマは無理でした。」

「バーバラとはどなたですか?」

 水の精霊が質問をすると、ハッサンが「こいつのガールフレンドだぜ。」と言いながら、間に入り込んできた。

「ちょ、ちょっと!ハッサン!」

「別に隠すこともねえじゃねえか。」

 ハッサンはそう言うと、水の精霊と風の精霊にバーバラのことを話し始めた。

 そしてそれに続く形で、リベラは彼女と2度と会えない別れを覚悟したこと。彼女が代償を背負ってまで自分に会いに来てくれたこと。カンダタの呼び出した爆弾岩のメガンテを阻止してくれたのと引き換えに、ボロボロの体になってしまい、それ以降、ケガに苦しめられていること。

 そして今のままではどんなに両想いの関係になっても、いずれ別れなければならないことを打ち明けた。

「そうですか。私と風の精霊を呼び出したカンダタは、あなたにとっては因縁の相手だったのですね。」

「はい。僕、今でも悔やんでいるんです。彼女を守ると言ったのに、守ってあげられずにボロボロの体にさせてしまったことを。」

 さらに彼は代償から解放させると言ったのに、未だその手掛かりすら見つけられず、命の木の実で一時的に最大HPを増やすしか手立てがないこと。

 そしてその命の木の実も段々手に入りにくくなってきているために、徐々にHPが減っていることを打ち明けた。

「それなら私にいい考えがあります。」

「何ですか?」

 リベラが問いかけると、水の精霊は自分達の世界に超・命の木の実があることを打ち明けた。

「それは、食べると最大HPがかなり上がるんでしょうか?」

「かなりと言えるのかは分かりませんが、少なくとも命の木の実より上昇幅は大きいはずです。とはいえ、勝負に負けた以上、私は元の世界に帰らないといけませんから、風の精霊に持ってきてもらおうと思います。よろしいですか?」

「ええっ?マジ?アタシ、面倒くさいことイヤ!」

 風の精霊はふくれっ面をしながら依頼を断った。

「そんなこと言わずに、引き受けてくれよ。リベラの大切なガールフレンドなんだぜ。」

「あんたのようなモヒカンゴリマッチョに指図されるのもイヤ!」

「何だとおい!頭にきたぜ!もう一度勝負するか?」

「それもイヤ!アタシ、忙しいんだから!」

 結局ハッサンが何を言っても、彼女の気持ちは変わらなかった。

 こんな態度を見せつけられ、リベラ、ハッサン、水の精霊がどうすればいいのか分からずにいると、ふと空からテリーがやってきた。

「リベラ、ハッサン。こんなところにいたのか。ところで、その女2人は誰だ?」

リベラ「この2人は風の精霊と水の精霊。今僕達2人で1対1の勝負をしていたんだ。」

「そうか。お前達も精霊と勝負をしていたんだな。」

ハッサン「ってことはお前も勝負をしていたのか?」

「ああ。俺、チャモロ、スミス、ホイミン対炎の精霊、大地の精霊という4対2の形でな。」

リベラ「それで、結果はどうだったの?」

「結構強敵だったが、どうにか勝ったぜ。俺は炎の精霊の攻撃をドラゴンシールドで軽減しながらルカニを唱えて守備力を下げ、最大級の攻撃を打ちまくったし、スミスはまどろみの剣で相手を眠らせた後、大地の精霊に変身して会心の一撃を打ちまくってな。そしてチャモロとホイミンはほぼ回復専門だ。」

 テリーはその勝負の後、彼らがまだ精霊が2人いることを告げたうえで、元の世界に戻っていったことを話してくれた。

「そうか。こちらは1勝1敗の状態なんだ。」

 リベラは自分が水の精霊に勝ち、ハッサンが風の精霊に敗れたことを話した。

「ハッサンがこんな女に負けるとは意外だったな。無駄行動の一つや二つでもしたのか?」

「うっ…、そ、それは…。」

「図星だな。女だからって手加減するからこうなるんだ。」

「手加減はしてねえ!ただ、こいつは強いぞ!一瞬死ぬかと思ったくらいだ。リベラだって勝ったとはいえ、途中までは劣勢だったんだぞ!」

「そうか。だが、まだこの水着姿の女が残っているわけだから、俺が片づけてやらねばな。」

 テリーは風の精霊をキッとにらみつけた。

 すると彼女は「キャーーッ!アンタ、ハンサムね!カッコイイッ!ねえねえ、名前何てゆーの?」と、興味津々に聞いてきた。

「な、何だ?いきなり。俺はテリーだが…。」

「テリー君っていうんだ。ねえねえ、勝負するより、アタシと付き合わない?アンタ、イイ男5年分、いや10年分の価値はあるわ!」

「何なんだ、コイツ…。」

 あまりにも意外な展開になったことで、テリーは動揺を隠せず、さらにリベラとハッサンはあっけにとられていた。

 そんな中、水の精霊はこんな彼女にうんざりしているのか、「やれやれ、また始まりましたね…。」と言うと、手を頭に当てながらため息をついた。

「とにかく勝負なんかもうどうでもいいわ。アタシ、今日からあんなムサい覆面ゴリマッチョじゃなくて、テリー君に仕えることにするわ!アタシを仲間に入れてくれる?」

 風の精霊の言っていることは本気で、テリーに積極的にアプローチをかけながら、風のアミュレットを差し出してきた。

「これをアンタにあげるわね。これを使うと、アタシを呼び出すことが出来るから。」

「おいおい、強引過ぎるんだがな…。」

 テリーが受け取るのをためらっていると、リベラは風の精霊に超・命の木の実を持ってきてほしいという理由で、彼に協力を要請した。

「頼む、テリー。バーバラのためでもあるんだ。」

「そうか…。まあ、俺も最近命の木の実がなかなか手に入らなくて悩んでいたんだ。彼女の日々の生活がかかっていることだし、引き受けてやるよ。」

 テリーは渋々ながら、リベラの願いを聞いてくれた。

「キャーーーッ!アタシうれしいっ!じゃあ、はい、これっ!」

 風の精霊は否応なしに風のアミュレットをテリーに手渡した。

「受け取っちまったな…。まあ、これで精霊とこれ以上戦わなくて済んだわけだし、バーバラのために協力してくれる人…っていうか、精霊があらわれたわけだからな。ヨシとしておこう。」

「それじゃ、アタシは一旦自分の世界に帰るわね。そしてバーバラっていう女の子のために役に立つアイテムを用意しておくからね。バーーイ!」

 風の精霊は最後までノリノリの口調でアミュレットの中に入り込んでいった。

「とにかく彼女はあんな性格なんです。苦労も色々すると思いますが、よろしくお願いします。それでは、私もこれで失礼します。」

 水の精霊はそう言い残すと、自分の世界に戻っていった。

リベラ「色々あったけれど、新しい仲間が加わった形になったね。」

ハッサン「勝負は厳しかったが、仲間になってくれれば百人力だな。」

テリー「まあ、俺としては仲間にするつもりはないが、でも危なくなったら切り札にはなりそうだな。」

「じゃあ、戦力として考えているわけだな。良かったじゃねえか。お前はほとんど男ばっかりのパーティーで行動していたから、女性キャラも欲しいだろうしな。」

「何だそれは!」

 テリーはハッサンにツッコミを入れながらも、心の中では女性の協力者が加わったことを喜んでいた。

 

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