夢のまた夢と言われても   作:地球の星

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Quest.29 復帰要請

 月鏡の塔に異世界からやってきた難民モンスター達が住むようになると、スミスとホイミンは積極的に彼らの世話をするようになった。

 それはテリーやミレーユの耳にも伝わり、塔を訪れた彼らは食料の差し入れをしたり、農作業用の道具を渡したりするようになった。

 テリーは現地でミレーユに鉢合わせした際、風の精霊が持ってきてくれた超・命の木の実3個を彼女に手渡した。

「ありがとう。この仕事が終わったら早速バーバラに手渡すことにするわ。」

「まあ、俺としては当然のことをしたまでだがな。」

 テリーはぶっきらぼうな言い方をしながらも、姉の笑顔を見て満足そうな表情をしていた。

 

 彼らは用事を済ませた後、一緒に塔から出てきた。

 そしてミレーユは、破邪の剣にベギラゴンを入れてもらえるようにお願いした。

「なるほど。姉さんの頼みなら断る理由もないしな。」

「ありがとう。実は以前、私がバーバラにお願いして唱えてもらったけれど、引き換えに彼女が左腕を痛めてしまって…。」

「それで俺に依頼したというわけか。」

「ええ。彼女以外ではあなたしか唱えられる人がいないから。」

「分かった。じゃあ、早速やってやるよ。」

 テリーがベギラゴンを唱えると、炎が剣に吸い込まれていった。

 しかし一部の炎が飛び出してきてしまい、テリーはわずかではあるがダメージを受けてしまった。

「危ねえな、おい!」

「あっ!ごめんなさい。私のせいで…。」

 少しとはいえ、他人に迷惑をかける結果になってしまい、ミレーユは平謝りだった。

「まあ、ちょっと威力は下がるかもしれんが、またベギラゴンが打てるようになったわけだな。」

「でもはね返されるのは意外だったわね。これでは使った後にあなたに頼むわけには…。」

 彼女は今度こそあと一発しかベギラゴンが打てなくなってしまうことを覚悟した。

「じゃあ、いざとなったら俺のらいめいの剣を渡すことにする。これなら攻撃力も相当高い上に、道具使用の効果がライデインだからな。」

「本当にいいの?」

「ああ。きせきの剣も攻撃力が高いし、たとえらいめいの剣のライデインが使えなくても、俺にはイオラやベギラゴンがあるし、特技も色々あるからな。」

 テリーはそう言いながらキザな笑みを浮かべた。

 

 その後、2人は草原を歩きながらそれぞれの近況について話した。

「そうか。姉さんはターニアやリベラの母親と協力しながらはバーバラの治療に励んでいるのか。」

「ええ。私がベギラゴンを使いたいと言ったせいで、彼女を痛い目にあわせてしまったから…。」

 ミレーユがそのことで自責の念を持っていることは、テリーにも理解出来た。

「そしてリベラとハッサンは難民達が呼び出したモンスターとの戦闘後は、パーティーとしての活動を一時休止し、出来る限り彼女と一緒にいるというわけか。」

「そうよ。バーバラはようやく包帯が取れて、左手をグーにすることが出来るようになったばかりだし、もし戦闘に参加したら右手にもいつ故障が発生するか分からない状態なの。それに時々命の宝玉を見ては『時が過ぎるのが怖いよお…。』と言って、すごく落ち込んでしまうことがあるから、2人は彼女の心のケアをしてあげているの。」

「体も心もそんな状態では、彼女は到底戦力にはならんな。」

「テリー!そんな言い方しなくったっていいじゃない!」

「まあ、本当のことだからな。それにチャモロも攻撃面で力不足だし、スミスは月鏡の塔にやってきた難民のモンスターの世話に追われて、パーティー離脱状態だからな。」

「そう…。でも、もう少しみんなのことを配慮してあげてね。みんなそれぞれ苦労をしているの。」

「だが、敵意を持ったモンスター達にとってはそんなことなどお構いなしだからな。」

「……。」

 彼の厳しい意見に、ミレーユはそれ以上何も言えなくなってしまった。

 一方、テリーは異世界からやってきたモンスターとの戦闘を通じて、新たなメンバーがいないと先が厳しくなることを予感していた。

「それで、俺はこれからドランゴのところに行って声をかけてみようと思っている。」

「えっ?でも、彼女は子供の世話で引退したはずでは?」

「確かにそうなんだが、デュランの子である2人が今異世界に行っていてな。今なら彼女に復帰してもらえると思っている。」

 テリーはそれに至る経緯をミレーユに話した。

 

風の精霊『ねえねえ、チャモロ君が持っている武器って、グラコスの槍でしょ?』

『ああ、そうだが、それがどうしたんだ?』

『実はね、アタシの世界にグラコスがいるのよ。』

『そのグラコスって、魚みたいな姿をしたモンスターのことか?』

『あったりーーっ!』

 彼女の話によると、その姿はミレーユ達が海底で戦ったグラコスと全くと言っていいほど同じものだった。

『ということは、彼はアンタのお姉さん達と戦った後、アタシ達の世界に飛ばされてきたのね。』

『そうだといいが、それだけでは本人かどうかは分からん。確かめに行ければいいけれどな。』

 テリーの発言を受けて風の精霊は自分がその世界に行き、本人かどうかを確かめに行くことを伝えた。

『それはありがたい。では彼に会ったら、デュランやジャミラス達とともに、デスタムーアの四天王と呼ばれていたことを伝えて、本人かどうかを確認してほしい。まあ、記憶を無くしているかもしれんがな。』

 そう言うと、ふと彼の脳裏に(もしグラコス本人がいるのなら、デュランもその世界にいるかもしれない。)ということが浮かんだ。

 そして風の精霊と一緒に旅人の洞くつに行き、デュナン、デュアナ、ドランゴにそのことを伝えた。

『テリーお兄ちゃん!父ちゃんはそっちの世界で生きているってこと?』

『そうかもしれん。だが、そればかりは行って確かめるしかないだろうな。』

『じゃあ、あたし達、その世界に行く!行って、パパを探し出してみせる!』

『僕も行くよ!行かなきゃ絶対に会えないんだから!』

 デュナンとデュアナは風の精霊と一緒に異世界に行く気満々だった。

『でも…、2人…行く…。私と別れる…。』

 ドランゴは彼らを実の子であるドラグーン同様に面倒を見ていただけに、寂しそうな表情を浮かべた。

『ドランゴ母ちゃん、心配しないで。』

『あたし達、パパを連れてまた戻ってくるから。』

 2人は明るい表情で声をかけた。

 それを受けて、ドランゴも気持ちが前向きになった。

『分かった…。じゃあ…、精霊さん…。この子達…、世話…よろしく…、ギルルルン…。』

 彼女は風の精霊に、幼い子供達の世話を依頼した。

『オッケーイ!ドラゴンちゃん、アタシにまかせて!』

『私…、名前…ドランゴ…。』

『あっ、ごめんねえ。』

 

「そして2人は異世界へと旅立っていったよ。その後、俺はドランゴにパーティーメンバーに復帰してもらえるように説得したんだ。」

「それで、復帰してもらえることになったの?」

「正直、かなり難色を示していたよ。デュナンとデュアナが旅立っていったとはいえ、まだドラグーンがいるからな。」

「そうでしょうね。子供を残していくのはちょっと難しい決断になるでしょうね。」

「それに、ずっと戦っていないから能力が落ちているかもしれないとも言われたよ。」

「じゃあ、結局断られたの?」

「正直、迷っているようだ。まあ、俺としてはドラグーンを一緒に連れて歩くか、アークボルトに預けるかという提案をしてみた。もし一緒に来るのであれば、俺は責任もってそいつを守るつもりだ。とにかく、俺は彼女に復帰して欲しい。ブランクがあるとはいえ素手でも戦える力は持っているし、激しい炎を使えば毎ターン確定でライデインに近い攻撃が出来るからな。」

 テリーの気持ちは本物だった。

 現にチャモロはグラコスの槍を持ってしても攻撃力はテリーやアモス、リベラ、ハッサンには到底太刀打ち出来ず、呪文も頼みの綱がバギマというありさまだった。

(※ゲームではチャモロがレベルアップでザキを覚えますが、作中では除外しています。理由は安易に生死にかかわることを書きたくないという、僕自身の思いからです。)

 そのため、ホイミンが持っている毒蛾のナイフを彼に渡し、確率で敵をしびれさせる方がいいと判断した。

 そして普段は回復要員としてベホイミやベホマを唱えてもらうことになった。

「というわけで、攻撃要員としては俺に加えてアモッさんとドランゴ。そして回復要因としてはホイミンとチャモロを考えている。それに、チャモロが回復役に専念してくれれば、ホイミンを姉さん達のパーティーに回すことも出来るからな。」

「そうなったら心強いわね。私もバーバラもベホマが使えないから。」

「バーバラは以前唱えていたじゃないか。」

「以前はね。でも、マダンテ以降、唱えられなくなってしまったの。」

「そうか。じゃあ、ホイミンは姉さん達のパーティーに加わってもらうことにするぜ。」

「それは助かるわ。でも、いいの?」

「俺もベホマが唱えられるし、チャモロのゲントの杖をアモッさんやドランゴに渡せば彼らも回復役になれるから、心配するな。」

「そう…。ありがとう。」

 テリーとミレーユはお互いの意見を交わした後、ルーラで移動していった。

 

 その頃、リベラ、ハッサン、バーバラの3人はアークボルトで兵士のホイミタンクをしているターニアに会った後、徒歩で旅人の洞くつの近くにやってきた。

 するとそこにはドラグーンを連れたドランゴがいた。

 彼女はパーティーメンバーとして一緒に戦った時の面影は見られず、純粋に母親としての顔をしていた。

 そしてデュナンとデュアナが父親を探しに異世界に行ったことを伝えてくれた。

リベラ「彼ら2人、お父さんに会えるといいね。」

ハッサン「そうだな。デュランはぜひ生きていてほしい存在だったからな。」

バーバラ「会えたら幸せに過ごしてほしいね。」

「そう…。私も…そう願う…、ギルルルン…。」

 3人と一匹が会話をしていると、ドランゴはテリーからパーティーメンバーに復帰して欲しいという要請を受けたことを明かした。

「でも…私…、子供いる…。この子…ドラグーン…、置いていけない…。戦い…、ずっと…離れたまま…。戦力になれるか…、それ…分からない…。」

 彼女は自分の悩みを正直に打ち明けた。

「じゃあ、僕達が面倒を見るってのはどうかな?」

「ええっ?俺達がかよ!」

「あたし達に出来るの?」

「やってみれば分かるよ。」

 リベラはそう言うとドラグーンのところに行き、「こっちにおいで。」と言い出した。

 その子は最初戸惑っていたが、ドランゴは彼らがかつて一緒に冒険をした仲間であることを伝えた。

 ドラグーンは母親の言葉を信じ、リベラのところにやってきて、彼の手の上に乗った。

 リベラは満面の笑みを浮かべながら「高い高い」のジェスチャーをした。

 一人と一匹はすぐに意気投合し、ハッサンとバーバラも段々仲良しになった。

「君達…、この子の…面倒…、よろしく…。これで…私…、テリーの…要請…、受け入れられる…、ギルルルン…。」

 彼らの姿を見てドランゴもこの3人なら子供を預けても大丈夫と判断し、パーティーメンバーに加わることを決意した。

 

 その後、テリーとミレーユが洞くつのところにやってきて、リベラ達と合流した。

 リベラ達3人はすでにドラグーンと仲良く行動していた。

 ミレーユはバーバラの姿を見ると、すぐに超・命の木の実を差し出した。

「わあっ!ありがとう!本当に持ってきてくれたのね。」

 彼女は実を受け取ると、すぐに食べ始めた。

 その光景を見ながら、ドランゴはテリーに我が子をしばらくの間リベラ達に預けることを伝えた。

「そうか。それならメンバー復帰への足かせが無くなったわけだな。じゃあドランゴ、仲間になってくれ。頼む。」

「分かった…。私…、テリーに…協力する…。」

「ありがとう。じゃあ早速アモッさんとチャモロに合流する。そして、モンスター討伐に出かけることにする。」

リベラ「えっ?今から行くの?」

「ああ。彼らの話では、モンスターがとある村の近くに出現しているようだからな。」

「じゃあ、僕も行くよ。テリー、連れていってくれ。」

「お前はバーバラのそばにいてやれ。今は戦いのことは忘れろ。お前達の話は姉さんから聞いているし、気持ちは理解しているからな。」

「そうか…。テリー、すまない。」

 リベラは彼の配慮に感謝しながらも、申し訳ない気持ちになった。

 それはハッサンとバーバラも同じだったが、ミレーユに説得される形で納得した。

「じゃあ、姉さん。そしてリベラ、ハッサン、バーバラ。今から行ってくるぜ。」

「それなら僕の炎の剣を持って行ってよ。確か、ドランゴはこの剣を装備出来るはずだよね。」

「確かに…私…、過去に…それ…使ったことある…。ギルルルン…。」

「じゃあ、ぜひ受け取ってよ。」

「ありがとう…。」

 ドランゴはお辞儀をしながらリベラから剣を受け取った。

 その後、ハッサンはプラチナシールドを、ミレーユは身かわしの服を、バーバラは炎のツメを手渡すことにした。

「わりいな、みんな。ありがたく使わせてもらうぜ。」

 テリーはそれらを受け取ると、ドランゴを連れてルーラで飛び立っていった。

 

 アモスとチャモロに会った彼は早速プラチナシールドをアモスに、身かわしの服と炎のツメをチャモロに手渡した。

アモス「ドランゴさんがいれば百人力ですね。加入させてくれてありがとうございます。」

チャモロ「それにリベラさん達も優しいですね。自分達の持ち物を惜しまず渡してくれるなんて。」

「彼らも俺達に期待しているということだ。それじゃみんな、行くぞ!」

一同「オーーーッ!」

 彼らは気合を入れてモンスター討伐に向かっていった。

 




名前の由来
ドラグーン(Dragoon)
 ドランゴの子供ということで、シンプルにこのような名前にしました。
 これまで作中にドランゴの子供が登場しながらも、名前が出てきませんでした。
 しかし書いているうちに、それでは申し訳なく思えてきたため、とりあえず仮の名前として考えていたドラグーンをそのまま採用しました。
 ちなみに性別は読者の想像にお任せします。
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